「信用取引」をする投資家全体の含み損益を測るのに便利な指標が信用評価損益率です。
「信用取引」とは自分が保有している資金以上の株を購入する取引のことを言います。
信用取引では自分の資金以上の取引を行うため、証券会社からお金を「借りている」形をとっています。
現物では株を購入することからしか取引を始められません。
信用取引では「売り」から取引を始めることができ、売りから入る信用取引のことを『空売り』といいます。
つまり「空売り」を用いることによって相場の下落局面であっても利益獲得を狙うことができます。
「株価の天井や底を分析するために、役に立つ指標を探している」
「信用評価損益率の見方や投資で活用する方法を知りたい」
このコンテンツでは、そんな方に向けて、信用評価損益率の見方や確認方法、投資で活かす方法について解説します。
目次
Contents
信用評価損益率とは?
株式は、時間の経過によって価値が変動するものであり、投資すると含み損益が発生します。
実際に、証券会社で株を購入したままでいると株価の変動によって評価損益が発生します。
信用取引においても、含み損益は発生して銘柄を保有する間の損益を評価損益と呼びます。
そして信用取引による評価損益額と信用残高で計算できる指標が「信用評価損益率」です。
新聞や証券会社によって、毎週金曜日の東証などにおける信用評価損益率は公開されています。
一部の証券会社では、自社内の信用評価損益率が毎日公表されていて、口座を持っている人のみ閲覧することが可能です。
損益率の計算方法
市場における信用評価損益率を求めるには、次のような計算式で評価することが必要です。
◾️信用評価損益率計算式:
信用評価損益率=評価損益額÷信用建玉残高(買い建てのみ)×100
信用評価損益率では、信用取引で株式を買った投資家の損益を測るため買い建てのみの信用残高で計算します。
例えば、評価損益額が-100万円であり、信用建玉残高が1億円あるとします。
この場合は「-100万円÷10,000万円×100=-1%」となり、信用評価損益率は-1%になるのです。
信用評価損益率により、周りの投資家が信用取引により含み損益をどれくらい保有しているのか分かります。
多くの投資家は利益をすぐに確定する傾向があるため0%から-20%で推移するのが一般的です。
一般人が市場全体の評価損益額を知るのは不可能です。
その為、実際には計算された損益率や信用残高をインターネット等で確認しておおまかな評価損益を把握します。
指標を正しく活用するためにも計算方法を理解しておきましょう。
〜コラム〜なぜ通常「信用評価損益率」はマイナスなのか?
プロスペクト理論を思い出してみましょう。
人間には損失を回避しようという心理が大きく働きます。
つまり利益がでたら早めに利益確定。
損失が発生しても損切りができない、という人間心理が反映されています。
信用評価損益率の分母は現在保有している信用買残高となります。
まだ売って決済していない信用買ということです。
利益が出ている信用買残より含み損となっても損失確定ができていない損失発生中の信用買残高の方が基本的に多くなるのです。
結果的に信用評価損益率の分子の評価損益は基本的にマイナスになります。
損益率の見方!底打ちや天井のタイミングは?
「どのように信用評価損益率を見ればよいのか分からない」と悩む人は多くいるとおもいます。
損益率が変動する範囲や理由を知っておくことで、信用評価損益率を投資に活かせます。
信用評価損益率は一般的に数字が大きいと買いが強くなり小さいと売りが強くなります。
◾️通常時:
株式相場では-3%から-9%の範囲を損益率は推移する
◾️-3%以上:
相場が天井に近づく
◾️-10%程度:
追証により売りが加速しやすくなる
◾️-20%程度:
底値に近づき相場の下落トレンドが反転する
以下の日経平均と松井証券の信用評価損益率の動きをみてみましょう。
丁度-3%に近づくと天井感が高くなり株価が停滞しています。
また-10%近辺で下げ幅が発生して、丁度-20%近辺で底打ちしているのがわかりますね。
一時的に信用評価損益率がプラス圏に入る場合がありますが、その後すぐにマイナスに戻るパターンがよくあります。
信用取引では利確したい投資家が多く、損益率がプラスになり続けることはほぼありません。
株式を信用取引するときは上記の見方を意識しておき、相場の方向性を把握しておきましょう。
自分の損益率を確認するには!楽天証券で確認する方法を解説。
既に株式を信用取引している人は、証券会社の口座管理ページで損益率を確認できる場合があります。
例えば「楽天証券」では公式ホームページにログインした後、
口座管理から信用建玉一覧にアクセスすることで損益率を確認できます。
「マーケットスピード」を利用している人は注文約定を開き信用建玉一覧を見ることで損益率をチェック可能です。
自分が利用する証券会社で損益率を確認するときは、「○○(証券会社名) 信用評価損益率」で検索しましょう。
一部の証券会社では信用評価損益率の確認方法を分かりやすく解説しています。
市場全体の損益率を確認するには?松井証券を使って確認しよう!
市場全体の信用評価損益率を確認するには、公表している証券会社や新聞を見ることが必要です。
例えば「松井証券」の口座を持っている人ならば、QUICK情報から損益率をチェックできます。
もし証券会社や新聞で損益率を見れないときは日経平均比較チャートの信用評価損益率を見るのがオススメ。
毎週金曜日の信用評価損益率をグラフやチャートによって確認できます。
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信用評価損益率を投資で活かす方法!天井や底打ちを見極めよう。
どのように信用評価損益率を投資で活用すればよいのか疑問に思う人も多くいるでしょう。
信用取引には規則性やルールがあり次のようなコツを参考にすることで投資に活かせます。
- 0%に近づいたら利確を検討すべき
- -20%に近づいたら買いを検討すべき
- 他の指標も考慮することがオススメ
それぞれのコツについて詳しく見てみましょう。
0%に近づいたら利確を検討すべき
株式を信用取引する投資家は売却益を狙うのが目的であり利益が発生すれば建玉を決済する傾向があります。
もし信用評価損益率が0%に近づいたら買い建玉を売却することがオススメです。
損益率が0%になる前に建玉を売却することで株価が下落する前に利益を得られるのがメリットです。
配当を受け取れない信用取引では値幅が小さくても利益を得ることが重要です。
また、買い建玉がない場合は銘柄を空売りしていき株価下落に備えておく方法もあります。
信用評価損益率が0%を超えれば売り圧力が強くなり下落によるリターンを期待することが出来ます。
注意すべきポイントは稀に0%でも株価の上昇が続き、売りで含み損が発生する場合があることです。
あくまでも指標は目安であることを意識して、相場の方向感に注意しましょう。
-20%に近づいたら買いを検討すべき
信用評価損益率が-10%から-20%程度になると追証が発生する可能性が高くなります。
追加の担保が必要になることを追証と呼び、追加保証金を入れなければ「ロスカット」されてしまいます。
追証に遭遇した投資家は資金を入金するか、保有する建玉を返済することで対応できます。
もし買い建玉が決済されれば売り圧力が強くなり更に株価が下がります。
しかし損益率が-20%に近づくと底値を打ち、反転して株価が上昇しやすくなります。
追証により売りが増えれば銘柄が割安になり、買い建玉を購入する投資家が増えるため。
世界金融危機などの大規模な不景気を除けば、-20%から-25%で株価が底値になるのが一般的です。
-20%程度の損益率になったら株価上昇を狙って買いでエントリーすることを勧めます。
他の指標も考慮することがオススメ
信用評価損益率は投資家が参考にできる指標の1つです。
それだけでは相場観が分からない場合がよくあります。
実際に投資するときは他の指標も考慮することがオススメです。
例えば市場全体の過熱感から将来的な株価の変動を予想できる指標として暴落レシオがあります。
暴落レシオが70%以下なら株価が上がりやすく120%を超えれば株価が下落しやすいです。
また、周りの投資家が取引してから利益や損失を確定するまでの期間を測る指標として回転日数があります。
相場が活気づくと取引量が増えて、回転日数が短くなる傾向です。
リスクを抑えた投資を実現したい人は、信用評価損益率以外の指標も意識しましょう。
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まとめ
信用評価損益率は買い建玉を保有する投資家たちが、どれくらいの含み損益を保有しているのか示す指標です。
0%に近づくと株価が下がりやすくなり、-20%まで下がると株価が上昇する傾向があります。
これから信用取引を始めるときは、信用評価損益率などの指標を参考にして相場の方向性を把握することがオススメです。
以上、評価損益額と信用残高で計算できる指標「信用評価損益率」とは?計算方法やチャートの見方をわかりやすく解説。…でした。