株式投資をしている個人投資家の方々。
そのほとんどが、確定申告が不要である「特定口座・源泉徴収有り」を証券会社で開設しているでしょう。
■ 証券口座の種類:
- 一般口座
- 特定口座:源泉徴収有
- 特定口座:源泉徴収無
実は、今や確定申告は簡単にできるようになりました。
「特定口座・源泉徴収有り」で株式投資をしている場合は、確定申告は無縁の世界。
そう考えている方は多いと思います。
しかし、実は確定申告をすることで「お得」になることがありますので、ここで紹介します。
■ 今回のポイント:
- 株の損失は確定申告することで3年間繰り越しが可能。
- 株式配当を受け取った場合は確定申告により配当控除を受けることができる。
- 確定申告書はインターネットを利用して簡単に作成できる。
- 確定申告をすることで、所得情報が市町村にも把握させる点は注意が必要。
目次
Contents
株取引で確定申告が必要なケースとは?
そもそも株式投資をしていた場合、確定申告は必要なのでしょうか?
それは、「年間損益」と証券会社に開設している「口座の種類」によって異なります。
まず、「特定口座・源泉徴収有り」を利用して株取引をしている場合は、確定申告は不要です。
「一般口座」「特定口座・源泉徴収無し」を利用して株取引をしている場合も年間20万円の所得が下回れば、不要です。
法律により、サラリーマンの場合は、給料以外の所得が「年間20万円」を超えた場合は確定申告が必要であると定められています。
「収入」ではなく「所得」ですので、株式投資の場合であれば年間の「通算損益」が20万円を超える場合です。
異なる証券会社での株取引であっても、株式投資の損益は通算できます。
例えば、A証券で100万の利益を出し、B証券で90万円の損失を出した場合は、差引した利益が10万円。
20万円を超えませんので、確定申告は不要となります。
証券口座の種類には以下の3種類があります。
■ 証券口座の種類:
- 一般口座
- 特定口座:源泉徴収有
- 特定口座:源泉徴収無
このうち2つめの「特定口座:源泉徴収有」の場合は、利益を出した時点で税金が徴収されています。
損益に関わらず確定申告の必要はありません。
ただし、このコンテンツの本題ですが、確定申告した方が得になる場合もあります。(詳細は後続)
そして、「一般口座」と「特定口座・源泉徴収無し」の場合は源泉徴収がされていません。
前述のとおり年間利益が20万円を超えた場合は、確定申告が必要となります。
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「特定口座・源泉徴収有り」でも確定申告をした方が良いケースとは?
「特定口座・源泉徴収有り」はたしかに、確定申告が不要であり、利便性は高いです。
しかし、それでも「確定申告」をすることで得になる場合もあります。
それは、以下の場合です。
■ 確定申告をした方が良いケース:
- 株式投資の年間損益がマイナスの場合
- 株式による配当を受け取った年の本業所得が一定以下の場合
それぞれについて詳しく説明します。
株式投資の年間損益がマイナスの場合
株式投資をしていれば当然損失を出すこともあり、年間の損益がマイナスになることも珍しくありません。
そういった場合は、当然ですが税金は徴収されません。
税金が徴収されないのだから、確定申告しても全く意味がないと思いがちです。
ここで、「確定申告」をすることで株取引における「損失」を次期に繰り越すことが可能となります。
将来の株取引における利益に対して、課税所得金額が少なくなる可能性があるのです。
例えば、2018年に100万円の損失を出し、2019年に100万円の利益を出した場合。
確定申告をしていなければ、2019年の利益100万円に対しおよそ20%の税金が徴収されます。
つまり、約20万円は税金を支払わなければなりません。
一方、2018年に100万円の損失を確定申告していた場合。
2019年の利益と2018年の損失が相殺され合計利益は0円となり、税金は一切徴収されません。
結果的に、確定申告するかしないかで、手元に残るお金はおよそ20万円という金額の差が出るのです。
このような損失を繰り越すことを繰越損失といいます。
個人投資家が行う株式投資の繰越損失は、最長3年間の繰越が可能となっています。
上場株式等を金融商品取引業者等を通じて売却したこと等により生じた損失(以下「上場株式等に係る譲渡損失」といいます。)の金額がある場合は、確定申告により、その年分の上場株式等の配当等に係る利子所得の金額及び配当所得の金額(上場株式等に係る配当所得については、申告分離課税を選択したものに限ります。以下「上場株式等に係る配当所得等の金額」といいます。)と損益通算ができます。
また、損益通算してもなお控除しきれない損失の金額については、翌年以後3年間にわたり、確定申告により上場株式等に係る譲渡所得等の金額及び上場株式等に係る配当所得等の金額から繰越控除することができます。
3年あれば、年間で利益を出す年がある可能性は高そうですよね。
将来の株式投資がどの程度の損益となるかはわかりませんが、損失を繰り越しておくに越したことはありません。
また、過去年の確定申告を行うこともできます。
損失の確定申告を忘れていた場合であっても、利益を出した年の確定申告と同時に過去分の確定申告を行うことも可能です。
株式による配当を受け取った年の本業所得が一定以下の場合
2つ目は、配当を受け取った年の本業所得が低かった場合です。
「特定口座・源泉徴収有」の場合は配当を受け取った段階で、株式譲渡益と同じく約20%の税金が徴収されます。
この税金は「分離課税」と言われており、総所得金額に関わらず一定です。
つまり、その人の年収が1億円だろうが100万円だろうが、配当に関しては「20.315%」の税金が徴収されることになります。
通常であれば、配当所得はこの分離課税により税金が徴収されます。
しかし、確定申告をすることで配当所得に対する税金に関して、「総合課税」を選択することが可能です。
「総合課税」を選択した場合は給与などの所得と合算した上で税金の計算が行われます。
この時に、配当所得には「配当額の10%」を所得から控除する配当控除という処理が行われます。
サラリーマンの方で、本業の所得税率が10%以下の人であれば、配当には所得税は一切かからないことになります。
既に源泉徴収された所得税の還付を受けることが可能です。
住民税については、分離課税の方が得になるので、住民税は分離課税で申告しましょう。
上記をわかりやすくまとめますと、以下の通りとなります。
「所得900万円」というとサラリーマンであれば、年収(額面)が1,000万円を大きく超えるような水準です。
配当を受けている多くの方が、確定申告をすることで徴収された所得税を取り戻すことができます。
課税所得額900万円以下の人が上場株式等の配当所得を受け取る場合、分離課税方式あるいは申告不要にした場合、所得税率 (※1) は15.315%、住民税率は5%だ。しかし、総合課税を選択した場合、所得税・住民税の税率は以下のようになる。
課税所得額 | 所得税率 (※1) の税率 | 住民税率の正味税率 (※2) |
---|---|---|
330万円以下 | 0% | 7.2% |
330万円超695万円以下 | 10.21% | 7.2% |
695万円超900万円以下 | 13.273% | 7.2% |
- ※1所得税率には復興特別所得税も加味
- ※2住民税の正味税率は所得割の税率10%から配当控除率を差し引いたもの。配当控除率は課税所得額が1,000万円以下は2.8%、1,000万円超は1.4%となる。
ただし、配当の金額が少なければ当然還付金も少なくなります。
所得が900万円に近付くほど、還付される割合は少なくなりますので注意が必要です。
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確定申告の方法
確定申告未経験の方は「確定申告」と聞くと難しいと思いがちです。
しかし、現代では税務署が確定申告作成に便利なHP(e-Tax)を作成しています。
インターネットを利用してとても簡単に確定申告書を作成することができるのです。
必要書類は勤め先の会社が発行する「源泉徴収票」と証券会社から発行される「特定口座年間取引報告書」。
配当がある場合は「配当支払通知書」です。
税務署のインターネットサイトである確定申告書作成コーナーを利用すれば、どの金額を入力すればいいか全てわかりやすく示されています。
手書きに比べて格段に簡単に確定申告書が作成できます。
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確定申告する場合の注意点
確定申告をすることで、お金が返ってくる方法について紹介しました。
しかし、確定申告には注意点もあります。
確定申告をすると、「株式取引の損益を含めた金額」で所得が確定します。
そして、税務署はその情報を各市町村に送付します。
健康保険やその他、何らかの制度において、誰かの扶養親族となっている場合。
所得が一定水準を超えると、扶養親族を外れてしまうのです。
例えば、専業主婦や学生が株取引の確定申告を行った場合。
所得が扶養親族である基準を超えてしまうと、夫や親の扶養親族ではなくなます。
つまり、健康保険料を自分で払う必要があります。
また、夫や親の税金は扶養親族が減ることで高くなってしまいます。
各種ご自身が該当する制度を理解した上で、確定申告は進めていきましょう。
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まとめ
今回は株式投資と確定申告について紹介しました。
最後に重要点をまとめます。
■ 今回の総括:
- 株の損失は確定申告することで3年間繰り越しが可能。
- 株式配当を受け取った場合は確定申告により配当控除を受けることができる。
- 確定申告書はインターネットを利用して簡単に作成できる。
- 確定申告をすることで、所得情報が市町村にも把握させる点は注意が必要。
以上、「特定口座・源泉徴収有り」でも確定申告をするメリットとは?必要書類の紹介と具体的なやり方を解説。…でした。