日本の株式市場には5つの取引所があります。
そして、各取引所にはいくつかの市場があります。
東京証券取引所の東証1部・2部をはじめとして、札幌証券取引所にはアンビシャス市場というものもあります。
その市場の中で、「マザーズ」という市場を聞いたことがありませんか?
マザーズは取引所の中でも最も規模が大きい東京証券取引所にある市場のひとつです。
市場によって特徴が異なり、マザーズも東京証券取引所の他の市場とは異なった特徴を持っています。
今回はその東京証券取引所のマザーズの特徴を他の市場と比較しながら紹介していきます。
Contents
東京証券取引所にある5つの市場
東京証券取引所には、以下の5つの市場があります。
市場第一部と市場第二部は大企業から中堅企業までが上場をしている市場で、東京証券取引所の中心となる市場です。
特に市場第一部は日本を代表する企業が数多く上場しているので非常に注目度が高いです。
ニュースなどでよく聞く日経平均株価は、この市場第一部に上場している企業の株価から算出されています。
TOKYO PRO Marketはプロ投資家だけが取引出来る市場になっています。
一般の投資家は売買することが出来ません。
そして「マザーズ」と「JASDAQ」ですが、これらには新興企業が多く上場しています。
マザーズやJASDAQは市場第一部や市場第二部と比べると上場審査基準が緩く、成長途中の企業でも上場しやすいからです。
これらの市場に上場する企業は、将来的に市場第一部や市場第二部へとステップアップすることを目的とすることが通常です。
マザーズは、近い将来の市場第一部へのステップアップを視野に入れた成長企業向けの市場です。
そのため、申請会社には「高い成長可能性」を求めています。申請会社が高い成長可能性を有しているか否かについては、主幹事証券会社がビジネスモデルや事業環境などを基に評価・判断します。
多くの成長企業に資金調達の場を提供するという観点から、その上場対象とする企業について、規模や業種などによる制限を設けていません。マザーズ上場後、多くの企業が市場第一部にステップアップしています。
(引用:日本取引所グループ「新規上場」)
上場審査基準を満たすと同時に市場変更する企業が毎年多く存在します。
モバイル端末向けの交流(ソーシャル)ゲーム開発などを手がけるエイチームは15日、東京証券取引所から1部市場への変更の承認を受けたと発表した。22日付で東証マザーズから変更する。今年4月にマザーズに上場したばかりで、約7カ月での1部市場への変更は史上最短となる。
マザーズとその他市場の上場基準
マザーズは上場審査基準が緩いと説明しましたが、ほかの市場とどのくらいの差があるのでしょうか。
マザーズを他市場の上場審査基準と比較してみたいと思います。
マザーズと市場第一部
上場審査基準で一番マザーズと差があるのが市場第一部です。
以下は比較表になります。
主なポイントとして、まず上場時に必要となる株主数ですが、東証一部では2200人以上を見込めなければなりません。
それに対してマザーズは上場時に200人以上を見込めるなら上場を認められてしまいます。
時価総額も市場第一部は250億円以上必要なのに対して、マザーズ上場に必要なのは10億円あれば、基準をクリア出来ます。
他にも市場第一部では純資産の額や利益の額についての基準があります。
しかし、マザーズにはそれらがありません。
このように上場審査基準を市場第一部と見比べてみると、かなり緩いということが理解していただけるのではないかと思います。
マザーズとJASDAQの違い
東証マザーズと同様に、新興企業が上場する先として、「JASDAQ」があります。
それではマザーズと同様に新興企業の多いJASDAQの上場審査基準はどうなっているのでしょうか。
第一に大きな違いとして、JASDAQにはスタンダードとグロースの2つがあり上場審査基準が異なる事があげられます。
グロース市場は、成長性をより重視しており、現在の業績が赤字でも上場が可能です。
株主数200名以上、時価総額5億円以上という条件を満たせば、上場審査基準を満たすのです。
一方でスタンダード市場は一定の事業規模と安定性を求められ、グロース市場の上場基準に加え、
純資産額2億円以上、直近の利益が1億円以上あるいは時価総額50億円以上が必要となり、基準が厳しくなります。
マザーズとJASDAQには、上場審査基準に細かい差異があります。
マザーズには、流通株式数の基準や事業継続年数についての基準など、JASDAQにはない基準があります。
マザーズやその他の市場の上場会社数
それぞれの市場での上場数は
市場第一部や市場第二部とマザーズでは上場審査基準に大きな差がありました。
さて、上場している会社数にもその差はあるのでしょうか。
2019年4月末日時点の上場数を見てみると、マザーズに上場している会社数は286社でした。
他の市場の上場会社数はどうなっているかというと、上図の通り、市場第一部が2141社、市場第二部が492社、JASDAQのスタンダードが678社でグロースが37社、TOKYO PRO Marketが30社となっています。
市場第一部に比べてマザーズやJASDAQの方が上場基準は緩いですが、市場第一部の市場変更条件を満たした会社はそちらへ移行してしまいます。
従って、マザーズは新規上場が多くても上場会社数はあまり増えることがなく、市場第一部はどんどん増えるためこのような数字になっています。
そしてマザーズとJASDAQの差ですが、これは歴史の差が上場会社数に表れています。
マザーズが1999年に始まった割と新しい市場なのに対して、JASDAQは1963年から始まっています。
JASDAQには「日本マクドナルドホールディングス」や「東映アニメーション」など、
時価総額が数千億円以上あるにも関わらず市場変更をせずに留まり続ける銘柄も多くあります。
東証マザーズの上場廃止基準は?
マザーズ市場においては、次の基準にあてはまると、上場廃止になります。
株価が、上場後3年を経過するまでに、新規上場のときに公募の価格の1割未満となった場合において、9か月(所定の書面を3か月以内に提出しない場合は3か月)以内に当該価格の1割以上に回復しないとき
(引用元:日本取引所グループ)
上場後も、株価が期待を越えられず低調に推移したまま戻らないと、マザーズから上場廃止になってしまいます。
マザーズの中心となる業種
マザーズに上場している会社はどのような業種が多いのでしょうか?
2019年4月末時点のデータを見てみると、最も多い業種は情報・通信業で96社でした。
次に多いのがサービス業の91社で、この2つの業種でマザーズ銘柄の約3分の2を占めています。
他の市場ではどうなっているかというと、市場第一部ではサービス業が最も多く211社。
次いで情報・通信業が209社。
この2つの業種が多いのはマザーズと変わりありませんが、全銘柄に占める割合は2割弱ほどしかありません。
これからも分かる通り、マザーズは情報・通信業やサービス業の数がとても多く、これらの業種が中心の市場と言えます。
東証マザーズの時価総額上位銘柄~メルカリが1位です~
東証マザーズの時価総額上位銘柄とは
マザーズは情報・通信業やサービス業の割合が高いという事が分かりました。
さて、時価総額上位銘柄はどうなっているのでしょうか。
こちらも2019年5月17日時点のデータを見てみると、1位は情報・通信業のメルカリで4,388億円でした。
順位 | コード | 市場 | 名称 | 取引値 | 発行済株式数 | 時価総額(百万円) |
1 | 4385 | マザーズ | (株)メルカリ | 2,927 | 149,935,417 | 438,861 |
2 | 4592 | マザーズ | サンバイオ(株) | 3,860 | 49,733,223 | 191,970 |
3 | 2121 | マザーズ | (株)ミクシィ | 2,297 | 78,230,850 | 179,696 |
4 | 3993 | マザーズ | (株)PKSHA Technology | 6,190 | 26,793,600 | 165,852 |
5 | 3479 | マザーズ | (株)ティーケーピー | 4,925 | 33,171,600 | 163,370 |
6 | 4425 | マザーズ | Kudan(株) | 18,470 | 6,906,600 | 127,565 |
7 | 4565 | マザーズ | そーせいグループ(株) | 1,638 | 76,375,936 | 125,104 |
8 | 6027 | マザーズ | 弁護士ドットコム(株) | 5,450 | 22,234,500 | 121,178 |
9 | 4384 | マザーズ | ラクスル(株) | 3,620 | 27,701,800 | 100,281 |
10 | 4382 | マザーズ | HEROZ(株) | 13,030 | 6,971,914 | 90,844 |
2位は医薬品のサンバイオで1919億円でしたが、3位には情報・通信業のミクシィが1796億円で入っています。
そして4位にはまたしても情報・通信業のPKSHA Technologyが1,658億円で入りました。
東証マザーズ市場で、今後の注目株・テーマは?
上記のように、マザーズ銘柄の中で時価総額の上位を占めている業種は、情報・通信業が多く、それだけ高い成長が期待されています。
実際に、2019年には、オンライン英会話を提供するレアジョブ(6096)や、
ネット広告やアプリ事業が提供するホープ(6195)が、株価上昇10倍以上を達成し、注目を浴びています。
レアジョブ
(出典:ヤフーファイナンス)
220円(2019年1月)の安値から、3125円(2019年12月)まで新調し、1年間で最大約14倍に上昇しました。
ホープ
(出典:ヤフーファイナンス)
922円(2019年1月)だったところから、12月には11,400円まで上昇し、上昇率は最大約12倍になりました。
2020年以降も、ITを活用したサービスを展開する企業の成長が期待できます。
また、これまで株価上昇率10倍以上を達成した銘柄の特徴として、
投資時の株価が500円以下の「低位株」かつ時価総額200億円以下の「時価総額の低い株」が挙げられます。
この条件から投資妙味のありそうな銘柄を探す際に、上場したばかりの企業だと、まだ値下がりリスクが高いため、
上場後3~4年程度たっており、ある程度株価が下落しきっている企業の中から選ぶと、更に10倍株を探しやすくなります。
当然リスクの高い投資にはなりますが、1年で資産が10倍に上昇すると考えると、充分投資のうまみはありますので夢が膨らみますね。
東証マザーズ指数
マザーズには他の市場と同様に株価指数があり、それが東証マザーズ指数です。
これはマザーズに上場している全銘柄を対象にしたもので、浮動株ベースの時価総額加重型の計算方式で算出されます。
リアルタイムの指数は日本取引グループ「株価指数リアルタイムグラフ – 東証マザーズ株価指数」で確認ができます。
東証マザーズ指数は2003年9月12日から始まり、この日の時価総額を「1000」とした時にどれだけ増減したかがわかるようになっています。
マザーズ銘柄の流れが分かるだけでなく、これを利用した先物商品も2016年から始まっているので投資対象として利用することも出来ます。
注意しなければならないのは、この指数が時価総額加重型だという点です。
マザーズでは時価総額の上位銘柄が浮動株調整後の時価総額シェアが1割近くあるということもあります。
時価総額上位銘柄の動きで大きく指数が変動する可能性があります。
これは他の市場の株価指数と比べてもはるかに大きい数字です。
マザーズ指数を見る時は時価総額上位銘柄の動きもチェックしておく必要があります。
東証マザーズcore指数
マザーズ市場に関連して、東証では「東証マザーズcore指数」というものを算出しております。
東証マザーズcore指数とは、時価総額・売買状況・利益・配当などを総合的に鑑みて、
東京証券取引所が選定した、東証マザーズを代表する15銘柄で構成されています。
2020年2月現在、以下の15社が選出されています。
- ミクシィ
- ラクス
- そーせい
- JIA
- ユナイテッド
- エリアリンク
- ベイカレント
- アスカネット
- アステリア
- ACCESS
- サマンサタバサ
- アドウェイズ
- ネットイヤーグループ
- エヌ・ピー・シー
- フィンテックグローバル
この構成銘柄は、毎年10月に変更されます。
まとめ
他の市場と比較してみると、マザーズはかなり特徴のある市場だという事が分かっていただけたかと思います。
新興企業が多いため、リスクの高い銘柄が多いのは間違いないものの、
中には1年で約10倍も株価が上昇する可能性があるなど、大化けする銘柄も生まれやすい市場なので、
投資対象として面白い市場と言えるのではないでしょうか。
以上、【東証マザーズとは?】市場の特徴と上場の基準・時価総額上場銘柄を紹介!…の話題でした。