「増資」とは何かを「資本金を増やす「増資」とは?その種類と実施するメリット・デメリットを解説!」にて紹介しました。
株式投資をしている方は、企業が発行している株式を買ったり売ったりしています。
対して、企業は資金調達を目的として株式市場に株式を流通させています。
そのような、企業が事業を続けていくなかで必要不可欠な資金調達の手段の1つである「増資」。
その増資の中には「有償増資」と「無償増資」の大きく分けて2つの種類があります。
このコンテンツでは、増資とは何か、上記の2つの増資は何が違うのかなど、その意味をわかりやすく解説していきます。
目次
有償増資と無償増資
まず、本コンテンツにおいて基礎となる「増資」という言葉について再度、見ておきます。
増資とは、企業の資本金を増加させることをいいます。
資本金の増加は、新株発行によって行われます。
新しい株式を発行して、株主から出資してもらい資金調達をすること自体を「増資」と呼ぶようになりました。
また、冒頭で触れたように、増資には2種類あり「有償増資」と「無償増資」に分かれます。
1つずつ説明していきましょう。
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有償増資とは?
まずは有償増資についてです。
「有償増資」とは、株主が現金を払い込んだり、現金以外の資産を出資したりするなどを指します。
企業に対して何か「現物」を出資する増資方法のことです。
増資と聞いて一般的なのは、現物出資による増資なので覚えておきましょう。
有償増資には以下があります。
株主割当増資
1つめは、株主割当増資です。
「株主割当て」と呼ばれることもあります。
「株主割当増資」とは、新株発行をするときに、その発行会社を除く現時点での株主に対して、
「持ち株数に応じて」新株を割り当ててもらう権利を与えることです。
つまり、新株発行によってさらなる株主を増やそうとしているのではなく、
既存の株主から追加で出資を受けて資金調達をするという方法になります。
既存株主は増資条件を踏まえて、新株を購入するかどうかを個々に判断します。
条件が不満であれば新株購入を行う必要はありません。
〜「持ち株数に応じて」とは?〜
ここで、新株を割り当ててもらう際に考慮される「持ち株数に応じて」という言葉について疑問を持った方もいるのではないでしょうか?
この意味について例を用いて考えてみましょう。
例えばA社が株主割当増資をすることを決め「持ち株数10株に応じて1株を割り当てる」としたとします。
このとき、20株持つ株主には2株、40株持つ株主には4株が株主割当増資によって割り当てられます。
割り当てた結果ここで紹介した株主はそれぞれ、22株、44株を保有するというわけです。
このように、株主割当増資は持ち株数に応じて新株が割り当てられる点に特徴があります。
第三者割当増資
有償増資の2つめは、第三者割当増資です。
「第三者割当増資」は、現時点での株主の持ち株数に応じて割り当てる訳ではありません。
新しい「特定の第三者(取引先・取引金融機関・自社の役員など)」を募集して、新株を引き受ける権利を与えることをいいます。
第三者割当増資がおこなわれるときは、新株の割り当てを引き受ける第三者が引き受けの申込みをして、その方にのみ新株を割り当てます。
つまり、現時点で株主であるかどうかは考慮されないので、現時点での株主は申込まなければ割り当てられることはありません。
申込んだとしても、持ち株数が考慮されるわけではないのです。
増資を受けた第三者は相当数の株式を保有することになりますので、企業との関係性も強くなります。
第三者割当増資は色々と議論がありますので、以下のコンテンツでも深掘りしていますので、参考にしてみてください。
公募増資
3つめは、公募増資です。
「公募増資」は現時点での株主や特定の第三者であるかどうかにかかわらず、一般の投資家に対して新たな株主を募集します。
そして、新株を引き受ける権利を与えることをいいます。
上記で紹介した第三者割当増資よりも、新株を割り当てる対象に制限がなくなります。
幅広く募集できるようになったというイメージです。
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無償増資とは?
次は、無償増資についてです。
「無償増資」とは、利益剰余金や法定準備金などを資本金に組み入れること増資方法のことをいいます。
有償増資のように現物による出資ではない代わりに、利益剰余金を資本金にしておきます。
資本金に組み入れることで、利益の社外流出を防止したり、法定準備金により拘束性を持たせたりする効果があります。
実際に現金を動かすわけではないので、手間が少ない増資方法でもあります。
さて、無償増資には以下のような種類があります。
準備金の資本組入れ
1つめは、準備金の資本組入れです。
「準備金の資本組入れ」とは、資本準備金もしくは利益準備金を資本金に組み入れることを言います。
「資本準備金」は、株主が企業に出資した額のうち資本金として計上しなかったお金のことです。
資本金の2分の1以下であれば積み立てておくことができます。
資本準備金を積み立てておくことで、もし業績が悪化して赤字になったときに取り崩して赤字分を補填することができます。
また、企業が支払わなければならない法人住民税は資本金の額に応じて決定されます。
そういった意味でも資本準備金はあらかじめ資本金とは違う形で積み立てておいた方がいいのです。
また、利益準備金とは、利益剰余金(企業の利益のうち配当として支払わなかった残り)の一部を積み立てたお金のことをいいます。
剰余金の資本組入れ
2つめは、剰余金の資本組入れです。
「剰余金の資本組入れ」とは、その他資本剰余金・その他利益剰余金を資本金に組み入れることを言います。
会社法が施行された時点では、利益を資本金に組み入れることは禁止されていたのでその他資本剰余金の組み入れしかできませんでした。
ただし、2009年に会社法が改正されてその他利益剰余金も組み入れできるようになったのです。
その他資本剰余金は、資本金及び資本準備金減少差益・自己株式処分差益などからなります。
その他利益剰余金は、任意積立金(別途積立金・配当平均積立金・設備拡張積立金など)・繰越利益剰余金からなります。
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増資の手続き方法とは?
増資の手続きの方法について、ご説明します。
株主割当増資と第三者割当増資で少し手続きが異なりますので、ご注意ください。
◾️ 募集事項の決定:
原則として株主総会の特別決議で募集事項を決定します。
◾️ 株主への通知:
募集する株式の申込期日2週間前までに、株主に募集事項などを通知します。
◾️ 申込みの受付:
募集株式の申し込みと出資金の払い込みの受付を行います。
◾️ 割り当て決議(第三者割当増資のみ):
第三者割当増資の場合のみ、取締役会で株式の割り当て決議を行い、株主に割り当てる株式の数などを決めます。
◾️ 出資の履行(第三者割当増資のみ):
第三者割当増資の場合のみ、申し込みした人からの出資金の払い込みや現物出資の引き渡しを行います。
◾️ 登記申請:
本社の所在地を管轄している法務局に、払込期間の末日から2週間以内に登記変更の手続きを行います。
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増資にはメリットもデメリットもある
増資にはメリットもありますが、デメリットもあります。
ここでは、増資のメリットとデメリットについてまとめてみました。
増資によるメリット
返済の必要がない
銀行に借金して資金調達する場合、当然、いつか返済しなければなりません。
しかし、増資の場合は、返済する必要がありません。
会社の社会的な信頼度が高まる
増資すると会社の資本金が増えることで、十分な資本があると世間に認知されるようになります。
その結果、社会的な信頼が高まります。
増資によるデメリット
【配当金が増える】
増資するとそれだけ株主が増えるため、支払う配当金が増えます。
増資する際には、配当金の支払いが可能かを計画しておく必要があるでしょう。
【税負担が増える】
会社の資本金が増えて資本金が1,000万円、または、1億円を超えると、中小企業向けの優遇税制措置を受けられなくなります。
税負担は、資本金が高くなれば高くなるほど大きくなりますので、注意が必要です。
【コストがかかる】
増資する際には、登記手続きに必要な登録免許税がかかります。
その額は、増資分の1000分の7です。
例えば、1,000万円増資した場合、登録免許税は7万円です。
他にも、司法書士、行政書士、税理士などに増資の依頼を行った場合は、当然、そのための人件費などが必要です。
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増資の注意点
増資にはメリットもあり、デメリットもありますので、どちらも正しく把握しておく必要があります。
ここでは、増資時の注意点についてご説明します。
発行可能株式総数を確認する
会社設立時に、発行可能株式総数を設定しています。
これは、株式を増やせる最大数です。
この数を超える株式を発行する場合は、この設定を引き上げる手続きが必要です。
会社の経営権を失う可能性がある
増資すると株主の持ち株比率が変化し、経営者の持ち分割合が薄まります。
すると、会社経営への議決権が希薄化し、最悪の場合、経営権を失うかもしれません。
税負担が増える
資本金が増えると、それだけ税負担も増えます。
特に、1,000万円、1億円という一定額を超えると、税負担が一気に増えますので、ご注意ください。
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まとめ
このコンテンツでは、資金調達方法の一環である「増資」の種類である「有償・無償増資」を紹介してきました。
一概に増資とはいっても、さまざまな種類があることがお分かりいただけたかと思います。
増資には、株価変動など株主にも影響を及ぼすことがあること、頭に入れた上でトレードに向き合うようにしましょう。
今回は「有償増資」と「無償増資」について学びましたが、株式投資でリターンを獲得するには、まず前提となる基礎知識が必要です。
基礎知識に加えて、市場分析、銘柄選定、そして「正しい、最新の情報」が必須です。
当然、どうしても勉強が必要です。
しかし、独学で株式投資に挑んで、投資に失敗して株式市場を退場してしまう人は後を絶ちません。
これはひとえに学習方法が間違っていたか、市場、銘柄選定などの知識不足、また情報獲得のソースを誤ってしまったなどが挙げられます。
現代では、株式投資を効率よく学べる手段がたくさん存在します。(とても恵まれている環境)
以下のコンテンツでは、株を勉強するにあたっての効率的な進め方について特集しています。
ぜひ参考にしてみてください。
以上、「有償増資」と「無償増資」とは?「第三者割当増資」など株価に影響する資本政策について徹底解説。…でした。