アメリカには、ニューヨーク証券取引所(NYSE)、ナスダック証券取引所など。
世界最大級の証券取引所があります。
これらの証券取引所を管理・監督している組織が「SEC」です。
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今回は、このSECについて、概要や歴史などを詳細に解説していきます。
目次
Contents
SECとは?
SECは「U.S. Securities and Exchange Commission」の略称。
日本語で「証券取引委員会」という意味です。
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HPからSECの目的について抜粋します。
The mission of the U.S. Securities and Exchange Commission is to protect investors, maintain fair, orderly, and efficient markets, and facilitate capital formation.
SECは投資家を守り、市場の公平性と効率性を担保することを掲げて米国の株式、公社債などの証券取引を管理・監督しています。
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SECは米国連邦政府の傘下にある組織です。
SECのメンバーは5人で構成され、そのメンバーはアメリカ合衆国大統領から任命されます。
ただ、連邦政府傘下の組織であるものの、政府からは一定の独立性が保持されています。
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SEC(証券取引委員会)の歴史
SECは1934年に設立されました。
第一次世界大戦後のアメリカ経済の好調を背景に、アメリカでは株式取引が盛んに行われるようになりました。
やがて1929年のブラック・サーズデーによって市場崩壊が起こります。
いわゆる「世界恐慌」と呼ばれる時代です。
この後、証券会社によって不正が行わていたことが発覚します。
市場の混乱が拡大した原因の1つとして、政府はこの事態を深刻に受け止めます。
これらの不正を監視するために、当時のアメリカ大統領フランクリン・ルーズベルトが任期中の際にSECが設立されました。
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SECは企業の不祥事を暴く実績をあげていきます。
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コラム:『エンロン』と『ワールドコム』の粉飾決算事件
SECが暴いた有名な二つの事件について紹介していきます。
エンロン事件
エンロンは、テキサス州のヒューストンに存在した総合エネルギー取引、ITビジネスを取り扱っていた企業です。
年間売上1,110億ドルを超えるアメリカ屈指の大企業でした。
インドでの電力事業に失敗して、その際の巨額の不正経理、不正取引がSECによって明るみにされます。
この結果、エンロンは破綻に追い込まれ、倒産することになります。
これを「エンロン・ショック」と呼びます。
アメリカの大企業が粉飾を行っていたことは、当時のアメリカ国民たちに衝撃を与え、アメリカ企業のイメージを悪くしてしまう要因となりました。
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この事件だけでも十分、衝撃的なものでしたが、エンロンの粉飾を超える不祥事がSECによって明るみにされます。
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ワールドコムの不正会計事件
それは「ワールドコム」による不正会計です。
ワールドコムは、当時アメリカ国内第2位の長距離通信会社でした。
ワールドコムは、1990年代後半に起こった「ITバブル崩壊」や携帯電話事業者のスプリント・ネクステとの合併破綻などが原因で、経営状態が著しく悪化しました。
この悪化した経営状態を粉飾決算によって隠蔽していたのです。
会計の帳簿上で、本来損失として発生している費用を設備投資として計上するなどの粉飾が行われました。
この手法は非常に単純なもので、本来、監査会社はすぐに気づかなくてはなりません。
ワールドコムを監査していた大手会計事務所アーサー・アンダーセンはこの粉飾を見逃していました。
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皮肉にも、アーサー・アンダーセンは、エンロンの監査も担当しており、エンロン、ワールドコム両社の粉飾を見落としてしまいました。
これが原因で、アーサー・アンダーセンは信頼を失い、解散することになります。
ワールドコムは粉飾会計が明るみに出たことによって、倒産に追い込まれます。
ワールドコムの負債総額は、エンロン事件を上回る額(約410億円)となり、アメリカ史上最大の倒産事例となりました。
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SECの関連組織
次にSECと関連が深い組織を見ていきましょう。
アメリカ合衆国連邦政府
アメリカ合衆国連邦政府は、SECの所属元である組織で、アメリカ合衆国憲法に基づいて設立された中央政府です。
アメリカ合衆国連邦政府は、「立法府」「行政府」「司法府」の3つの部門で構成されています。
各部門が互いを監視し合う形式です。
立法府は、下院と上院から構成された連邦議会となっており、日本と同様に「両院性」が適用されています。
連邦議会には様々な権限が与えられており、
例えば「租税の賦課」や「貨幣の鋳造」、「陸海空軍の規律に関する規則の制定」などが挙げられます。
行政府は、大統領を頂点に置いた大統領顧問団となっています。
すべての行政権は、大統領に付与されているため、実質大統領の決定事項が最も力を持ちます。
この点、議院内閣制の日本やイギリスとは異なります。
また、アメリカ大統領は国民からの投票によって選ばれる為、国民が直接、国の最高権力者を指名することになります。
司法府は、アメリカ合衆国連邦裁判所となっています。
連邦裁判所は、最高裁判所である連邦最高裁と、その下に設置されている控訴裁判所、さらに下に置かれる下級裁判所によって構成されています。
日本の裁判所と同様、議会に置いて違憲となる法律が制定された場合、それを無効とする権限(違憲審査権)が与えられており、憲法の番人として君臨しています。
連邦準備理制度理事会
連邦準備制度理事会(Federal Reserve Bank, 通称FRB)は、アメリカ合衆国の中央銀行制度を統括する機関です。
FRBは、銀行の監督や規制、金融政策の実施、財務証券の売買などによる公開市場調査などを主な業務としています。
FRBの議長、副議長、理事は、大統領によって任命されます。
FRBの議長は、世界に対してアメリカの金融政策に関する発言を行うため、世界経済に対して大きな影響力をもっています。
大統領に次ぐ権力者とも呼ばれており、FRB議長の発言によって株価が急変動することもしばしばです。
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SECの今後
アメリカ企業が、今後不祥事を起こさないということは考えにくいため、
今後もSECが活躍して、不祥事が公にされる可能性は十分あります。
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近年では、Facebookなど大手IT企業が苦境に立たされていることもありSECが関与する事件が起こるかもしれません。
どんなに大きな企業でも、事業が悪化すれば倒産に追い込まれます。
これが資本主義社会の恐ろしいところでもありますね。
企業にしろ人間にしろ、極限まで追い込まれると、失敗をひた隠しにしてしまうのが本性なのかもしれません。
日本企業も他人事ではなく、企業不祥事を起こさないよう、政府組織が監督を徹底していく必要があります。
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まとめ
SECはアメリカの証券取引を管理する組織で、これまで多くの企業内の粉飾決算を暴いてきました。
世界恐慌のきっかけとなった「ブラック・マンデー」において、証券取引の不正が相次いだ反省からSECが設立され、今日まで活動を続けています。
ネットが発達して、誰もが簡単に投資家になれる時代、企業の粉飾決算は投資家たちに多大な影響を与えます。
それも大企業の不祥事ともなると、被害額も大きくなってきます。
このような事態を防ぐために、SECが存在しているといっても良いでしょう。
今後、アメリカで企業不祥事が起こらない、ということは想定しづらいです。
ワールドコムの事件から20年以上経過していることもあり、またSECが活躍する事態が発生するかもしれません。
特に、IT産業の不振が目立つので、関連株を保有している方は注意を払わねばなりません。