投資には、目標値や参考値としてさまざまな数値が使われます。
数多くある指標の中で、今回は「VWAP」を取り上げます。
このコンテンツを読むことで、VWAPの概要、利用方法を理解することができますので参考にしてにみてください。
目次
Contents
VWAPとは?意味と計算方法を解説
VWAPは「Volume Weighted Average Price」の略称で、「ブイワップ」と読みます。
日本語では「出来高加重平均価格」という意味であり、出来高を考慮した日中の平均約定価格を指します。
「出来高加重平均」という言葉を聞くと、何やら難解な言葉のように聞こえます。
しかし、実際は「1日あたりの平均的な約定価格」を示すものと理解しておけば問題ありません。
VWAPが実際の銘柄の価格を上回っているのか、それとも下回っているのかを見ることで、投資をするべきか否かを決定していきます。
VWAPの計算式は以下の通りです。
■ VWAP計算式:
VWAP=1日の総売買代金 / 1日の総出来高(※)
(※)1日の総売買代金=約定価格×約定数量
例えば、100円で3,000株、105円で4,000株の約定があった銘柄があるとしましょう。
この場合、1日の総売買代金は以下の通り720,000円となります。
■ 総売買代金算出:
(100円×3,000株) + (105円×4,000株)=720,000円
VWAPは総売買代金を総出来高で割って103円と算出されます。
■ VWAP算出:
720,000円 / 7,000株≒103円
VWAPの数値に近い価格で購入すれば、平均的な価格でポジションをとることになります。
よって、その日の最大価格を掴む可能性が低くなります。
機関投資家が使うVWAPギャランティ取引では、平均価格で株を取引できるといったメリットも挙げられるため、証券会社を通しての取引が多く行われています。
また、個人投資家がVWAPで株を買う方法もあり、機関投資家が行うVWAPギャランティ取引に近いサービスを提供している証券会社も存在します。
VWAPを理解するためのポイントと3つの機能
VWAPを理解するためには4つのポイントがあり、それらを理解しておくことによってVWAPの見方や利用方法もわかりやすくなります。
VWAPを理解するためのポイントは以下の通りです。
1:機関投資家の「目標値」として用いられる
大きな金額で取引を行うと、株価の動きが大きくなってしまい、インカムゲインにも影響が出てしまいます。
そういったリスクを小さくするための基準として使われます。
2:チャートは、1日の取引の加重平均として表示される
通常のチャートでは1週間や1ヶ月といった期間で確認することもありますが、VWAPは1日で表示します。
3:他の投資家の損益状況を把握
株価と比較することで、他の投資家の損益状況を把握することができます。
詳しくは下記の「VWAPの見方」で解説します。
4:「VWAP」における、4つのチャートパターン
VWAPはテクニカル指標としても使われるため、チャートには4つのパターンが存在します。
詳しくは下記の「VWAPのチャート」で解説します。
また、以下のようにVWAPには重要な3つの機能もあります。
■ 市場参加者の強気・弱気を判断する:
下記の「VWAPの見方」で詳しく解説していますが、株価がVWAPを上回っている場合は、強気であり、逆に下回っている場合には弱気になる傾向があります。
■ 抵抗線、支持線として機能する:
下記の「VWAPのチャート」で詳しく解説していますが、VWAPは株価の値動きを予想する際にも機能します。
■ 証券会社などの「買い基準」として使用する:
機関投資家などによる大口取引は市場に混乱を招く恐れがあるため、証券会社を通して取引されますが、その際の買い基準としても使用されます。
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VWAPの見方
VWAPを利用する際は、まず「日中の株価」とVWAPの水準を確認します。
実際の株価よりもVWAPの方が高いと、株を保有している人の多くが「高い値を保ったまま」株を持っていることになるのです。
VWAPよりも高い位置で株価が推移しているときは含み益を見越して「まだ株を売りたくない」という投資家が多い状態です。
こうなると、株を買いたくても買えない人が出てくることになり、上値は変動しやすく、下値は底堅い状態になります。
保有している株が含み損の状態になるので、「早く売ってしまいたい」と思う投資家が多くなります。
したがって上値が中々更新されず、価格が下がっていく傾向になります。
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VWAPのチャート!ブレイクと支持線、抵抗線やVWAPからの乖離率を利用しよう!
上述した内容を踏まえて、VWAPのチャートのパターンを見ていきましょう。
チャートには上方ブレイク、下方ブレイク、支持線、抵抗線の4つのパターンが存在します。
あくまでVWAPは1日の中での指標ですので日足未満の1分足や10分足、1時間足、4時間足といったチャートを選択します。
上方ブレイク
株価がVWAPを上方向に超えた(ブレイクした)場合、価格の上昇が進行していく傾向にあります。
以下は2019年12月17日の三菱商事の1分足の株価の値動きです。
VWAPを上抜けると同時に株価が大きく上昇しています。
この場合は売らずに保有していた方が得をするので、株価の下降が起きにくくなります。
これが下値の固定化につながり、堅調に株価が伸びる土台となるのです。
下方ブレイク
株価がVWAPを下にブレイクした場合、株を保有している人たちの損失が拡大してきます。
そのため、新規で購入したり、追加購入する投資家が少なくなります。
損失を許容した上で損切りをする投資家もでてくるため、株価の下落が進行する傾向になります。
株を保有している人から見れば、下方ブレイクは由々しき事態です。
先ほどと同じく12月17日の三菱商事の1分足の値動きです。
下方ブレイク後勢いよく株価が下落していますね。
しかし、逆に捉えると株価の底値が見えない分、「安く株を購入できる」チャンスでもあります。
下がり切った株を購入すれば、あとは再浮上を待つのみです。
VWAPからの乖離率が高い局面でも利用可能
今までの動きを見ていて気づいた方も多いと思いますが、
株価がVWAPから上方にも下方にも乖離した後にはVWAPに回帰しやすい傾向があります。
VWAPは1日あたりの平均約定価格です。
平均から高くなると利益確定売りがでますし、平均から高くなると手頃感から買いが入りやすいからです。
支持線
株価がVWAP付近まで下落していくと、大口投資家たちが一気に追加注文を出す傾向にあります。
これは、株価がVWAPに近づいた反動で上昇していくことを見越しての行動です。
VWAPに限りなく近づくにつれて、買い注文が多くなり、株価が浮上していきます。
同じく三菱商事の12月17日の値動きですが支持線の動きをしている局面が見られますね。
抵抗線
支持線とは逆に、株価がVWAP付近に向かって上昇した場合、投資家たちは株価の下落を見込んで売り注文を出す傾向にあります。
大口投資家が一気に売り注文を出すと、株価の下落も急速に進み時には暴落に繋がることも見られます。
同じく三菱商事の1分足の例ですが抵抗線で跳ね返されて下げが加速していますね。
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VWAPの実践的利用方法
VWAPを利用して株価の分析を行う際は、VWAPのみでなく「板情報」と「歩み値」を同時に見ていくことが重要になります。
実際にデイトレードで利益を出していくには、VWAPだけ見てもどの場面でブレイクが起こるのか予想するのが難しいからです。
なるべく正確にブレイクのタイミングを見るために、「板情報」と「歩み値」を見ていくことになります。
*板情報、歩み値は株式取引のチャート画面に表示されています。表示形式は証券会社によってさまざまです。
板情報
板情報とは、銘柄の現在価格や注文された株数の推移が表示された画面のことです。
板情報には、取引当日の始値、高値、安値、終値なども含まれ、当日の株価の推移を一瞥して把握することができます。
特にVWAPと合わせて確認しておきたい数値が「高値」と「安値」です。
VWAPは1日の株価の平均ですので、理論的には高値と安値の間の数値になるわけです。
したがって、当日の高値と安値を把握しておけばVWAPの範囲をある程度予測することができます。
歩み値
歩み値は、売買が成立した際の価格、株数を表示したもので、注文が成立すると、次々に更新されていきます。
歩み値の推移を見ることで、現在どの価格帯で取引が行われているか確認することができます。
歩み値が上昇傾向にあるときは、価格上昇のサインとなり、反対に下降傾向にあるときは価格が下がっていく合図となります。
ただし、歩み値は大口の取引など大きい金額が動いたときに過敏に反応します。
歩み値だけを追ってしまうと視野が狭くなります。
あくまでも、板情報、VWAPと合わせて総合的に見ていくようにしましょう。
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コラム:VWAPギャランティー取引・VWAPターゲット取引とは?
1日の中で刻々と変化する株価。
成行で注文したところ、その日の高値近辺で買い付けてしまったり、安値近辺で売ってしまったという経験があるはずです。
そのような方に受けて、1日の平均価格での取引を約束する「VWAPギャランティー」や、
目指す「VWAPターゲット取引」という取引手法も存在しています。
VWAPギャランティー取引:
VWAPに手数料相当額を加減して得た値段VWAPターゲット取引:
VWAPを目標とした立会市場での執行結果の加重平均価格
(執行結果の加重平均価格に手数料相当額を反映した値段での取引も可能)参照:日本取引所
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VWAPと相性が良い銘柄
VWAPは基本的にどのような銘柄にも活用可能ですが、下記の条件をおさえた銘柄だとより高い精度で活用できます。
大口の投資機関が存在することで、VWAPの法則が反映されやすくなり分析の精度を高めることが可能です。
機関投資家自身がVWAPを活用して投資を行っているという面もあります。
上記条件を満たしている銘柄であればVWAPの効果が期待できます。
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VWAPを利用するのにおすすめの証券会社
VWAPを利用する際におすすめの証券会社は「楽天証券」です。
VWAP自体が他の指標と比べると少々マニアックなため、証券会社によってはスマホアプリで搭載されていない場合があります。
楽天証券であれば、スマホのアプリにもVWAPが搭載されているので外出先でも簡単にVWAPを利用できます。
楽天証券のモバイルアプリ「iSPEED」でVWAPを確認する方法
楽天証券ではスマホ版アプリとして「iSPEED」を提供しています。
iSPEEDでVWAPを確認する方法をお伝えします。
まずiSPEEDの検索窓で調べたい銘柄を打ち込みます。
先ほどと同じく三菱商事とします。
そのあと、出てきた4つのチャートから5分足を選択します。
その後、自分のみたい時間足に設定し右上の設定画面を押し、VWAPを選択します。
すると以下の通りスマホアプリからVWAPを確認できます。
楽天証券のPC版でVWAPを確認する方法
当然、楽天証券のPC版でもVWAPを確認することはできます。
先ほどの三菱商事の図も楽天証券のPC版から取得したものです。
まずは銘柄選択を行います。
その上でチャートの「大きなチャートをみる」をクリックします。
次の画面で更に「テクニカルチャート」をクリックします。
次の画面はテクニカル分析を行うには欠かせない画面です。
今回はVWAPなので足は1日未満に設定します。
次にテクニカル指標でVWAPを選択して設定が完了します。
松井証券「ネットストックハイスピード」でVWAPを確認する方法
楽天証券以外にもVWAPを確認することができる証券会社はあり、ここではその一例として松井証券を紹介します。
最初に専用ソフトをインストールしておき、「ネットストックハイスピード」をログインして起動させます。
ネットストックハイスピードをダウンロードするには、松井証券の口座開設が必要です。
口座開設後、お客様サイトからダウンロードを行ってください。
専用ソフトのダウンロード及びログインを行ったら「株式チャート」を選択し、チャート画面を開きます。
「日足」から「分足」を選択し、分足の数値を入力します。
ここでは「5分足」を選択します。
「基本指標」をダブルクリックし「VWAP」をダブルクリックします。
(画像ではEMAになっていますが、実際にはVWAPを選択してください)
すると、「VWAP」(緑ライン)を確認することができます。
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まとめ
VWAPを利用することで、株価が上がる、もしくは下がるタイミングを見越して投資することが可能になります。
いくつかパターンを覚える必要がありますが、複雑な数式などは登場しないので投資初心者の方でも無理なく利用できます。
証券会社によってはVWAPを搭載していないところもあります。
利用の際はVWAPが使えるかあらかじめ確認するようにしましょう。
以上、「VWAP(ブイワップ)」とは?デイトレードのテクニカル指標の見方と使い方をわかりやすく紐解く!…でした。