8月9日上場予定のIPO「ステムリム」。
ステムリムは仮条件が大幅に引き下げられたことからもわかるように、参加しやすいIPOになっています。
今回はステムリムとはどのような企業なのかを事業内容や業績をチェックしながら詳しくご紹介していきたいと思います。
また、気になる初値予想やIPOでの購入情報もご紹介していきます。
Contents
ステムリムが非常事態宣言の理由
ステムリムの目論見書では、上場承認時の想定発行価格は2,370円~3,730円でした。
しかし、この仮条件が1,000円~1,700円と大幅に引き下げられました。
これは、機関投資家の評価が低かった結果だと考えられます。
よって、機関投資家に不人気のステムリムを購入するのはかなりリスクの高い「賭け」であることがわかります。
ステムリムのIPOスケジュールと各証券会社の割当
ステムリムの主幹事はSMBC日興証券、副幹事は大和証券とIPOに強い証券会社が担当しています。
また、価格帯も10万円台と参加しやすい株価帯になっています。
ステムリムのIPOスケジュール
ステムリムのIPOスケジュールは以下となります。
ブックビルディング期間 | 7月25日(木)~7月31日(水) |
市場 | 東証マザーズ |
公募価格決定 | 8月1日 (木) |
購入申し込み期間 | 8月2日(金)~8月7日(水) |
上場予定 | 8月9日(金) |
公募株式数 | 8,100,000株 |
仮条件価格 | 1,000円~1,700円 |
ステムリムの各証券会社の割当
ステムリムのIPO株の各証券会社の割り当ては以下となりません。
証券会社 | 株式数 | 割当率 |
SMBC日興証券(主幹事) | 7,068,000株 | 73.17% |
大和証券(副幹事) | 972,000株 | 10.06% |
野村証券 | 648,000株 | 6.71% |
みずほ証券 | 648,000株 | 6.71% |
SBI証券 | 202,500株 | 2.10% |
いちよし証券 | 40,500株 | 0.42% |
岡三証券 | 40,500株 | 0.42% |
楽天証券 | 32,400株 | 0.34% |
西村証券 | 8,100株 | 0.08% |
今回は主幹事のSMBC日興証券の割当率が7割以上になっているためSMBC日興証券での申し込みをおすすめします。
ただし、申し込み価格は低めに設定すべきです。
事前にここまで大幅に想定発行価格が引き下げられるIPOはレアケースです。
よって、高く購入してしまった場合、上場ゴールの公募価格未達の銘柄を保有することになりかねないので注意が必要です。
ステムリムの事業内容
ステムリムは「再生誘導医薬」の開発を目指すバイオ企業です。
「再生誘導医薬」の開発といわれても、具体的にどのような事業を行い、どのように収入を得ているのかわかりにくい業種であるといえます。
ここでは、ステムリムの事業内容と収益体制をわかりやすく説明していきたいと思います。
ステムリムの基本スペック
ステムリムの基本的な概要は以下となります。
社名 | 株式会社ステムリム |
設立 | 2006年10月30日 |
本社所在地 | 大阪府茨木市彩都あさぎ 7丁目7-15 彩都バイオインキュベータ 3階 |
代表者 | 代表取締役CEO 冨田 憲介 代表取締役COO 岡島正恒 |
従業員数 | 36名 |
基本スペックでの注目点はツクルバではCOOという役職を設置している点です。
CEO(最高経営責任者)という役職は一般的になっていますが、COOとはいったいどのような役職なのでしょうか?
CCOとはchief operating officerの略称で、翻訳すると最高執行責任者のことです。
具体的にはCEOが企業の経営全般に対して責任を持つのに対し、COOは日々の業務執行の責任を請け負っています。
大阪大学発「創薬研究開発型」バイオテック企業
ステムリムは大阪大学との共同研究を通じて「再生誘導医薬」の研究・開発に取り組んでいます。
「再生誘導医薬」とは?
「再生誘導医薬」とは怪我や病気により損傷し機能を失った生体組織の機能的再生・治癒を促進する、
これまでにない全く新しい作用メカニズムにもとづく医薬品のことを指します。
具体的には下記のような症状に効果を発揮することが期待されています。
≪再生誘導医薬が効果を発揮することが期待されている症状≫
- 脳梗塞や脊髄損傷などの中枢神経系疾患
- 心筋梗塞や心筋症などの循環器系疾患
- 難治性皮膚潰瘍などの上皮系疾患
- 難治性骨折などの間葉系疾患
このように「再生誘導医薬」は数多くの難病に対して幅広い治療効果をもたらすことが期待されています。
ステムリムの収益体制
わかりにくいバイオ企業の収益体制ですが、ステムリムでは、どのようなことから収益を上げているのでしょうか。
ⅰ.一時金
共同研究やライセンス許諾の契約時に一時金として収入を得ています。
ⅱ.マイルストーン収入
医薬の開発段階毎に設定した目標を達成するごとに収入を得ることができます。
また、製品上市後に、売上高に対する目標値を達成することでも収入を得ることができます。
ⅲ.ロイヤリティ収入
製品が上市された後に、ライセンス許諾の契約を締結した製薬会社より当社製品の売上高に対して予め契約によって設定した一定割合を収入として得ることができます。
ⅳ.共同研究収入
ステムリムの知的財産を活用した共同研究の実施した場合、収入を得ることができます。
見てきたようにステムリムでは製品を完成させる前段階でも、段階ごとに収入を得ることができることがわかります。
ステムリムの上場理由とは?上場で得た資金の使い道を探ろう!
ステムリムは上場して得た資金をどのように活用するのでしょうか?
ここでは目論見書から資金のつかいみちを探っていきたいと思います。
新規発行による手取り金額
ステムリムは上場することにより手数料を引いた手取り金額で10,094,550,000円の資金を獲得する予定です。
上記は仮条件の平均値より算出した値です。
手取り金の使途
ⅰ.再生誘導医学研究所及び動物実験施設の設立資金 9,240,390千円
ⅱ.研究開発を行うための運転資金 2,430,553千円
ステムリムでは上場で得た資金を再生誘導医学研究所及び動物実験施設の設立に充当するとしています。
しかしおよそ92億円もの資金が必要であるのか疑問が残ります。
また、研究開発を行うための運転資金におよそ24億円もの資金を充当するとしています。
運転資金に調達した資金を充当するような企業はリスクが高いといえます。
手取り金の使途をみると、ステムリムが機関投資家の評価が低かった理由を理解することができます。
『ステムリム』の売上高と利益推移
ここではステムリムの業績を分析していきたいと思います。
ステムリムの売上高
ステムリムの売上高は2016年をピークに減少傾向にあります。
ステムリムの事業形態が恒常的に需要が発生するような形態ではないことを加味しても、
かなり投資リスクの高い業績の推移であるといえます。
ステムリムの経常利益(損失)
ステムリムの経常利益(損失)は2016年を除き「赤字」です。
しかも、赤字幅が年々拡大傾向にあることもわかります。
発行済株式数が増加しており要注意
ステムリムの発行株式数に注目してください。
2014年108,667、2015年118,167、2018年131,554と順調に増加していることがわかります。
これは本業で稼げないために、増資で資金調達を行うのが特徴のバイオ企業にありがちな株式の増加であると考えられます。
よって、ステムリムへの投資はかなりリスクが高いということができます。
見てきたようにステムリムの業績は最悪な状態であるといえます。
今回の上場も「上場ゴール」である可能性を否定することはできません。
また、上場後も、増資で資金調達を行う可能性が高い企業であると判断することができます。
ステムリムの上位7位までの大株主とロックアップ情報
株主 | 保有比率 | ロックアップ情報 |
玉井 克人 | 19.78% | 180日間
|
玉井 佳子 | 10.17% | |
冨田 憲介(CEO) | 9.47% | |
大久保 俊幸 | 8.76% | |
(株)SMBC信託銀行 信託口08900027 | 5.37% | |
山﨑 尊彦 | 5.09% | |
みやこ京大イノベーション投資事業有限責任組合 | 4.60% |
ステムリムでは売出株が2,400,000株から300,000株と売出し株数が大幅に変更されています。
よって、売り圧力が大幅に減少されています。
気になるステムリムの初値予想!
ここでは編集部独自のステムリムの初値予想を公開していきたいと思います。
ステムリムの総合評価
ここまでの内容をまとめると以下の通りとなります。
<<ⅰ.ステムリム購入のメリット>>
- IPOは上値抵抗がないため、株価が上がりやすい傾向がある
- ステムリムは大幅に想定仮条件を下回った不人気IPOのため、購入しやすい
<<ⅱ.ステムリム購入のデメリット>>
- 赤字企業である
- 前代未聞の想定仮条件の大幅減額をなされた機関投資家に不人気のIPO
- 上場で得た資金の使途が運転資金であること
- 業績が年々悪化していること
- 株式数が年々増加していること
- 上場後も増資の可能性が高いこと
ステムリムの初値予想
前代未聞の想定仮条件の大幅減額をなされたステムリムの初値予想が非常に難しいです。
しかし、直近行われたバイオ銘柄のIPOから考えて、公募割れする可能性が高いと考えられます。
よって、900円~1,700円と初値を予測します。
まとめ
8月9日上場のステムリム。バイオ銘柄のIPOは公募割れが多いことに加え、財務状況も「赤字」とリスクの高いIPOであるといえます。
また気になるセカンダリーですが、こちらのほうが面白い銘柄だといえます。
バイオ株はセカンダリーのほうが盛り上がる業種です。
よってステムリムは下がりきってからのセカンダリーに参加したい銘柄であるといえます。
以上、【ステムリム・IPO初値予想】非常事態宣言発動の上場株銘柄(4599)!目論見書から徹底分析!…でした。
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