ネットフリックス(Netflix, Inc.)は、世界最大のオンライン動画配信企業です。
同社は他のCATVよりも安価で、どんな端末でも番組を観ることができるという利便性がユーザーから高く評価されています。
オンラインでテレビ番組や映画といったコンテンツをユーザーに提供しています。
故に、加入者はパソコン、テレビ、スマートフォン等あらゆる端末からコンテンツを視聴することが可能です。
もともとネットフリックスは、宅配のDVDレンタルを行っている企業でした。
しかし、2007年に定額制の動画ストリーミングサービスというサブスクリプション型のビジネスモデルに切り替えました。
以降現在私たちが知るようにFAANGの一角として大きく成長することに成功しました。
ネットフリックスの会員数は1億2,500万人と、日本の総人口と同等程度の会員数を擁しています。
同社は、会員獲得のため「ハウス・オブ・カード」や「マスター・オブ・ゼロ」等のオリジナルコンテンツの制作に注力しています。
会社側予想では、オリジナルコンテンツの制作に係る投資額は80億ドル程度であると言われています。
同社はさらに、第三者が制作した番組のライセンスを取得し、それを有料でネット配信することでも収益を稼得しています。
当該ビジネスモデルは放送局や映画会社を脅かしています。
斬新なのは、AIの機械学習を用いて視聴データを分析することにより視聴者の嗜好に合わせた推奨画面のデザインに変更を加えたり宣伝活動を行っています。
本記事ではそんな米国IT巨人の一角であるネットフリックスの展望について分析していきます。
■投資判断基準:「中立」
企業規模が大きいにも関わらず高成長率を維持している点は高評価できるものの、有料会員数の増加ペースが鈍化していることに加え競合他社の参入もあり、競合他社との明確な差別化が必要。
■ 指標関連:
▷ 競合他社との差別化に成功し、有料会員数が過年度同様の増加率を回復することができれば株価$288だが、保守的に見積もっても$522-$880は長期的に目指せる水準である。
▷ インカムゲインには期待せず、キャピタルゲインを追求すべき。
■ 業績見通し:
▷今後も高成長率は維持される見通しだが、成長率が鈍化する懸念あり。
■ 株主還元:
▷コンテンツ制作への投資を行っているため配当金は拠出していない。
Contents
収入は会員数に依存、安定的に新規会員を増やすことができるのか?
ネットフリックスは先述した通りサブスクリプション型のビジネスモデルですので同社の収益は有料会員数に依存します。
以下は2018年12月期のネットフリックスの事業別の売上高シェアです。
同社の売り上げの約半分は米国人の有料会員からの収入となっています。
なお、以下は2017年12月期における同社の事業別売上高シェアです。
下図からわかるように同社は米国以外の有料会員獲得に注力していることがわかります。
収益源の分散化を図るため、今後も米国外の有料会員の獲得に注力していくものと考えられます。
というのも、後述しますが米国にはアマゾンプライムやウォルトディズニーといった米国を本拠とする競合他社が多く存在します。
その為、競争が激化していくことが予想されているためです。
今後いかに米国外からの収益を増やしていくかが同社の課題であると言えるでしょう。
競合の参入により競争激化か?
オンライン動画配信サービスを提供する同社ですが、競争が激化するときが迫っているといわれています。
同社の主たる競合はアマゾンの提供するアマゾンプライムでした。
しかし、更にウォルトディズニー及びアップルは共に2019年中にストリーミングサービスを開始する計画と発表しています。
更にコムキャスト及びAT&Tも2020年に同サービスに参入予定です。
同社にとってウォルトディズニーのストリーミングサービスが大きな障壁となりうると考えられています。
ウォルトディズニーは、コンテンツの人気もさることながら、熱烈なファンを世界中に抱えているためです。
ネットフリックスはこうした競合他社に既存有料会員が奪われることはないと報じています。
しかし、競合会社はこれまでネットフリックスに提供してきた人気コンテンツのうち一部の提供を停止する計画と報じています。
有料会員数の減少又は有料会員の増加ペースが落ちることはありうるものと考えられます。
故にネットフリックスは今後、同社の提供するオリジナルコンテンツのコアなファンをいかにして世界中に増やしていくかという戦略を検討する必要があるように感じます。
決算に裏打ちされる圧倒的な成長率
それでは、ネットフリックスの業績と最新の決算情報について確認していきたいと思います。
年度 | Dec-14 | Dec-15 | Dec-16 | Dec-17 | Dec-18 | Dec-19 |
売上高 | 5,504.66 | 6,779.51 | 8,830.67 | 11,692.71 | 15,794.34 | 20,208.32 |
営業利益 | 402.65 | 305.83 | 379.79 | 838.68 | 1,605.23 | — |
税引前当期利益 | 349.37 | 141.88 | 260.51 | 485.32 | 1,226.46 | — |
当期利益 | 266.8 | 122.64 | 186.68 | 558.93 | 1,211.24 | 1,496.12 |
図に示すと以下の通りとなります。
過去5年の業績ですが、毎年右肩上がりの成長を実現しています。
同社は過去5年間、順調に有料会員数を増加させてきました。
最新決算では会員数の伸び悩みが浮き彫りに・・・
2019年7月17日の引け後、ネットフリックスが発表した2019年第2四半期の決算ですが、市場コンセンサス比まちまちの結果でした。
売上高は49億23百万ドルで、前年同期比26%増でした。
市場予想は、売上高49億30百万ドルでした。
EPSは市場予想0.56ドルに対して、0.60ドルでした。
決算内容は市場予想に近いものとなりましたが、有料会員数の増加が会社予想500万人であったのに対し270万人増に留まりました。
特に米国の会員数が予想外に減少したことが嫌気されています。
決算を受けて、株価は時間外で12%程度下落しました。
2019年秋以降にウォルトディズニーやアップルなどの大手企業が動画配信に参入することも株価には重荷となっています。
ネットフリックスの株価指標は過去比では割安も依然として割高な水準
ネットフリックスのPERについて見ていきましょう。
Sep-14 | Sep-15 | Sep-16 | Sep-17 | Sep-18 | Sep-19 | |
PER(倍) | 76.92 | 397.21 | 284.38 | 129.94 | 107.32 | 88.14 |
図示すると以下のようになります。
PERは2015年9月をピークに徐々に下落しています。
ただ現状でもPERは80倍台と非常に高い数値となっています。
依然として市場からの期待が高く株価が高い状態にあるということができるでしょう。
次にネットフリックスの1株あたりの純利益(EPS)と純資産(BPS)の推移をみてみましょう。
Sep-14 | Sep-15 | Sep-16 | Sep-17 | Sep-18 | Sep-19 | |
EPS | 0.63 | 0.29 | 0.44 | 1.48 | 2.72 | 3.31 |
BPS | 4.39 | 5.2 | 6.23 | 8.26 | 12 | 16.14 |
図示すると以下のようになります。
EPS及びBPSともにネットフリックスの成長に連動する形で右肩上がりとなっています。
同社のオリジナルコンテンツが顧客及び市場から評価されている証左であると考えられます。
ネットフリックスの課題と将来性は!?
以下はネットフリックスの直近5年間の株価水準です。
ネットフリックスの株価は直近5年間で5倍以上に成長しています。
しかし、2018年後半から2019年にかけては乱高下しており直近は下落傾向にあります。
競合他社のストリーミングビジネス参入による競争激化及びそれに伴う収益率の低下が懸念されています。
同社は競合他社との明確な違いを株主に示すことが重要であると思われます。
加えて、競争の激しい米国市場のみならず、アジア市場や欧州市場といった米国以外の市場で収益を伸ばす必要があります。
各地域の文化に即したオリジナルコンテンツを提供することを通じて安定的に有料会員数を増やし、市場から再度評価される必要があるようにも思えます。
EPSの増加率とPER水準から今後の株価を予想する
ネットフリックスの2014年から2018年までのEPSの年平均増加率はCAGRを用いて算出すると44.15%と算出されます。
保守的にEPS成長率10%、20%、30%、5年平均44.15%で上昇した場合のEPSの推移は以下となります。
EPS予想 | 10%成長 | 20%成長 | 30%成長 | 44.15%成長 |
20-Sep | 2.99 | 3.26 | 3.54 | 3.92 |
21-Sep | 3.29 | 3.92 | 4.60 | 5.65 |
22-Sep | 3.62 | 4.70 | 5.98 | 8.15 |
23-Sep | 3.98 | 5.64 | 7.77 | 11.74 |
24-Sep | 4.38 | 6.77 | 10.10 | 16.93 |
25-Sep | 4.82 | 8.12 | 13.13 | 24.40 |
PERについては、保守的に直近3年間の平均値である108.47倍を使用して株価を算出します。
株価予想 | 10%成長 | 20%成長 | 30%成長 | 44.15%成長 |
20-Sep | 324.54 | 354.05 | 383.55 | 425.30 |
21-Sep | 357.00 | 424.86 | 498.61 | 613.07 |
22-Sep | 392.70 | 509.83 | 648.20 | 883.74 |
23-Sep | 431.97 | 611.79 | 842.66 | 1273.91 |
24-Sep | 475.16 | 734.15 | 1095.46 | 1836.33 |
25-Sep | 522.68 | 880.98 | 1424.09 | 2647.08 |
現時点の株価が$288近辺です。
ネットフリックスの有料会員数が今後も過去同様のペースで増加し続け、成長率が鈍化しない限り、保守的に見積もっても2025年には$522-$880を目指せる水準となります。
尚、上記の想定はあくまでネットフリックスのクレジットイベントが発生せず、同社が現状の成長率を維持するという見通しである場合の想定となります。
まとめ
本拠地の北米での競合他社の参入で雲行きが怪しくなってきているNetflix。
しかし、依然として世界的なシェア拡大余地は多分に残されており長期的には大きく成長することができます。
以上、【NFLX】『ネットフリックス』の今後の株価推移を予想する!競合他社参入でNETFLIXの見通しに暗雲!?…でした。
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