2020年はコロナショックを受けて米国株は40%近く暴落しました。
しかし、ハイテク銘柄は一時的な下落の後、急激に上昇して既に年初来高値を更新しています。
筆者も3月にアマゾン、5月最初にマイクロソフロを7月に入って遅ればせながらフェイスブックを購入して含み益となっています。
これらGAFAMを構成する巨大テック企業は各業界で覇権を握り最早手堅い投資先となりつつあります。
しかし、米国は日々ハイテク銘柄がウブ声をあげ、かつてのGAFAMのような勢いで成長している企業が存在しています。
そんな成長中のハイテクセクターで注目を集めている銘柄の一つにファストリー(Fastly)があります。
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今回は注目のファストリーについて以下の点をお伝えしていきたいと思います。
■:ファストリーはどんな会社?どんなサービスを提供しているのか?
■:ファストリーの業績推移は?
■:ファストリーのチャートの形状は投資妙味あり?
Contents
ファストリー(FSLY)が提供するサービスとは?
まずはファストリーの提供するサービス内容についてお伝えしていきたいと思います。
ファストリーはエッジコンピューティングという分野で注目を浴びている新進気鋭の企業です。
エッジコンピューティングとは?
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ファストリーが提供するサービスはエッジコンピューティングという分野です。
以下は「日経新聞」の記述です。
データセンターではなく、利用者や現場の近くでデータを処理する「エッジコンピューティング」の活用が広がっている。次世代通信規格「5G」が普及しても膨大なデータの送受信には限界があるため、エッジコンピューティングは注目のテクノロジーだ。収集したデータを効率的に使うスマート農業や、自動運転車、小売りの現場など、用途も幅広い。エッジコンピューティングを活用する8つの業界での最新事例を紹介する。
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モノから発生するデータを全てクラウド上で処理していれば、処理が追いつかなくなります。
そこでエッジコンピューティングではモノから発生するデータを生成するエッジ上で処理します。
つまり処理を分散して以下のことを実現するサービスです。
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【リアルタイム性の確保】
機器⇄クラウドとデータを往復する場合、応答に時間がかかります。しかし、エッジ側でデータ処理を行うことでより素早くデータを処理することができます。
【セキュリティの確保】
工場の機器等のデータを外部に流出したくない場合、そのままクラウドへデータ送信はできません。エッジ上で加工して結果のみクラウドへ送信することで秘匿性を維持しながら工場の機器全体の稼働状況を集積することができます。
【データ通信料の抑制】
全てのデータをクラウドやデータセンターに送信すると多大なコストが伴います。エッジ上でデータを集約し必要なデータのみを送信することでデータ量を削減して通信量を抑制させることができます。
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エッジコンピューティングが活躍する事例
エッジコンピューティングは、農業、自動車、エネルギー、金融、医療、ゲーム、小売などありとあらゆる分野での活用が期待されています。
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まず自動車でいえば自動運転では自動車はリアルタイムで判断を下す必要があり遅延は許されません。
予期せぬ歩行者の動きを分析して瞬時に判断を行うためにはクラウドに送って分析をして、指示を待つ時間はないからです。
日本でもトヨタ自動車やデンソーがエッジコンピューティング推進団体「AECC」に参加しています。
また、金融に関してはセキュリティーの面で重要性を発揮します。
エッジコンピューティングで分散しクラウドやデータセンターに集中させないこでとで秘匿情報のセキュリティーを引き上げることができます。
以下は日経新聞の記述です。既に大手のマスターカードでは利用されているのです。
金融サービスでは生体認証の利用が増えているため、エッジコンピューティングの需要はさらに高まる可能性がある。例えば、エッジコンピューティングを使えば顔認証データを利用者の顔写真でいっぱいのデータベースに戻すのではなく、特定の機器に保存する(そして削除する)ことが可能になる。
この技術を既に研究しているのは米決済サービスのマスターカードだ。同社はこのほど、処理スピードを速め、銀行取引で利用者のIDを守ることができるエッジコンピューティング装置で特許を取得した。
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エッジコンピューティングの市場規模は年々右肩あがりで2020年時点では38億ドルでした。
しかし、2024年には90億ドルに右肩上がりとなることが見込まれています。
ファストリーのエッジコンピューティングの強み
エッジコンピューティングについてお伝えしてきました。では肝心のFastlyのエッジコンピューティングの魅力はどこにあるのか?
という点について紐解いていきたいと思います。
提携企業と拠点の多さが魅力的
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年々、取引先をふやしており顧客数は年率30%近く伸びています。
2017年末時点で170社、2018年時点で227社、2019年時点で288社、2020年3末時点で297社となっています。
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また、世界55カ国に広範なプラットフォームを有していることも強みの一つです。
日本にも東京と大阪に存在しています。
プログラミングで独自仕様にカスタマイズが可能
ファストリーは競合優位性としてDeveloperにたいして独自のカスタマイズをできるように設計していることを強みとしているとしています。
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ファストリー(FSLY)の業績推移
では重要なファストリーの業績推移についてみていきたいと思います。
右肩上がりの売上高
ファストリーのよな成長企業では利益は基本的にでません。
まずは、事業投資に注力して初期は赤字でも売上高を拡大することに尽力するのが重要なのです。
以下の通りファストリーは四半期決算で右肩あがりで売上高を拡大しています。
年率34%の上昇は有望成長株としての勢いを見せていますね!
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2019年1Q→2020年1Qの売上高の成長率は37.9%と成長は衰えるどころか加速していっています。
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費用比率も圧縮を初めて黒字を徐々に狙っている
以前として2019年通期1410万ドル、2020年通期1200万ドルの赤字決算を想定しています。
しかし、売り上げが伸びて赤字幅が狭まっていることは特筆すべき点です。
以下は2019年1Qと2020年1Qの損益計算書のブレイクダウンです。
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
今後、純利益に転換するのは時間の問題であるといえるでしょう。
PSRを競合他社と比較する
ファストリーの競合他社としてAkamai、Cloudflare、AWS CloudFrontが挙げられます。
アマゾンはクラウド事業だけを行なっているわけではないのでAkamaiとCloudflareと売上高成長率とPSRを比較していきたいと思います。
売上高成長率は直近四半期の年率成長率と、年間決算の過去3年平均成長率を算出します。
PSRについては直近決算の4倍を売上高として算出します。
直近四半期決算 売上高年率成長率 | 過去三年 平均売上高成長率 | 直近PSR (2020年7月31日時点) | 時価総額(mil USD) | |
FSLY(ファストリー) | 38% | 34% | 39.5倍 | 9,958 |
AKAM(アカマイ) | 12.7% | 7.3% | 5.7倍 | 18,328 |
NET(クラウドフレア) | 50.0% | 46.7% | 34.7倍 | 12,638 |
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成長率と株価の勢いという観点ではファストリーとクラウドフレアが魅力が高いといえるでしょう。
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ファストリーの株価推移は力強くレラティブストレングスも高水準
グロース株は基本的に順張りが大きな利益をもたらします。ファストリーの株価推移について確認して投資妙味があるのか見ていきましょう!
ファストリーは急騰後の調整を乗り越えようとしている
ファストリーの株価は2020年5月から上昇し7月9日に$102.95の最高値を記録してから$73近辺まで調整が入りました。
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しかし、その後再びベースを形成した上で高値を上向けるための上昇を始めています。
成長株投資の神様である「オニール」が重視する株価の力強さを示すレラティブストレングス指数は99と最高値を記録しています。
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総合成績も99点中89点と高い数値を記録しています。
オニール流だとEPSを重視するので、まだ純利益がでていないファストリーはどうしても90点台を叩きだせません。
ただ、直近のハイテク新興企業では利益をだすことは前提としていないのでEPS項目を多めに見ると殆ど最高評価といっても差し支えないでしょう。
5月からの大幅上昇の要因
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ファストリーのデータ通信量が100テラバイトに達したことを6月17日に発表しました。
2020年3末時点では88テラバイトであったので驚異的なスピードでキャパシティを増やしていることが市場に好感されました。
Fastly saw substantial network growth, with a network capacity increase of 35% since December
<<中略>>
today announced that its network has reached 100 terabits per second (Tbps) of connected edge capacity, representing an important milestone as demand for modern digital experiences rises.
参照:Fastly IR
2020年2Q決算も期待されている
2020年8月5日に注目の第2Q決算が公表されます。
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Results from Fastly are due Wednesday after the close. The company isn’t profitable yet, but sales growth has been impressive in recent quarters. That’s helped Fastly stock outperform. After reporting a 38% increase in Q1 sales, sales growth is expected to accelerate in Q2, up 55% to $71.65 million.
仮に$71.65Mの売上高が実現すると現在の96.49ドルの株価ベースだとPSRは34.7倍となりクラウドフレアと同水準になります。
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まとめ
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【ファストリーの提供サービス】
- ファストリーはエッジコンピューティングをプラットフォームとして提供
- エッジコンピューティングはIoTが本格化する5G時代には必須
- 市場規模は38億ドルから2024年には90億ドルに拡大
- ファストリーはマイクロソフトやグーグルといった巨大企業と提携
【ファストリーの業績】
- 過去3年の売上高成長率は年率34%となっている
- 直近四半期の年率成長率は38%とスピードアップしている
- 2020年第2Qんお年率成長率は55%となることが予想されている
- 売上高の上昇に対して経費の増加率は小さく営業損失は縮小している
- 競合のAKAMより割高であるが成長率は高く株価の勢いも強い
- 競合のクラウドフレアとは成長率も割安度も同じだが株価の勢いはファストリーが優勢
【ファストリーの株価推移】
- 4月の20ドル台前半から7月の103ドルまで約5倍に急騰
- 要因は好調な第1Q決算と、100テラバイト達成のニュースが要因
- 7月に73ドルまでの調整をこなし再び上昇基調に
- 8月5日の第2Q決算が売上高成長率がブーストすれば高値を突き抜けて本格上昇フェーズにはいることが期待される