なぜ日経平均が上昇すればドル円は上昇(円安)となり、日経平均が下落すればドル円は下落するのか?
という点について疑問を持たれたことはないでしょうか?
- 日経平均上昇→円安
- 日経平均下落→円高
普通は米国などの外国人が日本の株を購入しなければいけません。
そのため、自国通貨を売って日本株を買う為の日本円を調達を行わなければなりません。
つまり、日本円が買われ、むしろ円高になるはずです。
今回はなぜ日経平均が上昇すればドル円が上昇(=円安)になるのかというロジックを、紐解いていきたいと思います。
そもそも日経平均は?という方は以下をご覧ください。
Contents
日経平均とドル円の連環性の主因は外国人による為替ヘッジ取引にあり
最初に結論から入ると、原因は外国人の株式購入為替ヘッジの動きです。
外国人にとっての自国通貨、米国人であれば米ドルベースでの利益を確保する為に、
為替ヘッジを行い、その結果が円安・円高に振れているのです。
私たちは普段から日本円を使用し日本円で生活しています。
株式投資で100万円が110万円に増加した場合は単純に日本円が増えて嬉しいですよね。
では外国人(単純化の為米国人)の立場に立てばどうでしょうか。
彼らは普段はUSDで生活を行っているため、USD建で資産が増えないといけません。
例えば1USD=100円の時に10,000USDを使い100万円分日本株に投資します。
120万円に上昇したとしても、為替が1USD=150円とドル高に振れたらUSD建では8,000USDと減価してしまいます。
せっかく投資対象が現地通貨(ここでは日本円)ベースで上昇しても、結果的に損失を被っては意味がありません。
そのため、米国人は基本的には為替ヘッジを行います。
外国人が日本株を購入する際に行う為替ヘッジの手法
先程説明したように外国人にとっての自国通貨、米国人であれば米ドルベースでの利益を確保する為に、為替ヘッジを行います。
その方法としては、まず日本株を購入する為に自国通貨USDを売り、日本円を買います。
一方で将来自分が日本株を売却しようとしている時点での、日本株売却によって発生した円を自国通貨であるUSDに変換する為に未来での円売・ドル買の予約を同時に建てます。
未来のUSD買JPY売については為替予約という仕組みを使えば、簡単に行うことができます。
米国の投資家は1USD=100円で株式購入時の円を調達します。
1USD=100円から日米金利差を差し引いたレートで、株式売却時の為替を固定することが出来るのです。
現在日米レート差によって1カ月で30銭ほど円高になります。
為替レートそのもののレートの変動に比べれば少ないコストでリスクをヘッジすることが出来るのです。
また為替ヘッジを行う際は、現在のUSD売・円買と未来のUSD買・円売が同時に立ちます。
そのため、為替レートは両者が相殺され変動を受けません。
売と買を両方建てる取引を為替業界ではBuy-Sell Swapと呼んでいます。
〜コラム〜非常に大きい日本の株式市場における外国人投資家の存在感
日経平均と為替の関係を外国人による為替ヘッジという観点で紐解いています。
しかし、外国人の取引が少なければ、日経平均とドル円レートが同じ動きをすることはありません。
なんと驚きの6割以上の人が東証一部の銘柄の売買をおこなっているのです。
外国人の日本株に対する存在感は年々増大していっているのです。
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なぜ為替レートが日経平均上昇時に円安方向に動くのか?
日本株を購入した時は為替レートは動かない。
ではなぜ日経平均が上昇した時に為替レートが円安に動くのか?
日経平均が上昇してしまったときは、はじめにヘッジしていたポーションに加えて、
追加で為替ヘッジを行わなければいけないことが直接的な日経平均とドル円レートの連動の要因となります。
どういうことかというと、今100万円分の日本株を購入した米国人は100万円分の日本円の調達と同時に、売却を予定している未来時点での日本円の売却の為替予約を保有しています。
しかし、日本株が120万円まで上昇した場合、上昇した分の20万円については為替を固定していません。
全員が全員増加した分の為替を為替予約を用いて固定するとは限りません。
しかし、現時点でのレートで固定したいという需要が業績目標の関係上一定以上はあります。
増加した20万円分についても追加でUSD買JPY売の為替予約が発生します。
追加ヘッジ分は見合いとなるUSD売JPY買の取引がないのでダイレクトに円安に反映されます。
上記の仕組みが日経平均が上昇した時に円安に動く主因です。
なぜ為替レートが日経平均下落時に円高方向に動くのか?
次に日経平均が下落した時になぜ円高方向に動くのかという点について説明いたします。
先程のように保有していた日本株が上昇した場合と反対に、
下落した場合は最初に日本株を購入した際に同時に取得したUSD買JPY売の為替予約が余分になります。
つまりオーバーヘッジポーションが為替で出てきてしまうのです。
例えば100万円分の日本株購入した時に、同時に保有した100万円分の未来のUSD買JPY売のポーションは、
日本株が80万円に下落した時は80万円分しか必要ありません。
残りの20万円は余分なヘッジポジションということになり、20万円分の為替予約を解消するためにJPY買USD売の取引きが発生して、円高方向にふれてしまうのです。
まとめ
上記の他にも日経平均を構成している日本の大型銘柄には、円安の恩恵を受けるTOYOTAなどの大型銘柄が多く存在しています。
そもそも為替市場のトレーダーが日経平均の動きを見ながらドル円を取引きしています。
そのため、為替と株の相関性が高まりやすいという要因も存在しています。
日経平均とドル円レートの相関の高さは「日本株市場の取引量の6割を占める」外国人投資家が、
自国通貨ベースでの「収益獲得」のために、「為替予約」を用いた為替ヘッジ取引が主因で引き起こされてるのです。
日経平均の上下とドル円の上下はかなり連動しておりますので、投資ポートフォリオを組む際は両者の連動を加味した上で組成しましょう。
資産形成で必須となる投資ポートフォリオとは?その概要とその作成方法をカンタンに解説。
以上、日経平均株価とドル円の為替レートの連動率が高いのはなぜ?その理由をわかりやすく解説。…でした。