経済新聞やニュースを見ていると、「日銀によるオペが」などという文章をよく目にします。
日経新聞のニュースなどでも度々目にしますよね。
予想外の減額だった。日銀は12日、償還までの期間が10年超~25年の国債の買い入れオペ(公開市場操作)を従来の2000億円から1800億円に減らした。
午前10時10分にオペが通知されると、債券市場では2016年11月以来の低水準にまで沈んでいた20年物を中心に国債利回りは上昇(価格は下落)した。
この日銀のオペについて、何となく全体像を知っているという方は多いと思います。
今回は、この日銀のオペの仕組みについて詳しく解説していきます。
目次
日銀の「オペ」とは?
オペという言葉は、「オペレーション」の略語で、日本語では「操作」という意味をもっています。
日銀のオペとは、「日銀による市場の操作」のことを指し、「公開市場操作」とも呼ばれています。
日銀は、市中に出回っている日本国債を買い取る、もしくは保有している国債を売却することによって、通貨の供給量を調整するのです。
日銀のオペは、「買いオペ」「売りオペ」の2つの種類に分かれています。
買いオペとは、日銀が国債を買い取ることで、市場に通貨を供給する政策です。
売りオペは、反対に日銀が国債を売って、市場から通貨を抜き取る政策を指します。
経済が「インフレ状態」で、物価が高騰気味の際は、日銀は「売りオペ」を実施して、経済を引き締めます。
市場の通貨量を減らすことで、お金の価値を上げていくのです。
お金の価値が上がれば、人々は「今、お金を使わずに、将来に使う」という選択をするようになり、消費量が減っていきます。
経済がデフレ状態にある際は、人々はなかなかお金を使おうとしません。
そのため、日銀は「買いオペ」を行うことで、市中への通貨供給量を増やしていきます。
具体的には、民間銀行が保有している国債を買い取って、民間銀行に通貨を集めていきます。
日銀が直接、消費者に通貨を渡すわけにはいかないので、あくまでも市場経済のルールに乗っ取って通貨を供給していきます。
日銀の買いオペによって、資金が潤沢になった民間銀行は、個人や企業に融資をしやすくなります。
民間銀行が融資を活発にしていくことで、個人、企業は消費、投資に回す資金を得ることが可能になります。
モノ、サービスに対する需要が徐々に上がっていきます。
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日銀のオペは万能ではない?
日銀のオペは、経済学の理論上は有効なものであるとされています。
しかし、実際の経済では、必ずしも万能であるとは限りません。
インフレ状態を抑制するための売りオペは、機能するケースが多いです。
しかし、デフレ下の買いオペでは、その効果が限定的であることが示されています。
たとえば、2012年の成立した安倍政権にて実施された「アベノミクス」について。
これは日銀による「買いオペ」が実行されました。
しかし、デフレ状態を多少改善することはできても、インフレ状態には至りませんでした。
2019年の日本では、少しずつ物価が上がってきています。
総務省が19日発表した3月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除く、コアCPI)は101.5となり、前年同月比で0.8%上昇した。
これは日銀による政策の成果というよりも、東京オリンピック開催による特需の影響が強いと想像します。
(ガソリン価格の上昇なども理由に挙げられていますが)
金融政策のみで「デフレを脱出する」ことは非常に困難なのです。
なぜデフレからインフレに至らせることが困難なのかは、様々な原因があるとされています。
1つは人々の間に「デフレマインド」が染みついているためとされています。
デフレマインドとは、「なるべくモノを買わないで、お金を貯める」という気持ちのことです。
デフレ下では、物価がどんどん下がっていくため、今お金を使うよりも将来的にお金を使った方が得であるとされます。
よって、消費はどんどん後回しにされ、経済の循環が悪くなっていくのです。
このお金を使わないというデフレマインドが根強く残っているために、いくら日銀が民間銀行にお金を流しても、民間銀行から個人にお金が渡っていかないのです。
この結果、民間銀行にのみお金が貯まっていくことになります。
銀行としても、手元にお金が余っている状態は勿体ないので、そのお金を別の所へ回すようになります。
その回し先が、株式市場などの「金融市場」です。
資金を運用して利益を出そうとして、お金が銀行から金融市場にどんどん流れていきます。
その結果、金融市場は大いに盛り上がり、投資家たちが莫大な利益をあげていくのです。
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日銀のオペは異次元の段階に入っている?国債買い入れの負担が限界に。
現在、日銀は「異次元金融緩和」と題して、買いオペを継続して行っています。
国債の金利が「マイナス」になるほどの金融緩和を実施されており、理論上、市中にはお金が大量にばらまかれていることになります。
但し、現在の日本でもインフレが十分に進んでいるとは言えません。
日銀の国債購入の負担は大きくなり、日銀がこれ以上の買いオペを断行できるか、疑問視されてきています。
国債がマイナスの金利になったことで、常識的に見ればそんな国債を購入する人はいなくなるはずです。
しかし、実際は金利がマイナスになっても国債を購入する人たちがいます。
それは、日銀が将来「現在市場で売られている国債価格よりも高い価格で買い戻す」ことを約束しているためです。
ただ、この約束は正式に文面で約束しているものではなく、あくまでも「口約束」のレベルです。
10年後に、日銀が約束通りに国債を買い戻してくれる保証はありません。
しかし、この約束を踏まえて、国債を購入している投資家が存在しているのは紛れもない事実です。
日銀の約束にウェイトを置いて考える場合、国債購入による「キャピタルゲイン」の獲得が、通常の株式売買よる獲得よりも容易になります。
株式売買の場合、市場の株価変動によって、キャピタルゲインの幅が変わってきます。
国債の場合、日銀が買い戻す前提を信頼すれば、10年間待つだけで、着実に売買益をあげることができます。
「株価変動」と「日銀の約束」を天秤にかけて、どちらが低リスクかを考えた結果、市場の国債購入者は後者の方が低リスクと踏んだと言えますね。
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世界も日銀の金融政策に注目
2012年から実施されている「アベノミクス」によって、日銀の量的金融緩和政策は世界中から注目を浴びることになりました。
中央銀行の買いオペ、売りオペの積極導入によって、少なくとも市場の雰囲気を一変させて、株取引を活性化させることに成功したためです。
日銀総裁である黒田東彦氏は、日銀での業績から2014年に「セントラル・バンカー・オブ・ザ・イヤー2014」の世界部門を受賞しました。
ノーベル経済学賞を受賞した経済学者ジョセフ・E・スティグリッツ氏も黒田氏の手腕を高評価しています。
日銀の追加金融緩和の発表の度に、市場が反応して株価を伸ばしていったため、この追加金融緩和は「日銀バズーカ」と呼ばれるようになりました。
この追加金融緩和が、最終的に日本を好景気にするか否かは現状、まだ答えを出せない状況です。
しかし、世界中の投資家や経済学者が、日銀の金融緩和政策に注目していることは事実です。
東京オリンピックを目前に控えて、今後も日銀が金融緩和政策を推し進めていくのか、要チェックです。
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まとめ
日銀の買いオペ、売りオペは市中の通貨量をコントロールするのに欠かせない金融政策です。
特に、アベノミクス以降の量的金融緩和政策は、市場の株価を底上げするほどの大規模なものとなっています。
日銀ができることは、市中の通貨量をコントロールすることだけで、実際にモノが生産され消費されていくには、企業や家計の行動が鍵となります。
日本経済が、株価の高騰に対して、そこまで成長していないことを踏まえると、まだ家計の中で「モノを購入しない」意識が根強く残っていると言えます。
このような状況を踏まえて、今後も日銀が買いオペ、売りオペを始めとした量的金融緩和政策を拡大していくのか否か、注視していかねばなりませんね。
以上、経済循環を支える日本銀行の「買いオペ」「売りオペ」とは?…でした。