株式投資を始めるにも、証券口座の開設が必要になります。
口座開設の際にも、マイナンバー制度導入などでマイナンバーカードを送る手間が増えてしまったことが話題として新しいですね。
さて、証券口座を開設する際に、全ての人が以下の三つの口座を選択する場面に直面します。
- 特定口座(源泉徴収あり)
- 特定口座(源泉徴収なし)
- 一般口座
3つのうち、どれを選択すれば良いのでしょうか?
まさにこれから株式投資を始めるという方は、トレードに集中するために「特定口座(源泉徴収あり)」です。
迷う必要はありません。
さて、このコンテンツでは、これからネット証券の口座を開設する方に向けて三つの選択肢が何が違うのか?
それぞれのメリット・デメリットについて比較しながらお伝えしていきます。
目次
Contents
株式投資の利益にかかる税金とは?
まずは、株投資の利益にかかる税金についてご説明します。
株の利益にはどれくらいの税金がかかる?
株で得た利益にも、しっかりと税金がかかります。
税率は、20.315%です。
利益が年額20万円以下なら所得税が免除されることもある
株取引による利益が年額20万円以下の場合、所得税(15.315%)が免除されるケースもあります。
ただし、住民税(5%)はかかります。
申告分離課税
株による利益に対する税金は、「申告分離課税」と呼ばれる方式です。
これは、給与所得と合計して申告するものではなく、分離して税金を計算するというものです。
そのため、年末調整の対象外であり、勤め先に申告する必要もありません。
特定口座と一般口座の違いとは?
まずは大分類である特定口座と一般口座の違いからお伝えします。
家三郎の言う通り『日本証券業協会の報告』によりますと、約85%の方が特定口座を開設していることが明らかになっています。
「特定口座」は、確定申告に必要な「年間取引報告書」を証券会社が作成をしてくれます。
株式投資で利益を得た場合は当然税金を支払わなければいけません。
現在株式投資から得た税率は20.315%となります。
納めなければいけない税金を自動で算出してくれるのが「年間取引報告書」です。
一例として、以下は楽天証券の年間取引報告書となります。
(引用:楽天証券)
上記をご覧いただければわかるとおり(12)で納付額まで算出してくれています。
特定口座 | 年間取引報告書を証券会社が作成 |
一般口座 | 書類作成から確定申告まで全て自分で行う |
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特定口座の『源泉徴収あり』と『源泉徴収なし』の違いとは?
今まで一般口座と特定口座の違いについてお伝えしてきました。
さて、特定口座は「源泉徴収あり」と「源泉徴収なし」に分かれます。
上記の特定口座を開設している投資家の調査と同様に、日本証券業協会が 調査を行なっています。
結果は以下の通り、83%が源泉徴収ありを選択していることが判明しています。
つまり全投資家の65%が「特定口座」の「源泉徴収あり」口座を開設しているということになります。
特定口座は年間取引報告書を証券会社が作成する口座です。
「源泉徴収あり」は更に確定申告まで証券会社が代行してくれる非常に嬉しい制度です。
源泉徴収あり | 確定申告までを証券会社が代行 |
源泉徴収なし | 確定申告は各人が行う必要あり |
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「源泉徴収あり」or「なし」のメリットとデメリット!
最も選ばれている『特定口座(源泉徴収あり)』のメリットと知られざるデメリット。
そして、「源泉徴収あり」を選択するべきか、「源泉徴収なし」を選択するべきかを考えていきたいと思います。
■ 特定口座(源泉徴収あり)のメリット・デメリット:
メリット①:めんどくさい確定申告を行わなくてもよい!
まずはなんといっても、最大のメリットは確定申告を行わなくてよいという点です。
実際に、源泉徴収ありの特定口座を使っている人の、約80%が「確定申告が不要であること」を理由としております。
仕事で忙しいサラリーマンであれば、確定申告などしたことがなく面倒臭くて時間を取られたくないですよね。
また「源泉徴収あり」を選択することで、株式投資で利益を得ていることを会社にバレてしまうリスクも回避することができます。
〜コラム〜(特定口座(源泉徴収なし)」では住民税を申告する必要がある
詳しくは後述しますが、特定口座(源泉徴収なし)の場合、年間利益が20万円以下であれば確定申告を行う必要がありません。
しかし、住民税の申告は行わなければいけません。
住民税が会社から給与天引きとなっている場合は、給与以外の所得があることがバレてしまいます。
対策としては、自分で確定申告をする際に「給与所得以外の所得に対する住民税」の項目。
これを「自分で納付」を選択することで会社にバレることを回避することができます。
メリット②:配当金と売却損益については損益通算を行うことができる
上の図でも『源泉徴収あり』を選択している理由の第三位に位置している『損益通算を証券口座で行える』という項目に関連したメリットです。
上場株式配当等受領委任契約が基本的に付随しているので、証券口座で得られる配当金と売却損を自動で通算してくれます。
例えば、以下の場合配当金40万円と株式売却損▲30万円が通算され課税対象額は10万円となります。
配当金:+40万円
株式売却損:▲30万円
課税対象額:+10万円
税金は20.315%なので納税額は配当金の40万円ベースの8万1260円ではなく、合算の10万円ベースの2万315円となります。
本来配当の利益と売却損は損益通算するには確定申告しなければいけません。
しかし、自動で損益通算を行なってくれるのはありがたいですね。
メリット③:利益がでても扶養・配偶者控除から外れることはない
現在親の扶養に入っている学生の方や、専業主婦をされている方などは、
確定申告をおこなわない特定口座(源泉徴収あり)では利益が出たとしても控除の対象から外れることはありません。
一方、源泉徴収なしの特定口座、又は、一般口座で確定申告を行い、
利益が38万円を超えてしまった場合は配偶者控除・扶養控除の適用を受けることができなくなります。
デメリット①:証券会社間の損益通算ができない
まず最も大きなデメリットとして証券会社間の損益通算ができないということがあります。
例えば二大ネット証券であるSBI証券と楽天証券の年間損益が以下のようだったとします。
SBI証券:▲20万円
楽天証券:+40万円
通算損益:+20万円
「特定口座(源泉徴収あり)」の場合、楽天証券の40万円分だけが課税対象となり、税金は40万円×20.315%=8万1260円となります。
実際、株式投資全体の利益としては20万円なので、
確定申告を行うことで課税対象額は20万円となり支払う税金は20万円×20.315%=4万630円に抑えることができます。
デメリット②:損益繰越ができない
例えば、本年度に損失が発生していたとしても確定申告を行うことで来年の課税対象額を減額することができます。
しかし、源泉徴収ありだと損益繰越ができません。
2019年に20万円の損失が出て、2020年に40万円の利益がでた場合をもとに説明します。
源泉徴収なしであれば確定申告をすることによって、2019年度の損失20万円を繰越し2020年度の利益40万円に通算することで、
課税所得を20万円に圧縮することが可能となります。
しかし、源泉徴収ありであれば損益繰越を行うことができないので2020年度の課税額は利益全額の40万円となります。
つまり2020年度の税金は以下の通りなり、特定口座(源泉徴収あり)では余分な税金を支払うことになるのです。
- 特定口座(源泉徴収あり):40万円×20.315%=8万1260円
- 特定口座(源泉徴収なし)又は一般口座:20万円×20.315%=4万630円
デメリット③:利益額が少ないと払わなくてよい税金を余計に払うことになる
源泉徴収ありの特定口座を選択した場合、払わなくてもよい税金を余計に支払わなければいけないという場合もあります。
そもそも確定申告というのは納めるべき税金を国に申告する制度です。
給与所得を受け取っている人の中で確定申告をしなければいけない要件というのは国税庁によって定められています。
(1) 給与の収入金額が2,000万円を超える
(2) 給与を1か所から受けていて、かつ、その給与の全部が源泉徴収の対象となる場合において、各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く。)の合計額が20万円を超える(3)〜(5)は特殊ケースのため略
引用:国税庁
つまり言い換えると、以下の1と2の条件を同時に満たすことができれば、確定申告を基本的に行う必要性はありません。
- 給与所得が2000万円を下回っている人
- 株式投資の利益が20万円未満
つまり、特定口座(源泉徴収あり)では自動的に税金が納められてしまいます。
例えば上記の条件を満たし投資利益が10万円の場合を考えてみましょう。
特定口座(源泉徴収なし)や一般口座では税金を納める必要性はありませんが、
特定口座(源泉徴収あり)では自動的に10万円×20.315%=2万315円が税金として徴収されてしまいます。
手間がかからないのは『源泉徴収あり』ですが、お得なメリットがあるのは『源泉徴収なし』に軍配がありますね。
配当金については確定申告を行うことで払いすぎた税金を取り戻すこともできます。
以下のコンテンツでは配当金の確定申告を行う有効性についてお伝えしています。
どのような場合に確定申告を行うメリットがあるのか知りたい方はご覧いただければと思います!
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特定口座の源泉徴収「あり」と「なし」は変更できる?
一度、源泉徴収「あり」または「なし」の特定口座を作った後で、「あり」と「なし」を変更できるのでしょうか?
結論からいいますと、変更は可能です。
ただし、取引状況によって当年に変更できるか、来年の変更になるのかが変わります。
株式売却や投信解約などがあるかないか、配当金などの受取があるかないかの2つの条件により、以下のようになります。
- 株式売却や投信解約などがない、かつ、配当金などの受取がない
源泉徴収が「あり」→「なし」、「なし」→「あり」の変更は、どちらも当年に可能
- 株式売却や投信解約などがない、かつ、配当金などの受取がある
源泉徴収が「あり」→「なし」の変更は、来年になる
源泉徴収が「なし」→「あり」の変更は、当年に可能
- 株式売却や投信解約などがある
源泉徴収が「あり」→「なし」、「なし」→「あり」の変更は、どちらも来年になる
変更手続きの方法は、各サービスの提供先にお問い合わせください。
税金が発生しない範囲で投資したい場合はどうすればいい?
投資はしたいが税金を支払うほどの利益を出したいわけではないという方も多いのではないでしょうか?
ここでは、株取引で税金が発生しない範囲で投資する方法についてご説明します。
利益が年20万円以下なら特定口座(源泉徴収なし)にする
株投資による利益が年20万円以下なら、所得税が非課税になります。
また、株取引の口座を源泉徴収なしの特定口座にすれば、不要な税金が勝手に支払われることもありません。
ただし、利益が年20万以下の場合でも住民税はかかりますので、きちんと支払いましょう。
そして、まとまった利益が出そうになったら、特定口座(源泉徴収あり)に切り替えるのがおすすめです。
NISA口座を使って非課税にする
NISAとは、毎年一定金額の範囲内なら、得られる利益が非課税になる投資制度です。
一般的なNISAは毎年120万円の非課税枠が設定されていますし、
つみたてNISAなら購入できる金額は年間40万円までと少額ですが、非課税期間は20年間と長期です。
このようなNISA口座を使うことで、非課税で投資ができます。
未公開企業を保有する場合は一般口座という選択肢
特定口座を使う際の、源泉徴収ありとなしの比較について見てきました。
基本的に特定口座(源泉徴収なし)と一般口座の比較であれば年間取引報告書を証券会社が作ってくれるというメリットこそあれ、
デメリットがないので、源泉徴収なしの特定口座がおすすめです。
ただし、特定口座では未公開株が保有できません。
そのため、未公開株企業の取引を行いたい場合は、一般口座を使いましょう。
東京証券取引所やマザーズ・JASDAQ、地方証券取引所に上場されている約4000の企業を上場企業といいます。
しかし日本に株式会社は250万社存在しており上場していない99.8%の企業は未公開企業ということになります。
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まとめ
本日紹介した三つの口座についてまとめると以下の通りとなります。
■ 特定口座(源泉徴収あり)のメリットとデメリット:
特定口座(源泉徴収あり) | |
メリット | ・確定申告をする必要がない ・扶養・配偶者控除が外れない ・同一証券口座内で配当と売却損の損益通算が可能 |
デメリット | ・別の証券口座間での損益通算ができない ・損益繰越を行うことができない ・年間利益20万円未満でも税金が取られる |
おすすめの人 | ・確定申告を行いたくない・面倒な人 ・扶養・配偶者控除を受け続けたい人 |
■ 特定口座(源泉徴収あり)のメリットとデメリット:
特定口座(源泉徴収なし) | |
メリット | ・年間取引報告書が自動で作成される ・複数証券口座の損益を通算できる ・損益繰越を行うことができる ・20万円未満であれば確定申告をする必要がなく税金も免除される。 |
デメリット | ・確定申告を行う必要がある ・38万円以上利益がでると扶養・配偶者控除が外れる |
おすすめの人 | ・利益が少ないことが見込める人 ・給与所得2000万円以上の元々確定申告が必要な人 |
■ 一般口座のメリットとデメリット:
特定口座(源泉徴収なし) | |
メリット | ・未公開株を保有できる ・複数証券口座の損益を通算できる ・損益繰越を行うことができる ・20万円未満であれば確定申告をする必要がなく税金も免除される。 |
デメリット | ・書類作成から確定申告まで全てを自分で行う必要がある ・確定申告を行う必要がある ・38万円以上利益がでると扶養・配偶者控除が外れる |
おすすめの人 | ・未公開株を保有したい人に限る |
以上、特定口座(源泉徴収あり・なし)と一般口座の違いとは?メリット・デメリットを含めてわかりやすく解説!…の話題でした。