MLPは投資の初心者にとっては聞きなれない言葉かもしれません。
MLPは「Master Limited Partnership」と呼ばれる、主に米国で行なわれている共同投資事業形態の一つとなります。
簡単に定義だけを述べられても、理解することは難しいですよね。
今回はそのMLPの仕組みと今後の見通しについて解説していきます。
目次
Contents
MLPとは?リートとの違いを理解しよう
すでに上記でも触れましたが、MLPは「米国」の共同投資事業の形態です。
その出資持分が米国の金融商品取引所に上場されているものを指します。
MLPの構成としては、ジェネラル・パートナー(GP)とリミテッド・パートナー(LP)の2つに分かれます。
GP…リミテッド・パートナーシップ全体の2%程度を出資し、経営について無限責任を有します。金融商品取引所等では流通していません。
LP…有限責任のもと、GP出資後の残りの出資部分を拠出します。MLPの出資持分として金融商 品取引所等で流通しています。
マスター・リミテッド・パートナーシップの名前の通り、有限責任を意味します。
出資者は出資した金額以上の損失を負うことはありません。
MLPは、簡単にいえば「リート(REIT)」に近い商品です。
リートは基本的にファンドが出資者を集め、不動産を購入し利益を出資者に分配していきます。
MLPはファンドが出資者を集めるところまでは同様です。
しかし、米国の歳入法で定められてエネルギー、インフラ事業などから90%以上の総所得を得る必要があります。
その利益の全てを配当金として拠出することを条件に、法人税を免税とする形態となっています。
◾️ 米国歳入法で定められている業態:
- 探査、開発、生産
- 収集、処理
- 貯蔵、マーケティング、流通
- 精製
- 圧搾
- 採鉱
- 輸送(パイプライン等)
MLP(マスター・リミテッド・パートナーシップ)とは、米国で行われている共同投資事業形 態のひとつであり、MLPの出資持分が米国の金融商品取引所等で取引されています。
一般的に、MLPは総所得の90%以上をエネルギーや天然資源に関連する事業、金利、配当、不 動産賃貸料等から得ています。多くは、主としてエネルギー関連事業(上流、中流、下流等) に投資を行い、パイプラインや貯蔵施設等の利用料などを収益源としています。
「シェール革命」等を背景に米国のエネルギー関連インフラへの需要が高まるにつれ、MLP市 場も拡大してきました。2015年12月末時点での市場規模は約39兆円となっています。
2017年3月時点では市場規模はMLPよりも米国リートの方が大きいです。
しかし、指数の利回りはMLPが上回っていることがわかります。
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MLPの市場規模と配当成長率(S&P MLP指数からみる高い利回り)
MLPは上記の表にもある通り、市場規模は約60兆円を超えてきており、REIT市場に迫っています。
市場規模が急拡大している背景として、利回りが高いと言われているハイイールド債やREITに対しても、高い利回りが見込めることが大きな要因となります。
米国リートが4.1%となっておりますが、MLPはそのさらに高い利回りである8.1%を誇っています。
MLPはオルタナティブ投資として、市場平均と連動しない値動きであるという特徴も持ち合わせています。
これはMLPが精製施設など長期契約が基本となる事業モデルで安定収入を得ている場合が多く、それ故に価格が安定する傾向にあることが理由となっています。
オルタナティブ投資(おるたなてぃぶとうし)
伝統的な投資対象である株式、債券と相関しないとされる一連の運用対象に投資すること。
具体的にはヘッジファンド・商品ファンド・不動産などがそれにあたり、従来にない資産に代替する(=オルタナティブ)という意味でこの名称が使われている。(引用:野村證券「証券用語集」)
MLP投資信託のリスク
高い利回りを期待することができるMLPですが、リスクも存在します。
投資を行う際にはリターンだけではなく、リスクもしっかりと確認しておく必要があるため、解説を行います。
MLPのリスクには大きく2つあります。
1:分散投資ができない
投資の基本は分散投資であり、リスクヘッジを行うためには非常に重要です。
MLPの場合は上記でも解説しているとおり、エネルギー市場が投資のメインとなります。
そのため、エネルギー市場に大きな影響が発生した場合には、その影響をダイレクトに受けてしまうことになります。
2:他の金融商品同様に金利の影響を受ける
MLPは株式などと同様に金融商品取引所で売買されます。
そのため、金利や為替など経済状況が与える影響も少なくありません。
投資を行う際は、リスクヘッジを行うとともに、さまざまな角度から多面的にとらえて、リスクを回避することが大切です。
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MLPの2019年以降の見通し。配当は堅調に推移もエネルギー市場の供給過剰には注意?
上記のとおり、MLPは配当利回りが高いことから、 ETFやMLPを投資対象とする投資信託には注目が集まっています。
ここからは、2019年以降もその状況が続くのかどうか、MLPの価格の見通しに影響を与える要素をそれぞれ分析していきます。
配当分配率の動向
最新のMLPによる分配金を日興アセットマネジメントのレポートから見ていきます。
■MLPの分配金動向
決算シーズンの際、MLP各社は、決算発表に先立ち、その期の分配金を発表するのが一般的です。 1月から 公表が始まっている、MLPの2018年10-12月期の分配金動向は、2019年1月31日現在で、指数構成銘柄(49銘柄、 2018年12月末時点)のうち、40社の発表が終了しており、前期比での増配は20社、横ばいが20社、減配が0社と なっています。
40社の内、増配、横ばいがそれぞれ20社であり、配当に関しては好調であることがわかります。
エネルギー業界の動向
また、MLPの価格に関しては、投資分野がシェールガスなどを始めとしたインフラ事業(エネルギー、天然資源など)です。
エネルギー業界の動向をウォッチしておく必要があります。
上記はドバイ・ブレント・WTI・OPECバスケットの原油価格の推移ですが、中国の減速懸念とシェールガス革命により20USD台まで低迷していました。
しかし、その後にOPECの協調減産等の供給を絞る施策もあり、2018年は80USDの水準まで回復しました。
OPECは原油価格を押し上げるため、ロシアなど主要な非加盟国と1月から6カ月間、日量120万バレルの協調減産を実施することで合意した。
一時は回復したものの、その後も急落。
要因としては以下の通りですが、現在の水準が米国シェールガスの採算が取れる水準であることを鑑みると、原油価格の動きは鈍ることが想定されます。
- 株式市場急落からの投資家の資金引き揚げ
- OPECの石油需要見通し下方修正
- サウジアラビアによる増産の示唆
精製施設などの使用料金も原油価格が上昇しなければ、コスト削減の流れとなる点から、配当金にもどこかで影響が出てくる可能性が高いです。
米国長期金利の動向
MLPやREITの特徴として、米国の長期金利が上昇すると「逆相関」で下落する特徴があります。
国債・社債の利回りが高くなれば、価格変動リスクない分、利回りが変動するMLPの魅力が落ちてしまうことが理由となります。
2008年のリーマンショック以降、米国経済は継続して成長しています。
リーマンショック当時は金利を0%の水準まで引き下げていましたが、ジリジリと2%程度まで引き上げています。
すでにリーマンショックから10年以上が経過しています。
経済危機が発生せずに成長を続けているのは過去2番目の長さとなっており投資家が警戒態勢にある状況ではあります。
米金利の動向には今後も注視しておくべきでしょう。
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まとめ
MLPの概要、仕組みとリートの違いから今後の見通しについて各指標から解説しました。
MLPの2019年以降の見通しとして、配当の分配率は底堅く推移すると予想できます。
しかし、エネルギー市場の供給過剰に懸念がある点を鑑みると、MLP価格の上昇には少し、懐疑的にならざるを得ない状況といえるでしょう。
以上、【MLPとは?】REIT(リート)とは違う!その概要・仕組みと2019年以降の見通しをわかりやすく解説。…でした!