ただ、この税金対策で「タックスヘイブン」(租税回避地)を活用するという手段があります。
今回は、このタックスヘイブンについて、わかりやすく解説していきます。
目次
Contents
タックスヘイブン(租税回避地)とは?
タックスヘイブン(租税回避地)とは、税金がかからない、もしくは税率が他国と比べて著しく低い国、地域のことです。
タックスヘイブンに住居を構える、または法人(ペーパーカンパニー)をつくることで、利益をペーパーカンパニーに集め、税金を安く(低税率を適用)抑えることが可能になります。
国籍は問われないことが多く、条件さえ満たせばタックスヘイブンを利用することができます。
現代は、タックスヘイブンを使うことに対してい批判的な意見が多く、タックスヘイブン側の審査が厳しくなってきています。
世界の指導者や著名人らがタックスヘイブン(租税回避地)を利用していた実態を暴露した「パナマ文書」で、「国際調査報道ジャーナリスト連合」(ICIJ)が日本時間10日、ペーパーカンパニー約21万社の情報などを公開した。4月に資産隠しや課税逃れの疑惑につながる一部の資料を公開した結果、アイスランドのグンロイグソン首相が辞任に追い込まれるなど世界に衝撃を与えた文書。今回の資料公開で、さらに波紋が広がりそうだ。
(引用:日経新聞『「パナマ文書」世界揺るがす 』)
インターネット上では、タッククスヘイブンでの法人設立を支援する企業、事務所も多くでてきている様子も見て取れ、今後もタックスヘイブンへの需要は高まっていくことが予想されます。
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タックスヘイブン税制の仕組み
まず、現状を簡単に説明すると、例えば政治家や富裕層、大企業がタックスヘイブン(租税回避地)を活用し税メリットを享受している、ということです。
ペーパーカンパニーをタックスヘイブンに設立、国内の利益を移転しているのが現状です。
富裕層を中心として節税に成功しているのに、国民・企業は政府の増税に対して納税を課されていることから、パナマ文書が表に出た時には国民から富裕層へ大きなバッシングがありました。
そこで、「タックスヘイブン税制」を日本は設定し、海外に移転された利益に関しても、一定の基準(租税回避地で事業を行なっていないとみなされた場合)は日本国内で課税するという制度を設定しています。
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代表的なタックスヘイブン地域
次に、代表的なタックスヘイブン地域について確認していきましょう。
ケイマン諸島
言わずと知れたタックスヘイブンの代名詞ともいえるのが、ケイマン諸島です。
ケイマン諸島は、イギリスの海外領土で、アメリカの南側にある西インド諸島に位置しています。
経済大国アメリカに近いという点、また世界の金融市場に影響力をもつイギリスの領土であるという点から、タックスヘイブンの中でも先進諸国の関与が強い場所です。
中米国のパナマにある法律事務所、モサック・フォンセカで作成された租税回避に関する文書(通称:パナマ文書)の流出により、一躍その名前を世界に広めることになりました。
ケイマン諸島では、法人税が0%となっています。
ケイマン諸島やサモア、ドバイの法人税は0%です。香港は16.5%、シンガポールは17%と、日本における23.2%(住民税や事業税を含めると29.74%)と比べて低くなっています。
(引用:楽天お金の総合案内)
先進諸国では、法人税が30%前後かかるため、この「0%」という数字は、企業、個人にとって魅力的と言えます。
仮に、1億円の利益がでた場合、法人税30%であれば、3千万円が税金として支払いが必要です。
これが法人税0%だと丸々残る訳ですから、かなり大きいですね。(別途手数料は掛かるでしょう)
法人税0%という看板を武器にして、ケイマン諸島は世界各国から資金を集めています。
表向きの世界では、国際金融都市と言うと、アメリカのニューヨークやイギリスのシティを連想します。
しかし、私たちの知らない世界では、ケイマン諸島が国際金融の中心地になっているともいえそうです。
パナマ
パナマ文書で有名になった国ですが、実はパナマ自体もタックスヘイブンとして知られています。
パナマは、海運業や観光業が盛んな国ですが、日本と同様、資源をもたない国です。
かと言って、日本のように工業が発達している訳ではないですため、海外からマネーを集める手段として、税制を優遇しています。
パナマにある「パナマ運河」は太平洋とカリブ海を結ぶ重要な航路となっており、最初はフランスにより開発が進められ、その後、アメリカが引き継ぐ形で開発を進めました。
その名残もあり、現在も海運業がさかんです。
歴史的な背景からも、世界中の物資が集まる場所であり、このパナマがタックスヘイブンになることで、世界中のマネーが集まる国にもなりました。
ただ、ケイマン諸島と異なり、パナマは表向きは租税情報を提供する姿勢を見せています。
日本とも、2016年に租税情報交換協定(引用:財務省)を結んでいます。
ただ、税制自体を改正する姿勢は見せておらず、あくまでも表向きな態度である面が強いのかもしれません。
ルクセンブルク
ルクセンブルクは、フランス、ドイツ、ベルギーに囲まれた小さな国で、ヨーロッパのタックスヘイブンとして知られています。
ヨーロッパの金融機関が集中している国際金融都市として有名ですが、実は知る人ぞ知るタックスヘイブンでもあります。
ヨーロッパに位置するということもあり、周辺国から多くの企業、個人がルクセンブルクに移住しています。
ルクセンブルクは、富裕層のみならず、一般の人々に対しても税制優遇をしています。
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タックスヘイブンは違法?
結論から言うと、タックスヘイブンは違法ではありません。
正確に言うと、「タックスヘイブンに対して、他国が干渉できない」というのが正しいですね。
他国からしてみれば、税金を徴収したい気持ちで一杯ですので、何とかタックスヘイブンへ逃れているお金を押さえたい所です。
ただ、多くのタックスヘイブンは、他国に対して「個人情報、企業情報保護の面から、情報は提供できない」という壁(法)を設定しています。
このため、企業や個人がどれくらいタックスヘイブンへ資金を移しているか開示されないため判断できず、課税ができない状態になっているのです。
新しく、法律を改正して、タックスヘイブンにある企業に対して課税できるようにすれば良いとの意見もあります。
しかしそうなると、企業が完全に本社や本拠地をタックスヘイブンに移す可能性があり、徴収する税金が減ってしまいます。
ある程度の税金流出はやむを得ないとしているのが現状のようです。
実際に、タックスヘイブンを利用しているのが大手企業や銀行、資産家であるということもあり、中々強く介入できない面もあります。
タックスヘイブンに流出している税金が回収できれば、国内で増税をする必要はないと言われているほどです。
ただ、企業や資産家からすれば「如何に税金をおさえるか」ということが至上命題でもあります。
なるべく、利益をそのまま残したいというのが人の性です。
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まとめ
タックスヘイブンは、今もなお世界中に存在しており、富裕層や資産家、企業を取り入れて、マネーを集約しています。
タックスヘイブンの存在は、税金の徴収という面で、他国政府にとっては脅威です。
各国が協力して、タックスヘイブンに対して企業や個人の租税情報の提供を求めていますが、100%従順に対応するタックスヘイブンは少ないです。
今後、世界的に少子高齢化が進行し、税率が高くなっていく中で、タックスヘイブンを利用する企業、個人がますます増えていくことが予想されます。
ただ、タックスヘイブンは資金洗浄など犯罪に利用されるケースもあるので、今後、タックスヘイブンに対する規制が強まってくるかもしれません。
いずれにせよ、タックスヘイブンの動向に、これからも目が離せません。
以上、タックスヘイブン(租税回避地)とは?税制の仕組みをわかりやすく解説!…の話題でした。