■ ITバブルの流れ:
- 1990年代後半、世界は不景気の真っ只中であり、世界では過剰に流動性選好(現金、都心不動産、大企業株、国債、銀行預金、中古車への資金集中)が高まっていた。
- 米国では、経済成長の核となっていたゼネラル・モーターズ(GM)、ゼネラル・エレクトリック(GE)を始めとした自動車産業・家電産業の業績が軒並み落ち込み、産業構造の転換が求められた時代でもあった。
- マイクロソフトのWindows95の影響もあり、急速にIT技術が社会に広まり、インターネットは物質・情報・商品の主に「流通」に革命を起こした。
- ビルゲイツは大富豪になり、野心を持つ若い起業家が次々にITベンチャーを立ち上げ、市場は盛り上がり、「ドットコム会社」と呼ばれるIT関連ベンチャーの株式銘柄は1999年から足かけ2年間にわたって株価が高騰。
目次
日本でもITバブルは勃発
ITバブル当時のソフトバンクの株価は天を突き抜けるかのごとく上昇しました。
※2019年3月現在の国内時価総額ランキング
順位 | 証券コード | 銘柄名 | 時価総額(円) |
1 | 7203 | トヨタ | 21,473,786,494,852 |
2 | 9984 | SBG | 11,457,874,399,650 |
3 | 9432 | NTT | 9,266,324,126,970 |
4 | 9437 | NTTドコモ | 8,464,816,516,572 |
5 | 6861 | キーエンス | 8,129,216,837,700 |
6 | 8306 | 三菱UFJ | 7,659,418,599,408 |
7 | 4502 | 武田 | 7,142,682,400,112 |
8 | 9433 | KDDI | 6,723,737,803,698 |
9 | 6758 | ソニー | 6,572,861,760,024 |
10 | 9434 | SB | 6,307,063,761,475 |
(引用:日経新聞「時価総額上位ランキング」)
他IT企業も株価が上昇しましたが、その中でも圧倒的に株価が暴騰したIT関連企業銘柄が存在します。
それが「光通信」です。
光通信の株価は勢いよく急騰し、会社は60億円の黒字見通しという決して高くない水準にも関わらず、光通信社長の重田さんは世界5位の富豪にForbsでランクイン。
その後、光通信は、20営業日連続ストップ安を記録し、株価は最高値の67分の1まで下落しました。
順位 | 氏名 | 企業名/ブランド名/業種 | 資産額(億円) | 年齢 | 前回順位 | 結婚 | 子供 | 出身大学 | 出身地 |
1 | 孫正義 | ソフトバンク | 2兆2930 | 60 | 1 | 既婚 | 2 | カリフォルニア大学バークレー校 | 佐賀県 |
2 | 柳井正 | ファーストリテイリング | 2兆210 | 69 | 2 | 既婚 | 2 | 早稲田大学 | 山口県 |
3 | 佐治信忠 | サントリーホールディングス | 1兆8850 | 72 | 3 | 既婚 | 慶應義塾大学 | 兵庫県 | |
4 | 滝崎武光 | キーエンス | 1兆8430 | 72 | 4 | 既婚 | (兵庫県立尼崎工業高等学校) | 兵庫県 | |
5 | 森章 | 森トラスト | 6910 | 81 | 7 | 既婚 | 3 | 慶應義塾大学 | 東京都 |
6 | 永守重信 | 日本電産 | 5760 | 73 | 12 | 既婚 | 2 | 職業能力開発総合大学校 | 京都府 |
7 | 三木谷浩史 | 楽天 | 5660 | 53 | 5 | 既婚 | 2 | ハーバード大学(MBA) | 兵庫県 |
8 | 高原慶一朗 | ユニ・チャーム | 5450 | 87 | 6 | 既婚 | 3 | 大阪市立大学 | 愛知県 |
9 | 似鳥昭雄 | ニトリ | 5030 | 74 | 13 | 既婚 | 北海学園大学 | 北海道 | |
10 | 毒島秀行 | SANKYO(パチンコ) | 4820 | 65 | 8 | 慶應義塾大学 | 群馬県 | ||
11 | 重田康光 | 光通信 | 4500 | 53 | 15 | 既婚 | 3 | 日本大学(中退) | 東京都 |
12 | 小林一俊・孝雄・正典 | 株式会社コーセー | 4290 | 19 | 慶應義塾大学 | 東京都 | |||
13 | 三木正浩 | ABCマート | 4190 | 62 | 10 | 既婚 | 東邦学園短期大学 | 三重県 | |
14 | 伊藤雅俊 | セブン&アイ・ホールディングス | 4080 | 70 | 9 | 既婚 | 3 | 横浜市立経済専門学校 | 東京都 |
15 | 大塚実・裕司 | 大塚商会 | 3560 | 95・64 | 20 | 中央大学(実)・立教大学(裕司) | 栃木県 |
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ITバブルがついに崩壊
バブル崩壊の始まり
当時の米国の状況として、株価高騰、パソコン機器の普及の鈍り、倒産して星となった数々のITベンチャーに関するニュースが相次いだためです。毎日のように報道されるようになっていたのです。
パソコン普及のブームに乗り、製造業としてパソコン機器メーカーを設立し、工場など大型投資を実行していた企業も多数ありましたが、パソコンはそこまで修理をする必要がない製品であり、普及が鈍ると企業の収益は悪化していきます。
結果的に、修理・メンテナンスの利益があまり取れないビジネスとなってしまい、倒産が相次ぎました。
National Association of Securities Dealers Automated Quotationsの略称。米国で店頭銘柄の気配値を表示し通知するシステムとしてスタートした後、立会場をもたない証券取引所へと成長。このシステムによって取引される株式市場そのものもNASDAQ(ナスダック)と呼ぶ。NASD(全米証券業協会)が運営しており、ハイテク企業を中心に上場企業数は約3000社、時価総額は世界の取引所のうちニューヨーク証券取引所(NYSE)に次いで二番目に大きい。
(引用:野村證券用語解説集「NASDAQ」)
2001年には、10年ぶりのIT機器とソフトウェアへの企業投資は減少となりました。
アメリカの消費文化
米国と言えば、人口3億人を擁する世界一の経済大国であり、個人消費がGDPの7割弱を占める消費大国であることは有名な話です。
バブルのような経済が熱気に包まれるような状況から冷めていく段階で、最も冷え込むものが個人消費です。
まさにITバブルが急速に崩壊していったのは、株価が下がり、その不安から個人消費が落ち込んだことも要因としてあります。
ITバブルに乗り、キャピタルゲインを手にし、消費行動に走っていたというのが当時の米国民の行動ですが、バブル当時、アメリカの家計資産の54%超が株式関連に投資されていたというデータもあります。
株価が下がり、消費も落ちれば企業業績は下降しますので、企業のLay-off(解雇)は止められません。
結果的に、2000年から2002年の末にかけ、アメリカの主に製造業の労働者の人員削減がなされました。
※米国失業率推移(Unemployment rate)
1998 | 1999 | 2000 | 2001 | 2002 | 2003 | 2004 | 2005 |
4.5% | 4.217% | 3.967% | 4.742% | 5.783% | 5.992% | 5.542% | 5.083% |
※米国GDP成長率推移(Gross domestic product, constant prices)
1995 | 1996 | 1997 | 1998 | 1999 | 2000 | 2001 | 2002 | 2003 | 2004 | 2005 |
2.72% | 3.80% | 4.49% | 4.45% | 4.69% | 4.09% | 0.98% | 1.79% | 2.81% | 3.79% | 3.35% |
(引用:IMF「Gross domestic product, constant prices」)
バブルは崩壊したものの、現代の私たちの生活を見ても、IT技術を導入しない企業はほとんど存在せず、IT産業は成長を続け、私たちも生活はグッと便利になりました。
◼︎ここまでの要点!!
- ITベンチャーの創業が相次ぎ、株価は上昇を続けたものの、2000年にはITバブルに徐々に陰りが見え始めた。
- 株価の過剰高騰、PC機器の普及の鈍りと打ち止め、ITベンチャーの倒産のニュースが相次ぐ。
- 2000年を境に米国GDPは下降し失業率が上昇、国民の消費、投資控えが始まる。
- ITバブルとは、冷静に状況を紐解くと、実態は革命に浮かれた起業家・投資家と国民が浮かれていただけであった。
- つまり、ITバブル崩壊とは、米国経済が夢から目覚め、平常運転に戻ったことをいう。
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まとめ
以上、IT(ドットコム)バブル勃発!その時日本は?ソフトバンクの大躍進と光通信の栄光、そして崩壊へ。原因は?…の話題でした。