日本には、三菱UFJ銀行や三井住友銀行をはじめとする「メガバンク」が全国展開をしています。
しかし、各地方を基盤にする「地方銀行」も数多く存在します。
地域に根差した経営を行い、場所によってはメガバンクよりも利用者が多いところもあります。
そんな地方銀行の中で、静岡を基盤にもち、首都圏にも店舗を広めている「スルガ銀行」という地銀があります。
このスルガ銀行が、地方銀行に激震を走らせる事件を起こしてしまいます。
投資用不動産をめぐる不正融資問題で揺れたスルガ銀行は26日、定時株主総会を開いた。怒号が飛ぶなか、新たな経営体制が承認された。わずか2カ月前には、不正やその疑いのある融資が1兆円規模と判明。全てを開示する覚悟を固めた経営陣は、信用不安を懸念する金融庁と激論を交わしていた。
今回は、そんなスルガ銀行が起こした事件の全貌とその後について、徹底解説していきます。
目次
スルガ銀行とは
本題に入る前に、「スルガ銀行」とはどのような銀行なのでしょうか?
スルガ銀行の創業は、明治時代にまで遡ります。
静岡を基盤にしつつ、徐々に店舗を拡大。
現在では全国132店舗を展開する大手の地方銀行となっています。
スルガ銀行は、「インターネット支店」も開いており、地域に店舗がなくても、スルガ銀行の口座を開けるようにしています。
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スルガ銀行事件の全貌
スルガ銀行が起こした事件は、「不正融資」と呼ばれるものです。
銀行は融資を行う際、融資先の返済能力が十分にあるか、厳重な審査を行います。
返済能力が不足していると、貸したお金が戻ってこない可能性があるためです。
スルガ銀行は、この融資審査の際に、申込者の書類を改ざんしました。
なぜこのような事件が起こったのか、順を追って確認していきましょう。
シェアハウスへの融資
スルガ銀行は、「スマートデイズ」と呼ばれる不動産管理会社と提携しておりました。
このスマートディズは、「かぼちゃの馬車」と呼ばれる女性向けシェアハウスを次々に建築。
そして、それを売りさばいていました。
シェハウスの部屋のオーナーをどんどん増やしていったのです。
スマートディズは、シェアハウスを売る際に、「サブリース契約」という形態をとりました。
「サブリース契約」とは、不動産会社側がオーナーから部屋を借り上げます。
そして、それを代行して管理、運営して賃貸収入を得た後、サブリース賃料としてオーナーへ利益を還元する制度です。
サブリース契約を結ぶことで、オーナーサイドは賃貸の管理から解放されます。
つまり、手間をかけずに賃貸収入を得ることができます。
オーナーは、サブリース契約相手に手数料を支払う必要がありますが、手数料を払ってでも「楽をしたい」というオーナーが多かったのです。
サブリース契約自体は、合法的な契約ですので何も問題はありませんでした。
ただ、スマートディズは、シェアハウスを建築する際に、建設会社から「コンサル料」として建設費の約50%を建設会社から受け取っていました。
これは「キックバック」と呼ばれる慣習で、マンション建築の際は良く行われることなのです。
しかし、そのパーセンテージはせいぜい2~3%ほどです。
50%ものキックバックは、本来は行われません。
建築費の半分が返ってくる訳ですから、その建築物はもっと安い費用で建てられたということです。
キックバック分は、スマートディズの元へ渡ります。
オーナー側には、キックバック分は還元されません。
したがって、オーナーサイドは、本来もっと安く買えた不動産を「高く」買わされたのです。
シェアハウスが赤字化する
このように、建築の段階で詐欺まがいなことが行われていたのですが、問題が深刻化するのはその後です。
スマートディズが運営するシェハウスに、入居者が集まらず、空室が目立つ状態になったのです。
スマートディズは、サブリース契約に沿って、オーナーに毎月一定額を支払う必要があります。
空室が多いと、その費用を賄うことができなくなります。
その不足分を補うために、また新しいシェアハウスを建築して、キックバック分をオーナーへの支払いに充てるという「自転車操業」状態に、スマートディズは陥っていきました。
そして、スマートディズはオーナーへの支払いができなくなり、2018年4月より破産申請の手続きに入ります。
女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」を運営していたスマートデイズ(東京・中央)は15日、東京地裁より破産手続きの開始決定を受けた。民事再生法の適用を申請していたが、4月18日に東京地裁から棄却されていた。
所有者から建物を一括で借り上げて女子学生らに転貸する「サブリース」を展開していたが、事業が行き詰まり、今年1月から所有者への賃料の支払いが停止した。負債総額は2018年3月末時点で約60億円。
(引用:スマートデイズ、破産手続き開始)
スルガ銀行が融資を行っていた
スルガ銀行は、スマートディズのシェアハウスを購入するオーナーに対して、融資を行っていました。
この際、スルガ銀行の担当者は、オーナーの支払い能力が不足していた際、その情報を改ざんして書類を作成して、融資を通していたのです。
スルガ銀行が単体で、融資を行っていたら、このような書類改ざんを行うメリットは何もありません。
焦げ付く可能性が高い融資を自ら行う銀行は不自然です。
では、なぜスルガ銀行が書類改ざんを行ってでも融資を断行したのか。
それは、スマートディズがサブリース契約をして、一括してシェアハウスを管理していたからです。
スルガ銀行が、各オーナーの経済状態を管理する必要がなく、スマートディズの状態のみを追えばよかったため、多少オーナーの経済力が低くても、確実に回収できる見込みがあったからです。
ただ、スマートディズの経営状態が悪化してる状態を見て、スルガ銀行は融資の方針を転換します。
スマートディズから、賃料を受け取れなくなったオーナーたちは、自己破産、もしくは自己破産直前の状態に追い込まれました。
スマートディズの破産申請手続きを受けて、スルガ銀行の不正融資が明るみにでます。
金融庁はスルガ銀行に対して、6か月間の間、投資用の不動産に対する融資を停止する命令を出しました。
同時に、業務改善命令もスルガ銀行に出して、経営体制の刷新を求めました。
これを受けて、当時の会長、代表取締役などの経営陣は退き、新しい経営陣が整えられました。
スルガ銀行の経営体質の問題
不正融資が起こってしまった原因として、スルガ銀行の経営体質が挙げられます。
上司から部下に対する「パワーハラスメント」が常態化していることが明らかになり、時には人間性を否定するような言葉を使って、部下を追い詰めていたとされています。
営業成績を出せなければ、命を絶つよう命令した社員がいることも分かっています。
このような経営体質だと、融資担当は「何が何でも」融資を行うようになる可能性があります。
不正をしてでも、融資を進めるリスクが高くなるのです。
これは、スルガ銀行に限った話ではありません。金融業界全体に言えることです。
企業であるため、利益を追うことは非常に大切ですが、人間性を否定するような言葉を投げるのはお門違いですね。
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まとめ
スルガ銀行は、老舗の地方銀行でありながら、不正融資に手を出してしまいました。
スマートディズと呼ばれる不動産管理会社と提携して、書類の改ざんを行うことで、利益をあげていたのです。
スマートディズの経営が悪化したことをきっかけに、スルガ銀行は融資の方針を転換します。
しかし、時はすでに遅く、スルガ銀行の不正融資が明るみになりました。
金融庁から一部業務停止命令と業務改善命令が出され、スルガ銀行は経営体制の刷新を求められます。
現在は、新しい経営陣の下で、立て直しが進められていますが、簡単に信頼を取り戻すことは難しいでしょう。
地方銀行は、ただでさえ経営難が深刻化しているので、不正を起こしてしまうと、そこから立ち直るのは険しい道となります。
今後、スルガ銀行がどのような道を歩んでいくのか、注視していかねばなりませんね。
以上、【かぼちゃの馬車事件】地銀に激震が走った!スマートデイズ・スルガ銀行不祥事の全貌とその後・現在について!…でした。