世界的化学・電気素材メーカーである3M。電気・電子分野から医療機器、文房具に至るまで、数多くの商品を生み出しています。
セロハンテープを発明したのもこの会社です。
商品のみならず、経営にも数々のユニークな特徴があります。
経営学者の間では研究対象にされることも多いスリーエムの業績や株価指標から、今後の見通しを予想してみましょう!
■ 投資判断:
配当目的で長期投資するなら買い。ただし、中国市場の不透明感が否めず、為替動向も不安定。
しばらくは冴えない動きをすると想定される。
■ 業績推移:
▷ 売上・利益ともに比較的安定しているが、今期は1-3月が全部門で減収減益となり、通期も見通し引き下げ。
▷ 原因は中国市場での逆風、為替、自動車や家電市場の弱さ。
■ 株価指標:
▷ PERでは17倍ほどになっており、過去水準に比べやや割安感あり。
▷ 配当利回りも3.5%超えでまずまず魅力的。
そもそも3Mとは?
3Mは、電気・電子分野から文房具に至るまで、幅広い事業分野を持つ世界的素材メーカーです。
3Mの製品には、具体的に以下のようなものがあります。
- エレクトロニクス
電子機器や半導体、自動車部品の周辺部材を扱っています。具体的には、ディスプレイの材料や電子用接合材料、絶縁テープや両面テープなどがあります。
- 業務用ソリューション製品
商業施設や工場、飲食店向けに様々な製品を扱っています。具体的な製品は、たわしやモップ、滑り止めのテープ、フロアマット、梱包用テープなど、多岐に渡っています。
- ヘルスケア関連
主に医療関係機関向けの製品を扱っています。聴診器やサージカルテープ、消毒用ローション、歯の矯正器具なども扱っています。
個人向けにも、あぶらとりフィルムやスキンケア製品、アイパッチや医療用テープなどを扱っています。
- セーフティ
人や環境を守るための様々な製品を扱っています。代表的なものでは、粉塵マスクや防毒マスク、衛生モニタリング製品や道路標識用製品、車両反射材や水質保護用のフィルターなどがあります。
- 自動車・交通関連
救急車や消防車などの特殊車両や鉄道向けの製品を中心に扱っています。テープや接着剤、反射材、グラフィックフィルム、交通安全関連製品などがあります。
- 製造関連
重工業や木工業から飲食業向けまで、様々な製造業向けに多岐に渡る製品を提供しています。製品は、接着剤や衛生用品、研磨剤など、取引先業種に応じてたくさんの種類を扱っています。
- コンシューマー
いわゆる事務用品を取り扱っている分野です。ふせん、メモ、ラベル、カード、粘着テープなどの文房具をはじめ、DIY用製品や個人向け医療用製品などを幅広く提供しています。ポストイットも同社の製品です。
【はじめは鉱業!さまざまな分野に派生させ今や商品数5万点以上!】
3Mは、Minnesota Mining Manufacturingの略です。
これは、ミネソタの鉱業の会社という意味です。
同社は鉱業からはじまった企業なのです。
鉱業で培った技術を多くの分野に派生させ、コングロマリット化を実現しました。
3Mは経営手法にも特徴があり、経営学者の間でも研究題材になることが多いユニークな企業です。
特に有名なのが「15%ルール」。
これは、勤務時間のうち15%は、会社から与えられた仕事以外の業務をしてもよい」というルールです。
近年は日本でも総合商社の丸紅が取り入れていますね。
この自由な時間こそが、3Mの世界で愛される製品たちを多数生み出しているのです。
連続増配60年の配当貴族銘柄
3Mは連続増配企業としても有名です。
配当金は基本的に利益余剰金から支払うため、増配を続けるには利益を伸ばし続けなければなりません。
その連続増配を60年続けているということは、不景気下でもしっかり稼ぐことが出来る会社だと判断する一種のバロメーターなります。
超配当貴族銘柄であるP&Gの63年連続記録に、あと一歩という素晴らしい記録となっています。
ちなみに以下は1970年からの四半期毎の配当金の推移です。
素晴らしい配当金の推移となっています。
業績推移
過去6年の決算を見ると業績は売上・利益ともにあまり変動がありません。
Dec-14 | Dec-15 | Dec-16 | Dec-17 | Dec-18 | Dec-19 | |
売上高 | 31821 | 30274 | 30109 | 31657 | 32765 | 32,416.47 |
営業利益 | 7135 | 6946 | 7027 | 7788 | 7207 | 5,789.00 |
税引前当期利益 | 7026 | 6823 | 7053 | 7548 | 7000 | |
当期利益 | 4956 | 4833 | 5050 | 4858 | 5349 | 4,979.22 |
ほぼ横ばいの推移ですが2019年期は減収減益の予想となっています。
4月の決算発表では1-3月期は全ての部門で減収減益となり、アナリスト予想を下回りました。
さらに、通期の予想を引き下げています。
合わせて、米中貿易戦争などの影響による中国市場の不調や、自動車・家電分野の市場の弱さなどを理由として2000人の削減を発表しています。
これを受けて株価は13%も急落。
ブラックマンデー(暗黒の月曜日)以来の下げ幅となりました。
フッ素加工用の化学薬品が水路を汚染したとして、ニューハンプシャー州が同社を訴えていることも悪材となっています。
為替動向もあまりよくありません。
投資判断を「強気」としていたアナリストが「中立」に見通しを引き下げたことも株価の重荷になりました。
7月に発表された4-6月期の決算は、予想ほど悪いものではなかったことから株価は約5%急伸しました。
しかし、業績の見通しは暗く軟調な値動きで終始しています。
PER水準は不人気化により過去平均より低い水準
それでは業績に対して現在の株価はどう評価されているのでしょうか。
2019年7月では、米国のPER平均は20.4倍、世界平均は16.6倍となっていますが。
PERは業種やその企業ごとに妥当な水準が違うため、PERを比較する際は、その企業の過去のPERの推移や、同業他社などとの比較をします。
下の表は3MのPERの推移です。
過去6年間で見ると、20~25倍の間安定しています。
Dec-14 | Dec-15 | Dec-16 | Dec-17 | Dec-18 | Dec-19 | |
配当(ドル) | 3.42 | 4.1 | 4.44 | 4.7 | 5.44 | 5.68 |
配当利回り | 2.08% | 2.72% | 2.49% | 2.00% | 3.05% | 3.19% |
現在の同社のPERは17倍ほどまで下がっています。
過去の水準に比べると株価が少し割安に評価されているということになります。
株価はEPS×PERで表されます。
3Mの予想EPS は9.51ドルです。
現在株価は160ドルほどにところで推移しています。
仮にPERが20倍まで戻るとすれば株価は190.2ドルですので、30ドル程度の上昇余地があるということになります。
配当利回りは高水準
次に配当利回りを見て行きます。
配当利回りは、投資額に対する年間配当金の割合を示します。
3Mは60年に及ぶ増配記録と直近の株価の下落によって配当利回りは3.5%強となっています。
日本企業では2%弱のところが多いことを考えると、魅力的な水準です。
Dec-14 | Dec-15 | Dec-16 | Dec-17 | Dec-18 | Dec-19 | |
配当(ドル) | 3.42 | 4.1 | 4.44 | 4.7 | 5.44 | 5.68 |
配当利回り | 2.08% | 2.72% | 2.49% | 2.00% | 3.05% | 3.51% |
まとめ
魅力的な配当と安定感のある業績で投資家から人気の高い3Mについて見てきました。
3Mは世界中で事業を展開しており、中でもアジア太平洋地域での売上が約3割、そのほとんどが中国です。
そのため、現在勃発している米中貿易戦争による中国市場での逆風の影響はかなり大きいものとなっています。
それに加えて不安定な為替動向や同社工場の訴訟問題など、業績や株価に悪影響を及ぼすであろう材料も多くあり、
大規模な人員削減策を打ち出しています。
しばらくは同社の株価もさえない展開が続くでしょう。
ただし、同社の製品の多くは世界的に強い競争力を持つものが多く、特許も4万点以上取得しています。
4-6月期の決算でも、アナリスト予想が実際の結果に比べかなり悲観的だったことを考えると、
現在の株価もやや安く評価されすぎている可能性もあります。
また、株主還元にも積極的であり、業績悪化も減配が必要というほどではないと思われます。
そのため、すぐに大きな値上がりは期待できないかもしれませんが、
配当金目当ての長期保有前提で持つということであれば、いい押し目買いのチャンスになるかもしれません。
■ 投資判断:
配当目的で長期投資するなら買い。ただし、中国市場の不透明感が否めず、為替動向も不安定。
しばらくは冴えない動きをすると想定される。
■ 業績推移:
▷ 売上・利益ともに比較的安定しているが、今期は1-3月が全部門で減収減益となり、通期も見通し引き下げ。
▷ 原因は中国市場での逆風、為替、自動車や家電市場の弱さ。
■ 株価指標:
▷ PERでは17倍ほどになっており、過去水準に比べやや割安感あり。
▷ 配当利回りも3.5%超えでまずまず魅力的。
以上、【MMM】60年連続増配の配当貴族企業『スリーエム』(=3M)の今後の株価を予想!業績見通しは不透明だが長期投資に妙味あり?…でした。
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