アメリカを代表する企業のひとつであるプロクター&ギャンブル。P&Gという呼び名でお馴染みです。
P&Gの製品は、だれもが一度は使ったことがあるのではないでしょうか?
P&Gは、景気動向に左右されにくい商品を中心に扱っており、安定して利益を出し続けています。
そのため、なんと63年間連続で増配を続けています。
配当金については追って詳しく紐解いていきますので最後までご覧いただければと思います。
そんなP&Gの今後の見通しについて、業績や株価指標を見ながら予想していきます。
■投資判断基準:長期保有目的で「買い」推奨
以下の点を総合的に勘案し増配メリットを受けながら長期的に$140の水準に上昇することが期待される。
■ 業績見通し:
▷ 徐々に利益水準を伸ばしており今後も世界景気の拡大に伴い業績は徐々に上昇していくと想定される。
■ 指標関連:
▷ ROEは23%程度である程度高水準
▷ PERは25倍程度で安定している。
■ 株主還元策の動向:
▷ 63年連続で増配中の配当貴族銘柄で長期保有で簿価ベースで高い配当利回りを獲得できる。
Contents
P&G(プロクター・アンド・ギャンブル)とは?
P&Gは、1837年創業に創業し、アメリカのオハイオ州に本社を置くいています。
世界最大の一般消費財メーカーでホームケア商品や紙製品、化粧品やヘルスケア商品など、取り扱う商品は多岐に渡ります。
様々な事業でバランスよく稼いでいるのも同社の特徴です。
アメリカやヨーロッパ、中国をはじめ、アジアやラテンアメリカ、アフリカや中東など、世界180か国で事業展開しています。
日本ではP&G Japanを展開
世界180か国で事業展開しているP&Gですが、日本の神戸市にも日本法人を持っています。
P&Gはブランド戦略に優れており、製品はどれも一度は耳にしたことがあるものばかりです。
国内で販売されている主な製品としては、
- 衣料用洗剤、柔軟剤:アリエール、ボールド、さらさ、レノア
- 食器用洗剤:JOY
- 消臭剤:ファブリーズ
- 紙おむつ:パンパース
- ヘアケア製品:パンテーン、ヘアレシピ、h&s、ヴィダルサスーン、ハーバルエッセンス
- 化粧品:SK-Ⅱ
- シェーバー:ジレット、ジレットヴィーナス、ブラウン
などがあります。
P&Gの製品は、どれも景気の良し悪しに関係なく、常に私たちの生活に必要不可欠なものが多いのが特徴です。
加えて、その優れたマーケティング力を駆使して業界内でも高いシェアを獲得し、安定した収益構造を築いています。
マーケティング力に強み!人材輩出にも高い評価
P&Gは、マーケティング戦略に極めて力を入れている企業としても有名です。
P&Gのブランド戦略がMBAのケーススタディとして使われることも多いようです。
また、社内での競争も激しくビジネス誌のフォーチュンでは「社員の能力」が世界1位に選ばれており、
人材輩出企業としても高く評価されています。
63年連続増配!配当貴族銘柄の筆頭
P&Gは連続増配銘柄としても有名で、63年連続で増配しています。
日本の企業では最長が花王の30年なので、倍以上の年月を増配し続けているということになります。
配当金は通常、利益余剰金から支払います。
つまり、利益がしっかりと増えていないと、支払う配当金を増やすことができません。
逆に言うと、P&Gは、63年間様々な経済的・政治的混乱があったなかでも着実に利益を積み増してきた優良企業であると言えます。
そのため、長期で安定して配当を受け取りながらじっくり保有したいという方にはうってつけの銘柄です。
P&Gは、25年以上連続増配を続ける大型銘柄を集めたスマートベータ指数である、「S&P500配当族指数」の中にも含まれていますよ。
P&Gの安定した業績推移
過去6年の業績です。当期純利益では多少上下があるものの、その他の項目ではほとんど動きがありません。
(百万$) | Jun-14 | Jun-15 | Jun-16 | Jun-17 | Jun-18 | Jun-19 |
売上高 | 74,401 | 70,749 | 65,299 | 65,058 | 66,832 | 67,426 |
営業利益 | 13,910 | 11,049 | 13,441 | 13,955 | 13,711 | |
税引前当期利益 | 13,509 | 11,012 | 13,369 | 13,257 | 13,326 | |
当期利益 | 11,643 | 7,036 | 10,508 | 15,326 | 9,750 | 11,785 |
わかりやすく図示すると以下の通りとなります。
先日発表された4-6月期の決算では、かみそりの「ジレット」事業の評価損を計上し純損益は赤字となりました。
しかし、化粧品事業を中心に好調で、売上高・利益共に市場の予想を上回り、株価は過去最高を更新しています。
株価は割安水準なのか?
PERは現在の株価が利益に対して割安かどうかを示す指標です。
P&GのPERは、25倍近辺で安定して推移しています。
株価は、PER×EPSで表されます。EPSは一株当たりの利益のことです。
P&GのEPSは2015年から順調に伸び続けています。
それに伴い株価も上昇しているため、PERはほとんど変化がありません。
利益が伸びていても一向に株価が伸びず、PERがどんどん下がっていく株も時々見受けられます。
しかし、P&Gは利益の伸びがしっかりと株価に反映される傾向があるようです。
ちなみに、BPSは一株当たりの純資産です。
こちらも多少の上下があるもののほぼ横ばいを維持しており、財務状態が悪いということもなさそうです。
P&Gは長期保有で大きな配当利回りを獲得できる配当貴族銘柄
P&Gの最大の魅力はやはり63年連続で増配を実施しており代表的な配当貴族銘柄となっています。
以下は1999年から2016年の配当金の推移ですが1999年の$0.57から現在2019年時点の$2.91では5倍以上となっています。
配当金 | 増加率 | |
1999 | 0.57 | |
2000 | 0.64 | 12.3% |
2001 | 0.7 | 9.4% |
2002 | 0.76 | 8.6% |
2003 | 0.82 | 7.9% |
2004 | 0.93 | 13.4% |
2005 | 1.03 | 10.8% |
2006 | 1.15 | 11.7% |
2007 | 1.28 | 11.3% |
2008 | 1.45 | 13.3% |
2009 | 1.64 | 13.1% |
2010 | 1.8 | 9.8% |
2011 | 1.97 | 9.4% |
2012 | 2.14 | 8.6% |
2013 | 2.29 | 7.0% |
2014 | 2.45 | 7.0% |
2015 | 2.59 | 5.7% |
2016 | 2.66 | 2.7% |
2017 | 2.7 | 1.5% |
2018 | 2.79 | 3.3% |
2019 | 2.91 | 4.3% |
わかりやすく図示すると以下となります。
肝心なのは配当金そのものの金額ではなく配当利回りです。
配当利回りは、投資額に対する年間配当金額で算出します。
直近では株価が上がってきているため、利回りは下がっていますが、それでも2.5%を超える水準です。
Jun-14 | Jun-15 | Jun-16 | Jun-17 | Jun-18 | Jun-19 | |
配当(ドル) | 2.45 | 2.59 | 2.66 | 2.7 | 2.79 | 2.91 |
配当利回り | 3.12% | 3.31% | 3.14% | 3.09% | 2.47% | 2.58% |
わかりやすく図解すると以下となります。
ここで一つ考えていただきたいのですが、現在のP&Gの株価は$115近辺です。
では2000年の株価が約$30の時に投資を行い現在の配当金$2.91を獲得できるとすると、投資簿価ベースでの配当利回りは10%近くなります。
仮に1984年の株価が$3の時に投資している方は、衝撃の配当利回り100%を達成していることになります。
為替レートが一定とすると、当時P&Gに100万円投資していれば、
株価の上昇で3600万円になっており更に毎年税前で100万円の配当金を獲得しているということになります。
つまりP&Gは長期投資に非常に適した銘柄ということができます。
更に今後もこの傾向は継続していく可能性が高いでしょう。
アメリカの企業は、日本の企業に比べ株主が強いので、急に増配をやめることや、減配するということもあまりありません。
そのため、今後も増配が続くということは十分期待できるのではないでしょうか。
また、日本企業の配当金支払は年1回、もしくは2回ということが多いです。
しかし、アメリカでは年4回が主流です。P&Gは、2月、5月、8月、11月が配当支払い月となっています。
日本株で配当を取ろうとしたとき、機会を逃すと次のチャンスは半年先になってしまいます。
しかし、アメリカの株式は配当を受け取る権利を取るチャンスが多いという点でも魅力的ですね。
P&Gは今後も安定した業績を維持できる?
P&Gの製品は、私たちの生活には欠かせないものばかりで、売上高なども景気動向にはあまり左右されません。
また、日用品を手に取って購入するとき、「CMで見たことがある」「名前を聞いたことがある」という理由で使い始めると、
なんとなく同じものを使い続けるということも多いのではないでしょうか。
マーケティング戦略に優れているP&Gの製品は、まさに「CMで見て使い始めて、なんとなくずっと使っている」という状態になるものが多く存在します。
これまで安定した業績を維持し続けることができており、今後も簡単に業界での立ち位置が大きく変わることもないでしょう。
事業のさらなる拡大のカギを握るのはアジアを中心とした新興国市場です。
たとえば紙おむつや生理用品などは、今まで新興国の人々は使ってこなかった、使わなくてもよかったものです。
しかし、段々と新興国の人々が豊かになり、そのようなものを使い始め、使うことが当たり前になってきます。
アジアを中心とした新興国では爆発的に人口が増え続けていきます。
人口増加を伴った成長が著しい地域で競争力のある製品を提供できれば市場は爆発的に増えるはずです。
もちろんそういった地域を新たなマーケットとして狙っている企業はたくさんあるわけですが、
日用品メーカーとして世界最大の規模を持ち、世界一優秀な社員を抱えるP&Gの今後の事業戦略に注目したいですね。
P&Gの今後の株価を予想する
P&Gの株価は『EPS×PER』と、増配の勢いの両面から算定していきたいと思います。
EPSとPER水準から株価を予想
先ほど見てきた通りPERは25倍で一定なのでEPSの増加率と掛け合わせて算定していきたいと思います。
過去5年間のEPSの平均成長率は3.7%ですので今後5年のEPSの成長とPERを掛け合わせた株価は以下となります。
EPS | 株価 | |
Jun-19 | 4.52 | 113.00 |
Jun-20 | 4.69 | 117.18 |
Jun-21 | 4.86 | 121.52 |
Jun-22 | 5.04 | 126.01 |
Jun-23 | 5.23 | 130.68 |
Jun-24 | 5.42 | 135.51 |
着実に少しずつではありますが上昇していくことが見込まれます。
配当金水準から株価を予想
配当金は以下の通り一貫して上昇していますが、近年は増加率が減少傾向です。
直近5年間の平均配当金増加率は3.5%となっています。
また配当利回りについては過去5年の最低が2.47%、最高が3.31%、平均が2.95%となります。
上記条件を元に株価を予想すると以下の通りとなります。
配当金 | 各配当利回りの場合の株価 | |||
2.47% | 2.95% | 3.31% | ||
2020 | 3.01 | 121.937 | 102.097 | 90.992 |
2021 | 3.12 | 126.205 | 105.670 | 94.177 |
2022 | 3.23 | 130.622 | 109.368 | 97.473 |
2023 | 3.34 | 135.194 | 113.196 | 100.885 |
2024 | 3.46 | 139.926 | 117.158 | 104.416 |
EPS、配当利回り両面から最大$140まで株価が上昇することが見込まれます。
この期間は配当金を受け取り続けることとなりますので、実際のリターンは更に大きくなります。
まとめ
P&Gは、日用品メーカーとして長らく世界一の座に君臨しており、今後もそれは変わらないでしょう。
バランスの取れた事業構造と、圧倒的なマーケティング力・ブランド力を武器に、引き続き安定した業績を維持していくと思います。
ただし、業績が安定しているが故に、株価が急激に上昇するということはあまりありません。
実際にS&P500に対してパフォーマンスで劣後しています。
以下は比較ですがPortfolio1はP&GでPortfolio2はS&P500指数ですが、株価のパフォーマンスとしては劣っています。
安定よりも成長株が好まれる相場においては、大きな値上がりは期待できません。
逆に、相場全体が不安定になったときや不況期に突入したときは強みを発揮します。
P&Gのような景気に左右されにくく、株価が上がらなくても配当収入をしっかりと得られる銘柄が好まれます。
現在、米中貿易摩擦の激化や、欧州の政情不安などを受け、世界の株式市場が不安定な状況になってきています。
このまま世界景気が減速していく可能性も十分にあります。
そのため、景気敏感株を中心に保有していてディフェンシブ株に資金を振り向けたいという方には、P&Gはおすすめの銘柄です。
■投資判断基準:長期保有目的で「買い」推奨
以下の点を総合的に勘案し増配メリットを受けながら長期的に$140の水準に上昇することが期待される。
■ 業績見通し:
▷ 徐々に利益水準を伸ばしており今後も世界景気の拡大に伴い業績は徐々に上昇していくと想定される。
■ 指標関連:
▷ ROEは23%程度である程度高水準
▷ PERは25倍程度で安定している。
■ 株主還元策の動向:
▷ 63年連続で増配中の配当貴族銘柄で長期保有で簿価ベースで高い配当利回りを獲得できる。
以上、【プロクター&ギャンブル】安心して長期保有できる63年連続増配の配当貴族銘柄であるP&Gの株価を予想する!…でした。
コメントを残す