これまでのコンテンツで、会社員の手取りの給料の仕組み、所得税の計算方法を紹介してきました。
このコンテンツでは、会社員であれば必ず把握しておきたい「所得控除」について解説していきます。
うまく控除を活用して、少しでも節税していくようにしましょう。
目次
Contents
会社員が押さえるべき3種類の所得控除(給与所得・配偶者・生命保険料)
控除は「基礎控除」「所得控除」と「税額控除」に分けることができます。
「基礎控除」は全員が享受できます。
「税額控除」は住宅ローンなど、使える場面がかなり限られています。
そこで、ここではいかに「所得控除」をうまく使って、税金の額を減らすかに着目して解説していきます。
「所得控除」の項目は実は、以下のように非常にたくさんあります。
(引用:国税庁「所得金額から差し引かれる金額(所得控除)」)
多すぎて全てを把握しようとすると気が滅入ってしまいそうですよね。
まずは、所得控除の中の、「給与所得控除」「配偶者控除」「生命保険料控除」の3種類の控除について理解しましょう。
サラリーマンは理解必須な「給与所得控除」
サラリーマンは、自営業やフリーランスと違って、経費を使って税金の額を減らすということができません。
しかし、それでは不公平なので、「給与所得控除」という制度があります。
これはサラリーマンをしていく上でも、「カバンやスーツや靴など様々な経費がかかっているよね」ということで、受けられる控除制度です。
受けられる額は以下の表を確認してみてください。
給与等の収入金額(給与所得の源泉徴収票の支払金額) | 給与所得控除額 |
1,800,000円以下 | 収入金額×40% 650,000円に満たない場合には650,000円 |
1,800,000円超〜3,600,000円以下 | 収入金額×30%+180,000円 |
3,600,000円超〜6,600,000円以下 | 収入金額×20%+540,000円 |
6,600,000円超〜10,000,000円以下 | 収入金額×10%+1,200,000円 |
10,000,000円超 | 2,200,000円(上限) |
(注) 同一年分の給与所得の源泉徴収票が2枚以上ある場合には、それらの支払金額の合計額により上記の表を適用してください。
例えば年収が500万円の場合は以下の通りとなります。
◾️ 年収500万円の場合の給与所得控除:
- 給与所得控除:5,000,000円×20%+540,000円=1,540,000円
- 給与所得控除後の所得:5,000,000円-1,540,000円=3,460,000円
会社から受領する源泉徴収票に記載があるはずです。
最終的な所得である3,460,000円に税金が掛かってくる、ということですね。
実はちょっと複雑な「配偶者控除」
配偶者控除についても簡単に解説をします。
「配偶者控除」は、自分に一定以下の収入しかない配偶者がいた場合に受けられる控除制度です。
「家族がいて、その人の分も自分が働いていかないといけないなんて大変だね・・・じゃあその分税金まけてあげるよ」
というのが配偶者控除です。
配偶者控除は、収入から38万円控除されますが、配偶者の年収が103万円以下であることが条件です。
ただし、配偶者の年収が103万円を超えても、「配偶者特別控除」というものを受けることもできます。
配偶者特別控除により、配偶者の年収が150万円までは、配偶者控除と同じく、38万円の控除を受けることができます。
150万円を超えてしまうと控除額が徐々に、減ってしまいます。
配偶者の年収が130万円を超えると、自分で社会保険料を納めないといけなくなるため、注意が必要です。
そして、そもそも配偶者控除を受けるには、世帯主の所得が一定の額以下でなければいけません。
世帯主の所得が900万円を超えると、徐々に配偶者控除の額が減額されていきます。
所得が1,000万円を超えると配偶者控除を全く受けられなくなるので注意しましょう。
生命保険料控除の計算の仕方は少々複雑?
生命保険料控除は、「生命保険」に加入している人が受けることができる制度です。
そして控除の計算で、1番面倒なのがこの生命保険料控除と言えます。
「本当は国で全て、医療費や年金とかまかなってあげたいけど難しくてごめんね!そのかわり自分で保険に加入したら、税金をまけてあげるよ!」
ということで、生命保険料控除が存在します。
生命保険料控除は、以下の3分野に分かれており、ぞれぞれに上限が設けられています。
一般生命保険料控除 | 生存や死亡によって保険金が支払われる保険に加入している |
介護医療保険料控除 | 生存や死亡によって保険金が支払われる保険に加入している |
個人年金保険料控除 | 個人年金に加入している |
控除額は所得税を計算する場合と、住民税を計算する場合で違ってくるので、計算例を用いてわかりやすく解説していきます。
所得税を正しい額に申告するために、「年末調整」があります。
サラリーマンの場合、1年間に支払う所得税の額はその年の始めに会社が計算してくれます。
しかし、途中で結婚した日は生命保険に入っていたなど、会社が把握できていない事情もあります。
年末調整でこれらの事情申告することにより正しい所得税の額を計算してくれます。
つまり、年末調整によって払い過ぎた所得税は戻ってくる仕組みとなっているのです。
生命保険料控除は、生命保険や医療保険、個人年金に加入をしていた場合に、受けることができる控除です。
この生命保険料控除を最大限に活用するには、生命保険、医療保険、個人年金にバランスよく加入することです。
平成24年1月1日以後に締結した保険契約等に基づく新生命保険料、介護医療保険料、新個人年金保険料の控除額は、それぞれ次の表の計算式に当てはめて計算した金額です。
年間の支払保険料等 | 控除額 |
---|---|
20,000円以下 | 支払保険料等の全額 |
20,000円超 40,000円以下 | 支払保険料等×1/2+10,000円 |
40,000円超 80,000円以下 | 支払保険料等×1/4+20,000円 |
80,000円超 | 一律40,000円 |
(注)
- 支払保険料等とは、その年に支払った金額から、その年に受けた剰余金や割戻金を差し引いた残りの金額をいいます。
- 平成24年1月1日以後に締結した保険契約(新契約)については、主契約又は特約の保障内容に応じ、その保険契約等に係る支払保険料等が各保険料控除に適用されます。
- 異なる複数の保障内容が一の契約で締結されている保険契約等は、その保険契約等の主たる保障内容に応じて保険料控除を適用します。
- その年に受けた剰余金や割戻金がある場合には、主契約と特約のそれぞれの支払保険料等の金額の比に応じて剰余金の分配等の金額を按分し、それぞれの保険料等の金額から差し引きます。
例えば以下のように加入していたとします。
- 一般生命保険:毎月5,000円(年間で60,000円)
- 介護医療保険:毎月2,000円(年間で12,000円)
- 個人年金保険:毎月20,000円(年間で240,000円)
死亡保険→保険料が4万円超8万円以下なので 60,000円×1/4+20,000円=35,000円
医療保険→保険料が2万円超4万円以下なので 12,000円×1/2+10,000円=16,000円
個人年金→年間の保険料が8万円を超えているので、控除額は最高の40,000円
よって3分野合計すると、35,000円+16,000円+40,000円=91,000円となります。
さらに詳しくは以前のコンテンツで解説していますので参考にしてみてください。
ポイントは、一種類の生命保険に多く加入しても、控除を受けることができる上限が保険の種類毎に決まっているため意味がないということです。
例えば年間で支払う保険料の合計が24万円だった場合。
生命保険(死亡保険)だけで24万円支払ってしまうと、控除は4万円しか受けることができません。
それに対して生命保険と医療保険、個人年金にそれぞれ8万円ずつ支払った場合、同じく年間で24万円支払います。
しかし、控除額は12万円、つまり3倍にもなります。
よって生命保険料控除を最大限活用するためには、生命保険、医療保険、個人年金にバランスよく加入することが大事です。
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〜コラム〜所得税と住民税の控除の違いも理解しておこう
所得税と似た税金に、「住民税」があります。
どちらも1年間の収入から控除を引いて課税所得を求めて計算する点は一緒です。
しかし、所得税は当年度の収入、住民税は前年度の収入で計算されます。
そして受けることができる控除の額も少し違ってきます。
例えば、配偶者控除は所得税の場合380,000円です。
住民税の場合は330,000円となります。
また生命保険料控除も、所得税の場合は最大120,000円が控除されます。
住民税の場合は、最高で各2.8万円までで3分野合計で最大70,000円までとなっています。
上記の加入例で計算をすると以下の通りとなります。
- 死亡保険→保険料が5万6千円を超えているので、控除額は最高の28,000円
- 医療保険→保険料が1万2千円以下なので 控除額は12,000円の全額
- 個人年金→保険料が5万6千円を超えているので、控除額は最高の28,000円
- よって3分野合計すると、28,000円+12,000円+28,000円=68,000円となる。
計算例の通り、生命保険料控除を最大限に受けるためには、死亡・医療・年金の保険のそれぞれの分野にバランス良く加入する必要があります。
生命保険料控除は、うまく利用することにより、年間で数万円の節税につながることもあるので、積極的に利用していきましょう。
いずれにしてもサラリーマンの場合は年末調整、自営業やフリーランスの場合は確定申告をきちんと行うことにより税金の負担を減らすことができる点では同じです。
違いは、所得税が今年の収入に対して計算されているのに対して、住民税は前年度の所得を元に計算されるという点です。
サラリーマンはしっかり年末調整を行い、自営業やフリーランスは確定申告をしっかり行っておくことにより、住民税の額も大幅に減らすことができます。
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少しでも所得税を安くする方法と注意したいこと
サラリーマンが少しでも取得税を安くする方法は控除の額を増やすと言うことです。
控除は様々な種類がありますが、近年はiDeCoに加入する、ふるさと納税をすることによって控除の額を増やすことができます。
iDeCoは将来の年金を確保するための制度です。
国民年金や厚生年金と違い、拠出した掛け金の運用先を自分で指定する形になります。
投資先は、投資信託だけでなく、元本割れしない定期預金、保険会社が販売している個人年金保険など様々が投資先を選定できます。
ふるさと納税は自分が税金を納めたいと思う地方自治体に、税金を納めることによってその地域の特産品などを得ることができます。
納めた税金の額は「寄付金控除」と言う形で所得から控除されます。
給料経費で落とすことができないサラリーマンですが、このようにたくさんある控除制度をうまく使うことにより所得税の額を減らすことができます。
絶対忘れてはいけない「年末調整」
サラリーマンの方が年末調整を忘れてはいけません。
なぜなら年末調整は払い過ぎた税金を取り戻す機会だからです。
所得税は給与から毎月天引きされていますが、天引きされている枠はあくまで「概算」に過ぎません。
人によって配偶者がいたり生命保険に加入していたり状況が異なります。
1年が始まった時点でその方の状況に応じて概算で所得税を算出して毎月のお給料から天引きするようになっています。
1月から12月の間に結婚をしたり、給与から天引きされていない生命保険に加入していたり。
所得税の計算に含まれていない事情も存在するので年末調整することによって適切な所得税が算出されるようになります。
主な項目は「扶養控除」や「住宅ローン控除」「医療費控除」となります。
◾️ 扶養控除:
今まで正社員で働いていた妻がパートに変更した、義母と同居することになり扶養家族が増えた場合などは扶養家族の変更届を提出する必要があります。
◾️ 住宅ローン控除:
住宅を購入した場合、2年目以降は自身で住宅ローン控除を申請しなくてはなりません。
住宅ローン控除と言っても難しい書類ではなく、借入機関から送付される支払い残高証明書を見ながら必要事項を記入して会社に提出すれば控除を受けることができるものです。
住宅ローン控除は、住宅の購入から10年間適用されるものですので、忘れずに申請しましょう。
◾️ 医療費控除:
同居している家族の年間の医療費が10万円を超えた場合、その分が控除されます。
医療費控除には、レーシック手術や、歯科でのインプラント、虫歯治療で空いた穴をセラミック製の義歯で埋めた場合など保険適用外の物も含めることができます。
年末調整は、保険会社から発行された控除証明書を添付したり、自分で様々な書類に記入をしないといけません。
そのため、とてもめんどくさいと感じる方が多いです。
しかし、年末調整をきちんと申告することによって、所得税が数万円返ってきたり、次の年に支払う住民税の額が大幅に減ったりと大きなメリットがあります。
しっかり申告するようにしましょう。
もしも、勤め先で年末調整をし忘れた場合や、新たに保険料の控除証明書が出てきた場合はどうすればいいのでしょうか?
このような場合も慌てずに、翌年の2月16日から3月15日までに確定申告をすることができます。
安心して書類を揃えて確定申告をしましょう。
ちなみに確定申告は5年間遡って申告することができます。
また、平成28年分の確定申告からマイナンバーの記入が必要になっていますので、忘れずに記入するようにしましょう。
節税効果は絶大「税額控除」
配偶者控除や生命保険料控除、扶養控除等は、税金の計算対象から省いてくれるものです。
一方で、住宅ローン控除や配当交渉などは「税額控除」と言い、算出された所得税額から直接控除されます。
節税効果は、所得控除の比ではなく、とても大きな節税効果を得ることができます。
住宅ローン控除は最初の年だけ確定申告をする必要がありますが、2年目以降は年末調整で対応できるため、サラリーマンの方は覚えておくと良いでしょう。
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まとめ
「所得税」は、仕組みを知っているだけで大きく節税することが可能です。
年収の額が上がってしまっても、控除をうまく使えば、税金の負担を減らすことができます。
所得税を計算する際は、控除をしっかり理解するようことにより計算することが可能です。
控除の種類はたくさんあるため全部を一気に覚える事はなかなか難しいですが、少しずつ勉強していき理解を深めていきましょう。
これからは、知識がある人とない人では、負担すべき額がかなり違ってくる時代であると認識し、自分から主体的に学んでいくことが重要なのではないでしょうか。
また、サラリーマンの方は年末調整をきちんとするようにしましょう。毎日の仕事が忙しすぎて、年末調整を忘れてしまう人もたくさんいます。
年末調整を逃すと、所得税だけでなく、次の年に給料から引かれる住民税の額も多くなってしまうため、注意が必要です。
以上、【控除とは?】サラリーマンの節税に必須の給与所得・税額・生命保険料控除(年末調整)の概要と計算法を解説します…の話題でした!
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