定年退職して手に入れた退職金は、あなたの老後の生活を支える大事な資金として、慎重に管理する必要があります。
退職金は、定年まで働いた結果支給される金額であり、老後の生活を充実させる大きな資金になりますよね。
「税金」がかかることは知っていても、正しい知識がないと損する場合もあります。
今回はその退職金の税金について、わかりやすくご説明します。
目次
Contents
退職金にかかる税金とは?〜所得税と住民税〜
また住民税は、原則前年の所得に応じてかかる「前年課税」となっています。
しかし、退職金の場合に関しては「現年課税」となり、勤務先で所定の手続きが行われます。
受け取った退職金はすでに源泉徴収または特別徴収が済んでいます。
よって、後日自分であらためて確定申告を行ったり、納税を行う必要がなく、負担は比較的少ないものと言えます。
因みに基本的にはどこの自治体でも同じような計算方式となっております。
ここでは、東京都北区の例で考えてみましょう。
勤続年数に応じて、以下により計算した額を退職所得控除として退職金から控除することができます。
勤続年数の数え方は一年未満の端数を切り上げ、一年として計算します。
- 勤続年数が20年以下の場合
40万円×勤続年数(80万円に満たないときは80万円)- 勤続年数が20年を超える場合
800万円+70万円×(勤続年数-20年)- 退職金の支払いを受ける方が、在職中に障害者に該当することになって退職した場合は、勤続年数に関係なく100万円を加算した額が控除されます。
退職金にかかる住民税は、以下のように求めます。
(退職手当等の金額-退職所得控除額)×2分の1=退職所得の金額(千円未満切捨て)
退職所得の金額×特別区民税率(6%)=特別区民税額(百円未満切捨て)
退職所得の金額×都民税率(4%)=都民税額(百円未満切捨て)
特別区民税額+都民税額=退職金にかかる住民税額(特別徴収すべき税額)なお、勤続年数が5年以下の特定役員(※)の退職金は、2分の1控除(赤字部分)の適用が受けられません。
(退職手当等の金額-退職所得控除額)=退職所得の金額(千円未満切捨て)
特定役員等とは、法人の取締役、執行役、会計参与、監査役、理事、監事及び清算人並びにこれら以外の者で、法人の経営に従事している者のうち政令で定めるものをいいます。国会議員及び地方議員、国家公務員及び地方公務員も含まれます。
(引用:東京都北区)
まず退職金控除ですが二番目の以下の数式が適用されます。
◾️ 勤続年数が20年を超える場合:
800万円+70万円×(勤続年数-20年)
つまり800万円+70万円×(35年-20年) = 1850万円となります。
退職金控除後の住民税課税対象退職金は3,000万円-1,850万円=1,150万円となります。
ここからさらに、以下の式に従い、住民税が計算されます。
- 1850万円×2分の1=退職所得の金額=925万円
- 退職所得の金額(=925万円)×特別区民税率(6%)=特別区民税額=55.5万円
- 退職所得の金額(=925万円)×都民税率(4%)=都民税額=37万円
- 特別区民税額(55.5万)+都民税額(37万円)=退職金にかかる住民税額=92.5万円
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退職金の所得控除と計算方法
では、退職金の税金は具体的にどの程度かかるものなのでしょうか?
退職金の税金を計算するにあたって以下の3つのステップを踏む必要があります。
勤続年数によって、計算方法に違いがあります。
20年以下の場合は1年当たり40万円、20年を超えると、超えた部分だけ1年当たり70万円です。勤続年数の端数は切り上げて考えます。
退職所得控除額は下表のとおりです。
勤続年数 | 退職所得控除額 |
20年以下 | 40万円×勤続年数 |
20年超 | 800万円+70万円×(勤続年数-20年) |
(引用:国税庁HP「退職金にかかる税金」)
- 注1:勤続年数に1年未満の端数があるときは、たとえ1日でも1年として計算します。
- 注2:上記の算式によって計算した金額が80万円未満の場合は、退職所得控除額は80万円になります。
- 注3:障害者となったことに直接基因して退職した場合は、上記により計算した金額に、100万円を加算した金額が退職所得控除額です。
退職所得金額を求める
退職所得金額は、収入金額から先程調べた退職所得控除額を差し引き、さらに1/2をかけて求めます。
計算式:退職所得金額=(収入金額-退職所得控除額)×1/2
所得税&住民税の金額を求める
所得税に関しては下表のとおり超過累進税率にて、住民税に関しては一律10%の税率にで算定されます。
A 課税退職所得金額 | B 税率 | C 控除額 |
1,000円から1,949,000円まで | 5% | 0円 |
1,950,000円から3,299,000円まで | 10% | 97,500円 |
3,300,000円から6,949,000円まで | 20% | 427,500円 |
6,950,000円から8,999,000円まで | 23% | 636,000円 |
9,000,000円から17,999,000円まで | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円から39,999,000円まで | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円以上 | 45% | 4,796,000円 |
(例)所得税=退職所得金額200万円×10%-9万7500円=10万2500円
住民税=退職所得金額200万円×10%=20万円
…以上の3つのステップを踏み、ご自身の退職金にかかる税金の額をしっかりと把握することで、間違いのない資金計画を作ることが出来るでしょう。
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確定申告を行うと還付金を貰えるかも?
所得から差し引くことができる所得控除は、14種類もあります。
- 給与所得、不動産所得、事業所得など、他の所得から差し引ききれなかった所得控除がある。
- 給与所得は今年まで、退職所得は来年になるともらえるケースで、退職所得から差し引く所得控除がある。
基本的には先程行った計算で求めた退職所得控除額が、退職金から引ける控除額です。
求めた退職所得金額から、さらに差し引ける所得控除が他にある場合に限っては、確定申告をするべきだと言えます。
しかし、ほかに差し引ける所得控除があるかどうかは人によって異なります。
退職金を受け取る際には、最寄りの国税局相談窓口に問い合わせてみることをお勧めします。
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iDeCoは非課税なので60歳の受け取り時に課税されることはない
会社から受け取る退職金は今まで見てきた通り、住民税並びに所得税の課税を受けることになります。
自分で積み立てて運用する非課税制度であるiDeCoは60歳まで受け取ることはできませんが課税されることはありません。
さらに積立期間中に関しては、所得税と住民税の課税対象額から控除することもできます。
これは、節税対策にもなります。
iDeCoにおすすめの証券会社と、おすすめの運用ポートフォリオについては以下でお伝えしておりますので参考にして下さい。
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〜コラム〜退職金を運用することも検討するべき?
人生100年時代と言われる今、老後資金を少しでも増やして将来の生活に余裕を保つために、資産運用への意識が日に日に高まっています。
定年までに老後の退職金を貯蓄できず、定年退職後に資産運用をしながら、少しでも未来への貯蓄を作ろうと考える人も増えています。
少子高齢化の国特有の動きとも言えますよね。
老後の資金については詳しく解説しているコンテンツがありますので、参考にしてみてください。
また長期的に資産を構築するのに適した投信についても以下でランキング形式で詳しく説明しております。
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まとめ
退職金にかかる税金額は所定の計算式で定められています。
事前に税金の額を求めることで、早めに資金計画を立てておくことが可能です。
また、場合によっては確定申告をすることで還付金を得られるケースもあります。
しかし、一般的には、勤務先に提出する書類に「退職所得の受給に関する申告書」というものがあり、これを提出することで確定申告は不要になります。
正しい知識を持つことで、退職後の生活を落ち着いて過ごせるようにしましょう。
以上、【退職金】いくら税金がかかるのか。住民税は免除?定年退職後の手続きと無駄に納税しないための計算法を解説します…の話題でした!