経済ニュースを見ていると、株取引のコーナーで「JASDAQ(ジャスダック)」という言葉を耳にすることがあるかと思います。
このジャスダック、実は日本の株式市場を活発にするために無くてはならない「株式市場」なのです。
しかし、どのような市場なのでしょうか?
どのような企業が存在するのでしょうか。
今回は、そんなジャスダックについて、上場審査の基準や代表企業を中心に情報をまとめていきます。
目次
Contents
JASDAQ(ジャスダック)とは?
「JASDAQ(ジャスダック)」とは、ベンチャー企業など、成長企業が中心に上場する株式市場です。
現在は、「東京証券取引所」の傘下に置かれています。
ジャスダックは、もともと「店頭販売」を行う市場でした。
店頭販売とは、証券会社が店頭で直接、投資家に株を売る形式です。
取引所で投資家同士が売買を行うのではなく直接株の売買が行われていたのです。
そのため、扱われる株式会社は、市場には株式を公開したくない老舗企業が多い傾向にありました。
株式取引の活発化に伴い、2004年にジャスダックは「株式会社ジャスダック証券取引所」となりました。
店頭販売から取引所へ姿を変えます。
ただ、証券取引所の合併や編入が相次いで、ジャスダック証券取引所は大阪証券取引所に吸収合併されてしまいます。
この時点で、ジャスダックは一度、解散することになります。
2010年。
もともと大阪証券取引所に属していた新興市場である「ヘラクレス」と「NEO」が、
従来のジャスダックと統合される形で「新ジャスダック」が設立されます。
新ジャスダックも成長企業向けの新興市場として立ち上げられました。
当時、東京証券取引所の新興市場であったマザーズよりも、上場企業数が多くなり日本屈指の新興市場として認知されるようになってきます。
2013年。
その影響で新ジャスダックも東京証券取引所傘下に属することになり、現在に至ります。
ジャスダックは新興市場ではありますが、もともと店頭取引を行っていました。
そのこともあり、現在も歴史の古い老舗企業が上場しています。
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JASDAQ(ジャスダック)は二部構成
ジャスダックは、上場する企業に応じて2つの市場を用意しています。
1つは「スタンダード市場」、もう1つは「グロース市場」です。
「スタンダード市場」は、上場する際に、ある程度の実績をもっていないと上場できません。
こちらは、ジャスダックの店頭取引からの名残で古参の企業が上場したいと申請してきた場合に利用されるケースが多いです。
「グロース市場」は、企業業績が赤字でも、将来有望な企業であると判断されれば上場が可能な市場となっています。
こちらは、完全に新興企業向けの市場です。
赤字を抱えていて当然という企業が多いので、投資の際は十分吟味して選ばなければなりません。
投資初心者にはグロース市場はあまりおすすめできないかもしれません。
このように、ジャスダックは二部構成であるため、東京証券取引所内での位置づけも少し独特なものになっています。
東京証券取引所の中で、ヒエラルキーが高い順番に並べると以下の通りです。
■ 東京取引所のヒエラルキー:
- 東証第一部
- 東証第二部
- ジャスダック・スタンダード市場
- マザーズ
- ジャスダック・グロース市場
マザーズとジャスダックのグロース市場は、ほぼ同じ水準ですが、マザーズの方がやや審査基準が厳しいです。
ヒエラルキー的には、マザーズよりもジャスダックのスタンダード市場の方が高いです。
しかし、マザーズは「東証第二部へ上場するための市場」という位置づけにあります。
ジャスダックのスタンダード市場にはあくまでも東証第二部、第一部への上場は目指さないという老舗企業が多くなっています。
この点、留意しておかねばなりません。
楽天は26日、東京証券取引所の承認を受け12月3日付でジャスダック市場から東証1部に上場する市場を変更すると発表した。
機関投資家に株式を保有してもらいやすくする狙い。
東証1部への上場記念配当のほか、株主優待制度や米国預託証券(ADR)を発行できる仕組みの導入も発表。
国内外で知名度や株式の流動性を高める施策を相次ぎ打ち出した。
海外展開を積極化する楽天は今期(2013年12月期)から国際会計基準を導入。
知名度を高めやすい東証1部への上場準備も進めてきた。
新興市場であるジャスダックに投資できない内部規定を持つ国内外の一部年金基金や大手投資ファンドなどの「東証1部に上場してほしいとの要望に応えた」(財務部)という。
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JASDAQ(ジャスダック)の上場審査基準は?
ジャスダックに上場する際の審査基準は、以下の通りです。
(参考URL:上場審査基準)
※スクロールできます(→)
スタンダード | グロース | |
(1)株券等の分布状況 (上場時見込み) |
| 同左 |
(2)流通株式時価総額 (上場時見込み) | 5億円以上 | 同左 |
(3)純資産の額 (上場時見込み) | 2億円以上 | 正 |
(4)利益の額又は時価総額 (利益の額については、連結経常利益金額に少数株主損益を加減) | 次のa又はbに適合すること
| – |
(5)虚偽記載又は不適正意見等 |
| 同左 |
(6)上場会社監査事務所による監査 | 上場会社監査事務所の監査を受けていること | 同左 |
(7)株式事務代行機関の設置 | 東京証券取引所(以下「東証」という)の承認する株式事務代行機関に委託しているか、又は当該株式事務代行機関から株式事務を受託する旨の内諾を得ていること | 同左 |
(8)単元株式数及び株券の種類 | 単元株式数が、100株となる見込みのあること 新規上場申請に係る株券等が、次のaからcのいずれかであること
| 同左 |
(9)株式の譲渡制限 | 新規上場申請に係る株式の譲渡につき制限を行っていないこと又は上場の時までに制限を行わないこととなる見込みのあること | 同左 |
(10)指定振替機関における取扱い | 指定振替機関 の振替業における 取扱いの対象であること又は取扱いの対象となる見込みのあること | 同左 |
また、審査の内容は以下です。
スタンダード | グロース |
(企業の存続性) 事業活動の存続に支障を来す状況にないこと | (企業の成長可能性) 成長可能性を有していること |
(健全な企業統治及び有効な内部管理体制の確立) 企業規模に応じた企業統治及び内部管理体制が確立し、有効に機能していること | (成長の段階に応じた健全な企業統治及び有効な内部管理体制の確立) 成長の段階に応じた企業統治及び内部管理体制を確立していること |
(企業行動の信頼性) 市場を混乱させる企業行動を起こす見込みのないこと | 同左 |
(企業内容等の開示の適正性) 企業内容等の開示を適正に行うことができる状況にあること | 同左 |
その他公益又は投資者保護の観点から東証が必要と認める事項 | 同左 |
スタンダードの場合は、「企業運営の安定性」を問われ、グロースは「将来の成長度合い」が評価に加味されているのが特徴です。
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縮小傾向のJASDAQ市場の現況
近年のジャスダック市場は上場企業数が以下の通り縮小傾向となっています。
(参考URL:日本取引上上場企業数)
JASDAQ (スタンダード) | JASDAQ (グロース) | マザーズ | |
2013/7/16 | 851 | 49 | 186 |
2013 年末 | 828 | 48 | 191 |
2014 年末 | 798 | 45 | 205 |
2015 年末 | 747 | 44 | 220 |
2016 年末 | 713 | 43 | 228 |
2017 年末 | 707 | 41 | 247 |
2018 年末 | 688 | 37 | 275 |
2019年末 | 672 | 37 | 302 |
わかりやすく図解すると以下の通りとなります。
まずグロース市場ですが2013年以降、2019年9月のアミファを除いて新規上場企業はありませんでした。
7年間で1件の上場という事実からわかる通り、近年では新興企業の上場はマザーズ市場が主流となっていることがわかります。
実際マザーズ市場は日本取引所が運営開始した時点の186銘柄から現在は300銘柄を超える水準まで伸びています。
また、ジャスダックスタンダード市場においても数は大幅に減少しています。
これは、新規上場が殆どない反面、東証一部や東証二部に鞍替えを行う企業が多いことが影響しています。
JASDAQ(ジャスダック)上場企業の株は買うべき?
ジャスダック上場企業の株式は、東証第一部、第二部の企業株と比べると、価格変動が激しい傾向にあります。
特に、グロース市場の場合、大量の債務を抱えている可能性もあります。
安易に資金を集中投下することは避けた方が良いでしょう。
ただ、逆に言えば、価格変動が激しい分、それだけ利益を大きくすることも可能です。
まずは、東証第一部・第二部で株取引の流れを把握しましょう。
ある程度、取引の流れを確認できてから、ジャスダック上場の企業株を購入することをおすすめします。
ジャスダック上場の企業の中には、企業規模を急激に拡大させていく成長企業も存在します。
例えば、2015年にすでに東証一部に市場変更してしまったジャスダックのエース銘柄、「ガンホー」。
世界の株式市場でこの1年間に株価が大きく上昇したのはどんな企業か。株価指数「MSCIオールカントリー・ワールド」を構成する約2400銘柄の中で首位は、日本のガンホー・オンライン・エンターテイメント(証券コード3765)。全体で見ても日本企業が大きく躍進し、米国企業も勢いを増している。
どの企業が成長企業なのかは、なかなか簡単には見抜けませんが、業績が急上昇している企業は要チェックです。
日経225とテーマ株については当サイト「マネリテ!」でも取り上げています。
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JASDAQ市場の3つの指数
ジャスダック市場を対象とした指数は3つありますので紹介していきます。
日経ジャスダック平均株価
日経ジャスダック平均株価は日経平均株価のジャスダックバージョンです。
日経ジャスダック平均株価はジャスダック上場の全銘柄を対象に日経平均株価やダウ平均と同じ平均株価方式で算出しています。
平均株価指数とは株価自体の価格が高い銘柄の影響を強くするように算出された指数です。
例えば、時価総額1000億円の企業Aの株価が2000円で時価総額2000億円の企業Bの株価が1000円だとします。
時価総額の観点では企業Aの2倍の割合で企業Bを取り入れるべきです。
しかし、平均株価指数では株価自体が2倍の企業Aを企業Bに対して2倍組み入れるのです。
JASDAQ INDEX
JASDAQ INDEXはジャスダックの全銘柄を対象とした時価総額加重平均指数です。
時価総額加重平均は時価総額が大きい企業の値動きの影響を大きく反映するようになっています。
指数全体の値動きとしてはジャスダックインデックスの方が適切であるといえるでしょう。
以下は算出開始からのジャスダックインデックスの推移です。
JASDAQ-TOP20
JASDAQ-TOP20は東京証券取引所がジャスダック紫綬を代表する20銘柄を選出して算出した時価総額加重平均指数です。
ジャスダックの中には流動性が低く、大口で取引できない銘柄も存在しています。
そのため、ジャスダック指数の厳選バージョンとして算出されています。
2019年末時点の構成銘柄は以下となっています。
インフォコム | ブロッコリー |
ユニバーサルエンターテインメント | アイサン |
ポラテクノ | テクノロジー |
フェローテック | ザイン |
セリア | ユビキタス |
ハーモニック・ドライブ | 日本マクドナルド |
田中化研 | メイコー |
シノケングループ | ウエストHD |
エン・ジャパン | 夢真HD |
クルーズ | セプテーニ |
JASDAQ TOP20は銘柄コード【1551】のJASDAQ TOP20上場投信というETFで投資することができます。
JASDAQ-TOP20とJASDAQとTOPIXの比較
同じ時価総額加重平均指数であるJASDAQ-TOP20とJASDAQとTOPIXのリターンの比較を見ていきましょう。
JASDAQ-TOP20
JASDAQ INDEX
TOPIX
過去10年でみるとリターンは以下の通りとなります。
JASDAQ INDEX>JASDAQ-TOP20>TOPIX
JASDAQ-TOP20は2013年に急騰してますが、これはガンホーがパズドラのヒットで急騰したことが要因です。
構成銘柄が少ないので、1つの銘柄が急騰や急落をすると指数全体に大きな影響を受けるのです。
もう少し短い5年というタームでみるとリターンは以下となります。
JASDAQ INDEX >TOPIX>JASDAQ-TOP20
ただ、残念なことに2020年1月現在、ジャスダックインデックスに連動するETFや投信は存在しません。
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コラム:ジャスダック市場に先物取引は存在するの?
日経平均株価やTOPIX、マザーズ指数には先物取引が存在します。
ジャスダックにもジャスダック上場の企業を平均株価で算出した日経ジャスダック平均株価という指数が存在しています。
しかし、現時点では日経ジャスダック平均株価を対象とした先物取引は存在していません。
以下のコンテンツでは何故、まだ先物取引が存在しないのか?
という観点を含めて詳しく解説しています。
(目次に戻る)
まとめ
ジャスダックに上場するためには、諸条件をクリアする必要があります。
将来の成長が期待される企業であれば、比較的上場しやす市場となっています。
ベンチャー企業以外にも、老舗の企業もジャスダックに上場しており、古き良き企業と勢いのある企業が市場を形成しています。
投資対象としては、少々難度が高い市場なので、投資初心者の方にはあまりおすすめできません。
ただ、投資経験を積んだ後は、大きな利益を獲得するチャンスです。
どの企業が成長企業なのか、各企業の業績を参考しながら、投資を進めていきましょう。
以上、【ジャスダックとは?】大化け株も存在?JASDAQ(JQ)の概要と上場審査基準を解説。…でした。