2020年4月30日時点。
株価は依然として回復しており、新型コロナウィルス感染拡大初期の暴落から、すでに半値以上が回復しています。
以下のコンテンツでは、今後、二番底が到来する可能性を現実的なシナリオを含めてお伝えしています。
「コロナショックで株価が暴落したところで株を拾いたい、投資を始めてみたい。」
「でも、実体経済は相当冷え込んでいるし、反対に株価が上昇している現状が怖い。」
このような方も、大勢いるのではないでしょうか?
そこで、「投資をしたいけど、また暴落が怖くて投資に踏み出せない」という方におすすめなのが、「株ETF」と「債券ETF」を組み合わせることです。
https://twitter.com/nobutaro_mane/status/1254702430429691906
上記のツイートでは株ETFと債券ETFを組み合わせる有効性について説明しています。
リプライ含めて、反響が大きかったので詳しく記事で説明していきます。
◾️今回のポイント:
▷ 資産運用を行う時には、個別銘柄の選定ではなく資産配分をまず考るべき
- 今後の株価(コロナショック脱出)に強気の考えであれば、株式100%投資も否定しない。
- ただ、同じ資産クラス(株式100% or 株+株に相関する資産など)は程度はあれど同様の動きをする。
- 株式ばかり保有すると、株価暴落時に全ての投資資産が減少する恐れがある。
- 「債券+株」のように、逆相関の資産を組み合わせると「リスクリターン」が安定する。
- 債券+株を組み合わせると、互いを補完して資産が上昇していく。
▷ 今後も株と債券の組み合わせは有効なのかの検証
- 大前提として、未来はわからない。
- 過去のデータから今後の資産価値の上下動は推察する必要がある。
- リーマンショック時期を含め40年以上「株+債券」はしっかり補完しあった過去がある。
- 今回のコロナショックも「株+債券」は補完しあった(株、債券共に下落する局面も有り)。
- 株、債券共に下落は、一時的な要因であり即解消。
- 4月30日時点では、債券利回りが低く、債券価格が再度株式暴落時に上昇するか懸念される。
- 金利がゼロ金利近くなった世界恐慌時も、「株+債券」の組み合わせの有効性は確認できる。
▷ ポートフォリオの組み方
- Backtest Portfolioを用いて自分で資産と比率を調整して最適なポートフォリオをみつける
- 今後のさらなる暴落を見込むのであれば「金(Gold)」を組入るのが有効となる
- 今は現金として待機させておくのも一つの方法
- 為替水準に不満があるが投資をしたい場合は、FXを活用してヘッジするのが有効
目次
Contents
資産運用ポートフォリオを組む時に第一段階で考えるべきは資産配分
普段からツイッターのタイムラインを眺めていると、株ETFに対する分析ばかり目につきます。
しかし、まず第一段階で投資家が考えないといけないのは、投資する資産の配分(ポートフォリオ)を決めることなのです。
同じ資産クラスの動きは基本的に連動する
たしかに、インデックス投資は安定したリターンを叩き出すのに有効な戦略であることに間違いありません。
ただ、多少の違いはあれど資産クラスが株である限りにおいて基本的には同様の動きをします。
以下は話題に上りやすい、「VTI」「VOO」「SPYD」「QQQ」の5年チャートを比較したものです。
- 2015年から2018年末は基本的に堅調。
- 2018年末は大幅に下落して2019年は堅調。
- 2020年に入りコロナショックで大幅下落。
大小はあれど基本的に同じ動きをするので、どの株ETFを選ぶのかというのは第二段階として考えるべきことです。
資産配分を考える重要性
冒頭に挙げたツイートでもお伝えしている通り株式と逆相関度が高い代表例として債券があります。
例えば代表的な長期債券指数に連動するTLTを組み合わせた場合のポートフォリオのリターンを考えてみましょう。
以下はVTIとTLTとVTI(50%)+TLT(50%)を組み合わせたポートフォリオです。
青:VTI 100%
赤:VTI 50% + TLT 50%
黄:TLT 100%
それぞれのリスクリターンは以下の通りとなります。
リターン | リスク | |
VTI 100% | 8.87% | 14.39% |
VTI 50% + TLT50% | 9.26% | 8.06% |
TLT 100% | 7.41% | 13.17% |
リターンというのは過去のリターンの平均なのでわかりやすくかと思います。
一方のリスクというのは下落する可能性ではありません。
例えば平均リターンが10%でリスクが10%の場合、1年間後のリターンは確率毎に以下の通りとなります。
◾️リターン10%リスク10%の意味の1年後のリターン:
- 平均リターン10%から▲1σ(=▲10%) 〜 +1σ(=+10%)ブレる可能性が68%
- 平均リターン10%から▲2σ(=▲20%) 〜 +2σ(=+20%)ブレる可能性が95%
- 平均リターン10%から▲3σ(=▲30%) 〜 +3σ(=+30%)ブレる可能性が99.7%
もう一度、先ほどのリスクリターンに戻っていきましょう。
リターン | リスク | |
VTI 100% | 8.87% | 14.39% |
VTI 50% + TLT50% | 9.26% | 8.06% |
TLT 100% | 7.41% | 13.17% |
◾️各リスクリターン:
[約68%で収まるリターン]
VTI:
8.87-14.39(=▲5.52%) 〜 8.87+14.39(=+23.26%)
VTI50%+TLT50%:
9.26-8.06(=+1.2%) 〜 9.26+8.06(=+17.32%)
TLT100%:
7.41-13.17(=▲5.76%) 〜 7.41+13.17(=+20.58%)
[約95%で収まるリターン]
VTI:
8.87-14.39×2(=▲19.91%) 〜 8.87+14.39×2(=+37.65%)
VTI50%+TLT50%:
9.26-8.06×2(=▲6.86%) 〜 9.26+8.06×2(=+25.38%)
TLT100%:
7.41-13.17×2(=▲18.93%) 〜 7.41+13.17×2(=+33.75%)
[約99.7%で収まるリターン]
VTI:
8.87-14.39×3(=▲34.30%) 〜 8.87+14.39×3(=+52.04%)
VTI50%+TLT50%:
9.26-8.06×3(=▲14.92%) 〜 9.26+8.06×3(=+33.44%)
TLT100%:
7.41-13.17×3(=▲32.10%) 〜 7.41+13.17×3(=+46.92%)
また、実際の年間ベースで最も上昇した時と、最も下落した時のリターンは以下となります。
最大 | 最小 | Max Drawdown | |
VTI 100% | 33.45% | ▲36.98% | ▲50.84% 2007/11-2009/2 |
VTI 50% + TLT50% | 22.40% | ▲3.41% | ▲17.89% 2007/12-2009/2 |
TLT 100% | 33.96% | ▲21.80%% | ▲21.80% 2009/1-2011/9 |
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株と債券を組み合わせたポートフォリオが安定する理由
株と債券が逆相関の関係であることがポイント
株と債券を組み合わせたポートフォリオのリターンを組み合わせた時にリターンが安定するのは両者の逆相関性にあります。
【リーマンショック期:2007年-2009年】
リーマンショック期の2007年-2009年のTLT(赤)とVTI(青)のリターンは以下となります。
株ETFであるVTIの下落と反対に、債券ETFであるTLTは上昇しています。
【チャイナショック期:2014年-2016年】
リーマンショック期の20014年-2016年のTLT(赤)とVTI(青)のリターンは以下となります。
リーマンショックの時ほど顕著ではないですが、両者が局面毎に逆相関しながら最終的に同じリターンになっています。
株ETFであるVTIの下落と反対に、債券ETFであるTLTは上昇しています。
【コロナショック期:2019年-2020年】
直近のコロナショック期でも見事に逆相関が働いています。
株と債券が逆相関する理由
株は好況期に企業が利益を伸ばすに従って株価を上昇させていきます。
しかし、一旦不況期になると株価は下落します。
下落する株を売却し現金にするのもよいのですが現金で持っている限り資産は増えません。
今後も株と債券を組み合わせたポートフォリオは安定なのか?
先ほど淀姫が疑問を呈した通り、FRBの利下げで国債利回りは下落しています。
翌日物の政策金利は0-0.25%となっています。
基本的には信用リスクを加味するため長期債の方が利回りが高いのですが、長期債でも1%程度となっています。
つまり、国債を保有するインセンティブが下落していることになりますね。
では株と債券の組み合わせは今後も有効なのでしょうか?
未来の投資成果に確実なことは言えませんので結論づけることはできませんが考察していきたいと思います。
過去48年間のデータでは株と債券の組み合わせは有効だった
ただ過去1972年からの実績をみると株と債券を組み合わせたリターンは安定して上昇しています。
青:米国株
赤:米国株50%+長期債券50%
黄:長期債券100%
1978年〜 | リターン | リスク |
米株 100% | 10.91% | 15.30% |
米株 50% + 長期債50% | 10.52% | 9.59% |
長期債 100% | 8.87% | 11.13% |
米国債金利が低い世界大恐慌時代も債券を組み合わせるのは有効だった
以下は1800年からの米国の過去の長期債の推移です。
世界大恐慌時代には現在と同水準の長期債利回りが15年ほど継続しました。
ちなみに上記の金利チャートでは現在の長期債利回りは現れていませんがFRBのよると超長期金利の推移は以下となっています。
1%台前半という低い金利で落ち着いています。
以下は日経新聞が発表した世界恐慌時の米国株(濃青)と米国債(薄青)と両者を50%ずつ分散した場合のデータです。
当時、株式単体だと大暴落前の1929年の最高値を更新するのに15年5ヶ月を要しています。
しかし、株と債券の分散だと6年2ヶ月で元本を回復しています。
債券の比率をさらに高めていた場合、もっと早期に回復することができたでしょう。
では、今回の詳細な値動きを見てみましょう。
今回のコロナショックでも危機的な局面もあった
今回のコロナショックの株と債券と合成ポートフォリオの値動きは以下となります。
3月中旬に株、債券だけでなく金も含めて全ての資産が下落しました。
原因は企業の資金難に伴うドル枯渇によるドル需要が急騰したことによります。
3月9日に付けた直近の安値からは6%強と急上昇している。2月下旬から3月初めは米金利の低下を受け、ドルは下落していたが、先週以降一転して上昇を強めた。
コマーシャルペーパー(CP、短期社債)市場で企業が資金を調達しづらくなっているのが背景だ。新型コロナウイルスの大流行で企業業績への悪影響が懸念されている。投資家も現金志向を強めており、CPは売られやすい状況だ。銀行間金利にも金利上昇は波及している。
結果としてドル円も101円台から111円台までドル高が進行しました。
今回もドル需給が逼迫してわずか1週間でFRBは迅速な資金供給を発表しマーケットに安定を取り戻しました。
【ワシントン=河浪武史】米連邦準備理事会(FRB)は23日、臨時の米連邦公開市場委員会(FOMC)を開き、米国債や住宅ローン担保証券(MBS)の買い入れ量を当面無制限とする緊急措置を決めた。これまでは計7000億ドル(約77兆円)を目安としていたが、「必要量」に切り替える。消費者や中小企業の資金繰りを支援する新たな措置も発動し、ドル資金の目詰まり解消を急ぐ。
<中略>
短期市場では銀行間取引でドル資金が逼迫しており、大量の資金供給で金利上昇や流動性の不安を和らげる必要に迫られている。FRBは同日、消費者ローンや中小企業向け融資を担保とした資産担保証券(ABS)を買い入れる新たな緊急措置も決めた。
一時的な動きにとどまる可能性が高いとは思いますが、株、債券とも売られる局面もあることは理解しておきましょう。
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自分にとって最適な資産配分を探求し続けよう!
ポートフォリオのリターンを調べる便利なツール
先ほどから筆者がポートフォリオのリターンを調べるツールとして用いているのが「Backtest Portfolio」というツールです。
「Backtest Portfolio」には二つの使用方法があります。(対象は米国個別株と米国ETFです)
【実際存在する個別銘柄やETFで組成】
Backtest Portfolio Asset Allocation
Asset Classに個別銘柄やETFのTickerを入れます。
Portfolio1〜Portfolio3についてはそれぞれの組入ポーションを入力します。
以下の図だと、各ポートフォリオはこうなります。
- Portfolio1→VTI 100%
- Portfolio2→VTI 50% + TLT 50%
- Portfolio3→TLT 100%
下に行き「Analyze Portfolio」をクリックすると下にレポートが出力されます。
【実際存在する個別銘柄やETFで組成】
Backtest Portfolio Asset Classes Allocation
画面はほぼ一緒ですが、Asset Classが実際の銘柄ではなく、株や債券といった資産クラスとなっています。
一言に株といっても「大型株・中型株・小型株」と「バリュー株・グロース株」で掛け合わせて米国株全体と合わせて7個用意されています。
また、債券といっても社債、長期債、10年債券、短期債、更に金や原油などのコモディティも用意されています。
「Analyze Portfolio」をクリックすると、以下のデータが出力されます。
特徴的なのはAsset Class Allocationの場合は1978年からの42年間のデータを確認することができます。
ポートフォリオの例.1:株と債券の比率を調整する
まずはポートフォリオの例として株と債券のポーションを調整するという方法があります。
以下は株と債券の組み合わせ比率毎にまとめたポートフォリオの推移です。
- Portfolio1:米国株70%+長期債券30%
- Portfolio2:米国株50%+長期債券50%
- Portfolio3:米国株30%+長期債券70%
Portfolio | Initial Balance 初期投資額 | Final Balance 最終金額 | CAGR 年率リターン | Stdev 標準偏差 | Best Year 年率最高 | Worst Year 年率最低 |
---|---|---|---|---|---|---|
Portfolio 1 | $10,000 | $772,464 | 10.84% | 11.28% | 34.08% | -19.17% |
Portfolio 2 | $10,000 | $683,516 | 10.52% | 9.59% | 34.08% | -7.26% |
Portfolio 3 | $10,000 | $560,616 | 10.00% | 9.16% | 39.12% | -4.98% |
当然株のポーションが大きい方が年率リターンは上昇しますが、リスクも比例して大きくなっています。
ポートフォリオの例.2:オールシーズンズポートフォリオ
ヘッジファンドの帝王として君臨している「レイ・ダリオ」氏。
彼はどんな時でも一定のリターンを出すポートフォリオとしてオールシーズンズポートフォリオを提案しています。
◾️オールシーズンズポートフォリオ:
理由は後で説明しますが筆者は金のポーションを高めて以下のポーションで保有しています。
◾️オールシーズンズポートフォリオ:
以下は各ポートフォリオのリターンをチャートで描いたものです。
- Portfolio1:株100%
- Portfolio2:株50%+債券50%
- Portfolio3:オールシーズンズ(金15%)
Portfolio | CAGR 年率リターン | Stdev 標準偏差 | Best Year | Worst Year |
---|---|---|---|---|
株100% | 10.91% | 15.30% | 35.79% | -37.04% |
株50%+債券50% | 10.52% | 9.59% | 34.08% | -7.26% |
オールシーズンズ | 9.48% | 7.93% | 31.90% | -4.46% |
実際筆者が組んでいるオールシーズンズポートフォリオを毎日プロットした時のリターンは以下の通りとなっています。
オールシーズンズポートフォリオのように金を組み入れる意味
ワシは金をやはり組み入れた方がよいと考えています。
金はやはり安全資産としての価値をもちます。
以下は金価格をダウ平均株価で割った「Dow Gold Ratio」です。
上記をご覧いただきたいのですが、世界恐慌に陥った1929年から1930年代前半とリーマンショック期に大きく下落しています。
つまりダウ平均株価が下落して金価格が上昇したことを意味します。
以下はリーマンショック時以降の株(青)と金(赤)価格の推移です。
株価が沈む中で急騰していることがわかります。
世界恐慌の時はより顕著であったことが伺えます。
現金も一つの投資ポートフォリオの構成要素
当然、現金というのも一つの資産ポートフォリオの構成要素です。
「待つも相場」ということで、現在の筆者の投資ポートフォリオで一番のポーションを占めるのは現金で60%です。
筆者はFXは殆ど行わないのですが、為替ヘッジの役割として使用することがあります。
例えば3万USD分(約300万円分)の投資をしたいけど、今後円高になることを想定しており現在のレートでドル転したくない場合があったとします。
この場合、FXで3万USD分のドル円の売を入れることで為替ヘッジを行うことができます。
円高が進行すると、ドル建では利益がでても円建では損失が発生することになります。
しかし、FXでドル円のショートをいれておくことで最終的な損益をヘッジすることができます。
3万ドル分の為替ヘッジを行うために約300万円の資金が必要なわけではありません。
10倍のレバレッジをかければ約30万円で、5倍のレバレッジをかければ約60万円で為替ヘッジをかけることができます。
資金効率を高めることができるのもFXのメリットですね!
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まとめ
◾️今回のポイント:
▷ 資産運用を行う時には、個別銘柄の選定ではなく資産配分をまず考るべき
- 今後の株価(コロナショック脱出)に強気の考えであれば、株式100%投資も否定しない。
- ただ、同じ資産クラス(株式100% or 株+株に相関する資産など)は程度はあれど同様の動きをする。
- 株式ばかり保有すると、株価暴落時に全ての投資資産が減少する恐れがある。
- 「債券+株」のように、逆相関の資産を組み合わせると「リスクリターン」が安定する。
- 債券+株を組み合わせると、互いを補完して資産が上昇していく。
▷ 今後も株と債券の組み合わせは有効なのかの検証
- 大前提として、未来はわからない。
- 過去のデータから今後の資産価値の上下動は推察する必要がある。
- リーマンショック時期を含め40年以上「株+債券」はしっかり補完しあった過去がある。
- 今回のコロナショックも「株+債券」は補完しあった(株、債券共に下落する局面も有り)。
- 株、債券共に下落は、一時的な要因であり即解消。
- 4月30日時点では、債券利回りが低く、債券価格が再度株式暴落時に上昇するか懸念される。
- 金利がゼロ金利近くなった世界恐慌時も、「株+債券」の組み合わせの有効性は確認できる。
▷ ポートフォリオの組み方
- Backtest Portfolioを用いて自分で資産と比率を調整して最適なポートフォリオをみつける
- 今後のさらなる暴落を見込むのであれば「金(Gold)」を組入るのが有効となる
- 今は現金として待機させておくのも一つの方法
- 為替水準に不満があるが投資をしたい場合は、FXを活用してヘッジするのが有効
以上、【資産分散】「株式ETF」と「債券ETF」を組み合わせる有効性と今後についてデータを用いて検証!最適なポートフォリオを探し続けよう。…でした。