「ヤフー」はポータルサイトのYahoo! JAPANを運営している、ソフトバンクグループの子会社。
2019年9月、「ZOZO」の買収で大きな話題となりました。
ソフトバンク傘下のヤフーは衣料品通販サイト首位のZOZOの買収を通じ、ネット広告への収益依存からの転換を図る。
若者に人気のあるZOZOを取り込み、ネット通販を第2の柱に育てる。ソフトバンクグループ本体が構造転換を主導し、人工知能(AI)の知見も注ぎ込む。
グループの総力を挙げ、日本国内の米アマゾン・ドット・コムや楽天に次ぐ「万年ネット通販3位」の座の返上を狙う。
今回はファンダメンタルとテクニカル両面から、ヤフーの今後の株価推移を分析していきます。
■ 投資判断基準:投資対象外
以下の点を総合的に勘案し、ヤフーは現状「投資対象外」と分析。
■ 業績見通し:
▷ 19年3月期の連結最終利益は前の期比40.0%減の786億円。
▷ 20年3月期は前期比4.2%増の820億円に伸びる見通しと公表しているが、20年の回復の根拠にかけていること。
■ 指標関連:
▷ 予想PERは19.2 倍と割高、予想PBRは1.85倍で割安水準であるが、業績次第でさらに割高になると考えられること。
■ 競合他社比較:
▷ 2期連続最高益の楽天のほうが投資対象として安心できること。
■ テクニカル的な判断:
▷ 長期的に雲(上値抵抗)があり、テクニカル的に株価の上昇が難しいこと。
Contents
日本の代表的IT銘柄である『ヤフー』とは?
ここではポータルサイトのYahoo! JAPANを運営しているヤフーの業務内容を見ていきたいと思います。
①:メディア事業
メディア事業ではYahoo! JAPANのトップページやYahoo!ニュースなどの提供、およびディスプレイ広告や検索連動型広告などを提供しています。
ⅰ ディスプレイ広告
ⅱ 検索連動型広告
②:コマース事業
ⅰ ヤフオク!
ⅱ Yahoo!ショッピング
ⅲ Yahoo!プレミアム
ⅳ 決済金融
ヤフーの過去10年の業績推移(PL)
ここではヤフーの過去10年間の業績推移を見ていきます。
決算期 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 当期利益 |
2007/03 | 212,552 | 106,232 | 102,824 | 57,963 |
2008/03 | 262,027 | 124,807 | 121,511 | 62,617 |
2009/03 | 265,754 | 134,618 | 132,912 | 74,715 |
2010/03 | 279,856 | 143,825 | 143,360 | 83,523 |
2011/03 | 292,423 | 159,604 | 160,218 | 92,174 |
2012/03 | 302,088 | 165,004 | 167,300 | 100,559 |
2013/03 | 342,989 | 186,351 | 188,645 | 115,035 |
2014/03 I | 408,514 | 196,437 | 208,224 | 128,605 |
2015/03 I | 428,487 | 197,212 | 208,298 | 133,051 |
2016/03 I | 652,327 | 224,997 | 226,585 | 171,617 |
2017/03 I | 853,730 | 192,049 | 193,475 | 136,589 |
2018/03 I | 897,185 | 185,810 | 193,177 | 131,153 |
2019/03 I | 954,714 | 140,528 | 123,370 | 78,677 |
2020/03予 I | 1,000,000 | 140,600 | - | 79,000 |
わかりやすく図解すると以下になります。

ヤフーはリーマンショックの影響を受けることなく、インターネットの普及に伴い業績を拡大してきました。
しかし、2016年に営業利益が頭打ちになっています。
業績が2016年に頭打ちになった背景として、スマートフォンの普及が考えられます。
ヤフー側の発表では、「2016年度は広告売上高においてもスマートフォン経由が過半となり、スマートフォンシフトが順調に進んでいることを証明することができました。」としていますが、
業績を見ると、パソコンからスマートフォンへの対応が遅れた結果業績が悪化したものと推測されるからです。
よって、今後の業績はヤフーのスマートフォンへの対応次第ということになります。
ヤフーが4月25日に発表した決算によると、19年3月期の連結最終利益は前の期比40.0%減の786億円、20年3月期は前期比4.2%増の820億円に伸びる見通しであると公表しています。
また配当に関しては、18年同様の8.86円としています。
ヤフーのROEとROA
ヤフーのROEとROAは2009年から下降の一途をたどっています。
決算期 | ROE | ROA |
2007/03 | 30.14% | 18.20% |
2008/03 | 24.98% | 16.94% |
2009/03 | 31.89% | 23.98% |
2010/03 | 26.99% | 19.97% |
2011/03 | 24.09% | 19.54% |
2012/03 | 21.61% | 17.89% |
2013/03 | 21.17% | 15.48% |
2014/03 I | 20.75% | 15.13% |
2015/03 I | 18.33% | 13.20% |
2016/03 I | 20.33% | 12.78% |
2017/03 I | 14.67% | 8.90% |
2018/03 I | 12.94% | 5.21% |
2019/03 I | 9.61% | 3.24% |
2020/03予 I | 9.65% | 3.25% |
同じく図示すると以下の通りとなります。

よって資産を効率よく活用できていないことがわかります。
それでもROEは9.61%~31.89%と東証一部の平均値である8%を超えて推移しています。
またROAも3.24%~23.98%と東証一部の平均値である2%を超えて推移しているため、
以前の数値が良すぎたことによる数値の下落であると考えられます。
しかし、ヤフーのROEとROAの推移をみると、下落に歯止めがかからない状態のため、
今後はさらにROEとROAが悪化していく可能性が高いといえます。
ヤフーの現状と今度の業績回復の可能性
2000年に市場初の1億140万円(分割前)の株価を付けた伝説のヤフー。今後ヤフーが再び復活することはあるのでしょうか?
パソコンからスマートフォンへ
上記は総務省が公表している「情報通信機器の世帯保有率の推移」です。
これを見ると、2010年以降、スマートフォンが勢いをつけて普及していったことがわかります。
スマートフォン普及の勢いは止まることなく、2016年にはパソコンと保有割合が逆転していることがわかります。
比較してヤフーの業績は2016年を天井として下降の一途をたどっています。
よって、パソコンからスマートフォンへの移行が遅れたことがヤフーの業績の悪化原因であると考えられます。
ヤフーのスマートフォン対策
はっきり言って他社に出遅れたといってよいでしょう。
ヤフーの主力事業であるヤフオク!ですが、スマートフォンのみで出品する場合かなり利用サービスが制限されます。
比較して同業であるメルカリはスマートフォン1つですべて操作可能です。
よって、若年層ユーザーのメルカリ利用率が高くなっているといえます。
同業他社の成長
ヤフーはインターネット業界の草分け的存在ですが、あとから成長してきた楽天などにサービス内容などで差が生じています。
対応が後手に回り、他社に後から追随しているようでは、その業界の先駆者特権を得ることはできません。
不祥事が多い企業体質
国民生活センターADRに協力を拒否したり、ステルスマーケティング事件を起こしたり、
著作権違反事件を起こしたりと、企業のコンプライアンスの低さが目立ちます。
インターネット界は無法地帯であった、昔のような感覚で業務をしていては、
そのうち、淘汰されてしまう可能性も否めません。
コンプライアンスにのっとった企業経営を
現状ヤフーにV字回復の兆しを見ることはできません。
よって、M&Aで売上高を増加させるだけでは、今後業績が急回復するのは困難であるといえます。
ヤフーのファンダメンタル分析総合
ヤフーの企業経営に「明るい未来」を感じられるところがありません。
よってこのまま営業利益は下げ続ける公算が高いと考えます。
よって、ファンダメンタル的にヤフーは「投資対象外」であるといえます。
ヤフーのテクニカル分析
ここではヤフーは買いか売りかをテクニカル的な側面から分析していきたいと思います。
ヤフーの過去10年の株価推移

上図はヤフーの過去10年の株価推移です。
アベノミクスに指数連動によって、216円から668円に株価が上昇しています。
その後はレンジ相場を形成後、業績の低下に伴って株価が下降トレンドに転じています。
ヤフーのテクニカル分析

直近Wボトム(出来高付き)を伴い底打ち傾向を見せていますが、これはフェイクであると考えます。
理由は月足の雲(上値抵抗)が今後さらに下降しながら厚くなっていくからです。

よって、今後の株価はテクニカル的に上のように推移する可能性が高いと考えられます。
テクニカル的に長期で下落トレンド入りしているヤフーは「投資対象外」です。
ヤフーの競合他社比較
ヤフー(4689)を同業である楽天(9101)と比較検討していきます。
ヤフー | 楽天 | |
PER | 19.2 倍 | - 倍 |
PBR | 1.85 倍 | 1.81 倍 |
配当利回り | 2.97% | - % |
ROE | 9.61% | 18.37% |
ROA | 3.24% | 1.94% |
①:PER
日経平均株価の平均PERは13~14倍です。
ヤフーのRERは19.8倍ですので広告業界セクターが割高であるといえます。
②:PBR
日経平均株価の平均PBRは2倍です。
よって広告業界セクターは割安であるといえます。
③:配当利回り
ヤフーは2%台と一般的な配当利回りです。楽天は1株当たり4.5円ですのでかなり低い配当利回りであるといえます。
これは楽天の配当に関する考え方が「中長期的な成長に向けた投資や、財務基盤の安定化のための内部留保の充実を勘案しつつ、安定的・継続的に配当を行うよう努めていきます。」
と成長企業的な設定であることに由来しています。
配当金額 | 株価 | |
ヤフー | 8.86円 | 340円 |
楽天 | 4.5円 | 1,150円 |
④:株主優待
楽天のみ株主優待が設定されています。
ⅰ 楽天トラベル国内宿泊クーポン
ⅱ 楽天Koboでの対象期間中の電子書籍コンテンツ購入に対し、ポイント3倍
ⅲ 株主限定楽天イーグルス・ヴィッセル神戸グッズ(抽選)
ⅳ 楽天イーグルス・ヴィッセル神戸主催公式戦観戦チケット(優待価格)
ⅴ 楽天証券口座にて楽天株式を保有している株主限定、楽天証券口座での楽天株式購入に係る手数料の30%をポイント還元
ⅵ 楽天市場クーポン
通常 | 保有期間継続5年以上 | |
100株以上 | 100円×5枚 | 左記対象クーポン+1枚 |
1,000株以上 | 200円×5枚 | |
5,000株以上 | 300円×5枚 | |
10,000株以上 | 400円×5枚 |
⑤:決算予測
ⅰ ヤフー
19年3月期の連結最終利益は前の期比40.0%減の786億円、20年3月期は前期比4.2%増の820億円に伸びる見通し。
ⅱ 楽天
18年12月期の連結税引き前利益は前の期比19.8%増の1654億円、19年12月期の業績見通しは非開示。
業績に関しては2期最高益を出している楽天に安定感があります。
⑥:競合他社比較総合
業績が不安定な広告業界ですが、楽天が業績と株主優待で一歩リードしているといえます。
まとめ
今回はファンダメンタルとテクニカル両面からヤフーの今後の株価推移を分析してきました。
ヤフーはファンダメンタル・テクニカル的にも「投資対象外」です。
購入を検討している方は、業績の底打ちを確認してから、投資を検討したほうが無難です。
■ 投資判断基準:投資対象外
以下の点を総合的に勘案し、ヤフーは現状「投資対象外」と分析。
■ 業績見通し:
▷ 19年3月期の連結最終利益は前の期比40.0%減の786億円。
▷ 20年3月期は前期比4.2%増の820億円に伸びる見通しと公表しているが、20年の回復の根拠にかけていること。
■ 指標関連:
▷ 予想PERは19.2 倍と割高、予想PBRは1.85倍で割安水準であるが、業績次第でさらに割高になると考えられること。
■ 競合他社比較:
▷ 2期連続最高益の楽天のほうが投資対象として安心できること。
■ テクニカル的な判断:
▷ 長期的に雲(上値抵抗)があり、テクニカル的に株価の上昇が難しいこと。
以上、【4689】ZOZO買収・Yahoo! Japanを運営するヤフーの今後の株価推移を予想!…でした。
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