皆さんMMTという言葉を聞いたことはありますでしょうか?
今、日本や米国といった先進諸国で脚光を浴びている理論です。
あくまで理論なので正しいことが証明されているわけではありません。
しかし、MMTが実践されればデフレに苦しむ日本の現状を脱却することができる可能性を秘めています。
Contents
MMT理論(現代貨幣理論)が急に話題に上がっている背景
そもそもMMT理論が話題に上がっている背景について見ていきましょう。
そもそも誰によって提唱されているの?
米投資家:ウォーレン・モスラー
豪州ニューカッスル大:ビル・ミッチェル
米ミズーリ大:ランダル・レイ
米NY州立大:ステファニー・ケルトン
中でもステファイー・ケルトン氏は大統領選で民主党代表候補をバイデン氏と争ったサンダース上院議員の顧問を務めています。
ケルトン教授は昨年来日して話題を呼びましたね。
MMTが注目された契機
2018年11月にNY州から米国連邦議会下院選に出馬したアレクサンドリア・オカシオ・コルテズ氏がMMT理論に対して支持を表明しました。
実際、彼女は史上最年少の女性下院議員でもあることから話題を呼ぶ契機となったのです。
更に、先ほどお伝えした通り大統領選のサンダース議員の顧問を務めていたのがケルトン氏であったことからも注目が増していったのです。
日本で注目が高まっている理由
ご存知の通り、日本は世界最大の対GDP比債務を抱えています。
債務超過が懸念されて久しいですが、インフレはおろかデフレに長期間苦しめられています。
MMT理論が実践されれば、現在の日本の低成長デフレの状況を覆すことができる可能性があるのです。
そもそもMMT理論(=現代貨幣理論)とは?
そもそもMMT理論を一文で完結に表現すると以下の通りとなります。
自国通貨を発行する政府は、高インフレの懸念が無い限り財政赤字を心配する必要がない。
日本や米国のような国は中央政府が通貨を発行する権利を有しています。
言われてみれば当たり前のことですが、通貨を発行する権利があるのであれば債務を返済できなくなる事態は発生しません。
デフォルトして話題になったギリシャは通貨統合によってユーロを使用していたため、
自国通貨の発行権を保有していなかったので外国建の債務を返済することができずデフォルトとなってしまったのです。
一方、日本の場合は日本円の通貨発行権を有しています。ギリシャとは全く状況が違っているのです。
100兆円の借金の返済が迫れば、100兆円分の日本円を発行して返済すれば良いだけですからね。
しかし、市中に流通する通貨量が増加すれば当然通貨の価値は希釈化します。
通貨の価値が希釈化すると、相対的にモノやサービスの価値が高くなるのでインフレが発生します。
裏を返すと高インフレの懸念が無い限りは通貨発行権を有する政府は財政赤字を気にせずに景気対策に専念すべきという主張になります。
マネタリーベースとマネーサプライ(マネーストック)の違い
日銀は確かに国債を引き受ける代わりに日本円を発行しているので日銀のバランスシートは拡大の一途をたどっています。
結果的に日本国内全体に存在する日本円の総量である「マネタリーベース」は拡大の一途をたどっています。
しかし、実際のところ以下のとおりインフレは発生していません。
現在、日銀が行なっている金融緩和を簡単に図示すると以下の仕組みとなります。
日本政府が発行した国債を直接日本銀行が引き受けることは現行法上できません。
現在の日銀の金融緩和は市中銀行が保有する国債を日銀が引き受ける仕組みで実施されているのです。
発行された日本円を市中銀行が貸し出しを行うことで市中に流通する日本円の総量(=マネーサプライ)は増加します。
しかし、現在日本の民間企業は資金需要がないので市中金融機関が貸し出しを増やしてマネーサプライを増加させることができないのです。
結果、マネーサプライはわずかしか増えておらずインフレが発生していないのです。
通貨が増える仕組「信用創造」を理解しよう!
それでは本題に戻していきます。MMTを理解するためには信用創造という仕組みを理解する必要があります。
現代貨幣理論という名前なので、貨幣の捉え方が非常に重要になってくるのです。
商品貨幣論と信用貨幣論
まず従来の貨幣に対する考え方は商品貨幣論に基づいています。
商品貨幣論では貨幣の価値は貴金属のような有価物に裏付けされるものとして考えます。
ただ、既にニクソンショック以降、金本位制は終了しています。
そこでMMT理論では信用貨幣論という考え方で通貨をとらえます。
信用貨幣論では貨幣を負債の一種とみなします。
例えば、Aさんがイチゴを保有しておりBさんが秋刀魚をもっていたとします。
まず、AさんがBさんに春にイチゴを渡すとします。Bさんは債務証書としてAさんに貨幣を渡します。
Aさんは秋にBさんから貰った債務証書である貨幣を引き渡すことで秋刀魚を受け取ることができるのです。
つまり、貨幣というのは負債を発生させるという考えを信用貨幣論では行います。
銀行が貸し出しを行う時に通貨が創造される(信用創造)
貨幣と一言に行っても、現金と銀行預金に分かれます。そして殆どは銀行預金として存在しています。
先ほどの物々交換の例を思い返してみてください。Aさんが苺を春に渡した時に貨幣が創造されました。
銀行という括りで見ても当然ですが同じことがいえます。
意外な事実かもしれませんが銀行が民間に貸し出しを行うことで通貨が創造されるのです。
そして、貸し出しが返済されることで通貨が消滅するという仕組みなのです。
銀行の資金制約とは?
確かに、銀行は預金を元に貸し出しを行なっているわけではないので理論上いくらでも貸し出しを行うことができるように思われます。
しかし、貸し手がいるということは裏を返せば借り手がいるということになります。
借り手である民間企業の資金需要がないような状況では、いくら銀行が貸し出しを行おうとしても貸し出すことができないのです。
現状、民間の資金需要が旺盛ではないので貸し出しを増やすことができずマネーサプライが上昇していないのです。
コラム:通貨の価値は納税手段として担保
国家が納税手段として自国通貨を指定することで通貨が価値を持つことになります。
つまり、国家権力である徴税権こそが通貨を通貨たらしめているとMMTでは考えるのです。
結果、増税すると納税の手段である通貨の価値があがり、減税すると通貨の価値が下がります。
民間の資金需要が枯渇しているならば政府が支出をするしかない!
先ほど申し上げました通り、現在の日本では民間の資金需要が少ないので貸し出しを増やすことができずマネーサプライは増えません。
結果として通貨流通量は増加せず現在の日本のようにインフレが発生しないのです。
今までの議論から預金は貸し出しの原資ではないので、民間貯蓄も国債発行の制約とはならないことが理解いただけるかと思います。
政府が財政出動することで国家は財政赤字となります。
しかし、国家が財政赤字となることは同額の民間貯蓄を生み出すことを意味します。
例えば、政府が公共事業を行うために国債を発行するとします。
すると、市中銀行が国債引き受け時に創造された日本円を政府が民間企業に対して公共事業の対価として支払います。
結果、支払われた日本円が民間企業の貯蓄として増え、従業員の給与としても還元され民間貯蓄自体が増加するのです。
つまり、日本が先進国でも例外的にインフレが発生していないのは明らかに政府支出が足りないことが主因ともいえるのです。
以下は2001年以降の先進国の政府支出の伸びをグラフ化したものです。
そして、政府の借金が増えたところで日本円建で発行されているので、通貨発行権を有する日本国はデフォルトとなることはありません。
資金需要が旺盛になり適度なインフレに持ち直すまで政府支出を増加する必要があるのです。
当然財政支出と同様に減税も同様の効果をもたらします。
税金はインフレ率の調整としての役割を果たすものと考えればよいという考えです。
インフレが高進する局面では増税が必要ですが、デフレの局面では減税が必要ということですね。
まとめ〜MMT理論が否定する従来の常識〜
【政府には民間同様に予算制約がある → 間違い】
民間貯蓄と国債発行は紐づいていないため予算制約はない。また、政府は通貨発行権があるのでデフォルトはしない。
【財政赤字は有害 → 間違い】
政府の赤字は民間の貯蓄。寧ろ資金需要がない現在の日本のような国では財政赤字を拡大させる必要がある。インフレが高進しない限りにおいて財政赤字の増加は気にする必要がない。
【財政赤字は投資に使える民間貯蓄を減らす → 間違い】
寧ろ、財政支出によって信用創造が行われマネーサプライが上昇する。政府が使用した分は民間の貯蓄となる。
【財政赤字は将来世代に禍根を残す → 間違い】
そもそも財政赤字は国民の資産です。財政赤字を返済する必要はありません。寧ろ財政赤字の縮小は家計資産の縮小を意味し国民が貧しくなります。