株式投資をしている方であればほとんどの方が聞いたことがある「東証一部」。
どこの証券取引所が運営していてどのぐらいのランクに位置しているのかご存知でしょうか?
このコンテンツでは、東証一部について徹底解説していきますので、投資先を決める判断基準の1つにしてみてください。
目次
Contents
東証一部とは?東証二部やマザーズとは何が違うの?
「東証一部」とは、私たちが株式投資をおこなうときに利用する証券取引所が運営している株式市場のことをいいます。
日本には東京・名古屋・福岡・札幌の4ヵ所に証券取引所があり、各証券取引所がいくつかの株式市場を運営しているのです。
本コンテンツで紹介する東証一部は東京証券取引所が運営している株式市場のことです。
東証ではほかにも東証二部・ジャスダック・マザーズという株式市場を運営しています。
また、基本的には東証一部>東証二部>ジャスダック>マザーズの順に上場に必要な審査基準が厳しくなっています。
ちなみに「(東証一部)上場」とは、東証一部に企業の株式を公開・流通させることをいいます。
多くのトレーダーによって売買されることから企業にとって重要な資金調達手段の1つです。
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東証一部に上場している企業数は?
上記で説明したように東京証券取引所が運営している株式市場のなかで最もランクが高いのが東証一部です。
では、現在はどのくらいの企業が上場しているのでしょうか?
東証一部には2019年12月10日時点で、2,157社が上場しておりそのうち1社が外国会社となっています。
ちなみに他に東京証券取引所が運営している東証二部は486社、ジャスダックは709社、マザーズは302社が上場しています。
つまり、最もランクが高い株式市場でありながらもほかの市場と比べて多くの企業が上場しているのです。
しかしこれは、日本のすべての企業のうちの何%ほどを占めているのでしょうか?
日本の企業数は平成28年時点で約385万社(法人187万7,438社+個人経営197万9,019社)です。(出典:総務省統計局)
385万社のうち2,153社が東証一部に上場しているということなので日本の企業数に占めるわずか0.05%となります。
東証一部に上場することは非常にハードルが高いことが読み取れますね。
また、東証一部には2019年1月31日時点では2,129社が上場していたので、ほんの1年で28社が増加しています。
今後も継続して東証一部に上場する企業は難しい厳しいハードルを乗り越えながらも増加していくでしょう。
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東証一部の上場基準
東証一部の上場基準で主な項目は以下となります。
項目 | 東証一部上場要件 |
株主数 | 2,200人以上 |
流通株式 |
|
時価総額 | 250億円以上 |
事業継続年数 | 新規上場申請日の直前事業年度の末日から起算して、3か年以前から取締役会を設置して、継続的に事業活動をしていること |
純資産学 | 連結純資産額が10億円以上 |
利益額又は時価総額 | 次のa又はbに適合すること
(最近1 年間における売上高が100 億円未満である場合を除く) |
(引用:日本取引所グループ「上場審査基準」)
厳しい基準として、株主数と時価総額が挙げられます。
例えば東証二部であれば必要な株主数は800人であり、時価総額は20億円以上となっています。
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東証一部に上場するメリット!何がすごいの?
ここまでの説明で、東証一部に上場している企業は全企業のなかのほんの一部です。
厳しい審査基準がありながらも増加傾向にあることがお分かりいただけたかと思います。
では、企業にとって東証一部に上場するメリット・デメリットは一体どのようなものがあるのでしょうか?
企業の知名度やブランド力が上がる
東証一部に上場したとなると世間からの注目が集まりやすくなります。
結果的に企業の知名度やブランド力が上がるというメリットがあります。
起業したばかりの経営者の方も、最初は株式市場への上場を目指してビジネスを進めていくことが多いです。
また、新卒の大学生や求職者からしても「東証一部上場」とあるとやはり聞こえがいいのは事実です。
企業の採用活動において自然といい人材が集まってくるということもあり得ます。
コーポレートガバナンスが強化される
「コーポレートガバナンス」は「企業統治」と訳されます。
企業は自社に対して出資をしてくれている株主を大切にする必要があります。
もし、不祥事を起こしたり企業の信用問題にかかわったりするような事実が判明したらどうなるでしょうか。
株主はきっと離れていってしまいますよね。
また、東証一部に上場する基準として企業ガバナンスに関する項目が設けられています。
これらの理由から、東証一部に上場する(した)企業は自然とコーポレートガバナンスを強化していくようになるのです。
資金調達を円滑におこなえる
東京証券取引所を通じて投資家が株を買うことができる状態なので、上場する前よりも資金調達を円滑におこなうことができます。
株以外の資金調達方法というと金融機関からの融資が挙げられます。
しかし、利息を支払わなければならなかったり思い通りの額を融資してもらえなかったりすることもありますからね。
自社の株が株式市場に流通しているということは資金繰りの難易度が少し下がったということが分かります。
取引相手からの信用を得やすい
東証一部に上場企業には年次決算ごとに財務諸表を作成したのち外部に公開するという義務があります。
手間はかかりますが、経営効率がよく利益が確り出ていることを証明できれば取引相手からの印象もよくなるでしょう。
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一部上場のデメリット
デメリット①経営に対して口出しされることがある
東証一部に上場している企業は、株を保有している投資家を「株主」として迎え入れ、意見を尊重する必要があります。
会社法上も企業は株主のものでもあるからです。
そのため、経営に口酸っぱく意見を言う株主も増えてきているといわれています。
経営者からすると、1から大事に育て上げてきた企業に対して口出しされることを嫌と感じることもあります。
そのため、上場を目標としない企業もあるのです。
コストがかかる
実は東証一部に上場するには審査基準を満たすだけではなく準備期間や費用が必要になります。
上場してからも上場維持のために時価総額に応じた維持費用を支払う必要があるのです。
必要な費用の例は、以下のとおりです。
上場審査料 | 400万円 | |
新規上場料 | 1,500万円 | |
公募または売り出しに係る料金 | 上場申請に係る株券等の公募 公募株式数×公募価格× (9/10,000) | |
上場申請に係る株券等の売出し 売出株式数×売出価格× (1/10,000) | ||
年間上場料 | 時価総額50億円以下 | 96万円 |
時価総額50億円〜250億円 | 168万円 | |
時価総額250億円〜500億円 | 240万円 | |
時価総額500億円〜2,500億円 | 312万円 | |
時価総額2,500億円〜5,000億円 | 384万円 | |
時価総額5,000億円超え | 456万円 | |
上場株等を発行又は処分する場合 | 1株あたりの発行価格×発行or処分株数× (1/10,0009 | |
上場株等の売出しをする場合 | 売出株式数×売出価格× 81/10,000) | |
新株の上場に係る料金 | 1株あたり発行価格×発行する株券の株× (8/10,000) | |
合併等に係る料金 | (合併等に際して発行する株数+交付する自己株式の株数) × 合併等の効力発生日の売買立会における株式の最終価格 × 2/10,000 |
(引用:東京証券取引所「上場に伴う費用」)
買収される可能性がある
東証一部に株が流通し自由に売買ができるようになります。
その為、株を大量に買われて企業を買収(M&A)されるというリスクも発生します。
株式会社は株主のものです。
そのため、発行済み株式数の過半数を買い占められると経営権を失ってしまうのです。
上記の理由と同じで、1から成長させてきた企業を守りたいという思いから上場を避けたいということがあります。
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東証一部に上場している代表銘柄一覧とTOPIX
では最後に、現在東証一部に上場している代表銘柄と東証一部の指数であるTOPIXについて紹介していきたいと思います。
東証一部の代表的な銘柄
企業の規模を表す指標に「時価総額」があります。
時価総額は「発行済み株式数」×「株価」で表されます。
株式会社は株主のものですので極端に言うと時価総額の金額があれば企業を丸々買い取ることができます。
日本の企業の時価総額の順位は現在以下の通り皆さんの知っている企業ばかりではないでしょうか。
東証一部時価総額上位 | |
1位 | トヨタ自動車 |
2位 | 三菱UFJFG |
3位 | ソニー |
4位 | NTT |
5位 | ソフトバンクグループ |
6位 | キーエンス |
7位 | 三井住友FG |
8位 | ホンダ |
9位 | みずほ |
10位 | KDDI |
日本の代表的な銘柄については個別株分析を行っていますので参考にしてみてください!
TOPIXとは?
日経平均と並んでTOPIXという言葉をよく耳にすると思います。
TOPIXは東証一部上場企業の時価総額加重平均指数です。
一方、日経平均株価は代表的な225銘柄の平均株価指数です。
両者は組入銘柄数も算出方法も異なった指数です。
以下でTOPIXと日経平均株価の違いを含めて詳しくまとめています。
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まとめ
このコンテンツでは、東証一部の意味や企業数、そして企業にとっての上場するメリット・デメリットを紹介しました。
東証一部は1番ランクが高い株式市場で日本の全企業に占めるわずかな企業しか上場していないほどです。
資金調達・知名度といった理由から上場を目標とする企業は多いです。
一方で上場にかかるコストや経営権が失われるリスクなどを鑑みて上場を避ける企業も存在します。
東証一部に上場している企業は財務諸表を公表する義務があります。
私たち投資家からすると、投資判断の1つとして財務状況を考慮することができるのは嬉しい点ですね。
上場企業への投資を考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
今回のような「東証一部」といった基礎知識は、株式投資で高いリターンを獲得するには必須です。
しかし、基礎知識だけではなかなか成果が出ないのも、株式投資の難しさです。
独学で株式投資に挑んで、失敗して株式市場を退場してしまう人は後を絶ちません。
これはひとえに学習方法が間違っていたか、市場、銘柄選定などの知識不足です。
現代では、株式投資を効率よく学べる手段がたくさん存在します。
以下のコンテンツでは、株を勉強するにあたっての効率的な進め方について特集していますので、ぜひ参考にしてみてください。
以上、東証一部とは?企業数や一部上場のメリット・デメリットについて徹底解説。…でした。