グローバル社会となった現代において、国同士の貿易はもはや当たり前のものになっています。
この貿易を成立させているのが「外国為替」の存在です。
日本とアメリカであれば、円とドルをそれぞれ交換できる体制がなくては、貿易を行うことができません。
現代の外国為替市場は、その交換レートが日々刻々と変化しています。
その代わりに、「金本位制」という制度のもと、各国の通貨価値が保証されていたのです。
今回は、この金本位制について、その正体を暴いていきます。
金本位制を含む、経済・歴史を短期間で学びたい方は、現代では有益な情報を発信している団体も多く、セミナーに参加してみるのも視野に入れてみましょう。
断片的な知識ではなく、マクロに経済を見た上で、一つ一つの事象を理解していくと、経済・投資の勉強はとても捗りますよ。
目次
Contents
金本位制とは何か?
金本位制とは、「金」(GOLD)を軸にして各国の通貨価値を定める制度です。
各国の中央銀行は、発行した貨幣の価値と同等の金を保管して、常に貨幣との交換に応じられる体制を敷いていました。
金本位制が敷かれている国の貨幣は、実際に「金」と交換できる貨幣だったのです。
ちなみに、現代の先進国における貨幣は、実際に金との交換を保証したものではありません。
不換紙幣の場合、実際に金と交換することはできませんので、価値は市場における貨幣の流通量で決まってきます。
金本位制は、「金」の価値を担保に貨幣を発行していますが、「銀」を担保にした銀本位制というものも存在します。
1930年代まで、東アジアでは貿易の際に銀が決済手段として利用されていました。
これは、当時の中国が銀本位制を敷いていたためです。
日本も、明治時代の初期には、貿易での利便性を考量して、金本位制と銀本位制を合わせた「金銀複本位制」を採用していたほどです。
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金本位制の歴史
それでは、金本位制の歴史について確認していきましょう。
金本位制の誕生
きっかけは、イギリスで「ソブリン金貨」と呼ばれる通貨に、1ポンドの価値があると法律で定めたことです。
1枚の金貨と1ポンドが同等の価値であるということから、ポンドが金と交換できるものと認識されるようになったのです。
ソブリン金貨の発行によって、ポンドが安定した価値をもつようになります。
その結果、貿易の際の決済手段として、ポンドを使う国が増加していきます。
ポンドの流通が盛んになることで、イギリスに資本が集中するようになり、イギリスの首都であるロンドンは、世界有数の国際金融都市として発展を遂げていきます。
戦争の影響で下火に
しかし、第一次世界大戦が勃発すると、各国は費用の支払いに金を利用する必要があったため、自国通貨と金の交換を一時的に中止します。
通貨の量を中央銀行がコントロールする「管理通貨制」へ移行し、金本位制から離脱していきます。
戦争中は、貿易を行うことが困難になるため、金本位制を離脱してもそこまで経済的なダメージが生じなかったのが不幸中の幸いでした。
戦後、ヨーロッパ諸国が徐々に経済を回復させていき、1919年にアメリカが金本位制に復帰したことを皮切りに、各国がどんどん金本位制に復帰していきます。
ようやく、第一次世界大戦前の経済体制に戻りつつありました。
ブレトンウッズ体制への移行
金本位制に各国が復帰してきた矢先、1929年に世界恐慌(ブラックサーズデー)が発生します。
世界恐慌による景気後退により、もはや金の交換に応じられる程、十分に金を蓄えている国が無くなってきました。
イギリスは1931年9月に、アメリカが1933年3月にそれぞれ金本位制からの離脱を決定します。
日本も、「金輸出再禁止」という形で、1931年12月に金本位制を離脱します。
第二次世界大戦後、アメリカは戦後経済を安定させるために、ドルと金の交換を保証して、各国の通貨とドルを結びつける政策をとります。
従来の金本位制と異なり、アメリカの圧倒的な経済力を背景に、ドルを金と結ぶ付けたことが特徴です。
各国は、自国の通貨を金と交換する保証をしなくても、ドルと交換する状態をつくっておけば、間接的に金との交換を保証することができました。
こうして、アメリカのドルがポンドに代わる国際通貨として君臨していくのです。
ただ、このブレトンウッズ体制はアメリカの経済力に過度に依存していた為、アメリカ経済に陰りが見られると同時に、徐々に崩壊の一途をたどっていきます。
アメリカは、金とドルの交換を保証できなくなったとして、1971年、金とドルの交換停止を突如発表します。
これを当時のアメリカ大統領の名前をとって「ニクソンショック」と言います。
この結果、ブレトンウッズ体制は終わりを迎え、金本位制が世界経済の舞台から完全に姿を消しました。
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金本位制のメリット、デメリット
それでは、金本位制のメリット、デメリットについてそれぞれ確認していきましょう。
金本本位制のメリット
金本位制のメリットは、自国通貨の価値を安定させられる点です。
金の価値は、世界中で普遍のものであるため、金との交換を保証すれば自国通貨の価値を認めて貰いやすいのです。
通貨の価値が安定すると、貿易収支の目処も立てやすくなり、輸出・輸入を積極的に行うことが可能になります。
現代は変動為替相場制になっており、為替市場の交換レートは日々刻々と変化しますが、金本位制が敷かれている場合、為替レートは固定されます。
為替変動に神経をすり減らす必要がないので、国際的なビジネスを行っている企業にとっては管理が楽になります。
今現在、通貨の価値は国家の信用によってのみ価値が保証されています。
現在の日本の債務状況は非常にまずく、将来的に日本円の価値が減少し強烈な円安を伴ったインフレが発生する可能性が高くなっています。
金本位制のデメリット
金本位制のデメリットは、交換に応じられる程の金を保有しなければならない点です。
金本位制では、「通貨が金と交換できる」という価値保証によって成り立っています。
したがって、この交換に応じられなくなると金本位制そのものが成立しなくなります。
ただし、もともと金の産出量は世界的に少なく、金を確保すること自体、簡単なことではありませんでした。
加えて、自国の通貨発行量が多くなるにつれて、金を補充していかねばなりませんので、むやみやたらに通貨の発行数を増やすことができません。
通貨の量を自由に調整できれば、インフレの時は発行数を減らし、デフレの時は発行数を増やせば、理論上、インフレとデフレをそれぞれ抑制することができます。
金本位制のもとでは、通貨発行数に応じた金が必要になるため、このような柔軟な対応ができないのです。
さらに、金本位制を敷いていると、貿易収支が赤字になっている際に大ダメージを受けます。
輸入が多いということは、それだけ自国の通貨が外国に渡っているということです。
金本位制では、「通貨=金」の関係性が成り立つ為、自国通貨の流出は、自国が保有する金の流出と同じことになります。
景気が良いときは、通貨と金が交換されることは少ないです。
しかし、景気が悪化したら一気に交換される恐れがありますので、すべての交換に対応できない場合があります。
金の流出が進んだら、その不足分を補う為に、さらに金を購入しなくてはなりません。
金を購入するのに、さらに自国の通貨を使うことになるため、通貨の流出が更に進んでしまうというスパイラルに陥ってしまいます。
この結果、金本位制を採用している国は自国の貿易収支をなるべく黒字にするべく、自国に有利な関税を設ける等、保護主義の貿易に走ってしまうのです。
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まとめ
金本位制は、近現代の世界経済を語る上で外せない経済体制です。
金との交換を保証するという、一見すると安定していそうな通貨制度ですが、貿易額の上昇や戦争の影響もあり、世界のすべての国が金本位制を維持することは困難になりました。
第二次世界大戦後は、アメリカがブレトンウッズ体制を敷いて、各国を間接的な金本位制に復帰させますが、それも長期的には続かず、終焉を迎えます。
現代は、各国が管理通貨制へ移行し、金本位制は世界経済から完全に姿を消すことになったのです。
今後、世界がもう一度、金本位制へ戻ることは、金の現存量からしても現実的ではありません。
ただ、一時期ではあっても、金が世界経済の中心にあったことは覚えておいて損はありません。
このような現代の経済がどのように成り立ってきたのかの歴史を学ぶことは、投資、資産運用を実行していく上で必須の知識です。
また、特に日本のサラリーマンの可処分所得は今後も上昇の見込みがなく、資産運用をしているかどうかが格差に直結します。
つまり、マネーリテラシーの向上が必須です。
近年では、経済の仕組み・歴史・今後の見通し、またお金の本質を学ぶべく「お金の学校」という選択肢が注目されています。
「お金の学校」という取り組みは非常に興味深く、義務教育では学べない学びの場が提供されている現代に生きる我々は恵まれているのかもしれません。
自身のマネーリテラシーを高めて、資産形成を成功させていきましょう。
以上、【金本位制とは?】誕生の経緯とその仕組み・メリットとデメリットをわかりやすく解説。…の話題でした!