“生ける伝説的トレーダー”のマーク・ミネルヴィニ氏は、アメリカ屈指の投資家であるウィリアム・J・オニール氏と並んで米国グロース株投資の巨匠としての地位を築いています。
今回からはオニールの成長株投資法を元に、グロース株のもう一人の巨匠であるミネルヴィニの投資法について概要を解説していきたいと思います。
両者の書を読んだ感想としては、言葉は変えているものの基本的にスタイルは同じだということです。
二人ともまずはチャートを分析し、チャートが魅力的な形をしている銘柄にファンダメンタル分析を施しエントリーするというスタイルを取っています。
特にミネルヴィニはファンダメンタルが素晴らしくてもチャートがダメならエントリーしないと明言しています。
銘柄選定のファーストステップとしてチャート分析を行うことを推奨しています。
つまり、テクニカル分析を行った上でファンダメンタル分析を行い銘柄を絞っていくということですね。
Contents
急上昇銘柄の株価は4つのステージを形成する
桁違いに上昇する銘柄は横ばい圏から上昇して天井をつけ、下落する過程で4つのステージがあることを観測したとしています。
そして、この株価の動きの背景いあるのは利益であるとしています。
そして、この値動きは主に機関投資家によって形成されるとしています。
ミネルヴィニが分類した4つのステージの概要は以下となります。
ステージ | どのような値動き? | 機関投資家 |
第1ステージ | 横ばい。底固め。 | 無関心 |
第2ステージ | 上昇局面 | 買い |
第3ステージ | 天井圏 | 売り |
第4ステージ | 下落 | 全ての投資家が投げ売り |
それでは各ステージの特徴と、条件について見て行きたいと思います。
第1ステージ:底固めを行いエネルギーをためているフェーズ
機関投資家からは放置されているフェーズです。第1フェーズでは、魅力ある銘柄でも買うのは避けるべきと警鐘を鳴らしています。
以下のような値動きの時を第1ステージとしています。
■:横ばいが続く
■:200日(又は40週)移動平均線の近くで上下する。この局面が何ヶ月、何年もつづくこともある。
■:第4ステージで株価が数ヶ月以上下げた後に第1ステージに入ることがよくある
■:通常出来高は直前の第4ステージに比べて少なくなる
第2ステージ:機関投資家も購入する絶好の買い場
第2ステージこそミネルヴィニが銘柄を仕込む絶好のタイミングとしているタイミングです。
第1ステージの長い冬眠期間を超えて機関投資家を含めて買い上がり株価が上昇に転じるステージです。
まず、第1ステージから第2ステージへの転換の基準を見て行きましょう。
■:株価が150日と200日の移動平均線を上回っている
■:150日移動平均線が200日移動平均線を上回っている
■:200日移動平均線がうわ抜きになっている
■:高値と安値の切り上げが続いている
■:上昇のときに出来高は急増して押し目の時に出来高は少なくなる
■:出来高を伴って下落した週よりも、出来高を伴って上昇した週の方が多い
第2ステージへの移行はサプライズ決算や新製品や新進気鋭のCEOの就任などのゲームチェンジを起点として行われるとしています。
上昇する時は機関投資家の買いによって出来高と株価が急騰して、下落する時は出来高が減るという特徴があります。
第二ステージを通じて確認される特徴は以下となっています。
■:株価は200日(又は40週)移動平均線を上回っている
■:200日移動平均線自体も上昇トレンド
■:150日(30週)移動平均線が200日(40週)移動平均線を上回っている
■:株価は高値と安値を階段状に切り上げている
■:短期の移動平均線は長期の移動平均線を上回っている(例:50日 vs 150日)
■:上昇のときに出来高は急増して押し目の時に出来高は少なくなる
第3ステージ:天井圏〜機関投資家の売り抜けフェーズ〜
株価はまだじり高を継続しながらも出来高を伴った押しや値動きがあらくなり出来高が増えていく天井圏のフェーズです。
第3フェースでは機関投資家による買い集めは終了し、むしろ売り抜けに移ってきています。
決算毎にポジティブサプライズが続くと期待値が高まり続け、いつかは予想を上回ることができなくなります。
結果としていつかは失望を招き株価は急激に失速し天井圏を形成します。
第3ステージの特徴は以下の通りです。
■:株価は変動幅が大きくボラティリティが高まる。全体的に株価が上昇していたとしても株価の動きは不規則。
■:出来高を伴って大きくしたにブレイクする。第2ステージ始まってい以来の1日で最大の下落となる。
■:株価は200日移動平均線を下抜くかもしれない。第3ステージにあれば天井をつける間に数回200日移動平均線を上下する。
■:200日移動平均線は勢いを失って横向きとなり下降トレンドに転換する
まだ高い利益をあげているうちに天井をつける銘柄は非常に多いと警鐘をならしています。
利益見通しが暗くなることを確認してから売却をしていては含み益のほとんどを失う可能性があります。
そのため、第3フェーズに差し掛かっている兆候が見られたら売却して利益を確定した方が合理的なのです。
〜マネリテコラム〜人気のズーム・ビデオ・コミュニケーションズ($ZM)は第3フェーズ??
コロナショック以降人気を博したズームは現在株価的には苦境に立たされています。
ズームは果たして現在どのフェーズにいるのでしょうか?
以下は200日移動平均線と150日移動平均線と50日移動平均線を描画した日足チャートです。
では第2フェーズの特徴を検証していきましょう。
■:株価は200日(又は40週)移動平均線を上回っている
→ 残念ながら下回っています
■:200日移動平均線自体も上昇トレンド
→ ギリギリ上昇トレンドです
■:150日(30週)移動平均線が200日(40週)移動平均線を上回っている
→ 上回っています
■:株価は高値と安値を階段状に切り上げている
→ 残念ながら切り下げています
■:短期の移動平均線は長期の移動平均線を上回っている(例:50日 vs 150日)
→ 残念ながら50日は150日の下にあります
■:上昇のときに出来高は急増して押し目の時に出来高は少なくなる
→ 逆の下落の時に出来高が大きくなっています
上記を見る限り、第2フェーズということはできなさそうですね。
次に第3フェーズの特徴を検証していきましょう。
■:株価は変動幅が大きくボラティリティが高まる。全体的に株価が上昇していたとしても株価の動きは不規則。
→ たしかに上昇一辺倒だった時に比べて価格の値動きは不規則でボラティリティは高まっています。
■:出来高を伴って大きくしたにブレイクする。第2ステージ始まって以来の1日で最大の下落となる。
→ 出来高を伴って150日移動平均線と200日移動平均線を割り込んでいます。
■:株価は200日移動平均線を下抜くかもしれない。第3ステージにあれば天井をつける間に数回200日移動平均線を上下する。
→ 直近200日移動平均線を下回ってしまっています
■:200日移動平均線は勢いを失って横向きとなり下降トレンドに転換する
→ まだギリギリ上むきですが殆ど横ばいになっています。
200日戦はギリギリ上方向ですが、その他は第3フェーズの特徴を備えており現在第3フェーズにあるといってよい状況です。
次の決算が期待を下回ると次の第4フェーズに移行する確率が高いので要注意だと考えています。
ただ、ポジティブサプライズやグッドニュースで第2ステージの軌道に戻るようなことがあれば積極的に購入を進めていきたいところですね。
第4ステージ:投げ売りフェーズ
ネガティブサプライズとなる発表があると、いよいよ下落に転じます。
それは、決算でのEPSの減速であったり、ガイダンスが低かったり、決算前の下方修正であったり、アナリストの格下げだったりします。
第4ステージの特徴は以下となります。第2ステージとは反対の特徴を備えています。
■:株価は200日(40週)移動平均線を下回っている
■:200日移動平均線は明らかな下降トレンドに
■:株価は52週安値をつけているか、そこに近い水準
■:株価は安値と高値が段階的に切り下げている
■:短期の移動平均線は長期の移動平均線を下回っている
■:株価が大きく下落する日や週には出来高が急増し、戻りでは対照的に出来高が減っている
■:上昇する日や週とりも下落する日や週の時に、平均以上の出来高になることが多い
ただ一度ステージ4になったからといって終わりではありません。
真の成長企業は再びステージ1に戻っていくのです。
第2フェーズを狙い撃つためのトレンドテンプレート
ミネルヴィニは第2フェーズでなければたとえファンダメンタルが良好でも投資することはないとしています。
順張りは大きく勝つための基本ですからね。では第2フェーズを狙い撃つための条件はあるのでしょうか?
ミネルヴィニは皆さんにもわかりやすいようにトレンドテンプレートを作り、テクニカル面から銘柄を絞る指針を与えてくれています。
■:現在の株価が150日(30週)と200日(40週)の移動平均線を上回っている
■:150日移動平均線は200日移動平均線を上回っている
■:200日移動平均線は少なくとも1ヶ月は上昇トレンドにある(望ましくは4ヶ月〜5ヶ月)
■:50日(10週)移動平均線は150日移動平均線と200日移動平均線を上回っている
■:現在の株価は50日移動平均線を上回っている
■:現在の株価は52週安値よりも、少なくとも30%高い。(最も良い候補の多くは底固めの期間を抜けて大きく上昇する前に52週安値から100%-300%以上あげている)
■:現在の株価は52週高値から少なくとも25%以内にある(新高値から近い方がよい)
■:オニールのレラティブストレングスのランキングは最低でも70以上、できれば80以上がよい。
第2ステージの最良のタイミングでエントリーしよう!
ここまで第2ステージにある銘柄の見分け方についてお伝えしてきましたえが、ここまではまだ道の途中です。
以前エリオット波動でお伝えした通り、株価は単調に右肩あがりに上昇するわけではありません。
徐々に波動を形成しながら上昇していくわけです。
全体的な長期の上昇トレンドの中に現れる押し目とベースがあります。
この期間にエネルギーを蓄えて、ベースを上抜けた時に仕込むことで大きなリターンを得ることができます。
ミネルヴィ二が狙う第2ステージの中のエントリーポイント
では具体的にどのような条件の時に仕込むのが最良のエントリーなのでしょうか?
ミネルヴィ二はベースの中でボラティリティと出来高が減少していき最終的に出来高を伴ってブレイクした時を買いのポイントとしています。
※因みに最初の調整につしては10%-35%までが適切で50%-60%調整する銘柄は控えた方がよいとしています。大幅に下げると含み損を抱えた投資家の戻り売りで押し戻されやすいからです。
このボラティリティの低下は2回-4回観察されることが多いとしています。(5回〜6回のときもあります)
また、毎回のボラティリティの低下は前回の半分になること水準を望ましいとしています。
ボラティリティが低くなることに加えてベースの終盤で出来高が少なくなることも条件としています。
この売が枯れて最終的にベースの高値抜けをした瞬間を買いポイントとして設定しています。
最早弱い投資家がいなくなり、機関投資家を中心として株価は新たなフェーズを迎えて飛翔していきます。
他にも以下のようなパターンがわかりやすいですね。
ただ、エントリーした後に下落して上抜けポイントより低く引ける場合もあるとしています。
その場合は損切りポイントを前回の押し又は20日移動平均線の水準に設定して様子をみることを推奨しています。
まとめ
■:株価には4つのサイクルがある
■:機関投資家が買い集めている第2フェーズでしか株を仕込むべきではない
■:第2フェーズの中で適切なベースを作った後の上抜けで購入すると勝率を高められる
以上、【ミネルヴィニの成長株投資法】株価のサイクルを見極めて投資銘柄を絞り込むための基準をわかりやすく解説。機関投資家も参戦する絶好の買い場「第2ステージ」を捉えよ!…でした。