経済ニュースを目にしていると「IMF」という文字を見ることがあるかと思います。
このIMFが形成する体制は、現代の資本主義社会を成立させるためになくてはならないものです。
目次
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IMF体制とは?
IMF(正式名称:International Monetary Fund)は、世界の貿易を促進する、また外国為替の安定化を図ることを目的に設立された国際機関です。
毎年秋に、年次総会を開催して、世界の経済情勢の共有を行っており、年に2回、国際通貨金融委員会を開催して、より具体的な経済政策が議論されています。
IMFに加盟している国は、2019年3月時点で189ヵ国となります。
「IMF体制」とは、1945年のIMF設立からニクソンショックによる金本位制崩壊までの経済体制を指します。
IMF体制では、ドルと金の交換を保証し、ドルと各国の通貨レートを固定することで、各国を間接的に金本位制に復帰させることが実行されました。
IMFの加盟国は、割り当てられた額に応じて自国通貨を出資します。
自国が貿易赤字に陥った際など、経済的に深刻なダメージを受けたときは、IMFから外貨を引き出して、自国で使用することができます。
第二次世界大戦以前は、IMFのように為替の安定化を図る組織は存在せず、そのような事態が結果として、各国の経済格差を生み出し、第二次世界大戦を引き起こしたとも考えられています。
IMFの内部構図はBoard of governors (総務会)とExecutive board (理事会)から構成されています。
Board of governors (総務会)
加盟国につき1人が「総務」として選出され、総務会に出席します。
総務に選ばれる人は、財務大臣や中央銀行総裁といった、自国の金融・財政に精通している人物です。
総務会はIMFにおける最高意思決定機関とされており、採択の際の投票権は出資額の割合に応じて付与されます。
これは、IMFの財源提供に貢献している国に強い権限を与えて、そこまで出資を行っていない国の発言権を弱めるためです。
実際、このような国際会議の場では「言ったもの勝ち」という風潮が根強く、IMFはその風潮を嫌って、「数字」にフォーカスしたのです。
経済指標を常に管理しているIMFらしいスタイルと言えますね。
Executive board (理事会)
理事会には、加盟国の中から24名が理事として選出され、IMFの業務を進行していきます。
理事の中から1名、「managing director (専務理事)」として選ばれて、IMFの代表として働きます。
理事会の位置づけは、あくまでもIMFの通常業務を行うグループであり、あくまでも意思決定機関は総務会とされています。
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IMF体制の歴史と歴代代表者はだれ?
それでは、IMF体制の歴史と歴代代表者について確認していきましょう。
第二次世界大戦が設立のきっかけ。
1929年の世界恐慌によって、世界経済は大ダメージを受けました。
それまで世界経済の中心システムであった金本位制は崩壊し、各国は自国優先の経済政策を行うようになります。
資源を持たない国は、他国へ侵略するという選択をとり、第二次世界大戦を引き起こしてしまいます。
世界大戦の末期、アメリカなどの連合国側は、世界大戦が起こった原因の1つとして、世界経済の不安定さを挙げ、戦後は各国が協力して経済体制を整備していく必要があると考えます。
そして、1944年、アメリカ合衆国のニューハンプシャー州にあるブレトンウッズで、連合国による国際金融・財政会議が開かれます。
そして、戦後にIMFとIBRDを設立することを決定します。
1945年、IMFとIBRDが実際に設立されました。
ここから、IMFは世界の貿易、為替相場を管理する国際機関として出発していきました。
ニクソンショックにより、IMFの役割が変化してくる
1971年、アメリカ大統領のニクソンは、アメリカ経済の後退を理由に、金とドルの交換停止を突如発表します。
これを「ニクソンショック」と呼びます。
ニクソンショックによって、各国は次々と変動為替相場制へと移行していきました。
IMF体制と呼ばれる戦後の経済体制は、ここで終わりを告げます。
今までは、ドルと各国通貨の為替レートは固定化されていた為、IMFとしてもアメリカを基軸に考えていれば管理しやすい状態でした。
しかし、変動為替相場制への移行により、各国通貨の為替レートを正確にコントロールすることはほぼ不可能になります。
IMFの役割が、徐々に「国際金融政策の提言を行う」というものに変化していきます。
従来のIMF体制とは打って変わった役割がIMFに求められるようになったのです。
1970年代までは、IMFは先進国、並びに発展途上奥への融資を行っていたのですが、この役割はIBRDに引き継がれていきます。
歴代のIMF代表はだれ?
IMFの代表である専務理事は、過去に選ばれた24名全員が「欧米出身者」となっています。
これは、IMFの慣習とされていますが、代表者に欧米出身者ばかりが選ばれるのは、他国からすると釈然としないかもしれません。
ただ、IMFは加盟国の出資額に応じた厳密な評価基準を加盟国にあてていて、結果として欧米諸国がIMFへの出資額が高いことから、上記のような偏りが生まれていると考えられます。
ただ、日本はIMF加盟国の中でも出資額は上位ですし、中国も近年、出資額を増やしてきていることから、アジアやアフリカに対する偏見がIMFの中に残っている可能性も否定できません。
歴代のIMF専務理事たちの顔触れは以下の通りです。
順 | 名前 | 出身国 |
1代目 | カミーユ・ガット | ベルギー |
2代目 | イヴァル・ルース | スウェーデン |
3代目 | ペール・ヤコブソン | スウェーデン |
4代目 | ピエール=ポール・シュバイツァー | フランス |
5代目 | ヨハネス・ヴィトフェーン | オランダ |
6代目 | ジャック・ド・ラロジエール | フランス |
7代目 | ミシェル・カムドシュ | フランス |
8代目 | ホルスト・ケーラー | ドイツ |
(代行) | アンネ・オズボーン・クリューガー | アメリカ |
9代目 | ロドリーゴ・ラト | スペイン |
10代 | ドミニク・ストロス=カーン | フランス |
(代行) | ジョン・リプスキー | アメリカ |
11代 | クリスティーヌ・ラガルド | フランス |
新任の専務理事が決まるまでの間、つなぎ役として専務理事を代行するケースもありました。
各メンバー、国際経済、国際金融に精通しているプロフェッショナルでしたので、理事会の議論は「世界最高峰の金融議論」と言えますね。
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〜コラム〜IMFの本部が北京に移転する?
現在、IMFの本部はアメリカのワシントンD.C.にありますが、この本部が中国の北京に移転する可能性があると発表されました。
【ワシントン=河浪武史】国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事は24日、中国の経済成長が続けば10年後にはIMF本部を北京に移す可能性があるとの見方を披露した。中国など新興国の経済規模に合わせ、IMFの議決権比率を見直す必要があると指摘。そのうえで「10年後は北京本部でこうした議論をしているかもしれない」と述べた。
IMFが本部を置く米ワシントンでのシンポジウムで発言した。冗談と受け止めた会場には笑いが広がったが、ラガルド氏は「経済規模が最大の国に本部を置く」というIMFの条項を紹介した上で「(北京移転の)可能性はある」と付け加えた。
理由としては、中国経済の急速な発展が挙げられます。
中国へ進出する外資系企業が増え、世界のマネーが中国に集中してきたためです。
さらに、中国と地理的に近い東南アジアの経済成長も著しく、経済成長の舞台が欧米からアジアへと移ってきている現状を踏まえて、IMFもアジアを拠点とするべきだという考えが台頭してきたのです。
この移転が実現するかどうかは現状でまだはっきりしていませんが、それほどまでにアジアの経済成長はすさまじいスピードで進んでいるということですね。
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IMFと世界銀行の違いは?
よくIMFと世界銀行を混同している方がいますが、両者はまったく別の機関です。
IMFは上述してきた通り、世界の貿易、為替相場の安定化を図る期間です。
それに対して、世界銀行は特定の機関に対して直接「融資」を行う機関となります。
いわゆる普通の銀行と同じように「お金を貸す」ことを仕事としているのです。
世界銀行は、もともと1946年に設立された国際復興開発銀行(IBRD)を前身としています。
その後、1960年に設立された国際開発協会(IDA)と合わせて、世界銀行のグループを形成しています。
IBRD、IDAともに発展途上国に対する融資を中心に行っています。
特に、IDAは最貧国(国民の平均年収が500ドルを下回る国)に対する長期的な融資を展開しています。
IMFは主に世界経済の制度をつくる仕事をしていますので、どうしても発展途上国など経済的に後れを取っている国を細かくフォローすることができません。
そのフォローしきれない部分を、世界銀行がカバーしていると言えます。
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まとめ
IMFは戦後の世界貿易、為替相場を安定させる為に設立されました。
実際に、世界大戦と呼ばれる戦争は今のところ起こっておらず、IMFの目指したものは実現できていると言えます。
ただ、ニクソンショックをきっかけ、世界各国は変動為替相場制へ移行し、IMF体制は終わりを告げることになります。
IMFが為替相場のすべてをコントロールすることは不可能になったのです。
ただ、理事会には国際経済のプロフェッショナルがいるということもあり、国際金融に対する政策提言や経済分析のクオリティは他の機関の追随を許していません。
今後、IMFがどのように世界経済と関わっていくのか、注目したいところです。
以上、【IMF(International Monetary Fund)体制とは?】世界通貨を管理・経済を見通し国際金融政策の提言する役割を担う国際通貨基金を解説。…の話題でした。