バイドゥ(Baidu, Inc.、百度公司)は、「百度」は、は中華人民共和国で同国最大の検索エンジンを提供する企業です。2000年に創業されました。
元々はPC検索エンジンとしてスタートした同社ですが、現在売上に占めるモバイル検索比率が50%を上回りました。
中国国内における急速なスマートフォンの普及が追い風となり、
中国のインターネットサービスにおいて欠かせない存在へと同社を成長させました。
世界での利用者数はグーグルGoogleに次ぎ2位となっています。
中国国内のみならず検索エンジン市場においても最も大きな存在感を放つ企業の一つです。
収入源はGoogleと同様に広告収入がほぼすべてを占めています。
なお、検索以外にも百科事典、音楽配信サービスといった複数のサービスを提供しています。
かつてはGoogleも中国に進出していました。
しかし、中国政府の検閲に反対し中国市場より撤退したため、中国市場においては同社の一強状態となっています。
本記事では中国のテックジャイアントの筆頭であるバイドゥの展望について分析していきます。
■投資判断基準:「売り」
▷理論株価と現在の株価の乖離は少ないため相対的に割安であると捉えることもできるが、新規事業を成功させなければ株価のパフォーマンスは上昇しないと考えられる。他の中国テックジャイアントであるアリババやテンセントのほうが投資魅力は高い。
■ 指標関連:
▷指標上は理論株価と取引価格は近似しており同業他社比相対的に割安だがファンダメンタルズが良好であるとはいいがたい。
■ 業績見通し:
▷2019年度も前期比プラス成長の見通し。
■ 株主還元:
▷新規事業への成長投資のため配当金は拠出していない。
Contents
頭打ちとなりつつある広告収入
バイドゥの直近5年分の決算情報は以下の通りです。
年度 | Dec-14 | Dec-15 | Dec-16 | Dec-17 | Dec-18 | Dec-19 |
売上高 | 49,052.32 | 66,381.73 | 70,549.36 | 84,809.00 | 102,277.00 | 106,884.34 |
営業利益 | 12,803.76 | 11,671.55 | 10,049.08 | 15,691.00 | 21,030.00 | — |
税引前当期利益 | 14,484.41 | 37,906.62 | 14,509.21 | 21,283.00 | 27,325.00 | — |
当期利益 | 13,144.25 | 33,334.99 | 11,074.35 | 18,318.00 | 27,443.00 | 6,039.38 |
図にすると以下のようになります。
一方世界の広告市場の成長予測は下図の通りです。
同社の広告収入はデジタルにおける広告収入となりますが、同社の直近の成長率は世界の広告市場の成長率以下となっています。
広告収入は「広告主数×広告単価」で構成されています。
しかし、同社は掲載広告の質を高めるため広告主を厳選しているようです。
広告の質は「総リーチ数×アクセス比率」が高いほど良いのです。
しかし、それでも検索連動広告一本では限界となる可能性があります。
上記課題に対応するため同社は複数の周辺サービスの提供に着手しました。
旅行サイトの子会社である「Qunar」が赤字のため2015年に連結対象外としたうえ、
動画配信サイトの子会社である「IQiyi」もMBOによって売却しており、
周辺産業への既存ビジネスモデルの導入に苦戦しています。
国内外共に強敵あり!?新規事業に活路か
周辺産業への既存ビジネスモデルの横展開を行うにあたり、検索エンジンサービスでは中国国内に敵なしのバイドゥです。
しかし、周辺産業においては中国最大のSNSであるWechatを提供するテンセントとの競合が発生すると考えられます。
テンセントもバイドゥと同様に周辺産業への横展開を進めています。
決済サービス「Wechat Pay」等でバイドゥに先行していることから、周辺産業への横展開は一筋縄ではいかないと思われます。
加えて、海外市場に進出する場合、中国を除く世界中の検索エンジンサービスを席巻しているGoogleと競合します。
規模面を考慮してもかなり分が悪いです。
そこで同社は人工知能(AI)などの新規分野に注力しています。
不動産や金融など景気減速の影響を受けた部門からの広告収入減少の相殺を企図しています。
2017年には米エヌビディアとの提携が発表され人工知能分野でも特に自動運転に注力していく模様です。
バイドゥの強みは中国市場最大規模の検索エンジンシステムをもって収集した膨大な検索データを保有している点です。
当該データを駆使して競合他社とサービスの差別化を図り一手先の戦略を打つことが可能となります。
最新決算情報!黒字回復も低成長
北京時間2019年8月20日、バイドゥが2019年第2四半期の決算を発表しました。
純利益は前年同期比62%減の24億1200万元(約360億円)でした。
1~3月期の最終赤字から黒字に転換したものの、売上高は前年同期比1%増の263億2600万元となっています。
ネット企業の成長としては低調でした。
ネット検索の広告収入を柱とする「コア事業」の売上高は前年同期比2%減の195億元となっています。
広告市場が成長する中、減収となっています。
今後の事業の大きな命運を握る成長分野である人工知能(AI)領域は堅調です。
4~6月期のAIスピーカーの出荷台数で米アマゾン、米Googleに続く世界3位となっています。
同領域においては一定の成果は上がっているといえるでしょう。
バイドゥの指標を紐解く(PER・EPS・BPS)
バイドゥのPERについて見ていきましょう。
Dec-14 | Dec-15 | Dec-16 | Dec-17 | Dec-18 | Dec-19 | |
PER(倍) | 43.46 | 14.15 | 36.78 | 31.73 | 9.27 | 46.42 |
図示すると以下のようになります。
PERについては、直近6年間で乱高下しており安定していません。
というのも同社の成長率が年によって大幅に異なっているためです。
次にバイドゥの中国元ベースでの1株あたりの純利益(EPS)と純資産(BPS)を推移をみてみましょう。
Dec-14 | Dec-15 | Dec-16 | Dec-17 | Dec-18 | Dec-19 | |
EPS | 37.49 | 95.46 | 31.95 | 52.75 | 78.64 | 15.7 |
BPS | 145.48 | 231.91 | 265.71 | 331.3 | 466.29 | 500.17 |
図示すると以下のようになります。
BPSはバイドゥの成長に連動する形で右肩上がりとなっています。
EPSに関しては成長率が乱高下していることに加え、新規事業への投資がかさみ下落傾向にあります。
なお、同社は新規事業への成長投資を行っているため、配当金は拠出していません。
バイドゥの課題と将来は?
以下はバイドゥの直近5年間の株価水準ですが、バイドゥの株価は、直近5年間で3倍以上に成長しています。
しかし、2018年後半から2019年にかけて急落しており直近は105ドル前後で推移しています。
同社の株価パフォーマンスは直近5年間芳しくありません。
2018年の高値圏から約60%程度下落しています。
新規事業への投資で目覚ましい成果を上げることができないことに加え、費用がかさみ2019年第一四半期で赤字転落してしまったことも要因です。
同社の株価が復調するために求められていることは、新規事業で目覚ましい成果を上げ投資資金を回収することです。
人工知能(AI)分野は世界各国のハイテク企業が注目しており、次の時代の最重要テクノロジーとまで言われています。
同分野でバイドゥが先行することができれば株価は大幅に反発する可能性も十分に考えられます。
ファンダメンタルから今後の株価を予想する!
以下は今期と来期の業績の予想です。
年度 | 2019/12 | 2020/12 |
---|---|---|
情報元 | コンセンサス(予) | コンセンサス(予) |
更新日 | 2019/10/18 | 2019/10/18 |
売上高 | 106,644.35 | 121,372.20 |
当期利益 | 6,045.14 | 9,946.45 |
EPS(CNY) | 15.64 | 26.49 |
EPS (USD) | 2.23 | 3.78 |
配当(CNY) | 0.00 | 0.00 |
過去の平均のPERは30.3倍となっています。
そのため、2020年12月時点の株価は現時点と同じく113USD近辺であることが想定されます。
業績不振が嫌気され2019年12月期の決算期でサプライズがない限りはしばらくは下落基調が続くでしょう。
まとめ
バイドゥは本業の不調により停滞しているテックジャイアント企業です。
今後期待できるAI分野が萌芽しつつありますが、現状ファンダメンタル的には明るい状況とは言い難いです。
株価も下落基調であり暫くは投資を控えておいた方が賢明でしょう。
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