株式投資で大きなリターンを得るために、「仕手株」に興味がある人はいるかもしれません。
「仕手株」とは短期間で大きく株価が変動するものであり、一般的な株よりもハイリスク・ハイリターンです。
資金力のある投資家たちが仕手株の株価をコントロールするため、急激に値下がりする可能性があります。
投資で大きく損しないために、仕手株の特徴や見分ける方法について知っておきましょう。
目次
Contents
仕手株とは
多額の投資資金を保有する一部の投資家たちが「価格操縦」することで、急激に上昇・下落してしまうのが仕手株です。
また、仕手株の株価をコントロールする集団を仕手筋と呼びます。
たった1日で株価が10%以上変動することがあり、売買するにはハイリスク・ハイリターンな銘柄となります。
仕手株の株価を操作する投資家を仕手筋または「仕手集団」と呼びます。
仕手筋には資金力のある企業の経営者や医師などの資本家などが関わっている可能性があると考えられています。
個人の投資家が仕手株に投資するメリットは、値動きに乗ることで少額投資でも資金を増やしやすいことです。
短期間に株価が10%以上変動するのであれば、10万円の投資でも1日や2日で1~2万円の売買益を得ることができます。
通常、中型株や大型株の変動率は、1日で10%も動きません。一般的には、3%や5%の値上がり率でも好調といえる動きです。
つまり、仕立て株の変動率は、非常に大きいことがわかります。
しかし、仕手筋によって予想外のタイミングで売られた場合、持っている仕手株により大損することもあるため、
初心者のみならず経験者でも慎重に考えて売買を検討すべきです。
もしも、仕手株を購入し、利益を得ようと考えている場合は、仕手筋の心理を先読みして売買するタイミングに気をつける必要があります。
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仕手株の手法
「大量に株式を売買しただけでは、仕手筋はリターンを得られないのではないか」
仕手株の株価をコントロールしようとする投資家たちは、以下のような手法により売買益を狙います。
- 仕手筋が株価を操作しやすい銘柄探し
- 仕手株となるターゲット銘柄を決定
- 個人投資家から気づかれないように売買開始
- 仕立株とする銘柄の出来高を増やし過ぎないように少しずつ購入
- 玉集めが完了
- 大きな買い注文を行い、市場に存在する個人投資家の注目を浴び、他の投資家にも買われて株価急騰
- 振るい落としで更に買い集めた株を売り注文に出す。株価が適正価格まで下落
流れとしては大きく分けると「玉集め」・「玉転がし」・「振るい落とし」の3種類で、
仕手株は出来高の急激な増加や価格上昇、急落といった動きが発生します。
それでは、次項より仕手株の流れを3つの要素に分けて詳しくご紹介していきましょう。
安値の時期に買い続ける玉集め
仕手筋は、安値で推移中の低位株を探し少しずつ買い増す「玉集め」から始めます。(仕手筋の手法1~5の工程)
多くの個人投資家が注目していない低位株は、通常何らかのイベントや業績向上しない限り上昇相場へ切り替わる可能性は低い傾向です。
また、大手企業の銘柄は常に注目されていて、不自然に急上昇したり出来高急増したりすると怪しまれるため狙われません。
そこで、仕手筋は誰も注目していない低位株の中からコントロールしやすい銘柄を探します。
仕手株を見つけたら一般の投資家に気づかれないよう、急激な変化を感じさせないようにある程度の期間を定め少しずつ買い注文を出していきます。
表面的には、出来高や株価などには大きな変化がないため、初心者は見極めることが非常に難しい状況です。
このように仕手筋は、予定した時期・株数まで、少しずつ買い続け、水面下で動いていきます。
具体的にいつまで玉集めを行うかは、予測の難しい事象ですので、経験から見極める必要もあるでしょう。
急激に価格が上がる玉転がし
仕手筋は、一般の投資家から注目されるよう大量の買い注文を出すだけでなく、
玉集めで保有した株を売り板に出すことで価格を引き上げます。(仕手筋の手法6の工程)
このような動きによって価格上昇・出来高急増という、2つの現象が発生します。
仕手筋で大量に買い続け、保有中の株をこの段階で売る理由は、一般の投資家に注目してもらい高値で買ってもらうためです。
仕手筋のみで売買を繰り返しているだけでは、利益につながりません。
また、仕手筋が短期間に多数の買い注文を入れることで証券会社の値上がりランキングや出来高ランキングの上位に入り、
より多くの投資家から注目を集めます。
ちなみに仕手筋は、相場操縦を隠すために、複数の口座・別名義にて売買を繰り返します。
多くの個人投資家は、買い板・売り板共に仕手筋が仕掛けた動きとは気づかないため、売買を検討したり購入したりします。
振るい落としで調整と価格を引き上げて一気に売り抜ける
仕手筋が利益を得られる価格まで上昇するために、一時的な調整を行い流動性の高い株を増やし、
更に買い集めて価格を引き上げる「振るい落とし」を行います。(仕手筋の手法7の工程)
あえて調整を行う理由ですが、投資家心理を揺さぶり買わせるよう仕向ける・調整によって市場に流れる株の数を増やし仕手筋が購入するためです。
このような動きが起きることで、個人投資家は心理的に揺さぶられて更に購入を続け(提灯買い)価格上昇していきます。
仕手筋は振るい落としを何度か繰り返しながら、できる限り高値に引き上げて一気に売り抜きを行い大きな利益を得る戦略です。
一方、仕手筋の戦略を知らない・気付かなかった個人投資家は、ある日突然急落した市場で大きな損失を受けます。
仕手株を購入する気がなく、万が一巻き込まれそうな場合は、以下の3点を思い出し注視しましょう。
- 業績回復などの理由がないにも関わらず、じわじわと価格上昇している
- 一定期間少しずつ出来高が増えているが、特にサプライズがあるわけでもない状態
- 値上がり率・値上がり額・出来高上位ランキングにランクインしているものの、この時点でも特に理由がない
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過去の実例
主な仕手株といえば、以下4銘柄があげられます。
- 【8029】ルック
- 【4406】新日本理化
- 【8836】RISE
- 【8107】キムラタン
今回は2銘柄、ルック・新日本理化のチャートをご紹介します。
短期間で5倍の値上がりを記録【4406】新日本理化
過去に、仕手筋が株価を操縦して、株価が短期間で5倍以上に値上がった仕手株が存在します。
「新日本理化(4406)」の株価は2011年11月に600円ほど値上がり、2012年の3月頃には1297円の高値がつきました。
しかしその後に仕手筋が大きく売却して、2012円の10月には株価は200円台にまで下がったのです。
仕手筋は1年間で1,000円以上の価格変動を引き起こして、莫大なリターンを狙いました。
その後、2015年11月に新日本理化の株価操縦により仕手筋の3人が逮捕。
保有する株式の価格を意図的につり上げたなどとして、東京地検特捜部は17日、バブル期に仕手筋として知られた加藤●(日の下に高)容疑者(74)=東京都港区=ら3人を金融商品取引法違反(株価操縦)の疑いで逮捕した。
3人の逮捕容疑は共謀し、2012年2月15日~3月2日、当時大証1部上場だった「新日本理化」の株式について、大量に高値の買い注文を入れるなどの手法で、同社の株価を871円から1297円までつり上げ、取引が活発であるかのように装うなどした疑い。
関係者によると、加藤容疑者は1980年代以降に多額の資金を使って株式相場を動かした仕手集団の元代表。
捕まった仕手筋は運営しているWebサイトにより複数の銘柄における株価を不正につり上げていました。
総額60億円の売却益を得たと推定されています。
資金力のあるグループが大量に仕手株を売買するため、短期間で急激に株価が変動するのが特徴です。
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20倍もの急騰相場をとなった【8029】ルック
婦人服の老舗企業ルックは2002年から2003年にかけて特に大きな材料や業績アップ・新商品などの発表もしていなかったものの20倍もの急騰相場を記録しました。
大物仕手筋が仕掛けたとされる相場で、上昇率・下落率の激しい非常に珍しいチャートです。
2002年当時は、1株1,000円台で推移していたルックの株価ですが、2003年頃に一時10,000円を超える株価を記録し直後に急落しています。
そして、下落は止まらず、一時2,000円台でストップしたのち、2005年頃から再び1,000円台で横ばい傾向となります。
このように、仕手筋が準備を整えて仕掛けた場合には、仕手株が短期間に不自然なほど急騰するという特徴があります。
また、下落した後の動きも急激で、反発していません。反発しないということは、損切のタイミングを計る時間もないため大損しやすい状況です。
仕手株を見分けるには?
「株式投資でリスクを避けるために仕手株を見分ける方法が知りたい」
このように思う人もいるかもしれません。
個人投資家が仕手株に気づくのは難しいものの、以下のような見分け方に注意しながら分析することで、仕手株の購入リスクを回避しやすくなります。
仕手株以外の銘柄で取引したい方は、上記3つの特徴を把握しながら売買を進めましょう。
発行株式数が少ない
株式会社が発行している株式数が少ない場合は、仕手筋のターゲットにされる可能性があります。
発行株式数の少ない小型株や新興株式は、少ない資金力で株価をコントロールしやすくなります。
更に市場で流通する浮動株が少ない状態であれば、仕手筋が支配して株価操縦しやすい傾向です。
例:
- 発行株式数1,000万株
- 浮動株200万株
- 仕手筋が800万株まで購入できる資金力がある
一方、発行株式数が2億株を超える大型株などは、仕手筋でコントロールできる規模ではありません。
そのため、発行株式数の大きい銘柄を選ぶことが、仕手筋のリスクを避ける1つ目のポイントです。
具体的には発行株式数が5,000万株以下の小型株で、浮動株比率が30%未満の株式には注意しましょう。
株価や時価総額が低い
株価や時価総額が低い株式は、仕手筋によって株価をコントロールされやすくなります。
1株あたりの価値が低ければ買い集めやすく、仕手筋によって値動きの幅を大きくできます。
また、株価や時価総額で判断が付かない場合は、四季報などからボロ株(業績悪化中・赤字決算)かどうか確認してみるのがおすすめです。
ボロ株であればあるほど価値が低いため、仕手筋が買い集めやすく仕手株へと変化しやすい銘柄ともいえるのです。
特に、株価が100円以下の低位株が急激に値上がりした場合、仕手株である可能性もあるため購入は慎重に検討しましょう。
信用取引できる
信用取引ができれば、安く買って高く売るだけでなく、高く売って安く買う(空売り)ことでも利益を得られます。
仕手筋は株価をコントロールできるため、空売りでも利益を得られる・得たいものです。
そのため、発行されている株式数が少なく、信用取引が可能で株価の安い銘柄は仕手株として狙われる可能性が高くなります。
株式投資初心者の場合は信用取引を行わず、現物取引で売買を進めることが仕手株に巻き込まれない2つ目のポイントです。
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仕手株を買うのに最適なタイミング?
仕手筋がターゲットの株を買い集める段階で仕手株を買えれば、値上がりにより大きなリターンを得られる可能性があります。
仕手株を買うことを検討する最適なタイミングは以下の通りです。
- 株価の変動が偏るときに現れる太陽線がいきなり出現したとき
- 銘柄の出来高が減っても株価があまり下がらないとき
- 大量の売り注文が(仕手筋により)買われたとき
- 株の出来高が急増と株価の上昇が2日連続で発生したとき
上記の兆候はあくまでも参考にできる基準であり、必ずしも利益を得られるとは限りません。
タイミングが良くても多額の資金でいきなり個別株を買うのは避けることをおすすめします。
また、1回の損失で市場撤退を余儀なくされる可能性もあるため、自己資金の1%や5%など少額に抑えておくのが良いでしょう。
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売るのに最適なタイミング
仕手株の株価が上昇している状況でリターンを得るには、高値を追うよりも利益を確定することが重要です。
仕手株は一般的な上昇相場と違い天井を読むのが非常に難しいため、天井を狙うと失敗する可能性が高くハイリスクです。
仕手株を購入して急騰中の相場で利益を得るには、以下のようなタイミングで売ることがオススメです。
- 株価が上がり始めた日に大量の買い注文でストップ高となったとき
- 今まで注目を集めていなかったのに、急にメディアで買うことを推奨されたとき
- 売買量を示す出来高が数日で浮動株数を超えたとき
一般的な株式よりもリスクが高いのですから、不自然な動きがあれば株を手放すことが重要です。
リターンを重視して大きく損してしまうことを防ぎましょう。
あくまで損失を避けることを優先した上で、利益を得られるよう冷静な判断が必要です。
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仕手株を間違って買ってしまった場合の動き方
株式投資初心者もしくは、仕手株に興味がないものの仕手株を間違って買ってしまった場合は、すぐに売り注文を出して売却することが大切です。
また、仮に下落し始めていたとしても、なるべく早く損切をしましょう。
損切をためらう方もいますが、仕手株の下落時は急激かつ大きな変動となります。
そのため、反発を待っていたら大損をしてしまうことは必至。
できる限り早い段階で損切できれば、自己資金も残せますし次の投資に回すことも可能です。
塩漬け状態では、配当金も少なく自己資金も大幅に減少し、次回以降の投資ができない可能性もあります。
仕手株は上昇前の適正価格まで下がるだけですので、短期間に再び上がる見込みはありません。
仕立て株をネットで調べる新たな手法に注意
これまでの仕手筋は、大きな資金を用いて低位株を仕手株へ変化させる手法が一般的でした。
しかし、インターネットの普及とともに現れた、「ネット仕手筋」に要注意です。
ネット仕手筋とは、SNSやインターネット掲示板などで、株価を引き上げたい銘柄に関する情報発信・注目を集めて、高値で売り抜ける手法です。
ネット仕手筋によって引き上げられた低位株・ボロ株は、従来の仕手株と違いより急速に急騰・急落しやすい性質を持っています。
なぜなら情報がスピーディに広がり、一般投資家が集まるまでの時間が早くなった反面、
仕手株と気付かれやすく即売り抜ける投資家も多い傾向もあるためです。
これまでの仕手株よりも更に読みにくくハイリスクになっているため、初心者に限らず経験者も避けた方がいいでしょう。
すなわち、極短期間に急騰・出来高急増しているにもかかわらず、
特に根拠となるような理由が見あたらない銘柄には注意が必要です。
更に詳しく知る上でおすすめの書籍
仕手筋や仕手株について更に詳しく知った上で、その流れに乗って利益を得たい場合は専門書籍を読むことをおすすめします。
「仕手株・インサイダー株でがっちり儲ける コバンザメ投資術」(著者:高島ゆう)
こちらの書籍は、仕手筋やインサイダー株など不自然な上昇を起こす銘柄見つけて、合法的に利益を得るために必要な専門知識を載せています。
また、仕手株には、仕手筋の思惑や戦略などが反映されていて、
その動きを先読みするためのノウハウを著者の経験から紹介しているのが大きな特徴です。
仕手筋が仕掛けている仕手株を売買したい方は、
「仕手株・インサイダー株でがっちり儲ける コバンザメ投資術」にて専門知識を学んでみてはいかがでしょうか。
まとめ
資金力のある投資家グループが売買することで、急騰し急落してしまうのが、仕手株です。
値動きに合わせて売買することで大きなリターンを得られますが、タイミングを間違えると大きく損します。
仕手株の特徴や売買するタイミングを考慮して、リスク管理したうえで株式投資することがオススメです。
また、購入する気がない状況で仕手株のような銘柄(小型株)を見つけたら、なぜ株価が上昇・出来高が増加しているのか理由を調べた上で冷静に判断しましょう。
そして、明確な理由がなければ、別の銘柄を探すのがおすすめです。
以上、【仕手株とは?】特徴やリスクの高い銘柄を見つけ方・過去事例をわかりやすく解説!…の話題でした。