グローバル経済が進む現代では、貿易は経済を拡大させるのに必須のものとなっています。
ただ、貿易は単に輸出・輸入を行うものという一言で片づけられるほど単純なものではありません。
貿易の仕組みを詳細に説明する理論として、「比較優位」と呼ばれるものがあります。
今回は、この比較優位について徹底解説していきます。
目次
Contents
比較優位とは?
比較優位とは、「自国内の産業」を相対的に比較したときに、より生産効率が良い産業を「他国と比べて優劣を考える」理論です。
例えば、以下のような年間生産量を誇る2国があると仮定しましょう。
各国の「労働者1人あたり」の生産量は以下のようになります。
それぞれの国には、200人の労働者が仕事に従事しており、小麦、米の産業に100人ずつ(×100)割り振られているとします。
すると、国全体の生産量は、A国は、米よりも小麦の生産量の方が2倍多く、B国は小麦が米の3倍となっています。
この場合、B国は小麦の生産に特化するべきとされ、これを「比較優位がある」と呼びます。
ちなみに、「生産量の大小のみ」で優劣をつける場合は「絶対優位」という言葉を使います。
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比較優位の産業に特化するメリット
実際に生産効率が良い産業に特化して、その国は得をするのか否か、疑問が残るかと思います。
ここでも例を使って、比較優位の産業に特化するべき根拠を確認していきましょう。
先ほどのA国、B国がそれぞれの品目の生産に特化すると、生産量は以下のようになります。
逆のパターンは、以下のようになります。
すると、両国の生産量の合計を比較すると、「A国が米、B国が小麦」の生産に特化した方が全体の生産量が多いことが分かります。
よって、両国がより多くの利益を得ることが可能になるのです。
ただ、この考え方は比較優位説の中で最も単純化したモデルであるため、すべての経済に当てはめられるわけではありません。
いくら比較優位があるとしても、生産量に大きな差がある場合、上記の理論は成り立たなくなります。
先進国と発展途上国を比較した際などが、上記のモデルでは説明できないのです。
こちらも実際に数字で確認してみましょう。2ヵ国の1人あたりの米、小麦の生産量を以下のように仮定します。
労働者が200人いるとして、100人ずつ各産業に分配すると生産量は、以下の通りとなります。
C国では、小麦の生産量は米の2倍となっており、D国では3倍となっています。
これをそれぞれの生産品に労働力を集中させると、以下のようになります。
逆パターンは、以下の通りとなります。
なんと、D国の方が小麦の生産で比較優位があるにも関わらず、D国が小麦の生産に特化しても、全体の生産量は低くなってしまうのです。
これは、2国間で生産量の差が顕著なとき、比較優位の考えが成り立たないことを示します。
経済水準が同程度に国同士であれば、比較優位の理論は威力を発揮します。
しかし、経済格差が明確な場合は、比較優位は適用できないのです。
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比較優位と機会費用
比較優位の理論を用いるときに、重要な概念となるのが「機会費用」の考え方です。
例えば、コンビニのアルバイトと塾講師のアルバイトを掛け持ちしている大学生がいるとしましょう。
コンビニの時給は1000円、塾講師の時給は2000円と仮定します。
その大学生が8時間、コンビニで働いたとして、時給1000円とすると、その8時間で8000円稼ぐことができます。
ただ、同じ8時間を塾講師の仕事に充てれば、16000円稼げたことになります。
この大学生は、コンビニで8時間働くことで、塾講師で稼げたであろう金額を失ってしまったのです。
もちろん、「将来、コンビニオーナーになる」など特別な目的があれば話は変わってきますが、金額的な部分を見ると、損をしてしまっているのです。
貿易においても、生産効率の悪い産業に労働力を集中してしまうと、効率の良い産業で得られる利益を失うことになり、機会費用の損失に繋がるのです。
機会費用の考え方は、貿易以外に、私たちの日々の暮らしにも当てはめることができます。
休日ずっと家でダラダラしてしまうと、その時間でできた家事や運動、勉強の時間を失います。
本来、自分の成長のために使うことができた時間を「機会費用」として支払うことで、「ダラダラする」ことができる訳です。
「時間は有限だ」ということは、多くの方々が周知していますが、「何かをしていると、その分、機会費用を払っている」と考えている方は意外と少ないかもしれません。
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〜コラム〜老後の資産構築に向けての適切な時間の使い方とは?
上記で、以下のような記述がありました。
その大学生が8時間、コンビニで働いたとして、時給1,000円とすると、その8時間で8,000円稼ぐことができます。
ただ、同じ8時間を塾講師の仕事に充てれば、16,000円稼げたことになります。
この大学生は、コンビニで8時間働くことで、塾講師で稼げたであろう金額を失ってしまったのです。
この考え方は資産運用をする上でも非常に重要になります。
例えば、「金融知識」を持ち合わせているかどうか、十分な投資・資産運用の「情報」を持っているかどうか。
この「金融知識」「情報」を持ち合わせた上で運用をする場合の投資利回りは大きく異なります。
投資利回りが異なるということは、将来に築いている資産の大きさも、「複利効果」で大きくなるということです。
しかし、この「金融知識」「情報」を得る場はなかなか日本では見つかりません。
初心者が金融を学びたい、と話をすれば、怪しい人が近づいてきたり、詐欺被害にあってしまったりと、そんな話ばかりです。
そのような状況から、より多くの人に正しい金融知識、正しい情報を提供しようと設立された「お金の学校」があります。
残酷なことに、我々の社会、資本主義はお金について「正しく」勉強しなければ明確に罰を与えます。
反対に、正しく学べば人生は大きく違ったものになります。
義務教育で金融教育が存在しない日本では、多くの人が魅力のない金融商品を買わされたり、詐欺にあったりしているのが現実です。
しかし、騙された個人が悪いのではなく、学ぶ機会がなかっただけです。(つまり、大半の人が機会損失をしている)
資産運用の勉強をするには、書籍やセミナーに参加する、学校に通うなど様々な選択肢がありますので、自分にあった勉強方法を模索していきましょう。
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比較優位を発見したリカードとは?
比較優位理論を発見した人物は、経済学者のデヴィット・リカードです。
リカードは、アダム・スミスやマルクス、ケインズといった世界的に有名な経済学者と並ぶ偉大な経済学者と称されていて、「近代経済学の創始者」とも呼ばれています。
リカードは1722年にイギリスのロンドンにて、ポルトガル系ユダヤ人の両親の間に生れました。
リカード自身も、ユダヤ教を信仰していましたが、21歳のときにユダヤ教の信仰を拒絶しします。
その後、キリスト教のプロテスタントに改宗し、在学していたケンブリッジ大学も中退することになりました。
その後、リカードは証券取引所で働き、ここで経済的に大成功をおさめます。
財産を形成したリカードは、42歳の若さで仕事を引退して、経済研究に励むことになるのです。
リカードは、当時の著名な経済学者たちと交流を深め、時には激しい議論を行いながら、自身の理論を深化させていきます。
経済を研究するサークルも立ち上げ、近代経済学の礎をつくっていきました。
51歳のとき、リカードは伝染病により突如その生涯を閉じることになります。
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まとめ
比較優位は、貿易の効率性を高めるために非常に有効な理論です。
自由貿易が進む世の中で、比較優位の考えを用いれば、他国よりも生産量が劣る産業でも、貿易で優位な位置に立つことができます。
200年近く前に生きていた経済学者の考えが、現代の経済に影響を与えていると考えると、感慨深いものがあります。
ただ、先進国と発展途上国の間など、計座格差が著しい場合は、比較優位が成立しないこともあります。
比較優位が成立しない貿易関係を如何に改善していくかは、今後の課題と言えます。
今回は比較優位について解説しました。
比較優位の考え方は、資産形成において、自分の資産をどの国、マーケットに託していくかを検討する上で非常に重要な概念の一つです。
長い目で見て、今後はどのマーケット、どの商品が高いリターンを見込めるのか。
マーケット(金融市場)に正解はなく、常に高いリターンを出せる商品を100%で当てられる人はいません。
しかし、マーケットが動く「論理」がわかれば、投資の勝率は格段に上がります。
投資だけではなく、このマーケットの論理を理解することで、「社会情勢」「ビジネス」が理解できるようになります。
ビジネスが分かると、サラリーマンであれば本業の仕事も捗り、楽しくなり、上手く自分の社会におけるポジションを確立することができます。
「投資」と「社会での立ち回りの上手さ」が同時に向上していくのです。
マーケットの論理を理解するには、投資・資産運用の勉強が必須です。
上記のメリットを鑑みると、投資の勉強(マーケットの論理を理解)をしない理由はなく、獲得できるメリットは計り知れません。
まずは、本格的に投資の勉強を始めるにあたり、最初の一歩としてセミナーなどに参加することをおすすめします。
現代では有益な情報を発信している団体も多いです。以下のコンテンツで特集していますので参考にしてみてください。
以上、【比較優位とは?】世界的な経済学者・デヴィット・リカードが提唱した理論をわかりやすく解説。…の話題でした。