【WACCとは?】加重平均資本コストの計算式の意味を捉え具体的に算出する方法をわかりやすく解説する!

【WACCとは?】加重平均資本コストの計算式の意味を捉え具体的に算出する方法をわかりやすく解説する!

投資家にとって、企業がどれほどの配当を出しているかは非常に重要な情報です。

配当の大小によって、投資の意思決定が左右されることもあります。

 

ただ、企業にとって配当とは一種のコストとなります。

資本調達に際して発生するコストの割合を数値化したものが「WACC」(わっく)です。

 

秀次郎
名前だけでも難しそうですな・・・。
信太郎
大丈夫じゃ。意味が分かれば大した概念ではないぞ!

 

今回はこのWACCについて、詳しく計算式の意味を解説します。

そのあとに、実際の例(Apple)を用いて算出していきます。

 

WACCは資本の調達コスト!計算式とともに概要を紐解く

WACCはWeighted Average Cost of Capitalの略称です。

WACCは借り入れや株式調達など資本調達にかかるコストを加重平均したものです。

 

加重平均とは、通常の平均計算(算術平均)とは異なりデータの数値に重みを加えて平均を算出したものとなります。

 

信太郎
企業が事業を行うためには資本が必要じゃからな!

 

企業の資金調達の方法は、大きく分けて2つに分けられます。

 

1つは銀行などのからの借入(負債)で、もう1つは株主からの出資(株主資本)です。

この2つの方法を駆使して、企業は資金を集めます。

 

ただ、どちらの資金調達方法でも一定のコストが発生します。

借入であれば、債権者への利子の支払い、株主資本であれば株主への配当などが挙げられます。

これらのコストを総合的に捉えたのがWACCとなります。

 

WACCの計算式は以下の通りです。

 

WACC

=

(1-実行税率)×(負債コスト×有利子負債/有利子負債+株主資本)

+

(株主資本コスト×株主資本/有利子負債+株主資本)

 

秀次郎
心が折れそうじゃ・・・。
信太郎
数式の意味を考えれば理解できないことはないぞ!

 

少し式が複雑に見えますが、1つずつ見ていけば問題ありません。

 

前半部分は、全体の資本調達に占める負債コストを算出します。

有利利子負債は、損金として支払利息を課税所得から控除することが可能です。

よって、税金分の比率を差し引くため、式の冒頭で「(1-実効税率)」を有利子負債にかけます。

 

式の後半では、資本調達に占める株主資本コストの比率を算出します。

負債コスト、株主資本コストの計算がそれぞれ終わった後、最後にそれらを足し合わせて、総合的な資本調達コストの割合を出します。

 

では負債コストと資本コストのそれぞれについて詳しく見ていきたいと思います。

 

負債コストの計算方法とは?

負債コストは、銀行などの債権者に対して支払う利息などを表したものです。

ただ、貸借対照表には負債コストは直接明記されていません。

負債コストを確認するには、貸借対照表、損益計算書の数値を使って自身で算出する必要があります。

負債コストの計算式は以下の通りです。

 

負債コスト=支払利息/有利子負債

 

負債コストは、全体の負債に対する支払利息の割合となります。

 

信太郎
つまり、PLの支払い利息が1億円でBSの有利子負債が100億円であれば負債コストは1%ということになるの!
秀次郎
借金のうち、どれくらいの比率で利息を払っているかということですね。

 

 

有利子負債の数値は、貸借対照表で確認することができます。

支払利息は、損益計算書の「営業外損益」の欄に記載されています。計算自体は、電卓をたたけば誰でも簡単に行えます。

 

株主資本コストの計算方法とは?

株主資本コストは、企業が株主に支払う配当などのコストを指します。

反対に、株主にとって株主資本コストとは「どれくらいの配当が貰えるか」といった期待を示す数値となります。

「投資家が企業に対して求めている収益率」というイメージです。

 

たとえば、投資家がある企業の株に100万円投資するとして、リターンとして10万円を期待してるとします。

そうすると、株主資本コストは10万円/100万円×100=10%となります。

 

ただ、WACCで用いる株主資本コストの計算は、これほど単純ではありません。

株主資本コストの計算式は以下の通りです。

 

株主資本コスト=Rf+β(Er-Rf)

 

秀次郎
どういう意味ですか?
信太郎
国債などの安全な投資先より、どれだけの追加のリターンが見込めるかということじゃ!

 

Rfは「リスクフリーレート」のことです。

リスクほぼ皆無に等しい金融商品から得られる利回りを指します。

長期国債による利回りがこれにあたります。

 

2019年10月時点の日本の長期国債の場合はほぼ0%ですが、米国の10年国債では1.5%程度となっています。

 

βは「ベータ値」と呼ばれているものです。

上場している株式市場全体の値動きと、対象企業の株価変動を比較した数値です。

ベータ値は、ロイターの株式市場のページに記載されているので、自身で計算を行う必要はありません。

 

例えば、ロイターでアップルと調べて指標の欄をみると以下の通りβ値を確認できます。

 

アップルのベータ値

βが1.22ということはS&P500が10%上昇した場合は1.22倍の12.2%の上昇が見込まれます。

 

 

Erは「期待収益率」のことで、株式市場に対する期待利回りを表します。

株式市場が平均して年率何%成長するかという数値ですね。

 

信太郎
つまりβ(Er-Rf)は株式が国債に対してどれだけ良い成績で、βをかけることで該当銘柄が安全資産よりどれだけ高いリターンを出せる見込みかを表しておるんじゃ。
秀次郎
更にRfをたすことで、該当銘柄の期待できるリターンを算出できることになりますな!

 

 

Erの数値は各数値、分析機関によってやや数値が変わってくるため、株主資本コストは同じ企業でも変わってくることがあります。

これは、株主資本コストの性質上やむを得ません。

 

因みに参考までですが過去10年、20年、30年の米国株の平均成長率は以下となっています。

 

過去10年:14.7%
過去20年:6.72%
過去30年:10.16%
過去40年:11.52%

 

過去20年にするとアジアショックやITバブル、リーマンショックを経験し低い数値となっています。

しかし、平均して7%-10%と考えればよいでしょう。

 

加重平均とは?

冒頭部分で『WACCは借り入れや株式調達など資本調達にかかるコストを加重平均したもの』とお伝えしました。

加重平均は元々統計学で用いられている用語でデータごとの重要度を踏まえた平均になります。

 

一般的に知られている「平均」は算術平均と呼ばれているもので、こちらはすべてのデータ項目を均等に扱います。

加重平均と算術平均の違いを具体例を使って確認してみましょう。

 

信太郎
わかりやすく洋食レストランを例に説明するぞ!

 

自身で洋食レストランを経営しているとして、以下の3つのセットを売り出してるとします。

  • ハンバーグセット :600円
  • オムライスセット :700円
  • ステーキセット :900円

 

それぞれのセットの1日の売り上げは、以下となりました。

 

  • ハンバーグセット :10
  • オムライスセット :10
  • ステーキセット :30

 

このとき、1日の売上の平均を出す際、加重平均を用います。

 

それぞれの売上を販売価格にかけるのです。これを「重みをつける」と呼びます。

すると、1日の売上平均単価は740円となります。

 

10×600/(10+10+30) + 10×700/(10+10+30) +30×800/(10+10+20)

=740円

 

 

一方、1日の売上単価の平均を出す際に、算術平均を使うとおかしな数値になります。

算術平均は700円となります。

(600+700+800)/3=700

 

一見するとそれらしい数値になるのですが、これは一番売上が多かったステーキセットの数量を加味していません。

売上の平均値が3セットの価格の丁度真ん中となることはおかしいのです。

 

WACCを算出する際も、同様のズレが起こらないよう加重平均を用いて平均値を算出します。

売上単価の平均値を出すときに、算術平均を用いると実際の売上の平均と乖離することになります。

 

信太郎
因みに東証株価指数(TOPIX)も加重平均の考え方も用いられた指数じゃぞ!

 

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2019.02.01

 

 

(1-実効税率)を掛け合わせる意味をわかりやすく解説

WACCの計算で有利子負債にかけられていた「(1-実効税率)」について、こちらも詳細見ていきましょう。

WACCの計算でなぜ有利子負債にのみ「(1-実効税率)」の値がかけられるのでしょうか?

 

利息の支払い自体が「損益計算書」に含まれるため節税効果が生じるためです。

 

支払い利息は損益計算書の費用項目であり、最終的には当期純利益を算出する前に利益と相殺されて「節税」を生み出します。

 

秀次郎
どういうことですか?
信太郎
具体的な数値を使って確認してみよう!

 

税引前利益が100億円で実効税率が30%の場合は法人税は30億円となります。

しかし、支払利息が20億円存在していた場合、最終的な税前利益は80億円となり法人税は24億円となります。

支払い利息による節税効果

つまり6億円分の節税効果があるので、実質的な支払い利息による損失は14億円(=20億円-6億円)となります。

(1-実行税率30%)×20億円 =14億円

 

「支払利息があると節税になる」というのはWACCのみではありません。

企業経営一般でも言えることなので、覚えておくと将来の起業などで役立ちますよ。

 

アップルを例にWACCを算出する

アップルはバフェットも現在投資をしている米国の巨大IT企業です。

 

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今までの説明を元にアップルのWACCを算出していきたいと思います。

前提とする数値は2019年10月10日現在のものを使用。

 

負債コストを求める

負債コストは以下の計算式で算出されます。

負債コスト=支払利息/有利子負債

 

楽天証券では米国株の財務諸表を過去5年分公表しています。

最新の2019年9月期の決算はまだ発表されていないので2018年9月期のバランスシートを参考にします。

 

  • 有利子負債:114,483百万ドル
  • 株主資本 :107,147百万ドル (後に必要となります)
アップルの財務諸表

 

一方支払利息はアップルの決算書によると3,240(百万ドル) と発表されています。

アップルの決算資料

参照:アップル『有価証券報告書』

 

つまり負債コストは2.83%ということになります。

負債コスト = 3,240 / 114,483 = 2.83%

 

アップルの株主資本コストを算出

次にアップルの株主資本コストについて算出していきます。

株主資本コスト=Rf+β(Er-Rf)

先ほどの前提を代入します。

  • β:1.22
  • Er:保守的に7%
  • Rf:1.5%

すると株主資本コストは8.21%ということになります。

 

WACCの計算式に代入する

今までの算出で必要なピースが全て揃いました。

再度以下がWACCの算出式です。

 

WACC

=

(1-実行税率)×(負債コスト×有利子負債/有利子負債+株主資本)

+

(株主コスト×株主資本/有利子負債+株主資本)

 

  • 実効税率:27.98%
  • 負債コスト:2.83%
  • 株主資本コスト:8.21%
  • 有利子負債:114,483百万ドル
  • 株主資本:107,147百万ドル

 

WACC

= (1-27.98%) × (2.83% × 114,483 / (114,483+107,147)) + 8.21% × (107,147/(114,483+107,147))

= 負債コスト1.05% + 株主資本コスト3.97%

= 5.02%

 

と算出することができます。

 

WACCの目安

WACCの目安は「5~8%」が一般的です。

前提として、優良な企業は「株式資本コスト>負債コスト」となっています。

 

負債がない方が、健全な経営をしていると言えるからです。

ただし、WACCの定義式からわかるように、負債コストには「節税効果」が期待できます。

 

100%すべて株式資本コストであるよりも、50%ずつ株主資本コストと負債コストに振り分けた方が、結果的にWACCの値は小さくなります。

 

WACCは資金調達のコストですので値は小さければ小さいほど良いです。

WACCの視点からみると、「負債がない」ことは必ずしもメリットであるとは言えないのです。

 

まとめ

WACCによって、企業が資金調達にどれほどのコストをかけているか知ることができます。

投資家側から見ると、少しでも多くの額を還元して欲しいのでWACCの値は小さいほど良いと言えます。

 

WACCの計算では複雑な理論は用いられておらず電卓さえあれば誰でも簡単に計算できます。

 

WACCを使いこなせれば、収益性の分析精度を高められます。

また理論株価を算出することもできるようになるので企業がもつ本来の価値を測ることも可能になります。

WACCを使いこなして、投資分析のレベルを上げていきましょう!

 

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マネリテ!編集部は東京大学経済学部卒の証券アナリストを中心とした金融知識が豊富なメンバーが株式投資初心者に向けて有益な情報を提供しています。株式投資を行う意義から基本用語、おすすめのネット証券・投資先情報をお伝えするメディアです。日本人の金融リテラシーの向上と明るい未来を目指しています。