株式投資方法は株を買うことだけではありません。
株を売る「空売り」という手法も存在します。
今回は株の空売りはどのように利用すべきものであるかをご紹介していきたいと思います。
また併せて、効果的な空売り方法や、空売り銘柄の選定方法もご紹介していきます。
Contents
空売りとは?~株を売って利益を得る方法〜
相場で上図のような突発的に上昇する銘柄があります。
こういう銘柄を見たときに「なんで上がっているんだろう」「だまし上げにしか見えない」と思うことはありませんか?
こういう騙し上げ銘柄を売ることで利益を上げることができるのはご存じでしょうか?
それが「空売り」です。
空売りは株とFXではどう違う?
FXでも株と同様に、空売りの手法を利用できますが、株とFXではしくみに違いがあるため、以降で次にわかりやすく説明していきましょう。
株の空売りとは?しくみを簡単に解説
株の空売りは、以下のようなしくみになっています。
- 売りたい株を証券会社から借りる
- 借りた株で空売りを仕掛ける
- 空売りを仕掛けた株を買い戻す
空売りは、株の買い戻しを行うことによって解消します。
ただし、証券会社から株を借りるときには、貸株料を負担しないといけません。
FXの空売りとは?しくみを簡単に解説
一方、FXの空売り(ショート)は以下のようなしくみになっています。
- 通貨で空売りを仕掛ける
- 売りを仕掛けた通貨を買い戻す
FXの空売りでは、現物である通貨を借りる必要はありません。
借りずに空売りできるため、貸株料の発生もありません。
空売りは下がればリターンが出る
現物株でリターンを出すには、株価の値上がりが必要ですが空売りでは値下がりしたときにリターンが出ます。
つまり、空売りは値上がりすると損失になるという、現物株と異なる特徴をもっているのです。
株の空売りはどうやっておこなう?
それでは、株の空売りの具体的な手順についてご紹介していきましょう。
- 信用取引口座を開設する
- 売りを仕掛けたい銘柄を探す
- 空売りを仕掛けるタイミングを計る
- 思惑通り、株価が値下がりしたら確定する
ただし、思惑が外れたときは損失が拡大する恐れがありますので、注意してください。
空売りはどんな場面で活用すべき?~効果的な空売り方法〜
空売りは実際相場のどのような場面で利用できるのでしょうか。
空売りを仕掛けるタイミングはいつ?
相場にはトレンドというものがあり、上昇トレンド、下落トレンド、もみあいと大まかに分けて3つあります。
それでは、空売りを仕掛けるのは、どの相場が適しているのでしょうか。
空売りは下落トレンドで仕掛けよう
空売りは、値下げになるときにリターンが発生しますので上昇トレンドで空売りを仕掛けると、損失が拡大しかねません。
そのため、空売りは下落トレンドでしかけるのが基本です。
現在のトレンドを判断する際は「トレンドライン」「移動平均線」「ボリンジャーバンド」などのテクニカル指標が参考になります。
自分が使いやすいと思ったテクニカル指標を選ぶと良いでしょう。
長期投資銘柄のつなぎ売り
実際投資家が一番活用している空売りは「長期投資銘柄のつなぎ売り」です。
上図は西日本旅客鉄道の月足チャートです。
美しい上昇トレンドを形成していることがわかります。
当然こういった銘柄は買い銘柄ですが、いつも株価が上昇しているわけではありませんよね?
青で囲んだ部分のように大きく値を崩すこともあります。
このように長期で保有している銘柄の株価が下落する局面で空売りをすることで株価の下落にストレスを感じることなく銘柄を保有することができます。
また同時に空売りによる利益も得ることができるため、まさに一石二鳥の投資方法であるといえます。
こちらは西日本旅客鉄道の貸借倍率です。
『貸借倍率 = 融資残高 ➗ 貸株残高』で計算されます。
融資残高は『信用買い』の残高で、貸株残高は『信用売り残高』を意味します。
つまり貸借倍率が1倍を超えると信用買いをしている投資家が多い状態です。
一方、一倍を割り込むと『信用売り』をしている投資家が多いことを意味します。
0.32倍と信用買い以上に信用売りが入っていることがわかります。
なぜ上昇トレンド銘柄に多くの信用売りが入っているのか?
それは現物で長期投資している人の「つなぎ売り」が入っているからであるといえます。
ここで一つ注意点があります。
よく売り長の銘柄(貸借倍率が低い銘柄)は売りの買戻しがあるから上げやすいといわれています。
こうしたつなぎ売りが主流の銘柄ではそれは該当しません。
なぜなら、空売りで踏み上げを食らった場合は現渡しすればよいだけだからです。
現渡しとは保有している買い残高で空売りを返済することです。
逆にこの「長期投資銘柄のつなぎ売り」は空売りをしてもリスクがない手法であるといえます。
踏み上げを食らえば現渡しするだけでよいからです。
売買のリスクヘッジ
上図は過去半年間の日経平均株価の推移です。
休む間もなく上下に振れていることがわかります。そこで問題です。
この毎日不規則に動く相場で、どのようにリスクヘッジを行えばよいのでしょうか?
そのリスクヘッジに「空売り」が活躍します。
個別銘柄を見ると下げ相場でも上げる銘柄はありますし逆に上げ相場でも下げる銘柄はあるわけです。
ですから下げ銘柄に空売りを入れ、上げ銘柄を購入すれば日経平均株価がどう動こうとも、
買い・売り両方のポジションを持っているため、安定した利益を上げることができます。
相場のリスクヘッジとして空売りを活用すると毎日夜中のダウを気にせずに余裕をもってトレードに取り組むことができます。
デイトレード
デイトレードを行う際に空売りは最適な手法だといえます。
相場では上昇速度よりも下落スピードが格段速いからです。
上図はアイフルの5分足チャートです。
MACDで完全にダイバージェンスを起こしていることが見て取れます。
しかも前日の終了間際にデットクロスも起こしているため絶好の空売り銘柄であることがテクニカルから判断できます。
よって始値243円から空売りを入れていきます。
始値243円、高値244円ですので問題なく空売りを仕掛けられました。
また買戻しは2回目のボリの下限235円あたりがちょうどよいでしょう。
最初のボリの下限はエクスパンションなので、見送りが正解だからです。
このようにテクニカルを活用することで、簡単に空売りでデイトレードをすることができます。
≪注意点≫
空売りはテクニカルで攻略するのが最も成功率の高い投資方法です。
ですから、しっかりとテクニカルの使い方を理解してから実戦に取り組みましょう。
見てきたように空売りは長期~デイトレードまで様々な場面で利用することができる便利な投資手法だといえます。
空売り銘柄はどのように決めるべき?~空売り銘柄の選び方〜
空売りは便利な投資手法であることがお分かりいただけたと思います。
ここでは、空売り銘柄を選択する方法を投資スパン別にご紹介していきます。
長期投資銘柄のつなぎ売り
長期投資銘柄のつなぎ売りで空売りを行う場合は自分の保有銘柄を空売りします。
そこで問題になるのは「いつどこで」空売りを入れればよいのかの判断ですよね?
単純にMACDだけでも空売りが可能です。しかしMACDは遅行指数であるため売買サインが遅いという特徴があります。
よって、もう少ししっかり空売りで利益を取りたいという場合はボリンジャーバンドを活用するとよいでしょう。
同じ銘柄でも月足から週足にスパンを替えるだけで、トレード回数を増やすことも可能です。
売買のリスクヘッジを行う銘柄の探し方
売買のリスクヘッジとして空売りを活用する場合、下げトレンドの銘柄に空売りを仕掛けていきましょう。
ⅰ.空売りに最適な銘柄はエリオット波動の第5波
空売りに最適な銘柄はエリオット波動の第5波です。
ではオンコリスバイオファーマを例に見てみましょう。
図の赤丸は1波、水色は3波です。
3波からの下落も相当ですが、すぐ5波で暴騰していることがわかります。
よって、その後踏みあげられることのない5波が空売りに最適な銘柄であるといえます。
ⅱ.普段からエリオット波動を意識しながら相場を観察しよう
エリオット波動の第5波の簡単な探し方は存在しません。
ですから、普段からエリオット波動を意識して銘柄をストックしておくことが大事です。
デイトレードで空売り銘柄を探す
デイトレードではエリオット波動の第5波の銘柄をそのまま空売りしてもOKです。
新規で空売り銘柄を探すという場合はニュースをチェックすると簡単に銘柄を探すことができます。
ⅰ.決算が悪い銘柄
決算が悪い銘柄の場合GDから続落する可能性が高いため空売りでのデイトレード向きの銘柄だといえます。
ⅱ.悪いニュースが出た銘柄
レーディングの引き下げや何か企業にとって良くないニュースが出た銘柄もGDから続落する可能性が高くなっていますから、
空売りでのデイトレード向きの銘柄だといえます。
他にも前日に無意味な暴騰をした銘柄なども空売りの対象となりますが、これは踏まれるリスクが高い(連騰)ためおすすめはできません。
がっくりチャートの銘柄に着目
空売りの成功率を上げたいときには、がっくりチャートが参考になります。
移動平均線というテクニカル指標には、以下の3つの線が表示されます。
75日線(長期)
- 25日線(中期)
- 5日線(短期)
下落トレンド中に5日線が下向いたときに出現するのが、がっくりチャートです。
がっくりチャートが出現した銘柄を見つけたときが、空売りを仕掛けるポイントとなります。
がっくりチャートとデットクロスと両方出現した銘柄は特に着目
絶好の空売りポイントは、がっくりチャートとデットクロスの両方が出現した銘柄です。
5日線(短期)が25日線(中期)、または75日線(長期)を上から下に抜けたときがデットクロスとなります。
空売りする前に信用倍率の比率をチェックしよう
空売りの成功率を上げたいときに参考になるのが、信用倍率の比率です。
比率が高い銘柄は、信用買い残が多く、比率が低い銘柄は信用売り残が多いということです。
したがって、空売りを行うときには、信用倍率10倍以上の銘柄を選択するようにしてください。
逆に信用倍率が低く、逆日歩が発生している銘柄は避けたほうが賢明です。
信用取引をおこなう前にチェックしたい事
信用取引をおこなう前には次の事を事前にチェックしておいてください。
委託保証金とは?
信用取引をするには、証券会社に委託保証金を預ける事が必要です。
この委託保証金(現金や株など)によって、信用取引ができるようになります。
委託保証金率とは?
約定代金に対する委託保証金の割合の事を委託保証金率と呼んでいます。
基本的には30%以上の委託保証金を預ける事が必要です。(委託保証金率は30%以上)
つまり、30万円の投資金で100万円の信用取引がおこなえます。
少ない投資金(およそ3.3倍のレバレッジ効果)で信用取引できるわけです。
委託保証金維持率とは?
信用取引を行ったときに、買いを仕掛けたポジションを「買い建玉」、売りを仕掛けたポジションを「売り建玉」といいます。
委託保証金維持率とは、建玉に対する委託保証金の割合の事です。
追加証拠金には注意しよう
信用取引をおこなう際に、最も注意したいのが最低委託保証金維持率です。
思惑が外れ、建玉の価値が下がりすぎるとどうなるでしょうか?
最低委託保証金維持率を下回ると、証券会社から「追加証拠金を入れてください」と連絡が来ます。
ちなみに、ネット証券の大手、SBI証券の最低委託保証金率は20%です。
証券会社によって最低委託保証金維持率が異なりますので事前にチェックしておきましょう。
逆日歩には注意しよう
信用取引で売りを仕掛けるときには、逆日歩にも注意が必要です。
信用売りする者(売り方)が多くなり、顧客に貸せる株が不足すると証券会社は機関投資家から借りてきます。
機関投資家から借りる際に必要なのが品貸料です。
この品貸料の負担は、売り方となっています。(買い方は受け取り)
逆日歩は、平日はもちろん、土日祝も計算に入ります。
特にゴールデンウイークなどの長期休みの前には、逆日歩への注意が必要です。
一般信用取引と制度信用取引
信用取引は一般信用取引と制度信用取引の2種類に分けられます。
一般信用取引と制度信用取引の違いは次の表をご覧ください。
項目 | 一般信用取引 | 制度信用取引 |
取引対象 | ほぼ全ての銘柄 | 証券取引所が指定する銘柄 |
返済期限 | 顧客と証券会社で自由に決定 (無期限も可) | 6ヶ月 |
貸株料 | 高め | 低め |
逆日歩 | なし | あり |
逆日歩が気になる方は一般信用取引を選ぶと良いでしょう。
ただし、貸株料は一般信用取引のほうが高めとなります。
信用規制が発動した銘柄
銘柄によっては信用規制で空売りできない事があります。
投機的な取引が活発になっているときに、信用規制が発動する事が多いです。
信用規制の対象となった銘柄は公開されますので、事前にチェックしておきましょう。
短期間で空売りのリターンを伸ばすには?
短期間で空売りのリターンを伸ばしたいときに着目したいのが暴落です。
上昇は比較的ゆっくりでも、リーマンショックのような現象が起こると短期間で大きく暴落します。
ただし、リスクも大きくなるため損切りは徹底しましょう。
【暴落後の急反発を狙おう】
暴落後には急反発する現象がよく見られます。
暴落時は空売りをしかけ、急反発しそうになったら確定しておきます。
そして新規買いのポジションで急反発時のリターンを狙い、良いところで確定するという手法です。
新規買いのポジションを確定したら、今度は空売りを仕掛けるタイミングを計ります。
株に限らずFXや仮想通貨でも、暴落時の空売りで大きなリターンが期待できますが、往復ビンタにならないように注意しましょう。
信用取引でやってはいけない事
信用取引をおこなううえで、やってはいけない事を以下に紹介しておきます。
含み損を抱えたままポジションを保有し続ける
現物株を保有している場合、どれだけ大きく下がっても株価は0円までとまります。
しかし、信用取引の空売りでは上限がありません。
思惑が外れたときのリスクが無限大となるのが空売りです。
そのため、空売りをしかけた後、含み損を抱えてしまったら早めに損切りをしましょう。
2階建てはなるべくやらない
信用取引では先ほど説明したように、およそ3.3倍のレバレッジ効果が期待できます。
現物株を保有している銘柄を、さらに信用取引で買うことを2階建てと呼んでいます。
1階が現物株、2階が信用取引となっている取引状況です。
思惑通りのときは、現物株のみの保有より大きなリターンが期待できます。
しかし、思惑が外れたときのリスクが高くなるため、2階建てはなるべくやらないほうが良いでしょう。
まとめ
今回は株の空売りはどのように利用すべきものなのか、効果的な空売り方法、空売り銘柄の選定方法をご紹介してきました。
期間 | リスク | 難易度 | リターン | |
長期投資銘柄 つなぎ売り | 中長期 | なし (現渡し可能) | 低い | 低め |
売買のリスクヘッジ | 短期~中期 | 低い | 低い (他のポジションと相殺可能) | 高い |
デイトレード | デイトレード | 高い | 高い | 高い |
青天井でリスクが高いと思われがちな空売りです。
しかし投資初心者や買い専門のトレーダーでも手軽に空売りで利益を上げる方法があることがお分かりいただけたと思います。
株で空売りが可能になるのは信用取引だけとなりますので、上昇トレンドでも下落トレンドでも利益が期待できるのが大きな魅力です。
うまく空売りを活用して、投資のリターンを上げていきましょう!!
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