ある程度、株式投資を経験している方は、「ネットネット株」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。
「ネットネット株」は世界有数の投資家であるウォーレン・バフェットの師でもあるベンジャミン・グレアム氏が紹介した一つの投資手法の一つです。
そのネットネット株で、ベンジャミン・グレアム氏が設立したヘッジファンドである「グレアム・ニューマン社」は卓越したパフォーマンスを残していたのです。
今回は個人が株式投資をする上でも応用可能なこのネットネット株について、詳しく解説していきます。
目次
Contents
ネットネット株とは(=正味流動資産株)
ネットネット株とは、「正味流動資産株」としてベンジャミン・グレアム氏の著書・賢明なる投資家(第15章積極的投資家の株式銘柄選択)で紹介されています。
正味流動資産のみを考えた簿価よりも安い価格で買える株をなるべく多く取得する。我々が買い付けた銘柄のほとんどは、この「スリム化された」資産価値の三分の二以下の価格で入手したものである。
「正味流動資産」についてまず理解する必要がありますが、これはつまり「工場設備を含むその他の資産は考慮に入れない」(=ネットで残った流動資産)ということを意味します。
これは要するに、「会社を買収、若しくは即清算したら、買収額以上のキャッシュが手元に残る」→「資産価値が高い銘柄」ということです。
正味流動資産とは
貸借対照表でわかりやすく解説します。
まずは以下は通常の「バランスシート(BS)」です。
手始めにBSの基本的な構造をサラッと解説すると、「流動資産」は原則として一年以内に現金化が可能な資産を指し、代表的なものは以下の項目になります。
- 現預金
- 売掛金
- 受取手形
- 売買目的有価証券
- 棚卸資産
すぐに現金化できる流動資産に対し、「固定資産」は流動性資産以外の資産です。
現金化に1年以上掛かる・長期期間使用できる資産を指し、代表的なものは以下の通りです。
- 土地
- 建物
- 機械
- 営業権
- 特許権
大半の企業は上記のような「流動性資産」から「総資産」を引き算するとマイナスになります。
しかし、プラスになる、流動資産のみだけで「総負債」を上回るような企業もあります。
それをBSで表すと以下の通りです。
グレアム氏は「正味流動資産のみを考えた簿価よりも安い価格で買える株をなるべく多く取得する」としています。
まさにこの正味流動資産のみを考えて株を選定しているのです。
企業の時価総額・2/3以下も価格で入手する
もう一度ベンジャミン・グレアム氏が投資を実行する基準について述べていたことを思い出しましょう。
正味流動資産のみを考えた簿価よりも安い価格で買える株をなるべく多く取得する。我々が買い付けた銘柄のほとんどは、この「スリム化された」資産価値の三分の二以下の価格で入手したものである。
この「スリム化された」資産価値の三分の二以下の価格で入手したものである。」という点。
これはどのように算出するべきなのでしょう?
企業に投資をするには時価総額、つまりは企業を買う値段を払わなければなりません。
これは【時価総額=株価×発行株式数】で求めることができます。
(図解)ベンジャミン・グレアム氏が提唱するネットネット株の総括
ここまでの解説を総括すると【(正味流動資産×2/3)>時価総額(株価×発行株式数)】となります。
上記の計算方法を参考に、企業IRから財務諸表を分析し、投資していくことで経験を積んでいくのもありでしょう。
しかし、このネットネット株に該当する企業はそう多くなく、それなりに自身で探す必要があるのが難点の一つです。
ネットネット株を見つけるためのツールや、ネットネット株を分析している個人投資家ブロガーなどもインターネット上には存在します。
そのような方々の情報を活用してみるのもありでしょう。
尚、直近でネットネット株として最も有名だった銘柄はIT企業であるサイバーエージェントでした(同社の株価は大きく上昇しました)。
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ネットネット株にも欠点が存在する
上記のように、正味流動資産の2/3の価値が時価総額を上回っていれば、投資実行を進めるという解説をしてきました。
しかし、実は、ネットネット株にも欠点があります。
それは株価が上昇するのに数年単位で時間が掛かることです(この点はベンジャミン・グレアム氏自身も指摘しています)。
それも1年や2年ではなく、5年などが掛かってくるケースもあります。
株式銘柄と言っても中身は「生きている」生身の会社です。
経営者の経営判断、市場環境、投資判断など一つ一つの意思決定に起因して、株価の上昇下落のタイミングを読むのは難しいのです。
ベンジャミン・グレアム氏が設立したグレアム・ニューマンファンドも、大規模なネットネット株投資を実行。
株価上昇を早期化すべく、投資先企業の経営権を取得して、ファンドで直接経営陣に提言(アクティビスト)を行ってきました。
企業が自社株買を選択するという施策も存在しますが、保守的純資産価値は不変です。
自社が保有するキャッシュを活用して自己株という有価証券を買っても、現金も有価証券も現金同等資産です。
現金性資産の総額は変わりません。
しかし、市場に流動している発行済株式数が少なくなるので、結果的に以下のように1株あたりの純資産価値は上昇します。
つまり、株価は上昇する方向に働きます。
実際には企業がプレスリリースで自社株買いを発表すると、これまで以上に株が買われて今まで不当に評価されていた分が再評価されることになります。
自己株買の効果として、1株あたりの純資産価値の増加分以上に株価が上昇します。
従い、自社株買いのタイミングでもネットネット株も株価上昇する可能性が高いといえるんですね。
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まとめ
ネットネット株の概要とその欠点について解説してきました。株式投資には様々な手法があります。
自分に合った投資方法を経験を積みながら、模索していくようにしましょう。
以上、図解!ウォーレンバフェットの師/ベンジャミン・グレアムのネットネット株の探し方とその欠点について解説。…の話題でした!