種類株式の一種である「優先株」とは?優先的地位を持っている株式のメリット・デメリットと買い方を紹介!

種類株式の一種である「優先株」とは?優先的地位を持っている株式のメリット・デメリットと買い方を紹介!

みなさんは、「優先株」という株式の種類をご存知でしょうか?

実は一概に「株式投資」とはいっても、投資対象となる株式にはたくさんの種類があるのです。

 

家三郎
優先株の他にも、普通株、後配(こうはい)株式/劣後(れつご)株式、無議決権株式、額面株式/無額面株式などがあるのぉ。
秀次郎
ほぉ・・・、色々あるのですな・・・。

 

このコンテンツでは、そのなかでも「優先株」という株式について、詳しくご紹介していきます。

目次

優先株とは

投資家は、株式会社が発行している「株式」を売買することで「株式投資」を行なっています。

このとき一般的に「株式」と呼ばれているものには「普通株式」という正式名称があります。

 

一方で株式会社はこの普通株式だけではなく、「種類株式」という別の株式を発行することができるのです。

普通株式と種類株式の大きな違いは、株式に付帯している「権利の内容」にあります。

 

株式会社では、株主が保有する株式の内容および数に応じて、平等に取り扱わなければなりません(会社法109条1項、株主平等の原則)。そして、株主は、その持ち株数に応じて、議決権を行使し(会社法308条1項)、配当を受け取り(会社法454条3項)、会社が解散するときには残余財産の分配を受ける(会社法504条3項)のが原則です。

しかし、この原則を貫くと、たとえば、設問のように、資金不足のベンチャー企業が、外部から増資資金を受け入れようと思うと、創業メンバーの株主としては、「資金はほしいけれど、株式を発行して議決権の過半数を第三者に取られてしまうのは困る」というジレンマに陥ることになります。
他方で、ベンチャー企業に出資したいという投資家の中には、「出資をして、配当や株価の上昇益はほしいけれど、会社を支配するつもりはない」という人もいるかもしれません。

このような株式会社における多様な経済的ニーズや、会社支配のニーズに対応するために、内容の異なる複数の種類の株式の発行を認める制度が、種類株式の制度です。

引用:BUSINESS LAWYERS

 

秀次郎
ほう、たしかに株式の権利行使の度合いを調整できるのは便利そうですな。

 

今回取り上げる「優先株」も、この種類株式のうちの1つです。

優先株とは、普通株式や優先株以外の種類株式に比べて、「優先的な地位を持っている株式」のことをいいます。

 

日本ではまだ普通株での投資が一般的ですが、欧米では優先株での投資がメジャーになっています。

 

家三郎
欧米の方がベンチャー企業の資本取引は活発そうじゃしな。

 

さて、優先株にはどんな有利になる権利があるのでしょうか?

たとえば、配当や会社清算時の残余財産の分配を優先的に受けることができる権利などがあります。

 

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2019年11月22日

 

優先株式」とは、創業者などが持つ普通株式よりも優先取扱いされるものです。

以下の会社法108条の種類株規定(赤字項目)を用いて、優先株式の内容を決めていくのです。

 

第百八条 株式会社は、次に掲げる事項について異なる定めをした内容の異なる二以上の種類の株式を発行することができる。ただし、指名委員会等設置会社及び公開会社は、第九号に掲げる事項についての定めがある種類の株式を発行することができない。
一 剰余金の配当
二 残余財産の分配
三 株主総会において議決権を行使することができる事項
四 譲渡による当該種類の株式の取得について当該株式会社の承認を要すること。
五 当該種類の株式について、株主が当該株式会社に対してその取得を請求することができること。
六 当該種類の株式について、当該株式会社が一定の事由が生じたことを条件としてこれを取得することができること。
七 当該種類の株式について、当該株式会社が株主総会の決議によってその全部を取得すること。
八 株主総会(取締役会設置会社にあっては株主総会又は取締役会、清算人会設置会社(第四百七十八条第八項に規定する清算人会設置会社をいう。以下この条において同じ。)にあっては株主総会又は清算人会)において決議すべき事項のうち、当該決議のほか、当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議があることを必要とするもの
九 当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会において取締役(監査等委員会設置会社にあっては、監査等委員である取締役又はそれ以外の取締役。次項第九号及び第百十二条第一項において同じ。)又は監査役を選任すること。

 

(引用:会社法108条「e-GOV・電子政府の総合窓口」

 

この優先株を保有している株主は「優先株主」と呼ばれるので覚えておきましょう。

 

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優先株のメリット・デメリット

優先株が一体どういう株式なのかというイメージがかなり湧いてきたと思います。

ただし、私たちが投資をするうえでメジャーとなっている普通株に比べて優先株にはどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか?

投資家側と企業側の両側面からご紹介していきます。

メリット

■ 投資家側のメリット:優先的に配当金や残余財産を分配してもらえる

やはり、優先株の醍醐味は優先的に配当金残余財産の分配を受けることができることでしょう。

とくに、インカムゲイン目的で株式投資を行っている方にとっては大きなメリットです。

 

■ 企業側のメリット:① 資金調達がしやすい

上位でも少し触れましたが、優先株は優先株主に付与される権利が手厚くなっているため株価が高めに設定されます。

そのため、資金調達を目的に株式を発行している企業からすると、

優先株を購入してもらえる場合は、資金調達が円滑に進むのです。

 

とくにベンチャー企業は投資するリスクが少し高めなので機関投資家からの投資をなかなか受けられず、

資金調達が滞ってしまう傾向にあります。

そういったなかで優先株を購入してもらえると、ベンチャー企業にとっては有効な資金調達の手段として働くのです。

 

■ 企業側のメリット:② 株主の発言権を抑制できる

優先株は議決権が付与されていないことが多いという特徴があります。

つまり、その優先株を持っている優先株主は、企業の株主総会に参加して経営に意見を述べることができないということです。

 

企業からすると株主による発言を抑制できているということになるので、

企業経営への影響を小さくすることができるというメリットがあります。

企業にとって株主は出資をしてもらえる大切な存在ではあるのですが、自由に経営をしたいという思いもやはりあるのです。

 

家三郎
時に、株主の意見は経営スピードを阻害するものでもあるしのぉ。

 

取締役の選任やM&Aなど企業にとって大きくかかわる事態ともなると、

株主は企業の方針に対して反対をするということにもなりかねません。

よって、議決権に制限のある優先株の方が企業にとっては望ましいのです。

 

デメリット

■ 投資家側のデメリット:① 流動性が低い

優先株は、上場会社が発行しているものであっても一般市場に流通しているわけではないため、

流動性が普通株よりも低いというデメリットがあります。

そのため、株式投資においてキャピタルゲインを得ることを目的としている場合には少し不向きかもしれません。

 

■ 投資家側のデメリット:② 議決権に制限がある

優先株は議決権が付与されていないことが多くなっています。

もし自分が保有している優先株の発行企業の経営に不満を持った場合でも経営に意見することができません。

よって、もし企業が危ない場面に陥ったとしても何ら介入をすることができないのです。

 

株主にとって企業が安全な経営をすることは必要不可欠ですが、介入できる範囲が限られているのは非常にリスキーですよね。

つまり株主の議決権が制限されている点は株主にとってはデメリット、

企業にとっては経営に自由が利くことからメリットとなっています。

 

■ 企業側のデメリット:優先株の発行には手間がかかる

企業にとって優先株の発行にはメリットがある一方で、

優先株のような種類株式を発行する際には定款の変更や種類株主総会の開催など管理の手間がかかるというデメリットもあります。

 

このような理由から、優先株の発行を避ける企業も少なくありません。

元々欧米に比べると優先株のメジャー度が低いうえに管理の手間もかかるとなると、

日本で欧米ほど優先株が浸透するにはまだまだ時間がかかりそうです。

 

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〜コラム〜優先株の剰余金の配当には3種類の株式がある

上記で優先株の概要とその設計に使われる根拠を示しましたが、中でも剰余金の配当には大きく3つに分けることができます。

ここで1つずつ解説していきます。

参加型株式

配当金を受け取るときに、優先株分の配当金に加えて普通株分の配当金をもらうことができる株式を参加型株式と言います。

 

非参加型株式

上記で紹介した「参加型株式」の逆で、普通株分の配当金をもらうことができない(つまり優先株分の配当金のみ)株式のことです。

 

制限参加型株式

上記で紹介した「参加型株式」と「非参加型株式」の中間のようなもので、制限ありで普通株分の配当金をもらうことができる株式のことです。

配当金を出すと決めている企業であっても、

配当金支払いの対象となる年度の配当金が不足していて本来分配されるべき配当金の総額に達していないことがあります。

 

そのようなときに、配当金の不足分を次年度に発生した余剰金から優先的に受け取ることができる優先株を「累積型」。

配当金の不足分を次年度以降に繰り越されず受け取ることができない「非累積型」として、2つに分けられることもあります。

 

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伊藤園の優先株は上場している!買い方を紹介

上記で優先株は市場に流通していないとご紹介しましたが、

実は茶製品メーカーの伊藤園(2593)の優先株(伊藤園第1種優先:25935)は国内で唯一上場している優先株です。

 

配当金は普通株に比べて利回りが高いことはもちろん、

普通株と同様に株主優待として自社商品の詰め合わせをプレゼントしてもらうことができます。

 

優先株は、普段株を購入するときと同様に証券会社を経由して購入します。

証券コードを入力する欄に「25935」または「伊藤園」と入力すると「伊藤園第1種優先」という銘柄名が表示されます。

そちらのページからご購入ください。

 

家三郎
伊藤園の普通株とは別なので、注意じゃぞ。

 

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まとめ

このコンテンツでは、優先株の概要や種類、メリット・デメリット、そして買い方についてご紹介しました。

 

優先株には配当金や残余財産の分配を優先的に得られるメリットがある一方で、

議決権に制限があり全面的に経営に介入することが難しいというデメリットがあるということを知っておきましょう。

 

現在上場している優先株は伊藤園のみですが、今後優先株がメジャーになって流動性が増してきた場合には、

ぜひ本記事を参考に優先株を株式投資に役立ててみてはいかがでしょうか?

 

以上、種類株式の一種である「優先株」とは?優先的地位を持っている株式のメリット・デメリットと買い方を紹介!…でした。

 

【基本「株」用語・基礎知識】株式投資初心者が取引を始める上で最低限知っておくべきこと。

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2019年5月21日

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マネリテ!編集部は東京大学経済学部卒の証券アナリストを中心とした金融知識が豊富なメンバーが株式投資初心者に向けて有益な情報を提供しています。株式投資を行う意義から基本用語、おすすめのネット証券・投資先情報をお伝えするメディアです。日本人の金融リテラシーの向上と明るい未来を目指しています。