株式投資を始められたばかりの方が主に取り掛かられるのは現物取引かと思います。
現物取引は証券口座に保有している資金で株式を購入することができるシンプルな取引です。
しかし、中上級者にむけて各証券会社は信用口座という現物取引とはべつものの口座を提供しています。
信用口座を開設するには相応の投資経験や資金量が審査されます。
しかし、信用口座を開設することで今まで現物取引では行えなかった取引ができるようになります。
本日は信用取引で何ができるようになるのか?
という点を中心に用語解説を交えて出来うる限り噛み砕いて説明していきたいと思います。
Contents
自分の資金にレバレッジをかけて取引ができる「信用買い」
『信用買い』とは自分が保有している資金以上の株を購入する取引のことを言います。
『最低委託保証金』と『委託保証金率』には決まりがある
信用取引という名前からわかる通り投資家は証券会社にまず『保証金』(=委託保証金)を差し入れます。
証券会社に自らの保証金という信用を与えることによって自分の資金量よりも多い金額の取引を行うことができます。
信用取引を行うために証券会社に差し入れる資金を委託保証金というのですが、
法律で最低委託保証金は30万円以上、委託保証金率は30%以上と決められております。
最低委託保証金 | 30万円 |
委託保証金率 | 30%以上 |
委託保証率というのは『取引できる金額』に対して必要な委託保証金の割合のことです。
つまり委託保証金が最低の30万円の場合取引できる金額のMAXは30万円➗0.3=100万円ということになります。
委託保証金は以下の数式で算出されます。
委託保証金
=
①保証金現金+②代用証券-③決済損益 -④評価損益-⑤諸費用
①保証金現金は単純に現金
②代用証券は現金以外の証券口座にある資産
③決済損益は利益確定・損失確定を行った分
④評価損益は決済していない分の評価損益
⑤諸費用は金利や貸株料のような諸経費(後述です)
代用証券については各社が定義をしておりますが、だいたい証券口座に保有している以下の金融商品の80%の金額とされています。
信用買いで発生するコストは金利
当然信用取引では自分の資金以上の取引を行うため、証券会社からお金を『借りている』という形をとっています。
銀行からでも行かねを借りれば金利が発生するので、当然信用取引でも金利が発生します。
大体各社2%-3%程度の金利水準となっております。
決済方法は『反対取引』か『現引き』の二種類がある
現在『信用買い』として保有している買建玉を閉じる方法としては二つの方法があります。
一つは非常に単純で現在保有している信用買建玉を売却することにより取引を閉じる方法です。
もう一つは金利を払わずに更に長期間保有したいと投資家が考えた場合に、
借りている資金分のお金を払って現物株として引き戻す『現引き』という手法です。
現引きを行うメリットは以下の通りです。
- 現引きを行う時には手数料が発生しない(既に信用買時に手数料を支払っているため)
- 金利を払わずに長期保有できる
また信用取引の約定手数料の方が安いため、初めから現引き目的で信用買を行い現引きをする方もいます。
また、一時的に資金が不足して買いたい銘柄を現物で買えない場合資金を準備するまで、
信用買を行い資金が準備できたら現引きをするという投資家の方もいます。
現引きは活用余地が高い手法なのです。
注意しないといけない追加証拠金(=追証)
良く信用取引をしている方から追証が。。
という嘆きの声を聞いたことはないでしょうか。
追加証拠金というのは信用取引で損がでた場合に、証拠金が足らなくなるので追加で証拠金を拠出するように証券会社から要求されることをいいます。
例えば以下の条件で考えてみましょう。
■ 追証ライン:25%
■ 信用買建玉:450万円
■ 委託保証金:150万円
現時点の委託保証金率は150万円 ÷ 450万円 = 33.33%となり追証ライン25%を上回っています。
しかし、ここで45万円の損失が発生したとします。すると45万円の損失はそのまま委託保証金のマイナスと換算されます。
つまり以下のようになります。
■ 信用買建玉:450万円 (建玉は450万円のまま変わりません。約定代金ベース)
■ 委託保証金:150万円 → 105万円
すると委託保証金率は105万円 ÷ 450万円 = 23.3% < 追証ライン25%を下回るため追証を要求されることになります。
追証ラインについては各証券会社によって設定されています。
楽天証券やSBI証券、松井証券の追証ラインは20%、マネックス証券の追証ラインは25%となっております。
『空売り』で相場下落局面でも利益獲得を狙おう
現物では株を購入することからしか取引を始められませんが、信用取引では売りから取引を始めることができます。
売りから入る信用取引のことを『空売り』といいます。
つまり『空売り』を用いることによって相場の下落局面であっても利益獲得を狙うことができます。
信用買の時と同じく『空売り』でも最低委託保証金と委託保証金率や追証の基準は適用されます。
ただ買建玉と売建玉の違いだけで金額の絶対値をベースに判断されます。
『空売り』でかかるコストは『貸株料』
信用買ではお金を証券会社から借りる費用として金利を支払う必要がありました。
空売の場合も費用がかかります。
『空売り』を行うにはまずは売るための株が必要です。
投資家は証券会社から株を『借りて』借りた株を売り『空売り』、最終的に株を買い戻して返済を行い取引を閉じます。
つまり空売りを行う場合はお金を借りいれるのではなく、株を借りるので株を借りる費用として『貸株料』が徴収されます。
貸株料も各証券会社によって異なりますが、2%〜4%で設定されています。
決済方法は『反対取引』または『現渡し』
空売りの決済方法も二種類あり、一つは非常に単純で株を買い戻して証券会社に返済する反対取引です。
もう一つの方法は『現渡し』です。
『現渡し』は既存で保有している同数量同銘柄の現物で保有している株を証券会社に返済することで空売りを解消させる手法です。
既に現物を保有するときに手数料を支払っています。
そのため、現渡しで決済する場合は追加で手数料が発生しないというメリットがあります。
主に現渡しが活躍局面として考えられるのは優待を獲得するための『つなぎ売り』の局面があります。
『空売り比率』と『信用倍率』
『信用倍率』は『信用買い残』と『空売り残』の比率のことです。
『信用倍率』= 『信用買い残』➗ 『信用売り(=空売り)残』で表現されます。
【信用倍率が1より大きい場合】
『信用買い残』の方が多いので『信用買い』の解消による下落圧力が高い。
【信用倍率が1より小さい場合】
『信用売り』の方が多いので『空売り』の解消による上昇圧力が高い。
信用倍率を理解することで銘柄の相場状況を読み取ることができます。
更に、銘柄が10%以上下落した場合や、ある条件を満たした時に『空売り』ができなくなる『売り禁』等の『空売り規制』も存在しています。
以下のコンテンツでは『空売り規制』を利用して利益を得るための手法を含めて説明しています。
テクニカル分析と組み合わせて空売りで儲ける投資法
実際に空売りを活用して相場で利益を上げるにはどうしたら良いのでしょうか?
以下コンテンツでは空売りで利益を得られる局面をプロのトレーダー監修のもとお伝えしておりますので参考にしてください。
テクニカル分析と組み合わせて記載しており含蓄の多い内容となっております。
『日計り売り』でデイトレードを行い利益を得よう!
銘柄の中には『貸借銘柄』と『非貸借銘柄』が存在しています。
通常の空売りが可能なのは『貸借銘柄』に限られます。
しかし、空売りを行い、その日のうちに決済を行う『日計り売り』に限って空売りができる銘柄も数多く存在しています。
以下コンテンツではデイトレーダー御用達の『日計り売り』の活用方法と注意点についてお伝えしています。
興味のある方はご覧いただければと思います。
逆日歩には気を付けよう
『空売り』は証券会社から株を借りることができて初めて成立する取引です。
しかし空売りした人が急増して証券会社が貸し出せる株がなくなった時は、
証券会社は日本証券金融株式会社(以下:日証金)から株を借りて投資家に貸し出します。
証券会社は日証金にしはたっら株を借りるための手数料(=品貸料)を投資家に対して請求します。
この証券会社が品貸料として投資家に対して要求する費用が逆日歩です。
逆日歩は既に空売りを行なっている投資家に対してもかかってきます。
逆日歩になりそうな銘柄には投資しない方が賢明となります。
逆日歩の危険性があるかどうかは『日本証券金融株式会社HP』で確認することができます。
空売りしたい銘柄コードを入れることにより現在株の貸借状況がどのようになっているのか、
逆日歩が1株あたりいくらかを確認することができます。
例えば現在の銭高組を例にみていきましょう。
以下融資残高と貸株残高の差し引き残高をみると常に貸株超となっています。つまり逆日歩が発生する可能性があることを示しています。
貸株超であっても逆日歩が発生しない場合もあります。
しかし、銭高組に関しては現在1株あたり0.1円の逆日歩が1日あたり発生していることを示しています。
つまり100株空売りを行うのであれば100株×0.1円=10円/日、逆日歩がかかるので10日間空売りを継続すれば100円となります。
ちなみに一番下の最高料率に関しては最高で発生する品貸料率で最大1株あたり10.4円の逆日歩が発生しうることを示しています。
いずれにせよ貸株残高が大幅に融資残高に比べて多い銘柄については気をつけたほうが良いですね。
「空売り」を利用した「優待つなぎ売り」
単純に空売りは相場下落局面で利益をあげるために行うことが主な活用法です。
しかし、優待投資を行いたい方も有効に活用することができます。
優待株は優待権利落ちの日に優待目的の株主が売却することによって下落する傾向があります。
『つなぎ売り』は優待の権利だけを株価下落のリスクを抑えて獲得する取引手法です。
権利付最終日に優待の権利獲得のために株を保有するとともに、『空売り』を行う手法です。
つまり現物の『買』と信用での『空売り』を両建でたてます。
すると権利落ち日に株価が下落したとしても、現物株ででた損失を空売りによる利益で相殺することができます。
結果的に株主優待を受け取る権利を株価下落の影響を受けずに獲得することができます。
厳密には『つなぎ売り』には種々の手数料や費用が発生します。
興味のある方は以下詳しくまとめた記事をご覧いただければと思います。
まとめ
信用取引を利用することにより現物株取引では不可能であった「自己資金以上の株の売買」「売りから入る空売り」が出来るようになります。
ただ信用買の場合は金利、空売りの場合は貸株料に加え逆日歩のリスクを抱えることに注意を払う必要があります。
次回は信用取引の種類である『制度信用取引』と『一般信用取引』について詳しく見ていきたいと思います。
以上、【空売り・信用買いとは?】信用取引について『逆日歩』等のデメリットも交えながらわかりやすく解説する。…の話題でした。
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