「機関投資家」という言葉を見聞きしたことがありますか?
株式市場の参加者の多くは個人投資家です。
実は、売買金額の大部分は機関投資家が占めています。
機関投資家の取引金額は、個人投資家とは比べ物にならないほど多額です。
そのため、株式市場は機関投資家の売買に強く影響を受けます。
今回はそんな株式市場に大きな影響力を持つ機関投資家について紹介します。
最初にポイントです。
- 機関投資家は顧客の資金を運用する会社などの集団
- 機関投資家にも年金基金、保険会社、投資顧問会社などの種類がある
- 機関投資家は資産規模が大きいため株式市場に強い影響力を持つ
- 機関投資家が取引する銘柄は大型株がメイン
- 日本株式市場に特に大きな影響力を持つのが海外機関投資家
それでは、コンテンツに入っていきましょう。
目次
Contents
個人投資家と機関投資家がある
投資家は個人投資家と機関投資家に大きく分けられます。
言葉通り、個人が投資するのが個人投資家です。
さらに個人投資家は兼業投資家、専業投資家に分かれます。
ほかに職業を持っているのが兼業投資家、投資一本でやっているのが専業投資家です。
兼業投資家は投資で損失を出しても、ほかの職業で得られた収入で補填できます。
しかし、専業投資家だとほかに収入がありませんので、補てんするのが難しいです。
そのため、プレッシャーは専業投資家のほうが大きくなるでしょう。
個人投資家にはエンジェル投資家といったタイプもあります。
エンジェル投資家はベンチャー企業などを応援するために投資することが多いです。
利益の代わりに株式や転換社債などを受け取りできることがあります。
経済的に余裕のある方がエンジェル投資家になることが多いです。
一方、機関投資家は運用のプロが投資します。
個人投資家よりも大きな資金を運用するのが一般的です。
投資対象となる商品
投資家が投資対象とする主な商品は次のとおりです。
- 株式
- 投資信託
- ETF(上場投資信託)
- REIT(不動産投資信託)
- 国債
- FX(外国為替取引)
- iDeCo(個人型確定拠出年金)
個人投資家がよく投資するのが株式や投資信託、FXです。
株式なら配当、投資信託なら分配金、FXならスワップポイントも期待できます。
国債でも個人向けの商品は、個人投資家にもよく選ばれています。
個人向け国債は投資をはじめたいがリスクはなるべく抑えたいというときに魅力な商品です。
また、近年では仮想通貨に投資する個人投資家が増えてきました。
ビットコインというメジャーな仮想通貨では、2017年頃にバブル的に上昇したことがあります。
しかし、バブル崩壊がささやかれており、今後の値上がりは微妙な状況です。
機関投資家とは
「機関投資家」は特定の人物を指すものではありません。
投資を行う会社などの集団を指します。
「機関投資家」は顧客から預かった資金で運用を行う会社などの集団です。
この顧客から預かったものが、機関投資家の運用資金となっています。
機関投資家は顧客から集めた資金を運用し、得られた利益を顧客へ還元することを目的にしています。
機関投資家自身の資金ではないため、大きな損失は禁物です。
しかし、運用のプロである機関投資家でも必ず成功するわけではありません。
リーマンショックのような大規模な金融危機が起きると、機関投資家でも大きな損失を出すことがあります。
機関投資家はデイトレーダーのような細かい取引はほとんど行わないのが基本です。
それは大きな損失を出さないよう、十分調査してから運用するからです。
そのため、個人投資家よりも取引の回数は少ないでしょう。
具体的にはどのような集団(組織)なのでしょうか?
以下は具体例です。
- 年金基金
- 投資顧問会社
- 投資信託会社
- 損害保険会社
- 生命保険会社
それぞれについて解説していきます。
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年金基金
年金基金は加入者から受け取った保険料を管理運用しています。
年金という性質上、安定性が重要です。
預かった保険料全額を株式に投資する訳ではありません。
しかし、それでも運用額が桁違いに大きく、年金基金運用額全体の株式投資の割合としては少なくとも、投資金額としては大きくなります。
国内の年金基金では、「年金積立金管理運用独立行政法人」(GPIF)が有名です。
GPIFの運用額は現在150兆円を超える規模となっており、世界最大規模の年金基金でもあります。
その他、企業年金や公務員の共済年金、海外の政府系年金など様々な年金基金が存在します。
GPIFのような機関投資家は、短期間で大きな利益を狙うことは少ないです。
運用資金が大きい関係上、市場平均より少し上を狙うと予測されています。
また、一部の銘柄に集中的に投資すると、万が一のときのリスクが高まります。
そのため、機関投資家は大型株やETF(上場投資信託)など複数に分散投資することが多いです。
個人投資家は大型株のほか、ETFにも注目すると良いでしょう。
個別銘柄に投資したい方は、ETFの構成銘柄を選ぶという戦略も立てられます。
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投資顧問会社
投資顧問会社は投資家に投資の助言を行っている会社です。
多くの場合顧客の資産の運用も行いますので、株式投資を行うことも珍しくありません。
イメージとしてはいわゆるファンドと呼ばれるような会社です。
投資顧問会社は各条件・制限などがある投資商品を運用するのではなく、運用そのものを顧客から委託されています。
つまり、自由な取引ができます。
会社によって長期投資をメインとする会社や短期投資をメインとする会社、リスクを積極的に取る会社など様々な会社があるのが特徴です。
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投資信託会社
投資信託会社は投資信託の運用を行っている会社です。
投資信託は商品設計の段階で投資対象などが決まっていますので、投資顧問会社のように会社が自由に取引できるわけではありません。
決められたルールに基づいて運用を行っていくことになります。
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損害保険会社
損害保険会社も運用を行っている機関投資家です。
保険者から集めた保険料の一部を運用しています。
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生命保険会社
生命保険会社も損害保険会社と同様に、顧客から集めた保険料を運用しています。
日本人の保険加入率は大変高く、保険会社が運用する金額も多額です。
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機関投資家別の特徴
前述のように機関投資家にもいくつか種類があり、同じ機関投資家であっても取引スタイルは異なります。
ここでは機関投資家の取引の特徴を紹介します。
年金基金や保険会社は長期投資運用
年金基金や保険会社の運用は長期投資がメインです。
また、年金基金は将来の年金財源となりますし、保険会社の運用も将来的には顧客への支払いが生じます。
取引スタイルとしては安全性を重視します。
株式の保有率も全体の資産額からすれば少ないです。
ただ、年金基金や大手保険会社は資産規模が大きいので金額ベースではかなりの金額の株式を保有しています。
安全性を重視する運用スタイルですので、リターンが低くなってもリスクを積極的に取らない低リスク低リターンの投資スタイルです。
投資顧問会社(ヘッジファンド)はリターン重視の運用
投資顧問会社の多くはヘッジファンドと呼ばれる顧客の資産を運用する会社です。
ヘッジファンドはどんな局面でもリターンを狙っていく投資スタイルを取っています。
株式取引は信用取引や先物取引という自己資金の数倍以上の取引が可能な投資方法があります。
自己資金以上の取引を行いますので、うまくいけば多額の利益が得られる一方、失敗すれば多額の損失が出てしまうハイリスクハイリターンな投資です。
ヘッジファンドはこういったハイリスクハイリターンな投資も積極的に行います。
また、信用取引の中には空売りという株価が下落することで利益が得られる取引もあり、ヘッジファンドは空売りも積極的に仕掛けてきます。
年金基金はこういったハイリスクな投資は行いませんので、同じ機関投資家であっても投資スタイルは全く異なります。
そもそも、ヘッジファンドの役割が市場平均より高いリターンを得ることですので、ヘッジファンドの取引は基本的にハイリスクハイリターンな投資です。
市場平均以下のリターンであればわざわざ高い手数料を払ってまでヘッジファンドに運用を委託する意味がありませんので、
そういった意味では当然ですね。
ヘッジファンドはリスクを取ってもリターンを狙うという特性上、取引回数も他の機関投資家に比べて多くなります。
取引金額が多額で取引回数も多いためにヘッジファンドが株式市場に与える影響はとても大きいです。
機関投資家は主に大型株を取引する
機関投資家は資産規模が個人とは比べ物にならないほど大きいため、株式市場に与える影響も大きいことは既に説明したとおりです。
ですが、機関投資家が上場している全部の銘柄を売買しているわけではありません。
機関投資家の取引単位は大きいため、取引を行うのは機関投資家の大量注文を消化できる銘柄に限られるからです。
東証一部銘柄といっても1日の出来高が100万株にも届かないという銘柄は多数あります。
機関投資家の取引は数十万株以上の大型の取引となることが一般的です。
時価総額が少なく1日の出来高が少ない(流動性が低い)銘柄の取引は避けられるのです。
つまり、機関投資家が取引する銘柄は時価総額や流動性が高い大型株が中心となります。
そういった銘柄は日経平均採用銘柄となっていることが多いので、日経平均は機関投資家の売買に大きく影響されるというわけです。
日本の株価と言えば日経平均株価ですので、機関投資家は上場銘柄の大部分を占める大型株以外の銘柄は基本的に取引しませんが、株式市場に大きな影響を与えています。
機関投資家の中でも特に株式市場に大きな影響力を持っているのが、海外機関投資家です。
つづいて、海外機関投資家について紹介します。
株式市場に大きく影響を与えるのは海外機関投資家
国内には次のような証券取引所があります。
- 東京証券取引所
- 名古屋証券取引所
- 札幌証券取引所
- 福岡証券取引所
上記のうち、東京証券取引所には次の市場があります。
- 1部
- 2部
- マザーズ
- JASDAQ
- 上場投資信託等(ETFなど)
- 不動産投資信託(J-REIT)
東京証券取引所の株式のうち、80%以上は機関投資家が保有している状況です。
機関投資家の保有率は高いため、個人投資家の保有率は20%にも達しません。
海外機関投資家とはそのままですが、海外に存在する機関投資家です。
その多くはヘッジファンドなどの積極的に取引を行う集団であり、国内の機関投資家に比べ取引金額、取引頻度共に高いという特徴があります。
世界経済のグローバル化が進む中で、日本の株式市場にも海外機関投資家が進出してきました。
今では、国内株式市場の売買高の7割程度を海外勢が占めます。
株式保有率では海外投資家は3割程度ですので、いかに海外投資家の取引が国内投資家に比べて多いかが分かります。
全体の売買の7割を占めるとなると、株式市場の動きは海外ヘッジファンド次第といっても過言ではないのです。
ですので、海外機関投資家の動きは株式市場の動きを予測するのに大変重要です。
現状、海外機関投資家の売買動向に逆らって投資を行うのは、賢い投資とは言えません。
特に日経平均採用銘柄や先物取引などの指数取引を行うのであれば、海外機関投資家の売買動向は必ず確認するようにしましょう。
海外機関投資家の売買動向は、東証が毎週発表している「投資部門別売買状況」で確認できます。
海外機関投資家の売買動向をしっかりと確認して、取引に生かすことで勝率をあげることが可能です。
機関投資家の動向はどこで入手できる?
機関投資家の動向は、いったいどこで入手できるのでしょうか。
経済ニュースなどで機関投資家が取引している銘柄をチェックできることがあります。
たとえば、2018年12月20日にエフィッシモ・キャピタル・マネージメントが、ジャパンディスプレイの株を7.9%取得したというニュースが流れました。
エフィッシモ・キャピタル・マネージメントは、個人投資家にも知られている旧村上ファンド出身者によるファンドです。
個人投資家は、このような有名なファンドの動向を参考にする方法があります。
ほかにも機関投資家が動き出すと、その銘柄の出来高が増えやすいです。
特にニュースがないのに、急に出来高が増えた銘柄を見つけたときも投資チャンスとなるでしょう。
また、投資信託でもどの銘柄で運用しているのかが分かります。
高配当・成長株ファンドなど、自分のテーマにあった投資信託を参考にすると良いでしょう。
個人投資家になるのは簡単
個人が機関投資家になろうと思っても難しいでしょう。
しかし、個人投資家なら特別な資格は入りませんので、なろうと思えばすぐになれます。
証券会社へ口座開設し、資金を入金するだけ、簡単に投資をはじめられます。
機関投資家と違い、中型株や小型株など投資対象の自由度が高い点もメリットのひとつです。
ただし、投資に失敗しないよう、十分な知識を得てから投資家になりましょう。
FXや仮想通貨などでハイレバレッジを効かせた投資は、リスクが高いため初心者のうちは避けたほうが無難です。
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まとめ
最後に重要点をまとめますと以下の5点があげられます。
- 機関投資家は顧客の資金を運用する会社などの集団
- 機関投資家にも年金基金、保険会社、投資顧問会社などの種類がある
- 機関投資家は資産規模が大きいため株式市場に強い影響力を持つ
- 機関投資家が取引する銘柄は大型株がメイン
- 日本株式市場に特に大きな影響力を持つのが海外機関投資家
機関投資家について知ることで、株式市場の動きをより分析できるようになります。
以上、機関投資家とは?年金基金(GPIF)・投資顧問会社・信託・保険…他、取引の特徴と共に網羅的に解説!…でした。