日本の中央銀行として君臨する「日本銀行」。
さて、実は日銀が筆頭株主である銘柄があるのをご存知でしょうか?
「政府の銀行である日銀が、株主になって良いのか?」
という疑問があるかと思いますが、結論から言うと「問題ない」です。
今回は、なぜ日銀が筆頭株主になれるのか、また日銀が筆頭株主である銘柄の種類について解説していきます。
目次
日本銀行の基本情報
まず初めに、日本銀行の基本情報を確認していきましょう。
日本銀行は、日本銀行法と呼ばれる法律によって認可されている法人で、財務省の所管に置かれています。
本店は東京都中区に置かれています。
日本銀行の役割は「政府の銀行」、「銀行の銀行」、「発券銀行」に大きく大別されます。
政府の銀行について、日銀には政府のお金(税金等)などを保管する口座があり、この口座を通じてお金の出し入れを行います。
銀行の銀行について、こちらは民間銀行の口座が日銀にあるという意味です。
日銀にある民間銀行の口座を通して、各種金融政策が実施されます。
発券銀行について、日銀の最大の役割とも言える「紙幣の印刷」の権利が日銀に与えられています。
発行する通貨量によって、「インフレ・デフレ」が左右されるため、非常に重要な役割であると言えます。
よく「政府にお金がなければ、日銀が大量に紙幣を刷れば良いじゃないか」という意見があります。
しかし、お金は刷り過ぎると市中がお金まみれになり、価値が下がってしまいます。
お金の価値が下がると物価が高騰しますので、結果的に経済を混乱させることになるのです。
極端な話、ヘリコプターで上空から大量の紙幣をばらまけば、最初の内は人々が我先にと拾うでしょう。
ただ、紙幣のバラまきが毎日続き、道端に紙幣が落ちているような状態になれば、紙幣の価値は落ち葉と同等のものになります。
市場に流通する通貨量のコントロールは非常に大事な政策なのです。
*紙幣の発行は日銀が行いますが、通貨の発行は日本政府が行います。また、お店で買い物をするとき、紙幣は何枚でも使って良いですが、硬貨は1つの種類で20枚までしか強制力を持ちません。21枚以上の同種類の硬貨を買い物で利用した場合、お店側は利用を断ることができます。
(目次に戻る)
日銀は日本最大の大株主?
日銀はこれまで、保有資金を上場投資信託(ETF)と呼ばれる金融商品に多く投資してきました。
ETFは日本株に投資する信託で、日銀は間接的に日本株を購入していることになります。
日銀のETFの額は年間で約6兆円となっています。
2020年3月のコロナショックを受けた金融緩和で約12兆円にまで増額されています。
以下の記事では日銀の保有するETFが値下がりすることでハイパーインフレが発生するのか?
という点にも触れて解説しています。
このペースで今後も購入を続けていくと、年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人の投資額を上回ることになります。
さて、日経新聞によれば、日銀が筆頭株主となっている企業は以下の通りです。
- 日東電工
- ファナック
- オムロン
- 日本ハム
- 宝HD
- 東海カーポン
- 京王電鉄
- ユニチカ
- サッポロHD
日銀はETFによって上記の上場企業以外にも投資を行っており、日本の市場を日銀がコントロールする時代になりつつあります。
日本の株式市場は「個人」から「金融機関」が投資を行うフェーズを迎えた後、
金融機関から「海外投資家」、「機関投資家」が市場に影響力をもつ時代となっていました。
それが、今は海外投資家、機関投資家から「日銀」が市場の主役となりつつあるのです。
日銀はこれまで、民間銀行が保有する国債を購入することで市中の通貨量を増やす政策(量的金融緩和政策)を行ってきました。
ただ、この量的金融緩和のみでは物価上昇を十分に果たすことができていない状況です。
この状況を打開するために、日銀は日本企業株への投資を増やしているのだと考えられます。
日本株の購入によって、株価の上昇を作り上げることができ、「日本は好景気である」というイメージを出すことができます。
日本国民は長らく「デフレ」に悩まされていました。
人々の間に「お金を使わない」というデフレマインドが浸透してしまっています。
このマインドを取り払うには、景気の先行きが明るいというイメージを国民に持たせる必要があるのです。
(目次に戻る)
日銀の市場介入は諸刃の剣?
日銀が市場の株を購入することで、株価が高くなる可能性が高いです。
株価が高くなると、株を保有している投資家にとっては良いこと尽くしですね。
ただ、視点を変えると、日銀の市場介入は株式市場のアンバランスを生み出しかねません。
まず、日銀が投資に使用する金額は非常に高いです。
購入直後は株価が上昇しますが、その後は大きな変動が少なくなります。
日銀が多く株を持っているせいで、他の投資家が売買してもそこまで金額に変動が生じないからです。
株価に変動が生じないと、これから投資をしようとしている人たちや、
持株会に参加している社員の人たちへの恩恵が少なくなります。
本来、株式市場の価格決定の仕組みは「需要」と「供給」に基づくものです。
売りたい人、買いたい人がいれば価格は変動するものと考えます。
ただ、日銀の集中投資によって、市中に出回る株の数量が少なくなり、取引額も少額になってきます。
株価の安定を図ることはできますが、株式投資で儲けようとしている人にとっては都合の悪いものとなってしまいます。
ただ、これを受けて日銀が保有している株式を一気に売却してしまっても、
市場の急下落を招くことになり、市場の混乱につながってしまいます。
日銀はETFを選択した時点でジレンマに陥っているのです。
日銀の意向次第で、日本の株式市場が動いてしまっては、市場は日銀の言いなりになってしまいます。
このような事態がすでに現実のものになりつつあることを私たちは認識しておかねばなりません。
(目次に戻る)
業績の悪い企業の株価が下がらない?
日銀はETFによって企業の株を購入しています。
ETFのポートフォリオに含まれる銘柄は、あくまでも「リスク分散」が目的となるため、
業績の良し悪しはそこまで考慮されません。
この結果、日銀のポートフォリオに含まれさえすれば、業績が悪い企業でも株価が下がらない現象が生じてきます。
本来、業績が落ちれば株価も下落するという関係があります。
しかし、日銀の市場介入によって、価格決定のメカニズムも歪められてしまっているのです。
日銀が市場の株購入を増やす前は、海外投資家や機関投資家が日本企業株に巨額の投資を行っていました。
この海外投資家、機関投資家たちは現在、日本企業の売却に動いています。
なぜ売りに出しているかというと、日本企業の株を売却しても「日本銀行」という最大の顧客が株を購入してくれるからです。
日銀の投資額は、海外投資家、機関投資家たちの売却を上回っています。
日本株が売られても、日銀がそれらを買い取って、日本企業の株の下支えを行っているのです。
この日銀の手法に関しては、賛否両論の意見がありますが、少なくとも日銀のETF投資によって、株価は一定の水準を保っています。
日銀の量的金融緩和によって、現在の株式市場の盛り上がりが形成されたと思い込んでいる人は多いです。
しかし、市場が落ち込まないカラクリは、日銀のETFによるものと言えます。
ETFは国債や社債と異なり、保有期間に期限がありません。
購入したETFを今後どのように売却していくのか、日銀の手腕が問われるところです。
(目次に戻る)
まとめ
日銀はETFという形式で日本の企業に投資を行っています。
日銀が筆頭株主である企業も多く存在しており、今や日銀が市場の行く末を決めていると言っても過言ではありません。
日銀の動向次第で、株価が反応してしまうのは、市場本来の役割から考えるとあまり望ましいものではありません。
ただ、日銀のETFがあるおかげで、市場の株価が下支えされている面もあります。
新しいフェーズに突入しつつある日本市場、これから注意して見ていかねばなりませんね。
以上、日本最大の大株主・中央銀行はどの株を保有しているのか?日銀筆頭株主の銘柄を紹介!…でした。