未公開株が「上場(IPO)」するというのは一大イベントです。
ベンチャー企業の経営者(企業オーナー)であれば、持っている自社の株の価値を上昇させ、莫大な利益を得るチャンスです。
一般投資家の方でも抽選で当選をすれば、初値で売却ができれば、それもまた大きな利益を手にする絶好の機会でもあります。
一昨年、2018年にはAI技術を強みとした事業を展開する「HEROZ」が上場しました。
投資家が公募価格で同社の単元株(約40万円)を保有していれば、初値で一瞬にして+445万円の利益を得ることができました。
HEROZの初値の上昇率はは1995年以降のIPOで最大規模でした。
今回のコンテンツでは、上場予定企業の株式を保有している投資家(当選者)が、IPOによってどれだけの利益を獲得できるのかという点を解説していきます。
目次
Contents
上場株(IPO)投資の仕組みをまずは解説
「上場予定株」(=未上場株)には、一般の投資家も上場益を獲得するチャンスがあります。
IPO株投資はまず「公募価格」で上場する株式を購入する権利を事前に証券会社に応募します。
当選したら上場時についた「初値」で売却することで利益を獲得するという手法となります。
(長期保有も当然可能です)
一般的に、主幹事証券会社が上場予定企業の現時点での純資産や今後見込まれる利益。
また、すでに上場している同業種の企業のPERなど各種指標を参考にして算定をします。
公募価格は主幹事証券会社のみで算定してしまうと儲けが主幹事に偏ってしまいます。
その為、主幹事証券会社が機関投資家に公募価格の算定結果のプレゼンテーションを実施します。
機関投資家からその後フィードバックを受け、価格を再検討、調整します。
また、上場予定企業オーナー(主に経営者)と協議をした上で仮申し込み価格を決定します。
以下は公募価格決定の流れです。
- 主幹事証券会社が企業公募価格を算定
- 算定結果を機関投資家にプレゼンテーション、フィードバックを受領
- 公募価格を再算定、企業オーナーと協議し、仮申し込み価格(下限〜上限価格)の決定
- 主幹事会社が投資家からの公募受付を開始
IPO株は抽選となりますので結果的には上限価格で公募価格は落ち着くケースがほとんどです。
ここでいう主幹事証券会社は、例えば冒頭で述べたHerozは野村証券、同じく2018年に上場したアジャイルメディア・ネットワークはみずほ証券など、大手証券会社が担当します。
主幹事証券会社に一般投資家はIPO株に応募し、抽選結果をまずは待つことになります。
当選すれば上場した初値と公募価格の差額で投資家は利益を得ることになります。
公募価格は基本的に投資家の公募申込が集まるように実態の初値に比べて低い価格に設定されています。
その結果として、上場株投資は儲かる!と話題になることが多いです。
しかし、実態としては厳しい抽選を勝ち抜く必要があります。
そもそも参加することが難しい投資の一つであることは認識しておく必要があります。
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〜コラム〜 一攫千金?上場前の企業オーナーはIPOでどれくらいの利益を獲得できるのか?
未上場企業の「企業オーナー」といえば基本的に以下に分類されます。
このような方々は上場と同時にどのくらいの利益を獲得するのでしょうか。
- 経営者(創業者)
- 持株社員(Stock option保有)
- ベンチャーキャピタル
- エンジェル投資家
2014年10月16日に上場を果たしたリクルートホールディングスを例にとって説明していきます。
現在は様々な業界に事業を多角化し、広告業を主体とした、サービス・人材紹介事業を展開しています。
社員が株式を保有する「持株会」の保有比率は「13.89%」と上場時に最大の株主構成となっていました。
上場を果たした結果、最低でも138人が「資産1億円」を超えたとされています。
やはり上場は夢のあるイベントであることがよくわかりますね。
上場を果たす際に、創業者でなくとも、Stock Optionなどで株式を保有できる立場にあれば、
上場を目指し仕事を頑張る、という社員の高いモチベーションを保つことができるメリットが創業者側にもあるのです。
Stock Optionとは以下のようなものです。
一般的には、会社の役員や従業員が自社の株式をあらかじめ定められた価格で購入できる権利のことを指します。
創業期のベンチャー企業は資金力がなく、高い能力や技術を持った人を採用する余裕がなく、ストックオプションで「将来の報酬」(上場時の利益)を約束する方法の一つとなります。
上場を目指すベンチャー企業が社内人材政策として取り組むのに適しています。
基本的には創業者が最も株式を保有している企業オーナーであることが通常です。創業者が利益を最大化できる立場にいます。
例えば創業者が1000万円の資本金で100円の株を10万株発行し保有。
上場時に株価が100倍となれば「9億9千万円」の利益を獲得することになります。
10万株×(10,000円-100円)=9億9千万円 |
保有している株式が何倍になるかというのは、企業の業績、市況環境など、経営に関わる全てが作用してきます。
一概にいえないのですが、大きな資産を一挙に稼ぐ一つの手法であることには間違いありません。
さらに詳しくは、「企業が上場(IPO)するメリットとデメリットを比較解説、メリットばかりではないその実態に迫る」というコンテンツがありますので参考にしてみてください。
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Yahoo(ヤフー)の初値売り、その後の株価上昇はどれくらいだったのか?〜歴史に残るIPO人気銘柄〜
現在は月間800億PV(ページビュー)を誇ると言われているYahoo!Japanを運営するヤフー株式会社です。
同社はヤフオクや広告事業、2018年の暮れに「PayPay」というモバイルペイメント事業もローンチしています。
現在も企業成長を継続していますが、上場当時の公募価格は「70万円」でした。
1997年といえば、ITバブルが起こる少し前でしたが、初値は公募価格の約3倍である「200万円」をつけました。
初値で売れば+130万円(200万円 – 70万円)の利益を獲得したことになります。
しかし、+130万円であれば冒頭に述べた2018年に上場したHEROZに比べるとそこまでではありません。
YahooのIPOには続きがあり、同社は上場した2年後の1999年に株式分割(1株→4株に分割)を実施します。
その後ITバブルが勃発し、2000年2月に上場来最高値の「1億6790万円」を記録しました。
公募価格の70万円で単元株を購入した投資家は「6億7160万円」という大金を手にすることになりました。
4株×1億6790万円=6億7160万円 |
これはどういうことかというと、資産が959倍になったということです。
このように、上場した瞬間に初値で売らず、そのまま保有することで企業が波に乗り、さらに株価を上げていくこともあり得るのです。
初値売りが正解とは一概には言えないところもまたIPO株投資の面白さですね。
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まとめ
この記事ではIPO株の公募価格決定の流れ、個人投資家の利益はどのように決まるのかの仕組みを解説してきました。
IPO株投資は資産構築にはとても「近道」に見えますが、厳しい抽選を勝ち抜く必要があることは頭に入れておきましょう。
しかし、抽選は応募しなければ当たりませんし、抽選に外れたからといって損をする訳でもありません。
人生の一つのイベントとして、宝くじを買うよりも角度が高く、世の中を知るにも学びのある投資と言えます。
まずは証券会社の口座を開設し、IPO株の募集情報に注目するところからはじめてみてはいかがでしょうか。
おすすめの証券会社などは「当選すれば勝率90%のIPO投資の概要とおすすめの証券会社を紹介!取扱数・主幹事数・平等性から徹底比較。」で紹介していますので参考にしてみてください。
以上、IPOで資産1000倍?未公開株上場で何倍になるのかをヤフー(Yahoo)の例を用いて考察…の話題でした。