「FRB」という言葉は、投資に関連するニュースなどを見ているとよく目にすると思います。
FRBとは、アメリカのさまざまな金融政策を決定する、「連邦準備制度理事会」のことを言います。
日本で言うと日本銀行のようなものです。
しかし、FRBの仕組みや制度が日本とは違うところが結構あります。
しかし、ご存知の通りFRBの政策決定が為替や世界の株などの相場に与える影響は甚大です。
ぜひしっかりとその役割について理解しておきたいですね。
この記事では、FRBの基本的な仕組みや制度、相場に与える影響などについてまとめていきます。
目次
Contents
FRB(連邦準備制度理事会)とは?
アメリカは政体として連邦制度を採用しています。
同様に金融政策においても連邦準備制度(FRS)を採っています。
FRBは、その中心として動く組織のことです。
FRBは、アメリカ大統領に任命された7人の専任理事から構成されます。
専任理事は金融政策に一貫性を持たせる為、14年という非常に長い任期を持つのが特徴です。
現在FRBの議長はJerome H. Powell (以下:パウエル氏)が担っています。
FRBは政党などには属さず政治から独立して政策判断をしています。
現在ではトランプ大統領がFRBの金融政策について意見をする局面も見られます。
トランプ氏はホワイトハウスで「米国の金利は他の国よりも高い」と主張。中国との貿易協議の合意とは無関係に、米企業が競争力を保つために利下げが必要だとの持論を再び展開した。
しかし、あくまでFRBは政治とは独立した判断を行い金融政策を決定しています。
アメリカでは、国内を12の地域に分けそれぞれに連邦準備銀行を設置しています。
連邦準備銀行は、FRBの管理のもとで独立して運営されています。
FRBが連邦準備銀行を管理し連邦準備銀行が地域の商業銀行を管理しているような状態です。
12の連邦準備銀行は以下となります。
- ボストン
- ニューヨーク
- フィラデルフィア
- クリーブランド
- リッチモンド
- アトランタ
- シカゴ
- セントルイス
- ミネアポリス
- カンザスシティ
- ダラス
- サンフランシスコ
この中でニューヨーク連銀は特別な扱いを受けています。
他の地区連銀総裁とは異なり、NY連銀総裁は、金融政策に係るさまざまな取引を管理するシステム公開市場勘定(SOMA)の管理者として、FRBによる金融政策の決定組織である連邦公開市場委員会(FOMC)の常任メンバーであり、かつ副議長の役割を担う。
引用:ロイター
連邦準備銀行は「銀行の銀行」とも呼ばれ商業銀行とのお金の貸し借りをはじめとしたさまざまな取引を行っています。
また、連邦公開市場委員会(FOMC)向けの各地域の経済に関する報告書の作成や、
経済学者や専門家との情報共有なども行っています。
さらに、連邦準備銀行は「発券銀行」としての役割も持っています。
ちなみに、紙幣に書いてあるアルファベットを見ると、どの連邦準備銀行が発行した紙幣かがわかりますよ。
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日本銀行との違いは?
日本銀行は、FRBのように金融政策決定会合を定期的に開催し日本の金融政策を決めておりFRBと似ています。
大きく違うところは日本銀行は銀行なので「発券銀行」「政府の銀行」「銀行の銀行」の3つの役割を果たしています。
しかし、FRBは連邦準備銀行を管理する機関であり銀行業務をしているわけではありません。
そのため、紙幣を発行することは各連邦準備銀行しかできるFRB自体は発行することもできないのです。
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FOMC(連邦公開市場委員会)とは?
FRBが開催している連邦公開市場委員会のことをFOMCと言います。
年8回開催されていてFRBの理事と、連邦準備銀行の総裁5人が参加します。
話し合われる内容としては日銀の金融政策決定会合の内容とほぼ同じです。
さまざまな経済指標などから、アメリカ経済の状況について議論し、それに対する金融政策(公開市場操作)を決定します。
公開市場操作には大きく2つの方法があります。
1つはオペレーション、もう一つは金利操作です。
オペレーションは市場に出回っているお金の量を調整する政策です。
景気がいいときは国債を銀行に買わせることで市場からお金を吸い上げます。
逆に景気が悪いときには銀行から国債を買い取ることで市場にお金を流出させています。
金利操作は政策金利(FF金利)を景気の動向に合わせて上げ下げする金融政策です。
景気がいい時はお金を借りにくくするため金利を上げます。
景気が悪いときは金利を下げてお金を借りやすくして、市場に出回っているお金の循環を促します。
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〜コラム〜FRBとFOMCとFEDの違いとは?
今までFRBは全米にある12の連邦準備銀行と金融政策の決定を行う機関。
FOMCはFRBが定期的に開催する金融政策決定会合であるとお伝えしてきました。
しかし、巷ではFEDという言葉も頻繁に耳にすると思います。
FEDは連邦準備制度 (Federal Reserve System)でFRBとFOMCを含めた中央銀行制度の総称として使われます。
FEDはFRBの広義の概念と捉えていただければと思います。
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FOMCの目標:デュアルマンデート(Dual Mandate)とは?
FOMCでは2つの目標、デュアルマンデートを金融政策としています。
この項目ではデュアルマンデートとFOMCが注視する指標についてお伝えしていきたいと思います。
『完全雇用』と『2%のインフレ』が二つの目標
FRBの公式ページの中の『Monetary Policy Report』の中に記載されています。
The Federal Open Market Committee (FOMC) is firmly committed to fulfilling its statutory mandate from the Congress of promoting maximum employment, stable prices, and moderate long-term interest rates.
<<省略>>
The Committee reaffirms its judgment that inflation at the rate of 2 percent, as measured by the annual change in the price index for personal consumption expenditures, is most consistent over the longer run with the
Federal Reserve’s statutory mandate.
つまりFOMCでは以下二つの目標を達成するために最大限努力をするとしています。
- 完全雇用の達成 (Promotiong maximum employment)
- 2%のインフレ目標
1つ目は国民生活を裕福にするために必要なことです。
一方、2%のインフレ目標は丁度良い経済成長のために必要と設定されている数値です。
経済成長率を目標にしてしまうと経済が過熱しすぎてしまう可能性があります。
インフレ目標を設定することで景気の落ち込みを防ぎ、景気の過熱に対応することができるのです。
現在ではFRBに倣って欧州中央銀行ECBや日本銀行もインフレ率2%を政策目標としています。
FOMCが注目する指標
FOMCではさまざまな経済指標などをもとに景気動向を判断していますが特に重要視されているのが以下の経済指標です。
【雇用統計】
アメリカの雇用状況を表す指標です。
完全雇用に向けて順調かどうかを判断する為の指標で最重要の指標となっています。
各部門の雇用者数や、失業率、週労働時間、平均時給などの項目があります。
雇用統計の結果が良好だと金融が引き締め方向となることが想定されるため米ドルの実質金利が上昇します。
結果的に米ドル高方向の圧力がかかります。
雇用統計が発表されるのは月初の金曜日であり為替や株をはじめ大きく変動する為、相場関係者の中ではお祭り騒ぎとなります。
【PCEデフレーター】
アメリカの個人消費の物価上昇率を表す指標で、消費者物価指数と並ぶメジャーな指標のひとつです。
従来は雇用統計が圧倒的に重要な地位でしたが近年はPCEデフレーターの重要性が高まっています。
雇用統計では完全雇用に近い状態となっていることが確認されているため、インフレ指標が重要になってきているためです。
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FOMCの政策や要人発言が相場に与える影響は?
FRBの金融政策は株や為替の動向に大きな影響を与えます。
具体的にFRBの動向が相場にどのような影響を与えるか見て行きましょう。
為替相場への影響!『SELL THE FACT』に気をつけよう。
先ほど、FRBの役割として、「オペレーション」と「金利操作」があると書きました。
それらの公開市場操作の影響として、対米国内では経済活動の促進や引き締めなどの効果があります。
対外的には「米ドルの通貨としての価値」に影響を与えます。
まずオペレーションでは、国債の売買によって市場に流通する米ドルの量を増やしたり減らしたりしています。
株や為替は基本的にオークションのような形で値段が決まるので、流通する量が増えればその価値は下がり逆に量が増えればその価値は上がります。
次に金利操作です。
世界の投資マネーは、基本的に金利が高い国の通貨に流れやすいです。
金利が高い通貨に投資すれば、金利収入が増えるので、投資妙味が上がるからです。
そのため、利上げは通貨の上昇要因、利下げは通貨の下落要因になります。
また、筆者は総合商社で為替トレーダーをしていたのですが要人の発言でも大きくレートが変動しました。
市場関係者は実際の政策が行われる前に各要人の発言から次の政策を予想していきます。
逆にFOMCの要人たちも政策決定の前に事前に市場関係者達の間に織り込ませにいきます。
実際に利上げされた時には既存に織り込み済みとなっており、逆に『Sell the fact』で米ドルが下落することも頻発します。
株式相場への影響
為替相場の動きは日経平均にも大きな影響を与えます。
そのため、日本株に投資する際にもFRBの動向にはしっかりと注目しておく必要があります。
日経平均は円高になると下がり、円安になると上がる傾向があります。
これは、日本に輸出企業が多く、円高になるほど円建ての利益が減り、円安になるほど利益が増えるからです。
逆に、輸入企業は円高になると利益が増え、円安になると利益が減ります。
為替相場が企業の業績に影響を与え、それが株価の動向にも影響しているのですね。
その他の影響
FRBの金融政策は他にもさまざまなところに影響を及ぼしています。
意外に盲点ですが、大きな影響を受けるのが新興国経済です。
新興国は貧しい国が多く、米ドル建てで先進国などから借金をしている国が多いです。
そのため、アメリカが利上げをすると借金の利払いも増え経済に打撃となります。
また、新興国通貨は先進国では考えられないような超高金利が多く10%台という国も多くあります。
そのため、アメリカの金利が低く世界の投資マネーがあふれている状態の場合、新興国にお金が流れやすくなります。
しかし、アメリカが利上げをすると米ドルに投資妙味が生まれます。
投資マネーが新興国からアメリカに還流してしまうのです。
そうすると、新興国では通貨安が起こり最悪の場合国内でハイパーインフレを起こして経済が混乱してしまいます。
また、原油価格についても、利上げが下落、利下げが上昇要因になっています。
基本的にはFRBの金融政策によって為替や株式は上記のような動きをすることが多いので頭に入れておくといいと思います。
ただし、相場の状況によっては全く逆の動きをすることもあるので、
あくまで教科書的な動きであるということも念頭に置いておきましょう。
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まとめ
FRBの仕組みや役割について見てきました。
FRBの金融政策は世界中の様々なところに影響を及ぼします。
年8回のFOMC前後は、相場が大きく動く可能性があります。
アナリストによる政策予想などが新聞などに書かれたりFRBメンバーや連銀総裁たちの政策に関する言及があったりするので注目してみましょう。
このコンテンツでは、FRBの金融政策に対する、あくまで教科書通りの相場への影響を書いています。
しかし、実際には全く違った動きをすることも多いです。
どんな政策や発言で相場がどのように動いたかをチェックしておくと今後の見通しが立てやすくなるでしょう!
以上、【FRBとFOMCとは?】法的使命「デュアルマンデート」と共にわかりやすく解説!…でした!