株式投資の本やインターネットサイトの記事を見ていると、疑問点に遭遇して理解が進まないということはありませんか?
一般的に株式の本やインターネットサイトの記事は株式取引におけるプロが執筆しています。
その為、初心者には理解できない専門用語が当たり前のように使われています。
代表的な言葉として『出来高』があるのではないでしょうか?
今回は「超」初心者向けに『出来高』についてお伝えしていきたいと思います。
目次
Contents
出来高ってなに?相場のパワーをはかる「出来高」
「出来高急増」や「出来高激減」といった表現を目にしませんか?
なぜ、相場では出来高にこだわるのでしょうか?
出来高は株式相場で売買された株式の枚数のことです。
なぜ出来高が重要視されるのか、それは「出来高が多い=相場参加者又は取引資金量が多い」からです。
多くのトレーダーが参加するということはそれだけ注目度が高いといってよいでしょう。
株価同様、fxでも出来高の確認は重要です。
しかし、fxの場合は株価よりも出来高の確認が難しくなっています。
fxの出来高を知りたい方は、東京金融取引所が運営するサイト『くりっく365』にある「取引所為替証拠金取引 出来高推移」のページを見るとよいでしょう。
米ドル/円、ユーロ/円、英ポンド/円、豪ドル/円、スイスフラン/円など、複数の通貨ペアの出来高が分かります。
ただし、リアルタイムの情報ではありません。
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出来高急増と株価推移の関係
実際に相場で出来高が急増するとどうなるのか見ていきましょう。
上図はイグニス(3689)の日足チャートです。
まず2019年8月13日に出来高が急増しています。
これはレンジから外れて株価が落下したとこを狙って多くの投資家が買いに入ったため、出来高が急増したと考えられます。
次に2019年の9月18日にさらに大きな出来高を付けて株価が急反転していることがわかります。
これは974円が安値であると感じた投資家の多くが「株価が安いうちに仕込んでおきたい」と考えた結果の株価推移といえます。
このように出来高が急増する場面は株価の「転機」になりやすい傾向があるということがお分かりいただけたと思います。
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「出来高急増=相場の転機」になりやすい!出来高は株価に先行する。
株式相場の基本は「安く買って高く売る」これだけです。
シンプルなのですが、天底を見極めることは難しいのはお分かりいただけると思います。
そこで出来高が活躍します。
株価が上昇するときは、次の順番で買いが広がります。
- 初動(5%以下)
- 初期(およそ5~15%)
- 前期(およそ20~30%)
- 後期(およそ30~40%)
- 終盤(およそ10~30%)
終盤で買いを入れると高値掴みになりかねません。
値幅を大きく取りたいときは、なるべく「初動」で買いを入れたいところです。
出来高が急増したときにポジションを取れば、相場の「初動」に乗ることができる可能性が高まるということを意味します。
ですから相場では株価の上下だけではなく、出来高にも注意を払うことが重要であるといえます。
出来高が株価に先行しない場合がある
必ず出来高が株価の動きに先行するわけではありません。
- 出来高と株価が同時に動く
- 出来高が株価の動きに後続する
上記2つのようなパターンが起きることがあります。
「1」はもみあい後、出来高が増えて上昇相場・下落相場へ移行するというパターンです。
出来高が増えて下値支持線・上値抵抗線をブレイクするというパターンがよく見られます。
前日比50%増の出来高があり、その水準の出来高が3日以上続いた銘柄は、買い仕掛けのチャンスです。
「2」は株価が上昇し、注目があつまったことで出来高が増えていくパターンです。
逆に株価が下落し、投げ売りによって出来高が増えるパターンもあります。
投げ売りで出来高が増えたときも買いのチャンスです。
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出来高を大きくする要因とは?
取引高は『取引人数』と『1人あたり取引高』の掛け合わせで算出されます。
まずは出来高を急増させる直接的な要因についてお伝えしていきたいと思います。
取引参加人数が急増するケース
まずは取引している銘柄が株式市場そのものに大きな事象が発生した場合、相場に参加する人数が増えます。
相場の参加人数が増えれば当然取引高も増えます。
普段静観している投資家達がチャンスとみて銘柄を購入するケースもありますし、相場から逃げないと危険と判断して損切りするケースもあります。
機関投資家が参入するケース
多くの参加者が相場に参加しなくても出来高が急増するケースがあります。
機関投資家は数十億円〜数百億円の取引を行うことができます。
機関投資家が参入するケースの場合は必ずしも大きな事象が発生した後とは限りません。
機関投資家が購入する意思を決定したら出来高が人知れず増加します。
機関投資家が大きなポーションを購入すれば大量保有報告書を通じて一般投資家は知ることができます。
大量の株式が特定の第三者に買い占められたような場合、株価が予想外の値動きをする可能性があることから、株式市場の透明性の確保、株式投資家の保護を目的として制定された制度。
上場企業の発行済み株式総数の5%超を保有している株主(=大量保有者)は、所定の書式にしたがって、保有することとなった日から5営業日以内に内閣総理大臣に「大量保有報告書」を提出しなくてはならない。
(引用:野村證券『大量保有報告書とは』)
直近では三井住友信託銀行がトヨタ自動車の大量保有報告書を提出しています。
大量保有報告書が提出されることで市場の注目が集まり、株価が上昇するケースもあります。
何もない日に出来高が急増している場合も注意して見ておきましょう。
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出来高を急増させる事象①:決算発表
決算は株価を大きく動かす事象であることは言うに及びません。
決算が予め予想されていた業績を上回れば出来高増加を伴い株価は上昇します。
逆に予め予想されていた業績を下回れば出来高現象を伴って株価は下落していきます。
以下は三菱商事の例ですが決算発表時に出来高は急増しています。
決算発表が市場の期待を下回るものであれば、出来高を伴って流れを変えて下落していくのです。
出来高を急増させる事象②:業績の『上方修正』並びに『下方修正』
上場企業は通気の決算発表を行う際に翌期の決算予想を発表します。
しかし営業活動を行い予想を上回る決算又は下回る決算を発表することがあります。
予想を上回る発表のことを上方修正、予想を下回る発表のことを「下方修正」と呼びます。
上方修正の例:サイバーエージェント
上方修正を発表するということは業績が堅調であることの裏返しです。
当然上方修正が好感され出来高が急増し株価が上昇していくケースが多くなります。
以下はサイバーエージェントを例にとって説明します。
サイバーエージェントは7月24日に今期決算の上方修正予想を発表しました。
上記の通り、コスト構造の見直しというポジティブな内容であったため、以下の通り素直に好感されて出来高急増を伴い株価が急伸しました。
しかし、必ずしも上方修正がだされたからといって出来高急増を伴って株価が上昇するとは限りません。
既に月次売上や四半期決算で上方修正がある程度想定されている場合や、一過性利益の場合は必ずしも好感されるとは限りません。
上方修正がゲームチェンジャーと成り得るかどうかを見極めて投資の是非を考えましょう。
ちなみに魅力的な上方修正可能性の高い銘柄を見つける方法については堀哲也氏流の探し方を以前解説しています。
堀哲也氏は『60万円を7年で3億円にした実践投資法』で有名な個人投資家で実際に彼が使った手法なので非常に参考になります。
下方修正の例:NTN
上方修正同様に下方修正が行われれば出来高急増を伴って株価の下落の起点となります。
次はNTNを例にして下方修正の例を見ていきたいと思います。
NTNは7月30日に下方修正を発表しました。
業績の低迷の長期化が見込まれるため素直に嫌気される内容です。
結果として出来高急増を伴い株価下落の起点となりました。
上方修正と同じく一時的な要因で下方修正となったり、既に予想されて株価が下落している場合は影響は軽微なものとなります。
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出来高を急増させる事象③:業績に影響を与えるニュースの発覚
また当然業績に影響を与えるニュースが発表された場合も出来高が急増します。
例えば、ゴーン氏が逮捕された当時の日産の出来高を見てみましょう。
ゴーン逮捕の翌日の出来高は通常日の10倍以上の出来高を伴っており、その後の下落基調の起点となっています。
また直近の三菱商事の特別損失のニュースの例を見てみましょう。
三菱商事は20日、シンガポールの石油関連子会社で約3億2000万ドル(約345億円)の損失が発生する見込みだと発表した。
現地の中国籍の元社員が顧客との契約にはない原油先物のデリバティブ取引を繰り返し損失が拡大した。
(引用:日経新聞)
ニュースを受けて出来高は急増しています。
ここから下落の流れになるかについては筆者は懐疑的です。
というのも三菱商事の利益水準から考えると大きな規模ではないということと、一過性の損失で今後の業績に影響を及ぼさないためです。
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コラム:株式投資で出来高が少ない高値抜けには注意しよう!
株価が上昇するチャートパターンとしてウィリアム・オニール氏が提唱したカップウィズハンドルが有名です。
カップウィズハンドルは以下のようなチャートパターンです。
ただ、丸で示した買いポイントで出来高が伴っていない場合は騙しの可能性があると継承を鳴らしています。
注意を払わなければいけないのはカップウィズハンドルのチャートパターンだけではありません。
出来高を伴っていない高値抜けは騙しの可能性が高く、十分注意を払って購入判断をする必要があるのです。
出来高を用いるテクニカル指標を使おう
上昇相場、下落相場での出来高には、次のような傾向があります。
- 出来高が増えた → 人気が上がっている → 株価上昇
- 出来高が減った → 人気が下がっている → 株価下落
出来高が少なく、人気が下がった銘柄の安値圏で出来高が急増したときは買いのチャンスです。
ただし、急上昇後の反落には注意したほうが良いでしょう。
一方、大型株の出来高が高値圏で急増したときは、株価が天井を付けた可能性があります。
しかし、チャートで株価の動きと一緒に出来高を見ても、どこで買いなのか売りなのか、分かりにくくありませんか?
そんな時に役立つのが、出来高を用いるテクニカル指標です。
価格帯別出来高で買い圧力と売り圧力を知ろう
出来高をもとにした取引を行う際に参考になるのが、価格帯別出来高です。
価格帯別出来高とは、価格帯ごとに分けて出来高を棒グラフで表示した指標のことを言います。
棒グラフの高低で分かることは次の通りです。
- 棒グラフが高い → 取引が活発で出来高が増えた
- 棒グラフが低い → 取引が低調で出来高が減った
次のように棒グラフの高い水準で売り圧力が出やすい価格帯、買い圧力が出やすい価格帯の予測が可能です。
- 上昇局面で棒グラフの高い水準に入った → 売り圧力が増す
- 下落局面で棒グラフの高い水準に入った → 買い圧力が増す
証券会社の取引ツールを使用している方は、「チャート」に価格帯別出来高を表示させると良いでしょう。
出来高移動平均線で買いサインと売りサインを知ろう
出来高移動平均線とは、ある期間の出来高の平均を折れ線グラフで表示した指標のことを言います。
株価の移動平均線とよく似ており、日足は25日線と75日線を用いるのが一般的です。
次のように、出来高移動平均線で買いサインと売りサインが分かります。
- 25日線と75日線がゴールデンクロス → 買いサイン
- 25日線と75日線がデッドクロス→ 売りサイン
ボリュームレシオで買われ過ぎ・売られ過ぎを知ろう
ボリュームレシオとは、出来高で買われ過ぎ・売られ過ぎが分かる指標のことを言います。
ボリュームレシオでは、次のように数値での判断が可能です。
- 150%前後 → 安定
- 450%以上 → 買われ過ぎ
- 70%以下 → 売られ過ぎ
「RSI」の出来高版といったテクニカル指標です。
OBV(オン・バランス・ボリューム)でトレンドを知ろう
現在の相場のトレンドを判断したいときに便利なのが、OBV(オン・バランス・ボリューム)です。
上昇日の出来高はプラス、下落日の出来高はマイナスとし、一定期間累計して算出しています。
OBV(オン・バランス・ボリューム)では、次のように相場のトレンドを判断します。
- 上昇トレンド時 → OBVが上昇傾向なら上昇トレンド継続と判断
- 上昇トレンド時 → OBVが下降傾向・横ばいなら上昇トレンドの終了が近いと判断
- 下降トレンド時 → OBVが下降傾向なら下降トレンド継続と判断
- 下降トレンド時 → OBVが上昇傾向・横ばいなら下降トレンドの終了が近いと判断
ただし、出来高を用いるテクニカル指標だけで判断すると騙しにあいかねません。
そのため、移動平均線やボリンジャーバンドなど、一般的なトレンド系指標との併用をおすすめします。
各テクニカル指標について、詳しくはSMBC日興証券『初めてでも分かりやすい用語集』をご覧ください。
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まとめ
相場を動かす大きな事象が発生したり、機関投資家が参入することで取引数量が増加して出来高が急増します。
出来高急増は株価の流れを変える起点となりうることから非常に重要なサインとして考えられています。
出来高だけではなく様々なテクニカル指標を活用して相場の流れを読んで株式市場で勝利を収めましょう!
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