「VIX指数」とは、いわゆる「恐怖指数」とも呼ばれ、米国の株式指標であるS&P500のオプション取引をもとに算出した指数です。
ニュースでも取り上げられ、戦争や関税の問題など、世界的な事件が発生した際にニュース等でも見かけることがあると思います。
今回は、そのVIX指数とはどのようなものなのか?
またVIX指数を参考にした投資戦略は?という点について説明していきます。
目次
Contents
VIX指数とは
冒頭でもVIX指数について簡単に説明しましたが、もう少し詳しく解説します。
VIX指数は投資家の恐怖心を反映した指数だと言われています。
そのため、別名「恐怖指数」という言葉がついています。
投資家が不安に思うような出来事があった際に動くため、相場を悲観する指数でもあります。
「VIX」とはボラティリティ・インデックス(volatility index)の略語です。
ボラティリティとは銘柄の価格変動の大きさを示す変動率です。
いわゆる市場のボラティリティが上昇している際に動きがある指数です。
投資家が株式市場に対して不安を感じているとき、相場が下落するような事件があったときには上昇。
また安定しているときには下落するという性質を持っています。
ちなみに14~24程度が平常時の指数です。
ではなぜ、不安や恐怖が指数として表れるのでしょうか?
VIX指数とはS&P500のオプション取引を参考に算出されています。
オプション取引とは、ある期日までに特定の価格で取引する権利のことです。
言葉がややこしいですが、これは将来的な売買権利の取引のことを言います。
株価が上昇すると予想した場合は「コール・オプション」と言い、権利を買います。
逆に下がると思えば「プット・オプション」と言い、権利を売ることになります。
この権利を持つことで、ある期日に特定の価格でその商品を売買することができます。
先の価格を予想して取引をするため、買いと売りの権利の売買は将来的な投資家の予想を示しています。
そのため、オプション取引を参考にすることで、投資家が楽観しているか(株価が上昇すると思っているか)。
もしくは悲観しているか(株価が下落すると思っているか)が判断できます。
オプション取引を参考にして今後のボラティリティを予想することで、下落する状況ではVIX指数が上昇します。
インプライド・ボラティリティって何?
「インプライド・ボラティリティ」とは、未来のボラティリティ(変動率)を予測するオプション取引でのテクニカル指標です。
- インプライド・ボラティリティが低い→安心感
- インプライド・ボラティリティが高い→不安感
上記のように、インプライド・ボラティリティによって市場参加者の心理が分かります。
恐怖指数とコンベクシティ
相場の上昇時もインプライド・ボラティリティが上がりそうですが、そうなることは少ないです。
相場の上昇は比較的ゆっくりとなるため、市場参加者の心理は落ち着く傾向があります。
しかし、相場の下落は早いため、市場参加者の心理は不安感が増しやすいです。
市場参加者は大きな上昇よりも大きな下落のほうに強く反応しますが、これを「コンベクシティ」と呼びます。
恐怖指数の動き方は、このコンベクシティが大きく関係しています。
恐怖指数に不正操作の疑いあり
2018年2月14日に、恐怖指数に不正操作の疑いというニュースが流れたことがあります。
ニュースによると、金融取引業規制機構が調査をはじめたとのことです。
この不正操作により、投資家に多額の損失が発生した可能性が高いです。
どのテクニカル指標でも同じではありますが、恐怖指数を全面的に信頼しすぎないほうがいいでしょう。
参考サイト:https://jp.reuters.com/article/usa-stocks-volatility-manipulation-idJPKCN1FX1X5
なぜ恐怖指数と呼ばれるのか
なぜVIX指数が、恐怖指数と呼ばれるのでしょうか。
それは、市場参加者が恐怖心を感じるような大暴落時に、VIX指数が急上昇するからです。
過去に起きたリーマンショック時には、VIX指数が大幅に上昇しました。
一般的には、次のような見方ができます。
- 株価が大きく上昇するのはVIX指数10~20ほど
- 株価が下落するのはVIX指数20~30ほど
- 株価が大きく下落するのはVIX指数30以上
VIX指数が小幅上昇なら、本格的な株価下落が起きない可能性があります。
しかし、VIX指数が大幅に上昇している場合は別です。
株価が暴落する→VIX指数が急上昇する→それを見た市場参加者が売りに出す
場合によっては、上記のような流れで悪循環に陥ることがあります。
保有銘柄に含み益がある場合は、早めに手じまいしたいところです。
ただし、暴落した後は急反発する相場が多いです。
ヘッジファンドなどが空売りを仕掛け、暴落したところで買い戻しを入れるからと考えられます。
個人投資家も空売りヘッジファンドの流れに乗る方法はありますが、値幅が大きいだけにリスクが高いです。
VIX指数の大幅上昇は空売りを仕掛けるというより、買いのチャンスを探すものと考えるほうがベターです。
恐怖指数とスキュー指数に相関関係はあるか
恐怖指数とよく似ているのが、「スキュー指数」です。
スキュー指数は、テールリスク(希に発生する大きな被害を与えるリスク)が分かる指標となります。
スキュー指数は、「ブラックスワン指数」とも呼ばれています。
ブラックスワンは、日本語にすると「黒い白鳥(コクチョウ)」という意味です。
コクチョウはオーストラリア固有だったため、研究が進んでいない昔は、存在しないと思われていました。
そのため、コクチョウが発見されたときに、驚かれたという歴史があります。
このことから、めったに起きないが、驚くような大暴落のことを、相場ではブラックスワンと呼ぶようになりました。
暴落を予測する市場参加者が多くなると、スキュー指数が上がることが多いです。
この恐怖指数とスキュー指数には相関関係はあるのでしょうか。
しかし、両者の分散図を見ても、相関関係は確認できませんでした。
恐怖指数は先行指標になるのか
市場参加者の心理を表す恐怖指数は、先行指標になるのでしょうか。
しかし、株価が暴落してから恐怖指数が上昇することが多いです。
そのため、恐怖指数を先行指標として使わないほうがいいでしょう。
ただし、スキュー指数が上がった後、恐怖指数が上がるような株価下落がはじまることがあります。
スキュー指数で下落相場を予測し、恐怖指数に連動する商品でリスクヘッジを早めに行うといった手法が使えます。
また、株価が大暴落すると為替相場で、急激な円高が進むことが多いです。
FXでロングポジションを持っているときは早めに手じまいする、または両建てでリスクヘッジするといいでしょう。
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VIX指数を用いた投資戦略
説明した通り、VIX指数は株価が下落する状況では指数が上昇します。
つまり、S&P500が下落するタイミングではVIX指数が上昇するという逆相関の関係にあります。
当然、これは投資家の心理を表しているため、完全に指数通りに動くわけではありません。
ただし、このVIX指数が原因で株価が大きく下落した事件がありました。
いわゆる「VIXショック」と呼ばれる、2018年2月に起きたものです。
これは米国の長期金利が上昇し、VIX指数が急騰しました。
弊サイト「マネリテ!」でも、コラムとして取り上げています。
2月8日の終値で33と、投資家が非常に悲観的になっていることを表しています。
その結果、当日のNYダウは1000ドル以上下落するという事態に陥りました。
米国株式と日本株式はある程度の相関性があるので、下落に付き合う形で日経平均も2%以上の下落をしてしまいました。
投資をするのであれば、リーマンショックや先のVIXショックのように、下落によるヘッジを入れる必要があります。
VIX指数には参照するETFがあり、株価下落による損失を補填することも可能です。
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VIX指数連動ETF
VIX指数は、それ自体は指数なので売買はできませんが、指数を参照したETFがあります。
ETFなので信用取引でも売買が可能で、レバレッジを効かせた取引、また空売りができます。
ちなみに、VIX指数の空売りは株価の上昇を見込んでいるということなので、この考え方は人それぞれです。
VIX指数に連動しているETFは国際のETF VIX短期先物指数(1552)、国際のETF VIX中期先物指数(1561)があります。
先ほども説明しましたが、VIX指数が上昇するタイミングは株価が下落する状況になります。
VIX指数連動ETFを買うということは、株価が下落したときに利益が上がるという意味です。
またVIX指数は突発的な事件などでボラティリティが上昇しているときにも上がります。
保有株式の損失を抑えるという意味で、VIX指数はリスクヘッジとしても活用できます。
このようにリスクヘッジにも閊えるVIX指数ですが、このETFは長期投資には向いていません。
実際、VIX短期先物指数ETFの説明には以下が記載されています。
・当ファンドは、「VIX指数」そのものへの連動をめざすものではありません。
・当ファンドは、短期的な投資に活用いただくことが望ましいと考えられます。
・当ファンドは、中長期的な投資(バイ・アンド・ホールド)には向きません。
当ファンドは、相場の先行きに不確実性が高まる局面では短期的な「ヘッジツール」として期待される一方、中長期的には時間的価値の減価などによる影響を受ける傾向があると考えられます。
ここでははっきりと、短期取引に用いられ、中長期的な投資は向いていないと書いてあります。
また、中長期で保有すると価値が下落する傾向があると言われています。
この点について詳しく説明します。
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VIX指数連動ETFの注意点
先ほどの説明をかみ砕いて言うと、基準価額が下がり続けており、中長期での保有はコストが高いという意味です。
VIX指数はS&P500と逆相関となっています。
S&P500自体はリーマンショック等の下落もありました。
しかし、1941年より基本的には上昇しております。
中長期的な意味ではVIX指数は逆相関で下落するということになります。
また、説明にもある通り「VIX指数」への連動ではなく「VIX短期先物指数」へ連動します。
同じような言葉ですが、これは取引期限の違いがあります。
VIX短期先物指数は先物取引です。
つまり取引期限があり、中長期で保有したい場合、ロールオーバーが必要になります。
ロールオーバーとは、期限があるもので取引が終了した場合、一度決済をして次の取引期限のものを購入するというものです。
このとき、決済日が近い「期近物」を売却し、遠い「期先物」を購入します。
先物取引は遠い取引期限のものほど不透明感が増すので、期先物の価格は高くなります。
つまり、中長期で保有した場合、期近物の安い価格で売却し、期先物の高い価格でロールオーバーしなくてはなりません。
そのため長く保有するとコストが増加し、価値が減ってしまいます。
こういった理由からVIX指数を投資に取り入れる場合は短期取引が基本になります。
特に株式を保有しているタイミングでのVIX指数への投資をオススメします。
短期取引が基本なので、保有株式の損失を埋めることができる可能性があるからです。
もし現在保有している株式がなければ、同じように株価下落にも対応できる「日経平均インバース上場投信(1571)」に投資をしてみてはいかがでしょうか。
これは空売りと同じように、日経平均が下落すれば利益が出るという仕組みのものです。
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恐怖指数連動ETN
楽天証券ではVIX短期先物指数(S&P500)、VIX中期先物指数(S&P500)に連動するiPath VIXシリーズ(ETN)を用意しています。
iPath VIXシリーズは東京証券取引所に上場されており、立会時間中に取引できます。
手軽に恐怖指数へ投資したいという方も、恐怖指数連動ETNに注目してはいかがでしょう。
ただし、恐怖指数連動ETF同様、長期投資には向きません。
ほかにもCBOE指数短期先物、CBOEオプションなどがありますので、自分にあいそうな商品を選ぶと良いでしょう。
まとめ
投資をする際に重要なことは利益が出たときの場合だけではありません。
下落した際にどうすればいいのかという対処法を持つことです。
方法としては空売りを入れる、一度すべて売却してフラットにする。
このようなことが挙げられますが、VIX指数への投資は選択肢を広めます。
先行きが不透明な現在だからこそ、下落時にも対応できる商品を持つことは重要だと思います。
今後の株価が不安のとき、ポートフォリオに加えてみてはいかがでしょうか。
以上、【VIX指数(恐怖指数)とは?】投資家の恐怖心を反映!その特徴・仕組みと指数を活用した投資戦略について。…でした。