安定株主という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
上場株式会社の株は市場で売買されているため誰でも簡単に株主になることができます。
ですので、株主の中にも様々な株主がいるのです。
今回はそんな不特定多数の株主の中でも重要な役割がある安定株主について紹介します。
安定株主について知ることで、企業が安定して経営を続けていけるのかといったことや、
買収される可能性について分析ができるようになります。
株式投資をしている方であれば、ぜひ最後まで読んでいただき安定株主について知ってください。
Contents
安定株主とは?
安定株主とは長期的に安定して株を保有する株主のことです。
通常、株主は株式を売買して利益を得ることを目的としますが安定株主は違います。
安定株主は一般的な株主と異なり株式を売買して利益を得ることを目的としません。
その為、株価の変動や企業の業績変化などがあったとしても株式を保有し続けます。
安定株主となるのは多くの場合その企業と関係の深い企業、
例えばグループ企業やメインバンクである銀行などであることが多いです。
そして、安定株主が保有する株を、「特定株」と呼びます。
安定株主のメリット
日本では古くから安定株主が重要視されており、現在でも安定株主政策は多くの企業で行われています。
長期的な安定経営の助けとなる
安定株主が必要とされている理由は企業の長期的な安定経営のためです。
企業経営が安定して行われるためには頻繁に株式売買を行って短期的な利益を目的とするヘッジファンドなどが経営に影響を及ぼすような、
状況は好ましくないという考え方があります。
企業もヘッジファンドなどの投資家も利益を追求するという目的は同じです。
しかし、ヘッジファンドは短期的な利益を優先するために時として企業側の長期的な戦略を意見が一致しないことも多いのです。
企業がより安定した経営を行うためには経営を阻害する敵対的な株主に影響を及ぼすような権利を極力与えないようにするという考え方から安定株主は生まれました。
敵対的企業からの防衛策
安定株主が存在することで、常に一定割合の株は友好的な企業が保有していることになります。
敵対的な企業が株式を大量に購入して経営に口出ししようとしても市場に出回っている株式では数が足りないという状況になるのです。
敵対的企業が買収を仕掛けてきたとしても安定株主がいることで買収を防衛することができます。
一定割合の株式を友好的な企業に保有してもらうことで、
敵対的な投資家が大株主となることを防ぐというのが安定株主の目的でありメリットとなります。
安定株主工作とは?
安定株主工作とは敵対的企業から自社を守るために友好的な企業に自社株式を保有してもらうことです。
安定株主工作を行うことで、安定株主ができますので長期的に安定した経営を行うことができるとされています。
日本では安定株主工作として「株式持ち合い」が長い間利用されてきました。
株式持ち合いとはグループ企業など友好的な企業同士で互いに株を持ち合うよう状況のことです。
日本では古くから株式持ち合いが行われています。
1990年台の株式持ち合い比率(市場全体の時価総額に占める株式持ち合い株の比率)は30%程度およそ3分の1程度は持ち合い株という状況でした。
昨今では、株式持ち合いの解消が進んでおり持ち合い比率は低下しています。
株式持ち合いが盛大に行われていた理由には株式を持ち合うことで効率的に安定株主をつくることができるという点があります。
また株式持ち合いをすることで両方の企業が安定株主となりどちらかが株を売却すればもう一方も売却する可能性が高くなります。
ある意味で安心してお互いが安定株主でい続けることができるのです。
日本で多くの企業で株式持ち合いが行われていたのにはこういった理由もあります。
更に、安定株主や株式持ち合いは企業間の関係を強化することにも繋がります。
グループ企業間や取引先との関係性強化といった点も安定株主のメリットです。
安定株主のデメリット
安定株主がいることで安定した経営を行える点や敵対的買収から防衛できるなどのメリットがある一方でデメリットも存在します。
外部からの厳しい目が無く経営が非効率になる
安定株主政策を取ることで株主は友好的な投資家がほとんどになります。
経営陣に対して意見を言うような株主はいなくなります。
経営陣側は敵対的勢力に脅かされることなく安定した経営を行うことができます。
しかし、経営陣に批判的な目を持つ投資家もいなくなってしまいます。
経営が非効率になる可能性がある点はデメリットです。
経営陣側も結果を出さなければ批判される、場合によっては退陣を求められるというような緊張感がなくなります。
全力で企業経営に当たらないという可能性もあります。
経営が保守的になり、企業成長が止まってしまう
通常、投資家は企業に対して成長を求めます。
企業成長により企業の価値が高まれば株価も上昇するからです。
しかし、安定株主政策を取ることで企業に積極的に成長を求める株主がいなくなります。
企業側はリスクを取って成長するより保守的な経営を行うようになる可能性があります。
成長のための投資をしなくなり、企業成長が止まってしまうと将来的には企業価値が減っていき株価も下がってしまいます。
結果的には株主にとってもマイナスとなる可能性があるのです。
持ち合い株式が減少している2つの理由
前述のとおり1990年台には企業同士が株式を持ち合う株式持ち合い比率は30%程度ありました。
しかし、現在の株式持ち合い比率は10%を下回っています。
株式持ち合いの解消が進んでいる理由は主に2つです。
適正な株価形成
安定株主は企業の株式を大量に保有します。
そうすると、市場に出回る株式が少なくなります。
浮動株が少ないと大量の買い注文あるいは売り注文があった場合にそれを消化できずに株価が大きく変動してしまうのです。
このことにより株価が適正な企業価値から乖離してしまう点が問題視されてきました。
バブル期に株価が暴騰したのも、株式持ち合いによる浮動株の少なさが一つの原因であるとも言われています。
株式市場で円滑な取引が行われ、適正な株価形成が行われるように株式持ち合いの解消が進められてきました。
コーポレートガバナンス
ここ数十年で日本の株式市場にも海外投資家が進出しました。
日本独自の株式持ち合いというシステムが投資家の利益を阻害していると批判を浴びるようになりました。
結果的に2015年に導入されたコーポレートガバナンスによって株式持ち合いを行う場合は投資家に対して合理的な理由を説明することが必要となりました。
また、会計基準の変更により「益戻し」と呼ばれることが行えるようになりました。
「益戻し」は利益が出ている持ち合い株を一旦売却してすぐに買い戻すことで利益計上するという手段ができなくなりました。
『益戻し』の廃止も株式持ち合いの減少に一役買っています。
浮動株と特定株の違いとは?浮動株が少ないメリットはある?
ここでは、浮動株とは何かをもう一度しっかり確認し、浮動株が少ないとどのようなメリットがあるのかについて見てみましょう。
浮動株と特定株の違いとは?浮動株の詳細な定義
浮動株とは、安定株主が持つ「特定株」と逆の存在であり、だれもが保有できる株式のことです。
その為、トレーダーによる売買の対象となります。
四季報による浮動株の正式な定義は、「1単元以上、50単元未満の株主が保有する株式数」です。
一方、東証による定義には、上記の四季報による定義にプラスして、「大株主上位10名の保有株以外の株数」があります。
ただ、四季報と東証でそれぞれ独自に各銘柄の浮動株比率を評価しており、その数値には若干のずれがあります。
どちらかというと四季報の数値の方が実態に近く、どちらも過小評価気味と言われています。
その為、四季報や東証の浮動株比率を見る際には、注意が必要です。
浮動株が少ない場合のメリットとは?
企業としては、浮動株の比率が高いよりも、特定株の比率が高い方が良いとされています。
なぜなら、浮動株の比率が大きいと、トレーダーが株を買い占めて企業を乗っ取ることも可能だからです。
また、安定株主が企業の銘柄の方が、株価が安定する傾向があります。
実際に、浮動株の比率が高いとPER(株価収益率)はどうなるのかを、実際の株価から調べた結果を見てみましょう。
2018年4月の東京証券取引所の3,858銘柄から調べた結果をピックアップしたものが、以下です。
左が浮動株比率、右が平均PERです。
20%以下 | 30.94 |
---|---|
20%超30%以下 | 22.23 |
30%超40%以下 | 19.91 |
40%超50%以下 | 19.54 |
50%超60%以下 | 17.36 |
60%超70%以下 | 18.04 |
70%超80%以下 | 17.38 |
80%超 | 20.98 |
この結果を見ると、浮動株比率が上がるほど、株価収益率が下がるという傾向がわかります。
ただし、浮動株比率が80%を超えたデータだけ例外的に高く、別の要因があることが考えられます。
このように、データからも浮動株が少ないと、利益を出しやすいということがわかります。
浮動株が少ない銘柄の特徴
浮動株が少ない企業においては株価の値動きが大きくなる傾向があります。
例えば現在筆者が投資をしている「サイオステクノロジー』を例に説明していきたいと思います。
サイオステクノロジーの現在の発行すみ株式数は8,874,400株となっています。
しかし、安定株主とみられる株主が63.55%も存在しています。
つまり、浮動株比率は36.45%なので3,234,718株となっています。
現在の株価は680円なので浮動株時価総額は2,199,608,240円(約22億円)となっています。
非常に小型株なので出来高が大きくなると値が飛びやすく以下のように頻繁に値が飛んでいます。
また株価が一度動きだすと値動きが激しく簡単に数十%ときには数100%の上昇や下落となります。
大きな利益を狙いたい方は浮動株時価総額が低い銘柄を狙うというのも一つの有効な手となってきます!
まとめ
いかがでしたでしょうか?
今回は安定株主について紹介しました。
最後に重要点をまとめますと
- 安定株主は株価の変動に関わらず長期的に株を保有する安定株主
- 日本では安定株主工作として株式持ち合いが活発に行われていた
- 安定株主がいることで、企業は敵対的な投資家の影響を受けることなく安定した経営を行うことができる
- 安定株主政策は企業に批判的な投資家を除外するため、効率的な企業経営の妨げとなる可能性がある
- 株式持ち合い比率は年々減少しており、現在では10%を下回る水準となっている
- 浮動株時価総額が低いと値動きが軽いので利益を出しやすい(損失も出やすい)
の5点があげられます。