ADRをご存知でしょうか?
経済ニュースなどで聞いたことがあり、何となく株の1種だと思っている方が多いかもしれません。
ADRは外国株を円滑に取引できるようにつくられた投資商品です。
今回はADRについて紹介していきたいと思います。
「ADRって何?」
「ADR日本株・ADR新興国株とは?」
「株式の仕組みについてもっと知りたい」
という方はぜひ最後まで読んでいただき参考にしてください。
Contents
ADRとは?仕組みと共に制度を解説
ADRとはAmerican Depositary Receiptの略で日本語で米国預託証券のことです。
ADRを利用することで米国以外の企業であっても米国市場内で投資することができます。
「外国企業・外国政府あるいは米国企業の外国法人子会社などが発行する有価証券に対する所有権を示す、米ドル建て記名式譲渡可能預り証書」である。
ADRの預かり対象は、通常は米ドル以外の通貨建ての株式であるが、制度的にはあらゆる種類の外国有価証券でも可能である。
1928年のADR創設当初の趣旨は、米国人投資家が外国株式への投資を容易にする仕組みを提供することであり、ドル建てでの売買や配当支払を可能としたことがADRの発展に大きく寄与した。
引用:野村證券
以下はインドの企業B社がADRとして上場するまでの流れとなります。
まず米国にあるC銀行がインドのB社株式を購入してインド現地のB銀行に預けます。
米国のC銀行はB社の株式を裏付け資産として預託証券を発行し、預託証券を米国証券取引所に上場させます。
上場された預託証券の保有者はインドのB社の実質的な所有者ということになります。
つまり米国証券にアクセスできる投資家であればインドにあるB社の株式を米国の上場企業と同様に売買することができるのです。
ADRとして取引できる銘柄は例として挙げたインドだけではなく、例えば大手の楽天証券では30カ国の銘柄を取引することができます。
日本株のADRとしてはトヨタやソニー、キャノン、任天堂、東海カーボン、ガイシなどがあります。
アメリカの投資家がこれらの銘柄に投資をする場合は、日本市場で取引をすることなく米国市場で取引することができます。
外国株に投資するのにADRが適している理由
ADRは外国株預託証券という名称のとおり外国株を取引するための投資商品ですが、ここでの外国とはアメリカ以外の国を指します。
世界では直接外国人が取引できる株式市場ばかりではなく、外国市場の中にはアメリカ国内の証券会社では行えない市場が存在しているのです。
それは、国によっては外国人投資家による株取引を規制しているからです。
このように外国株への投資は手続きや規制などにより難しい点が多いためADRという投資商品が生み出されました。
ADRを利用することでアメリカの投資家は国内市場で日本やヨーロッパ、中国やインド企業など外国企業への投資が簡単にできるのです。
ADRは企業側にもメリットがある
ADRは既にお伝えしましたように、投資家にとって国内市場で海外株投資ができるという大きなメリットがあります。
実際、米国市場ではADRを通じて海外株投資が活発に行われているのです。
投資家にとってメリットがあるADRですが、企業側にもメリットがあります。
それは資金調達ができるということです。
ADRは株式を直接上場させているわけではありません。
しかし、銀行に株式を預けることでADRが発行され、ADRの代金は企業が受け取ることになるため、株式上場をした場合と同じように資金調達ができるのです。
更に米国の中での知名度が高まり、場合によっては事業活動の上でもプラスとなることもあります。
よって、企業側としても外国で資金調達を行う手段としてADRを利用するメリットがあるのです。
このようにADRは投資家、企業共にメリットがあります。
日本株を買う場合にもADRは活用できる
ADRは外国株を購入する際にメリットを発揮しますが、日本株を購入する際にも活用することができます。
ADRをはじめとする各種指標を確認することで、翌日の株価の予想をすることができるのです。
その各種指標というのがPTS、ADR、日経平均先物、CFDであり、日本の証券市場の株価にも大きく関係してきます。
PTSやADR、日経平均先物 やCFDは日本の証券市場クローズ後も世界中で取引が行われています。
そのため、証券市場クローズ後の動き及び、夜間の値動きを確認することは、翌日の株価に与える影響を予想をする材料にすることができます。
PTS取引(夜間取引)を見てみること、 ADR(米国預託証券)の値動きを見てみること、日経平均先物でマーケット全体を確認すること、 CFD取引も夜間取引が行われていることを確認することで、株式売買をよりスムーズに行うことができるのです。
しかし、預託証券という商品の性質上、海外上場の日本株ADRの株価が東証上場の株価と異なることもありますし、 ADRと現地株は近似するけれども等価ではないことにも注意しておく必要はあります。
代表的な外国株預託証券
ここまでは米国預託証券(ADR)の話を中心にしてきましたが、預託証券(DR)は何も米国だけに存在するわけではありません。
ここでは代表的な外国株預託証券を紹介します。
ADR(米国預託証券)
DRの中でも最大の規模を持っています。
ニューヨーク証券取引所やナスダックなどで取引されています。
GDR(グローバル預託証券)
ロンドン証券取引所のシステムを利用して取引されているのがGDRです。
ヨーロッパやアジア、中東、中南米など20以上の国の企業に投資することができます。
JDR(日本型預託証券)
日本版の預託証券がJDRです。
日本国内市場でも海外株への投資が可能となっています。
現時点で個別銘柄は無く、取引できるのは海外ETFの預託証券のみです。
ADRの種類(上場銘柄と店頭取引銘柄)
ADRにはニューヨーク証券取引所やナスダックなどの取引所で取引されている上場銘柄の他に、
OTCと呼ばれる店頭取引で売買されている銘柄があります。
店頭取引銘柄は市場を通じて売買するわけではないので流動性が低い銘柄が多く、リスクが高い銘柄も多いです。
ADRには多数の銘柄があり、店頭取引銘柄も多いのですが、実際に取引されるのが多いのは上場銘柄であり、日本企業で上場しているADRで有名な銘柄は以下が挙げられます。
- トヨタ
- キャノン
- ホンダ
- オリックス
- みずほFG
- 三菱UFJFG
- ソニー
- 武田薬品工業
代表的なADR
ADRにはもちろん日本以外の企業も多数存在し、ADRを通じて世界中の企業に投資することが可能です。
ここではADRで取引できる世界各国の代表的な銘柄を紹介します。
BTI(ブリティッシュ・アメリカン・タバコ)
煙草事業を行っているイギリスの企業です。
企業名にもある通り煙草事業を行っています。
安定した高配当を出している銘柄であり、個人投資家にも人気があります。
GSK(グラクソ・スミスクライン)
イギリスの製薬会社です。
世界でも有数の製薬会社であり、その売り上げは4兆円を超えています。
WBK(ウエストパック銀行)
オーストラリアの銀行です。
歴史の長い銀行でオーストラリアの4大銀行の一つであり、投資家の間でも高配当銘柄として知られています。
VOD(ボーダフォン)
携帯電話事業を行うイギリス企業です。
日本からは撤退しましたが、世界的には多くの国で事業を展開しています。
タタモーターズ
タタモーターズはインドの自動車最大手です。
インド最大の財閥であるタタ財閥の主要企業であり、インドの需要の増大に伴って今後の拡大も期待されています。
HSBC(HSBCホールディングス)
イギリス企業であり世界的にも有名な大手銀行です。
時価総額も世界の銀行の中でトップ10に入るグローバルな企業です。
イギリス企業ですが香港と強い関係を持ちアジアでの収益が多くを占めます。
配当利回りが6%と高配当であることも魅力的な点です。
BABA(アリババグループホールディングス)
急成長を続けるECサイトを運営する中国企業です。
アメリカのアマゾンに迫る企業として世界的にも有名になっています。
バイドゥ
中国版のGoogleである百度もADRとしてナスダック市場に上場しています。
中国国内における急速なスマートフォンの普及が追い風となり、
中国のインターネットサービスにおいて欠かせない存在となっています。
ADRは国内証券会社から株価一覧を確認して簡単に取引することができる
海外株取引の需要が高まり、海外株を取り扱う証券会社が増える中で、ADRの取引が可能な証券会社も増えています。
今では、簡単にADR銘柄を取引することが可能であり、アプリを通してスマートフォンでの取引が可能な証券会社も存在します。
例えば、楽天証券・SBI証券・マネックス証券はどの証券会社もADRの取引が可能で銘柄数も100以上を取扱しています。
楽天証券を例に簡単にADRの購入方法をお伝えしていきたいと思います。
楽天証券のログインをしたら『海外株式』→ 『米国株式』を選択後、ADRにチェックをつけます。
その後、本拠所在地で投資したい国を選択して検索ボタンを押します。
今回はインドを選択します。
すると以下の画面に遷移して取引することができるインドのADR銘柄一覧をリアルタイムで見ることが出来ます。
取引したい銘柄を選択した後は、通常の米国株と同様に取引を行うことができます。
以下で楽天証券での米国株の購入方法については説明していますので参考にしてみてくださいね!
まとめ
いかがでしたでしょうか?
今回はADR(米国預託証券)について紹介しました。
最後に重要点をまとめますと以下の4点が挙げられます。
- ADRは規制などで直接外国株を取引できない場合でも外国企業に投資ができる投資商品
- ADRを利用することで投資家は海外企業への投資が可能となり企業は資金調達ができる
- ADRは世界中の有名企業へ投資ができる
- 国内証券会社でも簡単にADRを取引することが可能
ADRは直接株を取引きできない外国企業にも投資ができる投資方法です。
今でも国内証券会社からも簡単にADRの取引が可能となっています。
興味のある方はこの記事を参考にぜひADRへの投資を検討してみてください。
米国株式については個別銘柄分析を以下記事で行なっていますのでご覧いただければと思います。