ジェレミー・シーゲル教授はペンシルベニア大学大学院の教授でウォートンの魔術師と言われています。
シーゲル氏はウィズダム・ツリー・インベストメンツの上級投資戦略アドバイザーとして活躍しています。
彼は「株式投資」「株式投資の未来」を書いており、投資家界隈では非常に有名な投資家として尊敬を集めています。
そんなシーゲル教授の最新のインタビュー動画が掲載されていました。
【今回お伝えする内容】
- シーゲル教授の相場に対する見通し
- シーゲル教授が現在強気に捉えているセクター
- 二番底の可能性について
- コロナ収束後に発生するインフレの程度と原因
- 現在の株式市場の長期収益率の考え方
Contents
現在の米国株式市場で起こっていること
シーゲル教授は現在のS&P500指数の大幅な上昇に多くの人が驚いていると思うと述べた上で理由について二点解説しています。
テクノロジーの躍進
テクノロジー株がS&P500の中の20%-30%を占めるレベルにまで成長しています。
テクノロジー株は非常に好調で危機発生時に重要な役割を果たしたと振り返っています。
以下はS&P500に連動するバンガード社のVOOの直近のデータですが、情報テクノロジー分野が25.7%を占めて他を圧倒しています。
FRBによる流動性供給
やはり相場を支えて浮揚させているのは米国政府の財政支出とFRBによる流動性の供給としています。
米国政府は躊躇ない財政拠出とFRBの大規模緩和で米国経済を支えているということについては以前お伝えした通りです。
そして、FRBが流動性を供給し続ける覚悟があることを市場が認識していることが株価が堅調な要因だとしています。
市場はこうした大胆な流動性の供給が2021年まで続くと期待しており株価のV字回復の要因になっています。
S&P500の今後の予想!他の米国指数と比較して成績は優秀となる?
新型コロナ対策としてのロックダウンが解除され、経済が再開に向かい治療薬やワクチンの開発が進む前提で、
S&P500指数は年末にかけて上昇を続けると考えているとのことです。
ナスダック指数 > S&P500指数 > ダウ平均 > ラッセル2000
今後もテクノロジーセクターが強いですか?
という質問について教授は「Absolutely」(=絶対的にそうだ)と自身を持って答えています。
テクノロジーセクターに強気の理由とは?利益落ち込むアマゾンに強気の理由に言及
シーゲル教授といえば高配当のディフェンシブ銘柄を推奨しているイメージでしたが、
ここまでテクノロジーに強気となったのか見ていきたいと思います。
その他にもヘルスケアとコミュニケーションセクターを強気にみています。
また、当サイトでも取り上げているアマゾンについてシーゲル教授は特に言及しています。
アマゾンはオンラインショッピング利用拡大の恩恵を受けた企業の好例として紹介しています。
今回のコロナ禍の影響でオンライン取引は通常の環境が続けば到達に5年かかるレベルまで一気に普及したとしています。
今後の2番底の可能性について
また皆さんが懸念している今後の2番底の可能性について質問者が質問すると「非常に良い質問だ」と応じて回答しています。
シーゲル教授は市場にとって最大のリスクを以下としています。
「有効な治療薬やワクチンが開発されないまま秋口にコロナの第二波がくること」
今年中にワクチンが開発されるか、コロナの重症度を通常の風程度まで引き下げる薬ができればS&P500は前回の高値を超えると明言しています。
教授は来年にも最高値をつけるだろうと具体的な時期を上げています。
ただ、インタビュワーが動画時間外でも教授と話した内容によると、
スペイン風邪が流行した当時と比べて技術が飛躍的に発展しているため人類は早期にコロナに打ち勝つと楽観的な見通しを持っているそうでした。
ワクチン開発後インフレが3%-4%発生する!?
シーゲル教授は現金通貨と預金の合計であるM1の伸び率に注目しています。
M1は6週間で19%増加しており、リーマンショックの翌年1年間の伸び率を既に上回っています。
このM1の著しい伸びが2021年から2022年にインフレをもたらすと考えているとしています。
では実際に確認していきましょう。
因みにより広い概念のM2も以下のように急拡大しています。
M1, is restricted to the most liquid forms of money; it consists of currency in the hands of the public; travelers checks; demand deposits, and other deposits against which checks can be written. M2 includes M1, plus savings accounts, time deposits of under $100,000, and balances in retail money market mutual funds.
参照:NY FED
M1は普通預金や現金通貨の合計ですが、M2は更に貯蓄性預金やMMF(現金運用ファンド)、CD、10万ドル未満の定期預金の総額としています。
手元に使えるお金が増加すると需要が増加します。
インフレは需給の環境で需要が供給を上回ることで発生します。
M1の伸びによって需要が増加した結果として近年の中では高めの3%-4%のインフレが発生するとしているのです。
今後の株式市場の長期リターンとは?
シーゲル教授は株価収益率(=PER)の逆数が実質リターンとしています。
現在の利益の落ち込みを考えるとPERは25倍なので実質リターンは4%ほどになります。
しかし、これは緊急事態下での利益水準なので昨年ベースのリターンとなればPERは18倍程度になるとしています。
まとめ
シーゲル教授のインタビューとしては5月10日と最新の内容であったこともあり教授の現在の見方について触れることができたと思います。
ただ、著名人とはいえ、あくまで一意見として捉えて鵜呑みにすることはなく自分でも考え続けることが重要といえるでしょう。
【今回のまとめ】
- 現在の堅調な株式市場はテクノロジー企業の躍進と政府とFRBに後押しされている
- 今後もテクノロジー企業が優位であり続ける
- ナスダック→S&P500→ダウ平均→ラッセル2000の順の成績になる
- 2番底は秋口までに有効なワクチンや治療薬ができないと訪れる可能性があるが楽観視している
- 来年2021年にはワクチンや治療薬が開発され最高値をつける
- M1の急上昇によってコロナ禍収束後に3%-4%のインフレ率が訪れる
- 益回りから考える今後の株式市場の実質リターンは5.5% (名目だと9%近く)