「PO」、または「IPO」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
投資を続けていればPO、IPOという言葉を見聞きする機会が増えてきます。
「PO」と「IPO」は言葉の通り似ている部分もありますが、違う点も多々あります。
POの特徴について理解しておくことは、投資を続けていくならとても重要です。
■ 今回のポイント:
- POは大量に株式を売り出す際に利用される
- POには公募(増資)と売出の2種類がある
- IPOは未上場企業、POは既上場企業が実施する
- POは株式の希薄化が発生することもあり、既存株主にとってマイナスの要因となる場合が多い
目次
Contents
POとは?
「PO」とは「Public Offering」の頭文字を取った略語で日本語では「公募・売出」と呼ばれます。
公募は新たに株式を発行することを意味し、売出は発行済みの株式を売りに出すことを意味します。
「公募」と「売出」では意味が異なりますので注意してください。
「PO」=公募増資と考えている方も多くいますが、公募増資はPOの中の1つの方法でしかありません。
「公募」と「売出」のどちらも不特定多数の投資家に対して株式を取得させるという点では同じです。
「公募」の場合は企業が資金調達のために行います。
これに対し、「売出」の場合は企業ではなく大株主が資金確保のために、保有株式を売りに出すことが一般的です。
「PO」は市場外で株式の受け渡しを行います。
なぜ上場企業なのに株式市場で売却しないのでしょうか?
「PO」は一度に大量の株式が売りに出されます。
そのため、市場で売却してしまうと、大量の売り注文により株価が大幅に下落してしまいます。
株価に多大な悪影響を与えずに、市場では消化しきれない大量の株式を売却する方法としてPOが利用されるのです。
このように通常の株取引とPOは全く異なります。
「PO」は事前にPOを実施するという発表があります。
POの内容を確認し、株式を取得したい場合、「ブックビルディング」と呼ばれる「需要申告」に参加が必要です。
「ブックビルディング」とは、POを実施する前にどの程度の需要があるのか調べるために行うものです。
ブックビルディングにより株式購入希望者がどの程度いるのかといったことや、購入希望条件などを確認します。
ブックビルディングの状況を踏まえ、POの売出価格が決定され、売出価格に納得すれば購入申し込みへと移ります。
購入申し込みを行ったからといって必ず株式が取得できるわけではありません。
POで売りに出される株式数は決定しています。
売りに出される株式数を上回る購入申し込みがあれば抽選が実施され、当選者のみが株式を取得することができます。
購入申し込み = 株式取得、ではない点に注意が必要です。
このようにPOの場合、株式取得の希望を示してから数段階の手順を踏む必要があります。
時間を要する点が通常の株取引とは大きく異なります。
POはどの企業も行う可能性があります。
保有株や購入を検討している株があれば定期的に企業が発表する情報を確認するようにしましょう。
(目次に戻る)
「公募」と「売出」の違い
POが発表された場合、まず確認すべきなのは「公募」なのか「売出」なのか、です。
公募と売出の最も大きな違いは、「発行株式が増えるのかどうか」ということにあります。
公募の場合は、株式を新たに発行しますので総株式数が増加します。
売出の場合は、既に発行している株式を大株主が売るだけですので、総株式数は変動しません。
公募のことを公募増資、売出のことを株式売出と呼ぶこともあります。
総株式数が増えるということは、1株当たりの価値が減るということです。
株式数が増えても、企業の利益や資産は同じですので1株当たりの利益や資産額は少なくなります。
このことは「株式の希薄化」と呼び、株式の価値が減るため投資家からは嫌気されます。
公募は株式の希薄化が発生しますが、売出の場合は株式の希薄化は発生しません。
この点が投資においては大きな違いとなります。
公募と売出が共通している点は、大量の株式がディスカウント価格で売りに出されるので、需給が悪化するという点です。
需給が悪化した結果、株価が下落することが多いという傾向があります。
(目次に戻る)
POとIPOの違い
「IPO」とは新規公開株のことです。
株式市場に初めて上場する際には、株式を売り出す必要があり、そのため新規上場企業はIPOを実施します。
IPOとPOの違いは上場済みの企業が株式を売り出すのか、未上場の企業が株式を売り出すのかの違いです。
IPOで株を取得したい場合は、購入希望を示すためにIPOに申し込みを行う必要があります。
申し込み時に希望購入価格を提示しますが、場合によっては購入希望者が多く抽選となることもあります。
特に人気のある企業は高い倍率となることが多いです。
IPOは上場した時に初めて株価がつきますので、IPOに申し込みした時点では株価はわかりません。
IPOに当選した場合は、代わりに公募価格と呼ばれる価格分を支払うことで株式を取得することができます。
未上場企業の株を取得できるという点がIPOの特徴です。
IPOは新規上場企業ということで注目されることが多く、またIPO抽選で外れた投資家が買いを入れることもあります。
そのため、上場日の初値が公募価格を上回ることが多くあります。
IPOの8割から9割程度は初値が公募価格を上回り、人気の株であれば公募価格の数倍以上となることもあります。
そのため、IPOを専門に投資している投資家もいるほどです。
一方POは上場している企業の株が時価より割り引かれて売りに出されます。
POを申し込み当選すれば割安に株を取得することが可能です。
POに申し込みする場合は、割引率を選んで申し込みを行います。
抽選となった場合は割引率の低い順(購入価格が高い順)に当選します。
POとIPOにはこのような違いがあり、申し込みや株価の動きが異なりますので注意が必要です。
(目次に戻る)
企業はなぜPOを行うのか?
企業はなぜPOを行うのでしょうか。
理由は様々ありますが、大きく分けると、以下のものが挙げられます。
- 資金調達をして、事業をさらに伸ばしたい
- 大株主が保有する株の比率を減らして、個人投資家を増やしたい
- コーポレートガバナンスの理由から、株式持ち合いの比率を減らしたい
公募増資の例と、売出の例を、それぞれ見ていきましょう。
直近の公募の例~リート銘柄や、急成長ベンチャーのマネーフォワード~
直近でも、公募増資による資金調達が実施されています。
その1つが、「リート(不動産投資信託)」です。
「アベノミクス」により金融緩和政策が取られるようになってから、不動産業界は非常に調子がいいです。
その影響でリート銘柄は非常に業績がよく、事業をさらに成長させていくために頻繁に公募増資による資金調達を行っています。
資金を調達する事によって新しく不動産を購入できるようになり、さらに業績を伸ばしていく事を目指しています。
2020年に入ってから、三井不動産系列のリート「三井不動産ロジスティクスパーク投資法人(証券コード:3471)」や、東急不動産系列の「コンフォリア・レジデンシャル投資法人(証券コード:3282)」などが公募増資による資金調達を実施しています。
また、上場しているベンチャー企業でも、公募による資金調達を実施している企業があります。
家計簿アプリや法人向けクラウドサービスを展開する「マネーフォワード(証券コード:3994)」です。
マネーフォワードは、2018年末にも90億円規模の増資を行っており、20年1月にも46億円の増資を行います。
増資した資金を活用して財務基盤を強くしながら、日本国内外の同業他社を買収し(M&A)、さらなる事業成長を目指します。
このように、企業がさらなる成長を図る時に資金が必要となるため、それを賄うために『増資』という手段を活用することがあります。
売出の事例~象印マホービン、AGC(旭硝子)~
売出の1つ目の事例は、象印マホービンです。
象印マホービンは2018年に、東証2部から東証1部への鞍替え・昇格が決まりました。
それに伴い、個人投資家がより売買しやすくなるよう、大株主である協和興産の保有比率を引き下げる必要が生じたのです。
このように売出を行うことで大株主の保有比率が下がり、個人投資家に株が行きわたり、株売買をしやすくなりました。
2つ目の事例は、AGC(旧・旭硝子)です。
これまでの日本経営の習慣として、株式持ち合い(取引ある会社の株をお互いに保有しあう)というものがありました。
しかし、この株式持ち合いの文化のせいで、調達した資金を効率よく活用できなくなり、
合理的な経営判断の邪魔になっている、という懸念が存在します。
そのため、コーポレートガバナンス・コード(企業統治法人)が導入されました。
これには、「合理的な理由がなければ、株式持ち合いができません」とあります。
コーポレートガバナンス・コードの導入を背景に、4行の金融機関(みずほ、三菱UFJ、三菱UFJ信託、野村信託)が、
AGC株を売却することになりました。
(目次に戻る)
企業がPOを行うメリット
PO(公募増資)の会社側のメリットは「資金を調達できる」という点です。
公募増資の場合は、新規で発行した株式の分、資金を得ることができます。
また、新株発行により株主数が増え流動性が増すというメリットもあります。
PO(売出)の場合は、通常大株主が何らかの理由で株式を売却することがほとんどです。
例えば直近では政府が復興費用などを捻出するために日本郵政の株式売出を行っています。
公募、売出どちらとも時価より割り引かれた価格で株式を取得することが可能です。
新規に株を購入したい場合はこの点がメリットです。
(目次に戻る)
企業がPOを行うデメリット
POの一番のデメリットは株価が下落する可能性が高いという点です。
「公募増資」の場合は、株式の希薄化により1株当たりの株式価値が減ります。
相場環境が同じであれば当然、株価は下落します。
「売出」では割引価格で株式の売出を行います。
したがって、株価が売出価格決定時と同じであればPOで取得した株をすぐに売却することで利益を得ることが可能です。
ただし、売りが多くなれば株価は当然下落します。
加えて、PO当選組の売却を予想し事前に売りが入り株価が下落することも多々あります。
もちろん、必ずというわけではありませんが一般的にPOは株価の上昇よりは下落を招くことが多いです。
よって、既存株主にはPOはあまり歓迎されません。
(目次に戻る)
まとめ
今回はPOについて紹介しました。
POでは、公募増資と売出の2つの種類があることがわかりました。
公募の場合は、新株を新しく発行するため、1株あたりの価格が希薄化されるため、株価が下がりやすい傾向にあります。
一方、売出の場合は、発行株式数は変えずに大株主が保有する株式を手放すだけなので、株価が大きく下がる傾向にはありません。
ただし、公募では短期的には株価が下がりやすいですが、調達した資金で行う事業戦略がどれくらい魅力的なのか、によって将来の株価が変わってきます。
事業戦略が魅力的であれば、それを好感する投資家が必ず出てきます。
短期では下落→中長期では上昇、となるような株を拾えるチャンスでもあるといえるでしょう。
ディスカウントで購入できるので、安いところで投資して、高くなったタイミングで売却、という「キャピタルゲイン」を獲得しやすくなります。
短絡的に「PO=下落だから手を出さない」ではなく、「その資金調達で何を行うのか?」を見ていくと、思わぬチャンスを掴めるかもしれません。
■ 今回の総括:
- POは大量に株式を売り出す際に利用される
- POには公募(増資)と売出の2種類がある
- IPOは未上場企業、POは既上場企業が実施する
- POは株式の希薄化が発生することもあり、既存株主にとってマイナスの要因となる場合が多い
今回の「PO」などの基礎知識は、株式投資で高いリターンを獲得するには必須です。
しかし、基礎知識だけではなかなか成果が出ないのも、株式投資の難しさです。
独学で株式投資に挑んで、失敗して株式市場を退場してしまう人は後を絶ちません。
これはひとえに学習方法が間違っていたか、市場、銘柄選定などの知識不足です。
現代では、株式投資を効率よく学べる手段がたくさん存在します。
以下のコンテンツでは、株を勉強するにあたっての効率的な進め方について特集していますので、ぜひ参考にしてみてください。
また、現役投資家が講師を務めるセミナーなどは、期間限定無料で開催されているものもあります。
株式投資の基礎や具体的なハイリターンを獲得できる銘柄の選定方法などが紹介されていたりします。
好機を逃さないようにしましょう。
以上、【PO(公募増資・売出)とは?】株価に影響?IPOとの違いと企業がPOを実施するメリット・デメリットを紹介!…でした。