経済新聞などを読んでいると、「公開市場操作」というワードがたまに出てきます。
ただ、実際に公開市場操作について正確に把握している人は少ないかと思われます。
今回は、この公開市場操作を分かりやすく解説していきます。
目次
公開市場操作とは?
公開市場操作とは、中央銀行が貨幣の流通量を調整して、貨幣価値を安定させる政策です。
なぜ、通貨の流通量をコントロールするかというと、通貨が大量に市中に出回ると「通貨が有り余っている=通貨の価値が低くなる」ためです。
極端な例ですが、道端に大量のお札が落ちているとすると、最初はそのお札を目の色を変えて拾う人が多いと予想されます。
しかし、次第にお札が道に落ちていることが「当然」になってきます。
逆に、通貨が市中に全く出回ってないと、それはあたかも「幻の存在」と捉えられ、価値が上昇していくのです。
このような事態を防ぐために、中央銀行が貨幣の流通量をコントロールして、上手い具合に価値を安定させなくてはならないのです。
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公開市場操作の方法
そんなことをしたら、市場経済の仕組みを変えてしまうことになるので、中央銀行も市場経済のルールに従って、「公開市場操作」を実施します。
たとえば、市中に大量の通貨が出回っていて、その量を減らしたい際、中央銀行は保有する有価証券(国債・社債など)を売って、市場の通貨を回収します。
これを「売りオペレーション」(=売りオペ)と言います。
反対に、市中の通貨が不足している場合は、市場の有価証券を中央銀行が買い取って、通貨を市場に流し込みます。
これを「買いオペレーション」(=買いオペ)と言います。
中央銀行は、売りオペと買いオペを上手く組み合わせて、市場に出回る通貨量を調整しているのです。
日本の場合、日本銀行が民間銀行に国債を売ることで売りオペを行います。
逆に、民間銀行の保有する国債を買い取ることで買いオペを実施します。
日銀の公開市場操作は、民間銀行を軸にしているため、効果が表れるまでタイムラグがあります。
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アベノミクスの金融政策も「公開市場操作」によるものだった?
2012年により始まった安倍内閣において、「三本の矢」による経済・金融政策(=アベノミクス)が実施されました。
この三本の矢のうち、一本目の矢として挙げられたのが、「大胆な金融政策」です。
この金融政策は「量的金融緩和政策」と呼ばれます。
量的金融緩和政策とは、日本銀行にある民間銀行の当座預金の残高を増やすことで、民間銀行による融資を促進させる政策です。
民間銀行は、日銀に各銀行名義で当座預金を保有しており、公開市場操作による資金決済は、この当座預金で行われます。
量的金融緩和政策は、公開市場操作そのものであると言いても良いでしょう。
ただ、量的金融緩和政策は、「当座預金残高を増やす」ことにウェイトを置いているため、景気を好調にさせるという色が強いです。
対して、公開市場操作は、市中の通貨供給量をコントロールする面が強く、景気の行き過ぎを抑制する意味合いも含んでいます。
アベノミクスによる量的金融緩和政策によって、民間銀行に大量の資金が集まることになりました。
アベノミクスの狙いは、この資金が企業や個人への融資に繋がり、経済活動が活発になることでしたが、この資金は思わぬ方向へ流れていきます。
当座預金にある資金の使い道は、民間銀行の自由ですので、この資金を株式市場に投資して、利益を稼ぐ銀行が相次いで出てきたのです。
この結果、株価は急騰していき、投資家たちは歓喜します。
これ以後、日銀が量的金融緩和政策を継続して行っていくという発表があるたびに、株価が上昇するという反応を見せるようになります。
株価が上がるようになり、市中の資金は株式市場へどんどん向かうようになります。
そのため、株価上昇によって儲かった一部の大手企業を除いて、多くの企業は従業員たちの給料を上げることができない状態が続いていきます。
経済成長率に殆ど変化がなく、金融市場にばかりマネーが集まっているのが現状です。
2020年の東京オリンピックによる特需は多少期待できますが、オリンピックが終わった後、失業者が続出する可能性が高いという見解も多く見られます。
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公開市場操作と公定歩合操作の違い
よく、「公開市場操作」と「公定歩合操作」を混同する方がいます。
公開市場操作は、売りオペと買いオペによって、市中に流通する「通貨量」を調整します。
これに対して、公定歩合操作は「公定歩合」と呼ばれる中央銀行が民間銀行に資金を貸し付ける際の「利率」をコントロールすることで、銀行の保有する資金量を調整します。
1990年代以前は、日本でも公定歩合操作による調節が行われてきました。
これは、日銀が設定した公定歩合が、民間銀行の預金金利と連動する仕組みを設けていたため、公定歩合の操作によって、銀行の保有通貨量をコントロールできたためです。
財務省と金融庁の前身である大蔵省は、民間銀行を管理下に置き、厳しい規制を課していました。
民間銀行は、株式会社でありながら、国からの制約を受けるという歪んだ関係を大蔵省と結ばされていたのです。
この大蔵省の体制は、規制緩和が進んでいた欧米諸国と比較して、時代遅れのものであるとされ、内外から非難を浴びていました。
この結果、1994年に金利の自由化が行われます。
民間銀行は大蔵省の顔色を伺う必要が無くなり、自由に金利を設定することが可能になりました。
そして、民間銀行の預金金利と公定歩合は連動性が無くなりました。
ただ、日本銀行からすると、民間銀行が公定歩合よりも高い金利を設定できるようになったため、いくら公定歩合を調節しても、銀行に集まる資金量を調節できなくなり、政策転換が迫られることになりました。
この結果、公定歩合操作は金融政策としての有効性を無くしていき、代わりに有価証券の売買によって資金量を調節する公開市場操作がメジャーな金融政策となっていったのです。
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まとめ
公開市場操作は、現代の経済社会を成り立たせるために欠かせない金融政策です。
ただ、その効果に関しては、無限大のものではなく、完全にお金の流れをコントロールすることは難しいということも表面化してきました。
公定歩合操作がなくなって、公開市場操作が台頭してきたように、今後、新たな金融政策が登場してくるかもしれません。
日銀を始めとした中央銀行の発言、発表を注意深く見ていく必要がありそうです。
以上、【公開市場操作とは?】お金の循環をコントロール!貨幣価値を安定させるその政策をわかりやすく解説。…の話題でした。