これから上場する企業の株式、つまりIPO銘柄に投資する方法として「ブックビルディング方式」があります。
「ブックビルディング方式」により株の価格を提示することで一般投資家はIPO株を注文できます。
そして、株式割当に当選すれば投資できるのです。
今回はそんなブックビルディング方式の仕組みと、IPO株に投資する流れについて解説していきます。
目次
Contents
ブックビルディング方式とは(期間に注意)
会社が株式を売り出したり公募増資したりする際に、株価決定に用いられる方法が「ブックビルディング方式」です。
「book」は注文、「building」は積み上げる、という意味です。
投資家の需要で株価が決まるため「需要積み上げ方式」とも呼ばれます。
ブックビルディング方式ではまず、株価予測精度の高い金融機関や機関投資家により仮条件を決定します。
仮条件を決定したら、投資家から「いくらなら買いたい」という需要の積み上げ(ブックビルディング)を行い、公開価格を決定します。
(※IPOでは、ほぼすべて抽選になります。IPOへの参加には、このブックビルディングの申し込みをしなければ抽選に参加できません。)
そして、ブックビルディングでの集計結果を基に、公開株価を決定します。
例えばA社というIPO株が1,200円〜1,500円の仮価格で投資可能な場合、投資家はその範囲で希望価格を提示します。
上限に近いほど投資できる可能性が高まるため、この場合では1,500円で投資する人が多い傾向です。
そして投資家の注文可能期間が過ぎたら、注文した投資家へのIPO株割り当てが実施されます。
もし会社の発行株式数より投資家の注文株式数が多いときは抽選となるため注意しましょう。
IPO株の割り当てに当選すれば、投資家は自分が希望した価格で購入できます。
期日までに必要な資金を証券会社に払いこむことで、株式公開日にIPO株を取得できるのです。
(参考)競争入札方式について
競争入札方式では、投資家が一定期間に希望価格を入札し、その結果に基づき公募価格が決定される方式です。
オークションのようなイメージで、入札を積み重ねていくイメージです。
ブックビルディング方式とは異なり、価格の上限が決まっていません。
そのため、投資家が購入希望を続けていけば、それだけ公募価格が上がっていきます。
入札方式での価格決定は、資金調達をする新規上場会社にとっては有利な条件で資金調達できるメリットがあります。
一方、入札方式での価格決定では公募価格が高騰する傾向にあり、株式公開後に株価が急下落する傾向にあるというデメリットもあります。
そのため、現在ではほとんどの新規公開が、ブックビルディング方式による価格決定が行われています。
実施するタイミング
ブックビルディングは一般的に会社が株式公開するときに実施されます。
会社の未公開株における仮条件は上場予定日の半月前に決まり、投資家が注文できる期間はそこから5日間程度です。
例えば10月1日にA社の株式が公開される場合、9月15日あたりにIPO株の価格帯が決定します。
そして9月16日から9月20日あたりまで投資家の注文が受け付けられて、その後日にA社の公募価格が決まります。
IPO株の割り当てに当選した投資家は、9月25日あたりまで株式の購入を判断することが可能です。
注文を確定すると証券会社に代金が支払われて、上場日に投資家は株を取得できます。
投資家にとってのメリット
IPO株は投資家からの人気が高くて、方式によっては価格が高騰しやすいものです。
しかしブックビルディング方式なら価格帯が決まっているため、株価が高騰しにくいメリットがあります。
例えば入札方式で公開株を売り出す場合、投資家が希望価格で入札して公募価格が決まります。
この方式では価格帯が決まっていないため、公募価格が高騰する可能性が大きいです。
もし公募価格が適正価格よりも高ければ、上場後に株価が暴落するリスクがあります。
価格やリスクの面に問題がある入札方式では、IPO株を購入するメリットは少なくなるのです。
証券会社により価格帯が決まっているブックビルディングであれば、IPO株の価格が高騰するリスクは小さく、投機的な買いが抑えられます。
現在の株式の新規公開ではこのブックビルディング方式が採用されていることが多いです。
参加する方法
IPO株はすべての証券会社で購入できず、新規公開株の主幹事証券や幹事証券会社のみ取り扱っています。
ブックビルディングに参加するときは複数の証券会社で口座開設しておくことがオススメです。
証券口座があればホームページや窓口で新規公開株の受付状況を確認できます。
もしIPO株の申し込み期間であれば、申し込み枚数と株価を決めるだけで申請することが可能です。
注意すべきポイント
ブックビルディング方式で株式に投資する場合、購入に必要な資産がなければ申し込むことはできません。
必要資金がなければ複数の証券会社で抽選を受けるのは不可能であるため注意しましょう。
複数の証券会社で抽選に申し込むには、証券口座の分だけ必要な資金も増えます。
また、IPO株の発行価格が希望価格を下回った場合、抽選の対象外になるため注意すべきです。
成行注文をして上限価格で購入する意思を示すことで、IPO株に投資しやすくなります。
そのため、IPOにおいて少しでも当選確率を高めるために、希望価格は仮条件の上限価格に設定するようにしましょう。
ここをケチって当選しませんでしたー、となると機会損失になり、非常にもったいないです。
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ブックビルディングに参加してIPO株投資するには(成り行き注文が安心)
「さっそくIPO株に投資してリターンを狙いたい」と思う投資家は多くいるでしょう。
実際にIPO株へ投資するには、次のような流れに従って手続きを進めることが必要です。
- 証券会社の口座を開設
- 上場予定の企業情報を確認
- 申し込み資金を入金
- 証券会社のホームページで申し込み
各ステップにおける方法やコツについて解説します。
証券会社の口座を開設
IPO株に投資するには証券会社で口座を開設することが必要です。
ホームページやパンフレットからIPOに投資できるのか確認したうえで、信頼できる証券会社の口座を作りましょう。
野村証券や大和証券などの大手証券会社では、IPOの主幹事証券会社に選ばれることが多いです。
この2社の口座は開いておいた方が、IPOの当選確率は高まります。
また、今ではインターネットでIPO株に投資できるネット証券が多く存在します。
特にSBI証券やマネックス証券、岡三オンライン証券は新規公開株の幹事証券になりやすいため、オススメです。
上場予定の企業情報を確認
証券口座の開設が完了したら、次に投資先を見つけるために上場予定の企業をチェックしましょう。
- モーニングスター
- トレーダーズ・ウェブ
- 日本取引所グループ
上記などから、会社の上場日や確認書、主幹事証券会社などを閲覧できます。
ブックビルディング期間と上場日などのスケジュールと、主幹事証券会社がどこなのか、は必ず確認しましょう。
IPOでは、主幹事証券会社が売り出し株数の多くを握っています。
狙っている新規公開株の主幹事証券会社の口座を開設していないと、抽選に当選する可能性が非常に低くなります。
そして、興味のある会社を見つけたときは仮条件や公募数、売買単位から必要な資金の目安を計算するのがポイント。
例えば2019年10月にマザーズに上場したBASE(株)の場合は売出価格が1,300円。
売買単位は100であるため、最低必要金額は130,000円であることが分かります。
もし売出価格が掲載されている場合、ブックビルディングの受付期間が終了しています。
これからIPO株に投資するときは売出価格が決定されていない銘柄を検討しましょう。
申し込み資金を入金
投資したい会社のIPO株を見つけたら、それを取り扱う証券会社の口座に資金を入金しましょう。
主幹事証券会社と引受証券会社という部分を見ると、そのIPOを取り扱っている証券会社が分かります。
複数の会社で注文する場合はそれぞれの証券口座に資金を預けることが必要です。
一般的に50万円程度の資金を預けておけば、ほとんどのIPO株に投資できます。
IPOの抽選は非常に激戦であるため、当選しても最小単元で当選する場合がほとんどです。
そのため、一つの口座につき、仮条件の上限価格×最小単元の資金を入金しておけば十分です。
仮に抽選から外れても、一切手数料などはかからず、抽選に投じたお金も満額が戻ってきますので、抽選への参加はリスクなしで行えます。
また、少数ではありますが、IPOへの参加にあたり、事前入金なしでも抽選に参加できる証券会社もあります。
岡三証券、ライブスター証券、松井証券などが、事前入金なしで抽選に参加できる会社です。
資金に余裕がない人は仮条件の価格が低いIPO株を狙うことがオススメです。
証券会社でブックビルディングに参加
証券口座に資金を入金したら、決められた期間内にブックビルディングへ参加しましょう。
多くの証券会社ではインターネット上で銘柄を確認して、株を注文することができます。
例えばSBI証券の場合、ホームページにログインしてからIPOタブを開くことで銘柄を選べます。
投資したい銘柄を選択すると、申し込み個数や価格などを入力する画面に進めます。
この際に、証券会社によっては「ストライクプライス」や「成行」といった項目が設定されている場合があります。
2つの言葉の意味は同じで、両方とも「仮条件の範囲内でのどの価格であっても購入します」という意志表示を表します。
ブックビルディングにおいては、基本的に申し込み価格は仮条件の上限となります。
ストライクプライスあるいは成行の欄にチェックを入れておけば、自動で上限価格で抽選へ参加する、となるので、入力の手間が省けます。
そして各項目に希望条件を記載した上で、取引パスワードを入力すると確認画面に移行。
購入条件に問題がなければ「申し込み」ボタンを押すと、ブックビルディングへの参加が完了します。
申し込んだ銘柄はIPO画面の申し込み内容欄に表示されます。
もし手続きした後に条件を変更したいときは、期間内に「取消」または「訂正」を押して内容を修正することが可能です。
当選確率を上げるために
当選確率を上げるためには、次のような対策をとると良いでしょう。
- 複数の証券会社から、抽選を申し込む
- 申し込み株数に応じて、抽選回数が増える証券会社で申し込む
IPOの場合、そもそもの当選倍率が高いですので、少しでも多くの抽選回数が回ってくるようになると有利になります。
そのために、複数の証券会社から申し込むことに加えて、申し込み株数に応じて抽選回数が増える会社をメインで使うことが必要になります。
株数に応じて抽選回数が増える証券会社の代表は、SBI証券と楽天証券です。
狙っているIPO銘柄を上記2社が取り扱っている場合は、この2社をメインに使い、申し込み株数を多くすることで、当選確率が高まります。
なお、ブックビルディングへの参加の申し込み時期や申し込み価格については、当選確率への影響は何もありません。
公開価格の決定・当選発表
その後、公開価格が決定し、IPOの抽選の当選発表があります。
多くのケースでは、公開価格は仮条件に上限に決まりますが、まれに公開価格が上限価格を下回ることがあります。
この場合は注意が必要です。
上限価格よりも安い公開価格で買えるのはメリットである一方、この状態は「このIPOに対する期待感が高くない」と見られてしまい、上場後に株価が公募価格を下回る「公募割れ」のリスクが高いです。
そのため、当選したものの、上限価格に達しなかった銘柄については、今後保有し続けるか、初値で売るのか、そもそもの当選を下りるか、検討する必要があります。
注意:当選発表後の辞退について
一部の証券会社では、IPO当選後に辞退・キャンセルを行うと、ペナルティが課されることがあります。
「知らずにキャンセルしてしまった!」ということはないように、よく規約を読んでおきましょう。
ペナルティのある証券会社は、以下が一例です。
- SMBC日興証券
- 三菱UFJモルガンスタンレー証券
- 岡三証券
- 東洋証券
ペナルティの内容としては以下の通りとなります。
- 現在その会社で他に行っているIPOの抽選もすべてキャンセル
- IPOへの抽選参加を禁止(1か月程度)
公募割れのリスクと、ペナルティのリスク、双方を天秤にかけて、要検討する必要があります。
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まとめ
ブックビルディング方式は投資家がIPO株に価格を提示して注文する方法です。
入札方式に比べて株価が高騰しにくく、投資するリスクを抑えられるメリットがあります。
IPO株を取り扱う証券会社の口座を持っておくことで、ブックビルディングに参加することが可能。
リターンに期待できるIPO株に投資するために、さっそく証券口座を開設しましょう。
複数の証券会社の口座を保有しておくことで、ブックビルディングへの参加・当選確率の向上を図ることができます。
一方、当選後キャンセルはペナルティが課される会社もあるので、規約をよく読み、注意を払いましょう。
以上、儲かると評判のIPO株投資!公開価格を決定する「ブックビルディング方式」とは?概要と上場株を購入する流れまで徹底解説。…でした。