日本株式を扱っているのであればNT倍率は必須の知識です。
NT倍率についての知識は相場の流れを読むのに役立ちます。
NT倍率を分析することで、大型株、小型株どちらが買われているのか読み解くことが可能です。
今回は、日本株式市場の資金の流れを読むことができるNT倍率について紹介します。
NT倍率が高い(低い)理由や過去最高値など分析に役立つ知識も合わせて紹介しますのでぜひ参考にしてください。
Contents
NT倍率の見方とは?高いと意味することとは?
NT倍率とは日経平均株価をTOPIXで割った数値です。
日経平均株価とTOPIXの相対的な動きを分析するのに適しています。
2000年以降はおおよそ10倍~12倍程度で推移してきましたが、ここ最近NT倍率が上昇していました。
しかし、2020年2月中盤以降のNT倍率は急落しています。
NT倍率が高いということは日経平均がTOPIXに対して相対的に上昇していることを意味しています。
一方、NT倍率が低いということは日経平均がTOPIXに対して相対的に下落していることを意味しています。
NT倍率の上昇や下落の原因を理解するには、日経平均株価とTOPIXがどういうものか知らなければなりません。
日経平均株価とTOPIXについて説明したあと、直近のNT倍率の急落の理由についてお伝えしていきたいと思います。
日経平均株価とは?
日経平均株価とは日本を代表する企業225社で構成される株価指数です。
日本の株式市場の動向を表す株価指数としてニュースなどでも頻繁に利用されています。
日経平均株価指数の選定は、流動性が高い日本を代表する企業の中から業種に偏りが生じないように選ばれています。
採用銘柄は「トヨタ」や「味の素」、「日立」など誰もが知る有名企業が多いです。
流動性が高い銘柄ばかりですので多額の資金を運用する機関投資家や海外投資家も日経平均採用銘柄をメインで取引します。
日経平均採用銘柄は225社と2,000社を超える東証一部上場企業の数からすれば1割程度です。
しかし、時価総額では大きなポーションとなっています。
2019年11末時点での東証一部の時価総額は639兆円となっています。(参照:日本取引所)
一方、日経平均株価に採用されている225銘柄の時価総額は2019年11末時点で385兆円と東証一部の約6割を占めているのです。
日経平均株価は採用銘柄の株価を平均した数値ですので株価が高い銘柄ほど指数に与える影響が大きくなります。
株価を平均しますので、同じ変動率であっても数値自体が大きい方が影響も大きくなるのです。
例えば、同じ変動率10%であっても100円→110円と10,000円→11,000円とでは変動幅は10円と1,000円と大きく異なります。
ゆえに株価の大きな銘柄(値がさ株)の影響が大きくなります。
ファーストリテイリングは1株が67,000円台ですからね。(2019年12月17日時点)
時価総額トップのトヨタは株価自体が7,800円台ですので、ファーストリテイリングが8倍以上の影響力を持ちます。
算出方法は大きくことなりますが、過去からの値動きは基本的には同様の動きをしています。
東証株価指数(TOPIX)とは?
TOPIXとは全ての東証一部上場企業で構成される株価指数です。
2,000社を超える銘柄で構成されています。
TOPIXは日経平均株価と異なり時価総額をベースにした指数です。
ですので、株価の高い低いは関係なく時価総額の大きい大型株ほど指数に与える影響は大きくなります。
以下はTOPIXと日経平均株価の構成上位銘柄の比較です。
順位 | TOPIX構成上位 | 構成比率 | 日経平均構成上位 | 構成比率 |
1位 | トヨタ自動車 | 3.38% | ファーストリテリング | 8.85% |
2位 | 三菱UFJ | 1.75% | ソフトバンクグループ | 4.54% |
3位 | ソニー | 1.69% | ファナック | 3.26% |
4位 | NTT | 1.42% | KDDI | 2.90% |
5位 | ソフトバンクグループ | 1.42% | 東京エレクトロン | 2.78% |
6位 | キーエンス | 1.29% | ユニファミリーマート | 2.26% |
7位 | 三井住友 | 1.20% | テルモ | 2.00% |
8位 | ホンダ | 1.16% | 京セラ | 2.17% |
9位 | みずほ | 1.08% | ダイキン工業 | 2.09% |
10位 | KDDI | 1.07% | 信越化学工業 | 1.63% |
日経平均株価はソフトバンクやファナック、東京エレクトロンといったテクノロジー企業の割合が多くなっています。
一方、TOPIXは順当に時価総額が大きい順に組み入れられているのでお馴染みの顔ぶれとなっています。
NT倍率が高い(低い)理由
それではなぜNT倍率が変動するのか?
という本記事の核心に迫っていきたいと思います。
大型株と小型株の値動きの違い
日経平均株価が大型株の値動きを表した指標であるのに比べ、
TOPIXは小型株を含む市場全体の値動きを表した指標であることは既に説明したとおりです。
時価総額全体の6割は被っていますが、逆にいうと4割は被っていないということです。
NT倍率は「日経平均株価÷TOPIX」ですので、NT倍率が高いということは大型株が小型株より強いということです。
NT倍率が低いということは小型株が大型株より強いということになります。
NT倍率はあくまでも日経平均株価とTOPIXの相対的な関係を数値化したものです。
相場環境が良くても悪くても、日経平均とTOPIXが同じように上昇(下落)しているのであればNT倍率は変動しません。
NT倍率が高いということは小型株より大型株が買われているということです。
日銀の日経平均ETF買い
現在日銀は金融緩和政策の一つの手段としてETF買いを行っています。
主に買われているのはTOPIX型のETFと日経平均型のETFです。
TOPIXは東証一部上場企業全ての銘柄が対象です。
日経平均銘柄も含まれておりTOPIX型ETFの買いはNT倍率には影響を及ぼしません。
一方で日経平均型のETF買いは日経平均採用銘柄の株価のみを押し上げる効果があります。
結果的にNT倍率の上昇へと繋がります。
NT倍率が現在過去最高値に近づいているのは日銀のETF買いの影響もあるといえます。
影響がある業種の違い
日経平均株価とTOPIXではそれぞれに大きい影響力を持つ業種が異なります。
日経平均株価は値がさ株の影響が大きいため、値がさ株の多いハイテク関連セクターや外需関連株などの値動きが特に重要です。
一方、TOPIXは時価総額が大きい銘柄の影響が大きいので時価総額の大きな銀行などの内需株の値動きが重要となります。
外需関連株は海外景気の影響や為替の影響を強く受けますので世界的に景気が良い時期や円安の時期は、
日経平均株価がTOPIXに比べて相対的に強くなりNT倍率は高くなる傾向があります。
内需関連株は外需関連株に比べて景気動向に業績が大きく左右されません。
景気が悪い時期や円高が進んでいる場合などはTOPIXが日経平均より強くなりNT倍率が低くなる傾向があります。
このようにNT倍率を構成する日経平均株価とTOPIXは指数に大きな影響を持つ業種が異なります。
それらの値動きによってNT倍率が変動するのです。
海外投資家の売買動向
海外投資家の売買動向もNT倍率を左右する要因です。
投資金額が大きい場合、流動性の低い小型株では取引ができません。
自分の注文で株価が大きく変動してしまう、或いは売買自体が成立しないからです。
よって、巨額の投資額を持つ海外投資家の取引は流動性の高い日経平均銘柄がメインとなります。
国内株式市場における海外投資家の売買シェアは60%~70%程度と高く海外投資家による売買の影響は大きいです。
海外投資家の売買によって日経平均株価の値動きは左右されます。
それをうけてNT倍率も変動することになります。
海外投資家の買い(売り)≒日経平均株価の上昇(下落)となります。
海外投資家が買いだとNT倍率は高くなり海外投資家が売るとNT倍率は低くなる傾向があります。
直近まで過去最高値水準となっていたNT倍率
NT倍率はバブル期に過去最高値である14倍を記録していました。
2020年2月まで2,000年以降の最高値を更新していたのです。
NT倍率が高い理由は、前述のような要因もあります。
しかし「ファーストリテイリング」や「ソフトバンク」などの値がさ株が急成長し株価も高くなっているということも原因です。
日経平均採用銘柄は入れ替わっています。
単純に過去のNT倍率を参考にするのは危険ですが過去最高値水準にNT倍率があるということは認識しておきましょう。
コロナショックでのNT倍率の急落理由
直近まではNT倍率は高騰していましたが、直近は最初に申し上げた通り急落しています。
理由①:日銀のETF買い入れでTOPIXが日経平均に対して優勢に
日銀は2020年3月17日にコロナショックの対応策としてETFの買い入れ増額を、
従来の年間6兆円から12兆円に増額することを発表しました。
(3)ETF・J-REITの積極的な買入れ(全員一致) ETFおよびJ-REITについて、当面は、それぞれ年間約12兆円、年間
約1,800億円に相当する残高増加ペースを上限に、積極的な買入れを行う。
結果として日銀のETFの買い入れ比率が多いTOPIXの方が日経平均に対して強含む大きな要因となっています。
Bloombergでも市場は日銀の買い支えが積極化するとの味方が優勢になっていると報じています。
日本銀行が上場投資信託(ETF)買い入れ目標額を引き上げたことで、株式市場では3カ月程度は買い入れの回数と金額の両面で積極的な買い支えを行うとの見方が出ている。
日銀は16日、ETF買い入れ目標額の上限を従来の年間約6兆円から約12兆円に引き上げることを決定した。一方、声明文ではETFについて、原則的な買い入れ方針としては年6兆円ペース、買い入れ額は上下に変動しうるとの従来方針も同時に示した。
参照:Bloomberg
理由②:大型銘柄中心の日経平均の買われすぎの修正
直近日経平均はバブル崩壊後の最高値水準まで高まっていました。
海外の短期で取引を行う場合、流動性の高い日経平均先物を取引する傾向が強いです。
結果として追随して日経平均株価も上昇していきました。
現在は一転して海外の投資家が日本株を売却して現金化を進めるという逆流がおこりました。
結果として今まで購入していた日経平均銘柄が売り込まれています。
理由③:ソフトバンググループが大きく売り込まれているから
ソフトバンクは値嵩株であるため、日経平均株価の構成比率はファーストリテイリングに次ぐ第二位となっています。
しかし、直近問題となったWeWorkの不振からの赤字転落。
更にコロナショックでの世界的な株安で業績に大きな懸念が持たれています。
結果的に株価は年初来高値から半値にまで減少しています。
まとめ
今回は日本株式市場の株価動向を測る指標NT倍率について紹介しました。
最後に重要点をまとめます。
- NT倍率は日経平均株価÷TOPIX
- NT倍率は小型株と大型株それぞれの値動きの違いによって変動する
- NT倍率が上昇(下落)している場合は、大型株(小型株)が相対的に小型株(大型株)より強い
- NT倍率は日銀のETF買いやセクター別の動向、海外投資家の動向の影響を受ける
- 直近までNT倍率は過去最高値である14倍に近い水準でありここ20年で最も高い水準
- コロナショックによってNT倍率は13倍を割り込む水準まで急落
NT倍率はどのような銘柄が買われているのかを知ることができる指標です。
株式投資を行っている方は、ぜひこの記事を参考にNT倍率を投資に活用してください。
以上、日経平均株価をTOPIXで割った数値「NT倍率」とは?チャート上過去最高値に近い指標の実態と変動要因を説明。…でした。