永濱利廣氏は、第一生命経済研究所の首席エコノミストであり以下の重責も担われています。
◼︎ 要職:
- 内閣府経済財政諮問会議政策コメンテーター
- 総務省消費統計研究会委員
- 景気循環学会理事
◼︎ 保有資格:
- 国際公認投資アナリスト
- 証券アナリスト
永濱利廣氏は此の度、現役実業家・投資家による『お金の学校』として躍進しているGlobal Financial School(以下GFS)の講師に就任しました。
本日は永濱利廣氏の著書『知識ゼロからの経済指標』から景気先行、景気一致、景気遅行指標についてお伝えしていきたいと思います。
目次
Contents
景気の動向に先行する景気先行指標
まずは景気が上昇するまえに上向き、景気が悪化する前に悪化する景気先行指数についてお伝えしていきたいと思います。
本書『知識ゼロからの経済指標』の中から代表的な景気先行指標を三つ紹介していきます。
東証株価指数(TOPIX)
実は意外と知られていませんが、株価は景気先行指数の一種類です。
思い返してみてほしいのですがリーマンショックのような衝撃的な事件でもない限り、景気が悪化する前に株価が先に下落します。
TOPIXの過去推移をみると日本の景気を見事に表しています。
景気の温度計としてもTOPIXは有用な指標なのです。
日経平均株価は金融や機械、通信といった、もともと株価が高い企業の株価変動が必要異常に反映される傾向もあるので、東証一部の全銘柄の加重平均でもTOPIXの方が適切となるのです。
長短金利差
次の長短金利差ですが、まず金利について説明する必要があります。
世界の中央銀行はインフレを調整するために、インフレが高くなれば金利を上げて消費を抑制しインフレを抑えます。
また反対に消費が弱くなり、インフレが弱くなった時に金利を引き下げ需要を喚起にインフレを引き起こします。
中央銀行が調整するのは翌日物の短期金利ですが、長期金利は将来の短期金利やインフレ率、投資の収益性の期待によって決まります。
つまり、今後の景気が上向くのであれば、インフレ期待が高まり将来の短期金利は上昇するとみこまれます。
投資の収益性も高くなるので調達金利も高くなります。
つまり、長期金利は景気が上向くと人々が思うのであれば上昇し、逆に景気が下向くと人々が思うのであれば下落します。
一方の短期金利は実際に景気が上昇、下落してから金融当局が調整します。
ちなみに直近では米国で5年債よりも2年債の金利が高くなっていることが注目され、景気後退局面入りするのではないかとの話が話題になっています。
中小企業売上げ見通しDI
中小企業売上見通しDIは日本政策金融公庫が発表している中小企業景況調査の一つですい。
首都圏、中京圏、近畿圏の三代都市圏の日本政策金融公庫とと引きのある900社を対象に毎月末に公表されています。
大企業は景気の動向に応じて中小企業への発注量を調整するため、中小企業は景気動向に敏感であるため中小企業景気見通しDIが景気先行指数に選ばれています。
以下は中小企業売上見通しDIの推移ですがほとんどのケースで実際の不況(帯)に対して先行して下落しています。
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景気の動きと一致する景気一致指数
では、次に景気の動きと同じ動きをする景気一致指数についてみてきたいと思います。
営業利益
営業利益は株価の動向を見る上でも重要な指標です。
売上高から原材料費を差し引いた売上総利益から販売費・一般管理費を差し引いた利益です。
本業からの利益を見る指標として重宝されています。
営業利益は景気の実態を表す指標としても用いられており、財務省の財務総合研究所が発表する法人企業統計調査で四半期毎に発表されます。
有効求人倍率(学卒除く)
日本において景気が悪化した時に最終段階として解雇を行います。
つまり失業率は景気に遅れて反応する遅行指数です。
しかし、雇用に関しては厚生労働省によって発表される有効求人倍率が景気に連動する指数として注目されています。
ちなみに日本ではアベノミクス以来の好況と、少子高齢化によって常に求人が求職者数を大きく上回っています。
大口電力使用料
大口電力使用量は契約電力が5000キロワット以上の工場などで産業用の電力のことを指します。
特に工業生産を行う企業では電力の使用は必須なので、電力の稼働具合をみることで今景気が活発かどうかを見ることができるのです。
また仮に景気が悪くなければ工場の稼働時間が少なくなり使用電力量も自ずと少なくなります。
『Electrical Japan』では各業種毎の電力使用料の推移を確認することができます。
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景気の動きに遅行する景気遅行指数
今まで景気に先駆けて動く景気先行指数と景気と同じく動く景気一致指数を説明してきました。
最後に景気に対して遅行する景気遅行指数をお伝えしていきたいと思います。
家計消費支出
家計消費支出とは国民がどれだけのお金を使っているかという指標です。
景気が上昇しても、その後賃金の増加、消費の増加という順番をたどるため景気の遅行指数となっています。
以下は日本の消費支出の変化ですが非常に緩やかで、大きく景気動向に遅れていることが分かりますね。
常用雇用指数
常用雇用指数は厚生労働省が『毎月勤労統計調査』の中の項目で以下の要件を満たした雇用者の推移となっています。
以下のいずれかを満たした者の増減をみます。
- 期間を定めずに、又は1ヶ月を超える期間を定めて雇われている
- 日々又は1ヶ月以内の期間を定めて雇われている者のうち、調査期間の前2ヶ月にそれぞれ18日以上雇い入れられた者
法人税収入
法人税は企業が得た利益に対して課される税金です。
法人税は決算から所得額を算出し、税率を掛けて税額を計算したあと、各種控除を行い、法人税額を確定させるというプロセスを踏みます。
そのため、納税期限は決算から、大体2ヶ月後となっているので景気の遅行指数という扱いになっています。
以下は法人税の過去30年の推移ですが、アベノミクスから徐々に回復しているのがわかりますね。
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まとめ
景気指数には景気に先行して動く指数、連動する指数、遅行する指数の三つの種類が存在します。
景気先行指数を利用することで相場上昇初期の局面で投資を行うこともできます。
遅行指数を利用することで利益確定の時期を探ることができます。
景気指標は公的機関により発表されいているので積極的に活用していきましょう。
永濱利廣氏は新しくGFSの講師に就任した知識・キャリアもある方で、現状GFSでは日本の財政について講義しています。
他コンテンツでも、永濱氏をはじめとした講師陣の講義を40年間にわたって受け続けることができるGFSについて詳しくまとめていますので、ご覧いただければと思います。
以上、GFS講師陣に加わった『永濱利廣氏』の著書『知識ゼロからの経済指標』から景気指標を紐解く!…でした。